※ネタバレなし。
※画像は予告映像のキャプチャです。
2019年3月1日鑑賞
映画ドラえもん のび太の月面探査記
【評価:2.9/5.0】
【一言】
面白かった!
───けど、普通でもあった。
「友達」をテーマにした物語は相変わらず素晴らしい。
けど、物語それ自体よりも、SF色が目立っちゃって残念。
【Twitter140文字感想】
【 #ドラえもん のび太の月面探査機】
38万㌔離れた《友情》
「それだけで、助ける理由になる」
心優しいのび太の真っ直ぐな台詞。
月を見上げる度に思い出しそう🌏🌕冒険のワクワク感が全然足りない!
のび太たちは完全に物語の蚊帳の外。
「内輪の内輪で完結」感が否めず、素直に楽しめなかった… pic.twitter.com/62yUCfSn6K— ArA-1 (@1_ARA_1) 2019年3月1日
感想
感想外観
今年はドラちゃんの映画を観てきました!
ドラえもんはもともと好きですが、『新・のび太の日本誕生』が非常に素晴らしいものだったので、今回、同じ監督が手掛けられた本作を劇場鑑賞しました!
「映画ドラえもん のび太の月面探査記」見どころガイド
期待が高すぎたのかもしれませんが、物語はとても良かったものの、あまりにも「普通」というべきか、「定番」というべきか、「安定していた」というべきか。
なんだか、イメージしていた『ドラえもん』と違ったのが残念だったし、つまらないとも感じてしまいました。
「友情」を描く物語は相変わらず素晴らしいです!
日常的な世界観でありながら壮大な物語を描き、そのなかで「友情」を描写する内容はさすがだと感じました! こういうのは、何回観ても感動できる!
そして、「普通」か「特別」かを問うような内容だった点も高く評価できると感じました!
一方で、「ワクワク感」が全然足りない!
恐竜と冒険したり、魔境を探検したり、魔法使いになったりと、とても心躍るような舞台と物語がとても好きでした。
しかし本作は、なんというか───世界観が狭い上に、物語の内容も重めで、観ていて「ワクワク」とはならなかった点が非常にガッカリでした。
それから、「SF要素」が強すぎるとも感じました。
どうも私個人的には荒唐無稽ともとれるような展開が相次いだのが気になってしまいました。
別に他の作品でもあるようなことなのですが、本作では”ワクワク要素”がないせいか、やけに目立っていたような。
ワクワク感が欠落した普通のドラちゃん映画
なんというか、「普通」のドラちゃん映画でした。
映画で描かれる【出会い・友達・別れ】の大事な要素はしっかり押さえていたものん、それ以外の部分が普通というか、特筆すべきことがないというか。
軸はしっかりと立てているものの、その回りを囲うべき物語の部分で「特別にすごい」という部分が薄いような気がしました。
正直、これは個人の感じ方次第なのかもしれませんが。
ドラえもんの映画って、「感動の物語」を抜いた部分を追っているだけでワクワク・ハラハラ出来るのがとても楽しいと思っているし、魅力の1つだと思います。
恐竜の世界で冒険したり、ジャングルの奥の魔境へ探検に出かけたり、人魚の世界で遊んだりといったワクワクがとても楽しくて。
囚われた静香ちゃんを助けるべく、魔法使いになったり絵本の世界に飛び込んだりといったハラハラの戦いが待っていたり。
でも、本作にそいういのは無かったと感じました。
上手く言葉に出来ませんが、「よくあるSF映画のストーリーをなぞるような物語の気がした」とでも言えば少しは通じるのでしょうか・・・・?
正直、ドラえもんじゃなくても成立するというか。
四次元ポケットとか必要ないような、本当によくあるSF映画だと感じてしまったんです。
別にのび太達5人じゃなくても、ハリウッド映画のアクションスターが集まればなんとかなりそうというか、既に似たような物語は観た気がするというか。
オリジナリティを期待していただけに、非常にがっかりしてしまいました。
キャッチコピーだけは最強なのに!
