※ネタバレなし。
※画像は予告映像のキャプチャです。
2017年7月9日
ライフ
(原題:Life)
【評価:3.8/5.0】
【一言】
純粋な地球外生命体《エイリアン》映画。
国際宇宙ステーションの乗組員と映画館の観客。
彼らが抱くのは────純粋な興味と好奇心。
我々が感じるのは───戦慄するほどの恐怖。
これは「娯楽」か、「警鐘」か………。
目次
ストーリー
人類が火星で採取した土から発見したのは───休眠状態の生命体《ライフ》だった。
国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する研究チーム6 人は実験をして《ライフ》の生命活動を復活させることに成功した。
世紀の発見に歓喜する6人だったが、フトした瞬間、ISSは恐怖の監獄へと姿を変える。《ライフ》が襲い掛かってきたのだ。
予告動画
作品メモ
監督:ダニエル・エスピノーザ
製作:スカイダンス・プロダクションズ
キャスト:ジェイク・ギレンホール, 真田広之 and more.
上映時間:103分
日本公開:2017年7月8日
配給:ソニー・ピクチャーズ・エンターテイメント
公式サイト
感想
全体感想
全体的なストーリーはどちらかといえば単純明快。しかし、リアルな設定と襲ってくる恐怖が話を面白くしています。
様々な種類のSF宇宙映画が公開される中でも、本格的で本物的なエイリアン・ホラーでした。
決して、「最高のSF映画」とは称せないですが「とても興味深いSF映画」でありました。
火星で発見された生命体《ライフ》。“それ”がSF映画よりも科学映画寄りの、現実味ある生態が設定されていてとても面白かったです。
フィクションを具現化した姿のような人間型エイリアンやタコ型エイリアンではなく、細胞を基本とした「生命体」という部分がとてもリアリティありました。
牢獄。予告動画で言っていたキャッチコピーがとても見事に表していたと思います。
この痛みは地球に──届かない
この絶望は地球に──届かない
このライフは地球に──届けてらならない
宇宙ステーションという外界から隔絶された密室は人類を閉じ込めて恐怖に落とし込む“檻”として描かれてきました。今回もそうですが、その状況をリアルに描くとともに、反撃の糧にしようとしているところが好感持てました。
恐怖。エイリアン映画特有の怖さをしっかりと描いていました。そして、今までの映画ではない要素(?)というか方法(?)を用いていた点が新鮮で、新しい怖さを感じさせてくれました。
そして痛み。『砕く』というのが斬新で、しかも人間の痛みを湧き上がらせる上手い描き方だと思いました!
少しだけ残念な部分も。
まずはキャストさんたち。特に大好きな俳優ジェイク・ギレンホールが主役と聞いて楽しみにしていたのですが、彼独特の演技が光るわけではなかったです。
それから無重力描写。頑張ってはいたと思いますが、やはり少し違和感を感じてしまいました。
とても面白い、興味深い、怖くて恐ろしい、痛々しいSFホラー・エイリアン映画でした!!
それにしても、やはりハッピーエンドって気持ちいいですね♪(特に今回は露骨じゃなかったのが良かった!)
エイリアン・ホラー
宇宙船を舞台にしたエイリアン・ホラーの醍醐味というか、面白い所といえば幾つかありますよね。代表的なのは以下でしょうか?
・外界と完全に隔絶された密室状態
・酸素や水など生命活動への制約
・移動や船外活動など行動への制約
・どこに潜んでいるか分からない恐怖
・何らかの残虐な死因
今回の映画ではこれらが手を抜かずにしっかりと描かれます。だから、「本格的なエイリアン・ホラー』と言いました。
でも「これだけじゃ新規性がなくて、他の映画と一緒じゃん!」と思っているそこのあなた! 大丈夫です。確かに新規性という点ではあまり優れていないかもしれませんが、上のポイントをしっかりと昇華しているのです!
