※ネタバレなし。
※画像は予告映像のキャプチャです。
2018年5月28日鑑賞
犬ヶ島
(原題:Isle of Dogs)
【評価:4.6/5.0】
【一言】
「絵巻物」のような本作。
見事なストップモーションアニメが描き出す、随所に日本らしい要素を散りばめた「疑似ニッポン」に親近感!
日本語や英語といった“言語”を作品の演出道具として使い分けてるのが面白かった!
【Twitter140文字感想】
【 #犬ヶ島 】🐶🐾
犬の強制収容島「犬ヶ島」に、愛犬を救う為乗り込んだ少年の物語。
《絵巻物》のよう!
音と装飾が生み出す“雰囲気”と、人形の“手作り感”。
視,聴,触で感じられる“疑似日本”が心地良い!言語(=文字&言葉)を演出ツールとし、作品の修飾と登場人物/犬の様相を描き分けてて感嘆。 pic.twitter.com/9qfVHVkbsT
— ArA-1 (@1_ARA_1) 2018年5月29日
ストーリー
日本にある架空の町、ウニ県メガ崎市の小林市長は増え過ぎた飼い犬や野良犬に蔓延する病気から人間を救う為、市郊外の島に犬たちを収容する事に。
少年、アタリ君は「犬ヶ島」に収容された愛犬を連れ戻すため、1人で島に上陸するのだった。
予告動画
感想
感想外観
とても面白かったです!
独特な日本の雰囲気と、見事なストップモーションアニメの感覚が最高にマッチしていて、「絵巻物」を読んでいるようでした!
まず1番は独特の世界観でしょう!
日本を舞台にした作品ですが、「古き良き日本」と「日本の現代都市」を融合させたような世界が面白かったです!
そして雰囲気が抜群!
少し暗めの画面の中で、“疑似日本”のような世界観が構築され、ストップモーションの少しぎこちない動きと、背後に響く和太鼓をベースにしたような音楽が何とも言えない雰囲気を放っています!
さらに、特筆すべきは「台詞の言語」でしょう!
物語を転がす狂言回しの言葉は英語ですが、作品の中では登場人物がそれぞれの国籍(日本語や英語など)で話すのが印象的でした!
加えて、劇中の「文字」を使った演出や記述も良かったです!
キャラクターが濃くて楽しめたけど、物語は少し難しかったです。
登場人(犬)物は名前がとても上手く考えられてて、もちろん個々の性格やキャラも「The 物語」のように明確に別れていて、濃い世界観に負けないくらい強い主張をしていました。
物語自体はそこまでファンタジックではなく、比較的に面倒くさい部類ですかね(笑)
勧善懲悪とか友情とか冒険とかってキーワードが適切ですが、そこから構成された物語は少し政治色強くて面倒くさい……(日本のイメージなのかな?)
こういうストップモーションアニメ作品は、メイキング映像を見ているのが本当に楽しいです!!
メイキング映像
“絵巻物”を読んでいるよう!
映画が始まって最初に思ったのは「あ!絵巻物みたい!」という感想でした。そして、そのまま変わる事なくエンドロールを迎えました。
随所に日本を散りばめた世界観とか、和太鼓等のお囃子を軸にしたような音楽、そして喋る言語が日本語と言う事もあり、親近感のようなものが湧きました。
実写でもなく、アニメでもなく、「ストップモーション」という部分が『絵巻物』という印象を作るのに大きな理由の1つだったと思います。
「手作り感」のような感覚が伝わってくるようで、すぐに絵巻物と繋がったんでしょうね。
ちなみに、私は同じウェス・アンダーソン監督の『グランド・ブダペスト・ホテル』を観たときに「絵本みたい!」と言ってるので、その流れを汲んでの「絵巻物のよう!」という部分も少なからずありますが。
独特の日本的世界観
作品内で構成された世界観がとても独特でした!
日本のようです少し違う、でも所謂「ナンチャッテ日本」とは一線を画すような不思議な世界観。
大きく2つの“日本”が混ざり合って構成されているように感じました。
1つ目は「古き良き日本」です。
昔ながらの日本の寺社や相撲といった伝統的な文化の部分、太鼓や鐘の音のお囃子や、背景の壁に掛けられたポスターの絵柄など。
なんとなく、我々日本人が見て「なんか良いなぁ〜」と思うような要素が1つ目。
2つ目は「日本の現代都市」です。
現代というよりは、高度経済成長期前後の都市というイメージを私は持ちましたが、開発や拡張を続ける日本の姿です。
成長を続けて豊かになると同時に、政治家の権力UPや公害問題が発生するような日本です。
この2つが合わさって、色々な物が混ざった独特の日本世界観が生まれていました。
個人的には、この混沌としつつもどこか整然とした感覚、好みでした!