特別映像「大人になったすべての子どもたちへ」
「普通or特別」を問う友情の物語
とかなんとか言っても、やっぱり『ドラえもん』が描き出す友情の物語は素敵だし感動的です! これは絶対に変わらないし、とても大切なことだと思います!
何よりも、のび太の台詞が良いですね!
童話を信じるような純粋な心の持ち主であるのび太が、その綺麗なままの口で語る台詞は、とても簡潔だけど温かくて、シンプル故に感動がこみ上げてきます。
本作では「普通」か「特別」かを問う物語だと私は感じました。
特別な環境・世界・能力……それらのものは、持たざるものから見れば憧れの対象ですが、果たして持つ者からするとどう感じるのでしょうか。
これまた正直に言って、これまで沢山の映画で描かれてきたテーマだと思います。『ハリー・ポッター』然り、『X-MEN』然り。でも、『ドラえもん』で描けば、子供が考えるきっかけになるような気がします!
こういう、『ドラえもん』というコンテンツの中核をなすような、「友情」と「メッセージ」は本作でもしっかりと語られていました。
あとは、どれだけ純粋な心でそれに向き合えるかなのかもしれませんね。
いつになくSF色が強め?
『ドラえもん』の映画を全部追っているわけではないし、見た作品だって正確に内容を覚えているわけではないですが───なんだか、とてもSF色が強いと感じました。
ここまでくると、「純粋な心でみれば気にならない」の範疇を超えるような気がするのですが。
具体的に書くと、物語の核心に触れるようなものなので避けながら描きますが……「宇宙」という大きな舞台を前に、あまりにも雑過ぎるのかもしれないです。
空気とか重力とか宇宙線とかの点はしっかりとドラちゃんの道具で解決策をカバーしていたので問題なかったし気になりませんでした。
しかし、それ以外の部分で、唐突に現れた設定だとか、急登場の人物がいたりして、「それあり?」とか「なんだかな~」と思ってしまった部分が大きいです。
SFって世界観が壮大に広がっていくだけに、細かい部分をしっかり描写しないと物語が曖昧になってしまうと思います。特に今回は地球だけの問題ではないので、もっと丁寧に描いたほうが良かったのかなぁと。
SFが強いため、短所と長所があったと思います。
短所としては、上述のように曖昧になってしまった点、そして設定についていかなくてはならないために、物語に集中しづらかった点です。
一方の長所としては、説明をきちんと入れている部分については、それが「裏付け的」な作用をして、物語の権威付け(?)になっていると感じました。
世界観が壮大な割に、物語が雑で未完
あくまで個人的な印象ですが、『ドラえもん』の作品って世界観は壮大な割に物語は内輪で完結する内容が多いと思います。よくあるのは、「人外の王国に行き、そこに降りかかる危機を救う」というもの。
でも今回は、「内輪の内輪」で完結させていたとういうか、物語自体はテキトーなところで幕を引いたというか。
これまでは、いくら現実離れした世界があったとしても、それはドラえもん達がその存在に近づいて、知識を蓄え、ともに戦い、エンディングを迎えていたからこそ、理解できたし共感ができたのだと思います。
しかし本作は、早い話が「ドラえもん達は蚊帳の外」という感覚がずっと離れませんでした。のび太たちの存在は大きいけど、彼らがいなくたって物語は回りそう。(これ以上書くとネタバレになりそう)
ひとえに、「誰が主導で物語を進めるか」という点に集約されるのかもしれませんが。
演技も音楽もアニメーションも良かった!
映画を構成する要素の全てが完璧なのが、『ドラえもん』のすごいところ!
本作も、文句が無いくらい完璧でした!
まずは演技。
のび太の「ドゥラエもぉぉぉぉぉぉん」の叫びは完璧だし、ジャイアンの男らしさとかは、聴くだけで安心します!
本作の主役であるルナ役の皆川純子さんは少年役で定評のある方なのですね。ちょっと不思議なオーラを纏った声が、そして使命を背負う強い口調が見事でした!
もうひとりのゲスト、吉田鋼太郎さんも凄くピッタリでよかったです!