あんまり言うとネタバレになるので控えますが、今までのエイリアン・ホラーでありながら、しっかりと今作らしい面白さを出しています。
《ライフ》のリアルな設定
この部分についても、映画の中で少しずつ描かれていく部分なので、ネタバレを避けつつ書いていきたいと思います。
まず、最初にも書いたように一番は『形』でしょうね。フィクションに登場するような「人間の姿をしたエイリアン」や「タコ型の触手を持つエイリアン」ではなく、小さな細胞で形成された姿というのがリアルでいいです。
エイリアンと呼ぶとどこか知的なイメージですが、今作ではまさに『生命体』という言い方がとてもイメージに合致した呼び方だと思いました。個人的ではありますが、『生命体』という言い方だとまだまだ原始的な生物というイメージがあるので。
火星で発見された《ライフ》なわけですが、その時点でもリアリティありますよね。少し前にNASAの探査機キュリオシティが火星で水の痕跡を発見しました。もしかしたら、採取した土の中に微細物の痕跡があるかもしれません。
今回の《ライフ》の姿も微生物的な細胞ですし、現実からかけ離れたフィクションじゃないという部分がとても良いです。
あとは、ISSのクルー達が《ライフ》について意見や仮説を立てる中で言われる事もリアリティがあります。突拍子のないことを言うのではなく、《ライフ》の動きやその他からしっかりと推測しているのが科学者らしくて良かったです。
この存在は??行動原理はなにか?生命維持の方法は?………etc.
その他の部分では映画の本質的な内容に関わってくるので、ここでは書かないことにします。
是非、リアルな生命体《ライフ》を目撃していただけたらと思います。
痛みと恐怖
怖かったです。正直、もう少し軽めの知的エンターテインメントかと思っていたら、意外とガッツリで驚きました。
恐怖の部分については最初に『エイリアン・ホラー』として語ったので、ここでは痛みの部分について書こうと思います。もちろん、ネタバレは無しで。
痛みですが、予告編で『砕く描写』がありましたよね。あれが痛々しいのなんのって。人間の(観客の)痛覚を見事に刺激する描写で、素晴らしいと思いました!
他の映画のように噛み付いたり、捕食したりするだけだと、恐怖は生まれるものの、痛みはあまり湧き上がりません。しかし、砕くという描写によって音や苦痛の表情、グニャグニャに折れた骨などが一層痛みを想像させます。
こういう点では、リドリー・スコットの『エイリアン』はこの部分もクリアしてます。それは、「フェイス・ハガー」───エイリアンの卵から飛び出して人間に寄生するアレです。あの描写は息苦しさとか、体内に入る恐怖とかが斬新で新鮮で怖くて痛いです。
(『エイリアン』より)
残念な部分
『キャスト』と『無重力描写』の2つです。
まずは『キャスト』の方から。
個人的な部分しては、もっとジェイク・ギレンホール独特の雰囲気を存分に発揮した演技をして欲しかったという点。『ナイトクローラー』で見せたあの恐ろしい奇怪な雰囲気を期待していたので残念です。
それから真田広之。日本人宇宙飛行士役としての出演です。………まぁ、悪くはなかったですが、やはり微妙です……。あまりSF映画に向かないんですかね? 特にあるシーンが個人的には最悪レベルでした。
続いて、『無重力描写』。
これは悪くはなかったのですが、部分部分出来になってしまいました。重力効果100%の地球上で、重力効果0%を演じるのは難しいとは思いますが、もう少しうまく描いても良かったのかなぁ〜と。
他のSF映画と違って、舞台の時代は現代ですから「重力制御装置」とかは開発されていないわけです。それなのに全員同じ向きで立っていたりした部分の一部は違和感がありました。それから、無駄にカメラをくるくる回転させるのもやめていただきたい!(笑)
それに、無重力だとドアとか壁を叩くのにもう少し抵抗があるというか、違和感を感じるような……。
それでも、宙に浮かんだ水や血液の描写は綺麗でしたし、プラスマイナス=ゼロってところですかね。
無重力描写とは関係ないですが、地上との交信について一点。交信する描写はもちろんあるのですが、地上の管制センターがほとんど映らないのがとても違和感に感じました。
綺麗なエンド
『ハッピーエンド』とか書きましたけど、ネタバレじゃないのでご安心を。確かにハッピーとまでは行きませんが、良いエンディングでした!
やっぱり、「こうでなくちゃなぁ〜」という良さ(?)がありました。
自分は結構好みのタイプの終わり方で、スッキリ気持ちよかったです!!
まあ、ラストシーンの部分なので薄い感想になりました……すいません(笑)
映画はとても面白くって、痛々しい作品でした。ぜひ、観てみて、体感するといいと思います!
