2014年11月6日
「その男、悪にして英雄。」
次目
【内容】
かつて串刺し公として恐れられたヴラド。しかし今はトランシルヴァニアを治める信頼の厚い君主になっていた。 そんな平和の中突如オスマン帝国から男子1000人と息子を人質として差し出すよう要求される。 悩んだ末にヴラドは愛する者たちを守る道を選ぶ。 そして強国オスマン帝国に立ち向かうため悪の力を手に入れようとする。
誰もが知っているであろう吸血鬼ドラキュラ。彼はなぜ吸血鬼になったのかを描いたドラキュラ伝説の前日譚
【感想】
●“過去の英雄もの”ということで長ったらしい武勇伝かと思っていたら全然違った。挿入、起承転結、+αがとてもテンポよく描かれていて全く飽きることがなかった。 最初から最後までほとんど違和感なく見られた。 ラストのを見るとこれは続編ありか?
●アクション(戦闘シーン)が流れるように華麗で、1人vs1万というまさにゲームの無双シリーズ。観ていて気持ちが良かったし、魅入ってしまう。大勢を蹴散らすシーンもスローモーションなどを上手く使って観やすかった。
●国を治める君主として民衆の事を、愛する妻子を守るために悪の力を使う決心をするヴラド。守るべきものと悪との間で葛藤する心がもっと揺らいだり、キャッチコピーにもあるようにもっと“愛”や“葛藤”を織り交ぜても良かったかな。(でもそれが少ないからテンポが良かったのかな?) それでいて民衆や妻子の恐怖をリアルに描いていた。やっぱり尊敬する君主であっても恐怖には勝てないか…。
●後は伝説や伝記、ファンタジーといったドラキュラについての一般知識のようなものをしっかりと話の中に入れていたのも知ってる人にとっては嬉しい。
【歴史的解説】
血を吸い、動物に変身し、十字架やニンニクが嫌いといった誰もが持っているドラキュラへのイメージはブラム・ストーカーの小説「ドラキュラ」によるもの。
この小説のモデルとなった人物が今作の主人公でもある「ヴラド・ツェペシュ」。そして彼は罪人や敵対するオスマン帝国軍の兵士を見せしめとして串刺し刑に処したと言われそこから『串刺し公』という異名を持つ。
また、『ドラキュラ』とは竜の息子という意味があり父親がドラゴン騎士団に所属していたことから単純に息子という意味合いで使われていたものと考えられています。しかし、宗教下では竜=悪魔となることが多く串刺しとの恐怖も混ざって今のドラキュラ像が完成したと言われます。
しかし、近年ではこの映画のように彼は帝国の侵略から国を守った英雄としての再評価がされてもいます。
(また、イメージの中で吸血鬼が女性の血を吸うとその女性は凶悪な下僕となるというものは「 バートリ・エルジェーベト」というハンガリー貴族夫人に由来すると言われています。 彼女は領内の娘を“鉄の処女”という拷問器具に入れ生き血を絞り出し浴槽にためて入ったり、飲んだりしたということから別名『血の伯爵夫人』と呼ばれています。)