キャラクター紹介|ルカ
しかし、唯一残念だったのは、柳楽優弥さん。
Wikipedia見ると賞をたくさんとっている俳優さんのようですが、声の演技はイマイチでした。
音楽の方は、とても耳障りの良い音楽でした!
童謡心が刺激されるというか、聴いていて「あ、映画を観ているな~」と思わせてくれるような音楽でした!
アニメーションは言うまでもなく!
丁寧な動きや細やかな表情の変化、目線の動き、さらにアクションシーンまで、完璧です!
以降、映画本編のネタバレあり
映画の感想
※ネタバレあり
ドラえもんたちは蚊帳の外
「ドラえもん達は蚊帳の外」
本作を観ていて、この点が一番に残念に感じたというか、違和感を覚えました。
どうも、ドラえもん達の物語と、ルカ達の物語がリンクしきれていないと思いました。
一番大きいのは、物語を動かしているのが「のび太」ではなく「ルカ」であるという部分だと思います。
本作の物語を動かす上で、最初に接触してきたのはルカだし、のび太を救ったり、現状説明をしたりするのも全部ルカ。新しい登場人物と新しい物語を描いていく上では仕方のないことかもしれませんが、新登場人物に主導権を完全に渡しちゃうのはどうなんでしょう?
ルカ達を助けに行くと決めたのはのび太ら本人であるものの、それは必然的でしょうし。どうも、「皆んなで力を合わせて」までの過程があまりにも蚊帳の外だったように感じてしまい、静観の姿勢でした。
手のひらで踊らされている感というか、なんというか。
確かに、最初に月に「ウサギ王国」を創造したのはのび太たちですが、あの労力に、そして映画で描かれた時間に値する程の役割があったとは、なかなか思えません。
嬉しいサービスたくさん!!!!
『ドラえもん』の映画として、嬉しい演出がたくさんあったのが楽しかったです!
まずは王道の出だし。
のび太が馬鹿にされ、「ドゥラえもぉぉぉぉぉぉん」と泣きつくまでの定番となった流れを、しっかりとそのまま描いてくれていたのが本当に嬉しかったです!
のび太の部屋の装飾も素晴らしい!
床に積まれた本は上から「宝島」「いぬねこのきもち」「日本誕生の歴史」ときていれば、これは映画の流れを追っていると想像したくなります!
さらに、机に上にはボトルシップが。これって前作で登場した船じゃないですか!?
「映画ドラえもん のび太の宝島」予告3
そして、オープニング!
今の『ドラえもん』のテーマ曲がしっかりと流れてきて、その出だしを聴いただけで本当に嬉しかったです! 声に出さずに口ずさむほど、大好きな曲です!
OP映像のほうも完璧でした!
最初、何が描かれているのかと思ったら、古典名作『月世界旅行』のオマージュじゃないですか! これだけで超興奮! さらに、「ウサギ」が登場する日本の昔話をモチーフにした場面が続き、本当に楽しい映像演出でした!
あとは、エンディングでしょうか。
エンドロールの中で、藤子・F・不二雄先生による原作『ドラえもん』のコマが投影されました。どこかで見た話だと思っていたら、原作の「地底人」のエピソードでしたか!
のび太の台詞にはいつも胸打たれる
真っ直ぐで優しい心を持っているのび太の台詞には、いつも感動させられるし、胸がジーンと熱くなって、鳥肌が立ちます。
宇宙ホバークラフトに乗って月面レースをしている最中、「友達を知らない」というルカに対して放った言葉。
のび太「友達を知らないの?」
のび太「それだけで、助けていい理由になる」
この言葉が、これまでも映画シリーズを総覧するようで、短いけれどもとても感動的で涙が出そうになりました。
そしてもう1場面。
ルカ達エスパルがカグヤ星の兵士に捕まりそうになり、どこでもドアで地球に逃げようとするも、ルカ1人が残ろうとするシーン。
ル カ「仲間を残してはいけない」
のび太「だったら僕も!」
︙
ル カ「友達だからさ」
「友達は助ける理由になる」という先ほどの会話がルカのなかで、大きな役割をもったかのように、ドア越しにこの会話がなされたことそれだけで、大きな感動を感じました。
物語全体のネタバレ感想
物語の最後で、ルカたちエスパルが下した決断。
【長寿を捨て、能力を捨て、普通の人間として生きる】
これこそ、本作の真骨頂です。
ルカが「長生きは良いことばかりでない」と小さな声で漏らす様子は何度も描かれましたが、こうして大きな決断を出来るところが素晴らしいと思います。「普通」を選ぶか「特別」を選ぶかは、考えさせられるものがありました。
西尾維新さんの『化物語』にはじまる「物語シリーズ」に登場する不死身の吸血鬼は、齢500でありながら「時の移ろいに取り残されるのは悲しい」と言っているのですから、1000年なんて想像を絶します。
物語全体を俯瞰すると、危機一髪の見せ場がたくさんあって良かったと思います。
一番は、ウサギ王国でのび太の異説メンバーズバッジが外れてしまったシーン。
無酸素の危険性は数々の映画で観ているだけに、本当に息が止まる思いで心配しました!