言語を使った演出
複数の言語を混ぜた作品で、それが上手く成功していました!
映画を実際に観るのが一番ですが……
例えば、主人公の少年は日本語を話します。でも犬達は犬語(=英語)で会話します。だから、観客という第三者は字幕を通して会話の内容が分かりますが、登場人物達にしてみれば何を言ってるか分からないと。
人間と犬語の間を言語で分けて描いているようでした。
また、その他の部分でも映画の中で「通訳を介入させる』という形をとって内容を伝えたり、劇中に映る文字情報を効果的に活用したりと、「言語・文字」の違いを上手く用いていました。
私は日本語で何を話しているのか分かるし、英語も単語くらいは分かりましたけど、両方とも分からない母語話者の鑑賞者だとより楽しめたのかな〜と思いました。
登場人物・登場犬
作品に登場するのはほぼ人間と犬だけ。それぞれのキャラ立ちがしっかりしていて見やすかったです!
まず名前が良いですね!
主人公の少年は小林アタリ。そして彼が出会う犬の名前はチーフ、キング、ボス………と名前が覚えやすい!
よくある昔話のように簡単で、かつしっかりと繋がりのような部分が感じられて観やすかったです!
また、実写ではなく人形なので、キャラクターの性格などを姿に映したり、外見の特徴を誇張したりしていて、これまた「犬」だけどそれぞれしっかりとしたキャラになっていました。
この部分、日本のアニメと似ているなぁ〜と。
ちょっと難しい物語
ストップモーションの人形劇ということで、内容もそれに合うような軽い感じを想像していましたが、実際に観てみたらどちらかというと難しい部類でした……。
全体的なストーリーの主軸にあるのは「勧善懲悪」とか「犬との友愛」とかなんですけど、それを脚色している物語がなんとも難しいというか、想像違いだったというか、内容を理解するには、子供は難しい気がします。
でも、大人なら十二分に楽しめるのではないかと! 実際、私も観ながら色々と考えましたし、難しかったとしても、ファンタジー調の物語だから抵抗感なく観られます!
雰囲気、そして役者
最初に書いたとおり、雰囲気が好みです。
独特な日本風世界観と書きましたが、そこに音楽な合わさって非常に“良い感じ”の雰囲気でした!
現代と昔の日本の融合というか、色々なものをゴッチャにした感じ。どこか『攻殻機動隊/GHOST IN THE SHELL』の世界とも似ているような気がしました。
また、キャストが豪華なんですよ!
渡辺謙さんやオノヨーコさん、野田洋次郎さんさなどが声を当てています。(まぁ声聞いただけじゃ分からないんですけどね 笑)
ただ、スカーレット・ヨハンソンさんも出演しているのですが、彼女の声は聞いただけですぐに分かりました!
日本人キャストたちの声!特別映像
ネタバレあり感想
以降、映画本編のネタバレあり
ネタバレあらすじ&感想
序盤
[序幕─少年と首無し侍]
かつての日本における犬と人間の戦いの様子が屏風や絵巻物風に語られる。
悪大名コバヤシを打ち破ったのは少年侍。しかし犬達は人間のペットと成り下がり、けれど繁栄をしていった。
[前置き]
和太鼓とお囃子が響き、タイトルバック。
今から20年後の日本列島。
ウニ県メガ崎市では犬が増加しすぎて、伝染病などにより人間への影響が心配される事態に。
小林市長は犬達を、ゴミを捨てている離れ島に強制収容するべきだと主張する。
一方、科学党は治療の可能性を示しながら反論をぶつけた。
結局、市長は「ゴミ島法」として犬の強制収容を始める事を決め、その第一号に自身の飼い犬スポッツを送ることを表明した。
本編映像
6ヶ月後、犬ヶ島。
犬は増加し、ゴミや残飯を漁って生活していた。
そんな中、レックス、ボス、キング、デューク、チーフの5匹は「ボス犬軍団」として集団で行動していた。
本編映像
そんなある日、島に一機の小型飛行機が不時着した。
第一部:リトル・パイロット
ボス犬軍団は墜落した飛行機に近づき、中の人間を助けた。乗っていた少年の名前は小林アタリ。彼は自身の愛犬スポッツを探しに来たという。
翌日、ボス犬軍団とアタリはスポッツを探しに。
人気者だったスポッツの噂はすぐに聞けたが、彼は檻の扉が開かず、中で白骨となっていた。
