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「インスタ映え」すると話題の錯視アート展「レアンドロ・エルリッヒ展」に行ってきました!!
【一言】
錯視アートとして非常に面白かったです。
見た目の楽しさ以上に、常識を逆手に取った作品は興味深いです。
ただの「インスタ映え展示」ではなく、作品には常識や既成概念に囚われた認識への啓蒙や、社会的メッセージが込められていました。
本当に、アイデアが凄い!
【目次】
美術展紹介
概要
六本木ヒルズの森美術館で催された「レアンドロ・エルリッヒ展」の概要です。
会場:森美術館
会期:2017.11.18~2018.4.1
料金:1,800円(一般)
主催:森美術館
後援:アルゼンチン共和国大使館
公式サイト
エルリッヒOfficial
レアンドロ・エルリッヒは、アルゼンチン出身の現代アーティストで、金沢21世紀美術館の《スイミング・プール》の作家として知られています。
大型のインスタレーションから映像まで、エルリッヒの作品は視覚的な錯覚や音の効果を用いて、わたしたちの常識に揺さぶりをかけます。一見どこにでもある見慣れた風景ですが、その異様な光景に観客は驚きと違和感を覚えることでしょう。自分が見ていることは果たして現実なのか、という疑いを抱くとともに、いかに無意識のうちに習慣にとらわれて物事を見ているか、という事実に気付くのです。
作品を通して、見るという行為の曖昧さを自覚し、惰性や習慣、既成概念や常識などを取り払い、曇りのない目で物事を「見る」ことで、新しい世界が立ち現われてくることを、身をもって体験することになるでしょう。
(公式サイトより・一部改変)
美術展紹介動画
作者
制作者レアンドロ・エルリッヒ氏(Leandro Erlich)の紹介です。私はあまり詳しくないので、公式HPからの引用になりますが。
エルリッヒ氏メッセージ
今回の個展は、私のキャリアにとって最大の挑戦であり、また、常にさまざまなインスピレーションを与えてくれる、洗練と刺激に満ちたこの東京で開催できることを大変光栄に思います。私の作品を通して、みなさん一人一人が「日常においてわたしたちがいかに無意識のうちに惰性や習慣で行動しているか」、そして「いかに常識や既成概念にとらわれ凝り固まった見方をしているか」ということに気付き、現実を問い直すきっかけとなれば嬉しいです。現実は一つだけではない。それこそが現実なのではないでしょうか。
メッセージ動画
スペシャル動画
みどころ
公式サイトに掲載されていた「みどころ」を何点か抜粋して紹介します。
◆多くが日本初公開!初期から新作まで網羅的に紹介
1995年に制作された初期の作品から新作までを網羅的に紹介することで、エルリッヒの24年にわたる活動の全容に迫る過去最大規模の個展です。出展作品約40点のうち、その8割が日本初公開作品で構成されるため、今まで見たことのない、エルリッヒ作品の新たな魅力に出会うことができます。
◆「現代アートっていいね!」を誰もが楽しめる展覧会
不思議と驚きに溢れ、好奇心を刺激するエルリッヒの作品は、観客自らが参加し体験することで初めて完成されます。さらに建物や教室、地下鉄、エレベーターなど日常の中のありふれたものが作品のモチーフとなっているため親しみやすく、現代アートに馴染みがなくても、大人から子どもまで誰もが気軽に楽しむことができるでしょう。
◆作品に込められた、社会的メッセージと批評性
エルリッヒの作品の背景には社会的メッセージが込められています。本展のための新作《教室》は、廃墟化した教室に自分の姿が亡霊のように映り込む作品で、日本が抱える少子化や過疎化などの問題を示唆し、観客にその未来像を考えさせます。
美術展の感想
全体感想
今回の美術展が開催してから3ヶ月後にようやく行きましたが、そもそもこの美術展が目的ではなく、同じ六本木ヒルズで開催していた別の企画展がメインで、「レアンドロ・エルリッヒ展」は“ついで”でした。
結果として、率直な感想は「“ついで”で良かった」です。この美術展にわざわざ入場料を払って観覧するのは勿体無いと思いました。
ただし、これは作品や作者をけなしているのではなく、美術館の展示や宣伝の仕方、ターゲットとなる客層への不満が大きいです。
まず不満の1つめ。
それは「宣伝の仕方」です。今回、明らかに展示作品のメディア露出が多すぎたと思います。特にTV番組、そしてWebニュースなどが。
私は何も知らずに会場に行って、作品と解説をはじめて見て、色々と考えたり感じたりするのが好きです。だから事前の情報収集はあまりしないし、雑誌や記事なども読みません。
でも、今回の美術展はTVのニュースやワイドショーのような番組で多く取り上げられたから、嫌でも情報が入ってきました。しかも、少ない展示の殆どを報道してしまいます。
そして、今回は「錯覚アート」なので“タネや仕掛け”を知らないほうが楽しめるけど、その重要な部分も全部報道されちゃたから、作品の実物・本物を見ても驚きや感動が大きく減少しました。
不満の2つ目。
ターゲットとなった「客層」です。
広告や宣伝から、今回はSNSを利用している若者や女性がメインターゲットになっていると感じました。それ自体は問題ではないのかもしれませんが、一部のお客さんが悪いんです!!