後半には帝・ディアボロとの対決があり、静香ちゃんの救援もあって、なかなか見ごたえある戦闘シーンが作り上げられていましたよね! 敵がロボットということもあり、倫理を気にせずに破壊行為を行えるというのは、便利なところ!
最後の別れ。
そして、その後に描かれた地球での日々。
さらには、エンドロール。
月と地球、38万キロ離れていても、彼らの心の中では繋がっているという、そういうテーマが口にしなくても伝わってきました。なんだか、これからは月を見る目が変わりそうです!
「ウサギ王国」とルカたち
のび太とドラえもんが創造した「ウサギ王国」。
最初にヒカリゴケを巻いたり水を作って植物を植えたりと、まるで映画『新・のび太の日本誕生』をもう一度観ているような気分になりました。
そして、粘土から生まれたウサギたち「ムビット」。
予告編等でみたウサギがまさか粘土から作られたとは想像もつかず、驚きました。『ドラえもん』の映画に登場するクリーチャーって、球形を元にしたキャラクターが多くて可愛いです!
その後は、目を見張るような発展でしたね。
ノビットとかが「本」を持っていましたが、あれはウサギ王国で作られたものじゃなくて、のび太の部屋のものでしょうか? ルカがどこでもドアを開けた際に吸い込まれていった本かな?
一方、ルカたちエスパルが暮らす地下。
ドラえもんが「エスパルがあるならもっと豊かな生活ができそう」と言った台詞が伏線になっているとか気が付きませんでした。
そして何よりも、ルナが超可愛い!
美少女だし、戦うときに技名を叫ぶし!(「月野うさぎ」なんて名前は絶対につけられないでしょうね 笑)
キャラクター紹介|ルナ
敵について
今回の敵の設定は面白かったと思います!
1000年以上も統治しているという点から、御簾の向こうにいる「帝」が人工知能を含めた何かしらの機械であることは予想していました。
しかし、それが「破壊兵器」そのものだったとは。
「悪魔」という意味に似た「ディアボロ」という名前自体が伏線だったということですね!
キャラクター紹介|ディアボロ
赤い甲冑に似た装備を身に着けたゴダート。
最初は普通に敵かと思っていたら、まさかの良い奴! 薄々予感はしていたものの、まさかルカの父親の子孫だったとは!
それでも、1000年余りの間、ずっと伝説を語り継いできたって凄いですね。
キャラクター紹介|ゴダート
カグヤ星、ディアボロが住まう宮殿。
日本の平安時代に似た庭園や池のような建築、デジタルの雲が漂う御簾のデザインとか、そういう部分がとってもお洒落で好きでした!
感想は以上です!
正直、『新・のび太の日本誕生』で号泣したのでそれを求めて鑑賞したものの、それには遠く及ばなかったです。
来場者特典でもらった、ドラえもんの人形は、隣の席の子供に上げました!
めっちゃ喜んでもらえて、こちらも嬉しいです!
『ドラえもん』みたいな作品は、子供たちがたくさん観ているほうが、シアターが賑やかになって楽しいし、好きです!
最後まで読んでくださり、
本当にありがとうございました!!