《回想》
小林アタリの回想。
3年前、事故にあって両親を亡くしたアタリを引き取ったのが、遠縁の小林市長であった。彼はアタリの警備犬としてスポッツを飼ったのだった。
2人は耳につけたイヤホンとマイクで会話をするよう市長から言われていた。
《回想 終》
スポッツが死んだ事を知り、アタリは島から出ることに。飛行機を修理していざ飛び立った瞬間、ボス犬軍団の一匹がある事に気がついた。
ある一匹が檻から白骨の名札を持ってきており、そこに書かれていたのは「スポーツ」という名前だったのだ。
アタリに伝え、再びスポッツを探す事になった。
一方、市長はアタリを連れ戻すため、専属の特殊部隊を犬ヶ島に投入。ボス犬軍団がアタリを誘拐したとして、多少手荒な事をしてでも連れ帰るよう指示する。
そこに加えられたのは、かねてより計画されていたロボット犬だった。
なんとか市長タスクフォースを撃退したアタリとボス犬軍団。
その夜、チーフは美しきメス犬のナツメグと出逢う。彼女は曲芸犬として生きていたらしかった。
メガ崎市のとある高校。
新聞部の記者達は小林市長の異常に薄々気が付き初めており、中でも留学生のウォーカーは誰よりも強い正義感で不正を暴こうと意気込んでいた。
第二部:スポッツを探せ
新聞部はアタリが乗っていた飛行機のブラックボックスを入手する事に成功。それを使って「死亡」と発表されていたアタリが生きていると世間に訴えた。
科学党では犬の伝染病を見事に治す薬を開発する事に成功。しかし市長執事の差金で軟禁され、最終的に毒殺されてしまった。
一方、犬ヶ島ではアタリ達が指導者犬とも言えるような博学の犬に会い、助言を貰っていた。 そしてボス犬軍団と一緒にスポッツを探す為、犬ヶ島の最端を目指して歩みを進める。
本編映像
そんな中、輸送用ケースに乗って移動していたアタリ達は途中で別々の方角へ。
アタリとチーフは無事に逃れたものの、その他は焼却炉へと進んでいってしまう。
2人きりになったアタリとチーフ。
アタリは傷と汚れでボロボロになったチーフを洗ってやる事。すると、チーフの黒かった身体が綺麗に白くなり、スポッツと瓜二つになったのだ。
第三部:ランデブー
焼却炉に向かったボス犬軍団は生きており、再びアタリ達は全員集結。しかしそこにまた追手が落ち着いて来た!
そこに、アタリ達を助けに現れたのはスポッツだった! 彼は持てる力を使って追手を攻撃していった。
《回想》
スポッツの回想。
犬ヶ島に連れてこられたスポッツは檻を開く術を持ち合わせていなかった。檻の周りには時々犬達が近づいてきて、「共食い」をする恐ろしい犬達の様子を話して聞かせた。
ある夜、スポッツの檻を取り囲んだ人相の悪い犬達。彼らは「共食い犬」としてとして恐れられる犬達だった。
スポッツを檻ごとアジトへ連れ帰った彼らは、共食いの噂が誤解だと釈明。そしてスポッツは彼らのリーダーとしてそこに留まることを決めたのだった。
《回想 終》
追手から逃れる為、川に飛び込んだアタリやスポッツら。そしてチーフとスポッツが兄弟であった事が明かされるのだった。
一方、市長は遂に、毒物を散布して犬たちを殺す計画をしている事が判明。
アタリ達は犬ヶ島を脱出し、市長を止めるべく舟の建造を始める。
その頃、ウォーカーは科学党の研究員の1人だったオノ・ヨーコに接触し、伝染病を治すワクチンの最後の1本を入手した。
第四部:アタリのランタン
市長は不正選挙で再選し、再びメガ崎市の政治を操ろうとしていた。
そこへ反対を唱えたのは、高校の新聞部を主体とする学生反対集団。ウォーカーは先頭に立って市長を非難する。
そこにアタリが登場!
会場は驚きに満ち、犬ヶ島で何があったのかアタリは語り始める。そして、俳句を一句詠む。
アタリの演説に心をうたれた市長は「ゴミ島法」を撤回。執事が独断で毒物を散布し犬を処分しようとするが、スポッツらが止めることに成功。
市長や執事らは逮捕され、アタリか新しい市長を引き継いだ。
1ヶ月後。
スポッツの記念日が建設され、犬と人間のいい関係が築かれていた。
エンドロール。
最後まで読んでくださり、
本当にありがとうございました!!