別に、他人の鑑賞の仕方に干渉する気は無いんですが、今回は流石に腹が立ったのと、迷惑でした。
まず、「写真映え」を意識しているのか、ずっと同じ作品の前で何枚も写真を取っていたり、構図を意識しているのか周囲の迷惑お構いなしにスマホのシャッターを切る人の姿が多すぎです。
それから、「楽しむ」という美術展のコンセプトからは仕方ないのかもしれませんが、何人ものグループで騒ぐ(?)女性たちが目立ちました。
個人的に1番腹が立ったのは「解説を読まない」人たちがあまりにも多いことです。エルリッヒ氏の作品は錯覚アートを通して、常識や既成概念に縛られたわたしたちの意識を指摘したり、社会批判や風刺のような事をしている点が素晴らしいと思います。
でも、それって解説を読まないと分からないし、読まないと「ただ面白い」だけになってしまうんですよね……..。作品のコンセプトや込められた意味を知らないと勿体無いというか…..。
作品自体については、とても面白かったです。
ただ、やっぱり仕掛けや解説を事前に知ってしまった分、面白さが半減以上してしまいましたね…..。
作品紹介&感想
ここからは、展示されていた作品を挙げながら簡単な感想と同時に紹介もしていこうと思います。
本美術展の作品リスト(PDF)はこちらになります。
作品:反射する港
英題:Port of Reflections
制作年:2014
舟が水に浮かぶように見えるが、実は、ボートの揺れをコンピューターで計算し制作した立体物のインスタレーションである。私たちは「ボートは水に浮いているものだ」という思い込みをもつため、そのように見えてしまったのである。私たちがいかに固定観念をもって物事を見ているか、ということに気付かされる。
仕掛けを事前に知っていても、本当に舟が浮かんでいるように見えました。真っ暗な室内だから、ライトアップされた部分以外が見えないので、作品に集中できます。
解説にありましたが、英題の「Reflection」は「熟考」という意味も持つそうです。
作品:雲
英題:The Cloud
制作年:2016
フランス、ドイツ、イギリスのブリテン島、日本といった国や島の形をした雲が、白色のセラミック・インクを使って表現されている。
人間は秩序のないものに秩序や形を与えようとする習性をもち、例えばランダムに並ぶ星から星座を作り出した。同様に、雲が形を変え続けるがゆえに、雲を自らの想像によって何らかの形として認識してきた。数十万年単位で見れば雲と同じように変化を続ける地形に対して、人間が勝手に線を引いて作りだしたものが国家なのだということを、本作に読み取ることもできる。
ボヤッとして曖昧な雲が展示されていること自体に驚きです。で、その雲は遠目から見ると見慣れた「国」の形をしていることに気付きます。でも、なんで国を選んだんでしょう??食べ物や動物でもいいのに……..。
作品:教室
英題:The Classroom
制作年:2017
本作では、廃校となり廃墟化した学校の教室が舞台となっている。手前の部屋に入った観客の姿はガラスに映り込み、奥の部屋に亡霊のように現れる。
私たちは、廃墟化した教室なのかにまるで過去の亡霊のように映り込み、その状況を楽しみつつも、自分の幼少時代という過去の記憶や、現実の日本が抱える少子化や過疎化によって提起される未来像と向き合うことになるのだ。
透明なガラスを用いることで、実像と虚像を混ぜるというのはとても興味深い作品だと思いました。ただ、写真を上手に撮影するには友人などと協力しないと難しいですね。(あ、掲載した写真に私の顔は映っていませんよ 笑)
作品:日中の白い飛行、夜間の黒い飛行
英題:White Flight over Day, Black Flight over Night
制作年:2015
解説の写真を撮り忘れたか、掲示してなかったので解説はないです(スイマセン)。
この作品は、壁に掛けられた飛行機の窓の形をした立体物に、外の風景が映像で映されることで、まるで本当に空を飛んでいるように感じる作品です。
なかなか凄かったです。本当に飛んでいるように感じたし、違和感というよりも納得していました。
作品:シンボルの民主化
英題:The Democracy of the Symbol
制作年:2015
ブエノスアイレスの大通りに立つ建国の象徴としてのオベリスクの先端が切りとられ、突然、ラテンアメリカ美術館前広場に降ろされたかのようである。一般の市民はその先端部の中に入り、その窓からブエノスアイレスの市街地を見渡すことができる(実際にはモニターに映像が流されている)。権力のシンボルが一般市民に開放されるというもので、社会的なメッセージをもつ。