以降、映画本編のネタバレあり
ネタバレあり感想
ネタバレあり感想①
もう、いつ生命体《ライフ》が本性を現すのかドキドキ、ビクビクしながら観ていました。だって、予告編ではいきなり手に絡みついて骨を砕くシーンがあったじゃないですか。
だから、実験中に指を差し伸ばした時も「ヤバイって、絞められるぞ! マジでやめとけって!」とビクビクしてました(笑)
とにかく焦らしが長いです(笑)
上に挙げた指を伸ばすシーンの他にも、実験室でエラーが鳴って「きたか!?」と思ったら人為的ミス。この焦らしがまた余計にいい効果なんですよねぇ〜(笑)
で、遂にその時が訪れます。
黒人科学者の手に《ライフ》が巻き付きます。一気に絞め上げるのかと思ったら、ジワジワと最初は様子を伺うんですね。
あとは、体内に入ったときも。動き方がゾクゾクじました。
絞められ姿を考えて、一人で心臓をバクバク鳴らしていました。
ネタバレあり感想②
隔離の仕方が雑だなぁ〜って。隔離しようとするマニュアルは良いのですが、実験室から助けだろうとしたりして。
特に、最後の方の場面で籠城しようと決めたにも関わらず、自分の足に《ライフ》を忍ばせる黒人科学者には正直、イラッとしました。
また、実験室で火炎放射器(?)で焼き払おうとした場面も疑問がたくさん。あれって、焼いても船とか設備って壊れないんですかね?
それに、火星の厳しい条件下で生き延びているんだから、焼いたくらいじゃ殺せないのような………。
あとは、船外で宇宙服に絡みつかれた場面。まず、溺れそうになる描写は素晴らしく良かったです。ヘルメット内に徐々に水が溜まっていく溺死への恐怖はなかなかでした。
でも、もっと早く決断できたような。船内に戻ろうとしないで、そのまま宇宙空間へ身を投げ出せばもっと良い結果になったと考えてしまいます。
なんか、怒りと微妙な部分を書いた感想になったので、もう一つだけ。真田広之ぃぃぃぃぃぃ!
最初の方はよかったです。日本人クルーとして日本語を喋ったり、冷静な姿でコンピュータいじる場面は。
でも、出産に立ち会うシーンはどうした!? あんなにも重要伝統的建造物群保存地区大切なイベントなのに、あんなにも無感情で無表情で応援できないですよ、普通は。
ネタバレあり感想③
《ライフ》の特性、生態を少しずつ考えながら、最善の隔離or駆除方法を取ろうとしたのは良かったです。
まず最初は実験室での隔離及び焼却駆除。
失敗したものの、《ライフ》の知能(?)と生命力の強さ、恐ろしさを描いた場面でした。結局、スプリンクラーを通って船内へ。
次に船外での隔離
これは、上にも書きましたが宇宙空間にうまく投げ出せれば良かったです。けど、乗組員の誰かが言ってましたが体内に酸素を溜めるのであれば、半端な距離では再び戻ってきてしまいます。
そして、ジェット噴射での駆除。
駆除というより、宇宙空間へジェットの勢いで飛ばす作戦ですね。これは素直に頭いいと思いました。失敗したものの、とても効果的な方法だと思いました。
打つ手をなくして、籠城&脱酸素作戦。
これはいいと思ったけど、「食料とか持ち込まないの?」って思いました。まぁ、この作戦も親バカな黒人科学者によって失敗でしたが。
もう駄目かと思ったら、ソユーズの救いの手が。
これは、救出ではなく隔離作戦の一部と知って驚き、また凄いと思いました。地球と人類を守ることを第一に考える方法だなと。しかし、真田広之のせいでソユーズ船内にいた乗組員までもが犠牲になるという事態に。
最後は脱出船を利用した方法。
よくある常套手段ではありますが、誘き寄せるのに酸素ランプを使ったのが良かったです。まぁ自分はこの方法を最初に思いつきましたが。
で、物語はようやくハッピーエンドへ…………
ネタバレあり感想④
見事なハッピーエンドでしたね!……………嘘です。最高のバッドエンドでした。
自分はバッドエンド大好き派なのでこのラストもとても大好きです!
騙し方が上手いなぁ〜と。だって女性の方が状況報告の録音とかしていかにも地球に帰還するような描き方でした。一方のギレンホールもモニターに映った進路では大気圏突入経路からそれてましたし。
で、蓋を開けてみたら…………あら不思議、「私たち入れ替わってたたーーー!!」ですから。
やはり、散々怖がらせておいて、救われそうな場面を見せてからのバッドエンドは最高です!!
最後まで気の抜けない映画で、見事に最後も裏切られた、面白くて痛怖いエイリアン・ホラーでした!
最後まで読んでくださり、目を通してくださり、ありがとうございました!!
真田広之のせいでソユーズ船内にいた乗組員までもが犠牲になるという事態に。
↑「真田広之」が演じる「Sho Murakami」のせいであって、真田広之じゃないから(笑)
批評書くんならちゃんと書きな