本作は、本物のオベリスクの先端部を覆い隠し、同型の先端部の模型を地上に設置したという単純な仕掛けだが大掛かりなもので、当地では大きな話題となった。
エルリッヒ氏のことは詳しく知りませんが、この作品は以前から知っていて、今回の美術展の展示作品のなかでもやっぱり一番好きです。「権力の解放」というメッセージ性、万人が見れば楽しむことのできる公衆性、仕掛けが単純な点など興味深い部分が盛り沢山です。
作品:部屋(監視Ⅰ)
英題:The Room (SurveillanceⅠ)
制作年:2006/2017
25台のモニターには、様々な角度から監視カメラが捉えた1つの部屋が映し出されている。殺風景な部屋には、誰も登場せず、何も起こらない。無意味とも思われる監視状態だけがクローズアップされている。
この作品が制作された2006年、イギリス政府は国内に200万台以上の監視カメラを設置しており、当時の換算では市民の14人に1台という割合になると発表した。2017年の現在、映像はインターネットを通じて集約されており、監視社会は既に現実化したのかもしれない、ということを私たちに気づかせてくれる。
無意味に思える作品でも、こういう意図が込められているんだと解説を読んで分かりました。このメッセージも個人的に好きです。政府の政策に対してアートで意見する・啓蒙するというコンセプトが好きです。
作品:エレベーター
英題:Elevator
制作年:1995/2017
エレベーターの内と外が反転されている。本展のために再制作され、日本性メーカーのボタンが使用されている。
最初に制作されたのは、1995年、ブエノスアイレスのフランス大使館が主催した「ブラック賞」に参加した時で、「展覧会場のエレベーターに入ることが条件」という規定に着想をえて制作された。本作で、エルリッヒは、創造や制作に対する制約への強い苛立ちを表現すると同時に、苛立ちを新たな創造性へと転換したのであった。
「条件から作品を発想する」という所がたまらなく面白くて好きです。直球的ながらも自身のアートで制約にたいする抗議を表した部分が気に入りました!
作品:試着室
英題:Changing Rooms
制作年:2008
この作品も、解説パネルを撮り忘れたか、掲示が無かったかなので、解説の引用は無しです。
鏡を使った作品で、試着室が永遠に続いているかのように感じられます。作品の中に入れるので、より一層に目の前の試着室が鏡の中なのか、現実なのか曖昧でわからなくなってしまいます。
これは実際に体験すると混乱してきます。「姿が映らないなら鏡じゃない」
と頭では分かるのですが、なかなか理解が追いつかないです(笑) (鏡を使った作品なので自分の姿が映らなように写真を撮るのが大変でした…….。)
作品:建物
英題:Building
制作年:2004/2017
人々が重力に逆らって、各々の好きなポーズで建物のファサードにぶら下がったり、立ったりしている様子を楽しめる参加型の大型インスタレーション。
「建物のファサードは地面に対して垂直に建っているはずだ」という私たちの既成概念を利用している。作品に参加している観客を、別の人々が作品の一部として鑑賞できるという意味では、パフォーマンスの要素も含む参加型作品といえるだろう。
本展での目玉展示です。この作品は解説にもあるように、別の鑑賞者が展示に参加することで成立する作品でした。ただ、人が寄ってたかって地面に座り、ポーズを取ったりしている様子は滑稽でした(笑)
作品:溶ける家(私の子供たち)
英題:Maison Fond / Melting House
制作年:2015
2015年に196ヶ国により地球温暖化対策のためのパリ条約が採択された、第21回気候変動枠組条約締約国会議と関連して展示された。
作品タイトル、フランス語の「Maison Fond」(溶ける家)の発音は「Mes Enfants」(私の子供たち)という意味にもとれるため、地球温暖化という事実がいかに未来の世代に影響を与えるのかという問題提起も行っているのだ。
タイトル1つに作品の主題を全部詰め込んでいるようで、本当に凄いと思いました。展示されたパリの人々からすれば、よりその意味が伝わるんだろうと思います。展示する場所の特徴を活かしているのがまたすごい!
今回の「レアンドロ・エルリッヒ展」の感想は以上になります!
始めにも書きましたが、“ついで”だったからそこそこ楽しめましたが、わざわざ行くのには勿体無いと感じました。
メイン目的だった、同じ六本木ヒルズ内で開催されていた企画展「Media Ambition Tokyo 2018」の感想はこちらです。
最後まで読んでくださり、
本当にありがとうございました!!