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【美術展】『奇想の系譜展』:「スーパーフラット(村上隆)」で描き出された奇想の博物図鑑!

2019年2月28日訪問

奇想の系譜展
江戸絵画ミラクルワールド

『奇想の系譜』展

 
【一言】

たくさんの動植物が描かれた、さながら奇想の動物園&植物園!
「対比」と「縦のライン」が印象的な日本画!

日本文化に脈々と流れる「スーパーフラット」の”本物”を観れたし、岩佐又兵衛と歌川国芳の妖怪退治を観られたのが超うれしい!

 
【Twitter140文字感想】

 

 

 

 

展覧会説明

 

美術史家・辻惟雄氏(1932〜)が、今から半世紀近く前の1970年に著した『奇想の系譜』。そこに紹介されたのは、それまでまとまって書籍や展覧会で紹介されたことがない、因襲の殻を打ち破り意表を突く、自由で斬新な発想で、非日常的な世界に誘われる絵画の数々でした。…[後略] 本展では『奇想の系譜』で取り上げられた6名の画家、岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳の他に白隠慧鶴、鈴木其一を加えました。…[中略]…現代の私たちの目を通して、新たな「奇想の系譜」を発信することで、豊かな想像力、奇想天外な発想に満ちた江戸絵画の新たな魅力を紹介します。
奇想の系譜HP

奇想の系譜展 プロモーション動画

会場:東京都美術館
会期:2019年2月9日~4月7日
料金:一般 ¥1,600
公式サイト:こちら

 

 

 

 

村上隆と辻惟雄

 

村上隆と辻惟雄

※左:村上隆 / 右:辻惟雄
 

美術史家・辻惟雄氏が著した『奇想の系譜』。
◆日本を代表する現代美術家・村上隆氏。
 一見すると関係皆無なようにも思えますが、非常に密接に関わり合っています! それが、本ブログ記事のタイトルにもある「スーパーフラット」という概念です。

 今回の展覧会開催に際して、応援団の一人としてコメントを寄せています。(その他のコメントはこちらから。)

奇想の系譜

 

 

「村上隆」とその評価

村上隆

 そもそも、村上隆という現代美術家について。
 サブカルチャーをアートに押し上げ、ベルサイユ宮殿で個展を開催し、ルイヴィトンとコラボする等で世界的に高く評価されているアーティスト。ただ、その作品や作風に関しては鑑賞者によって好き嫌いが激しいですが。

 村上さんが運営する会社「カイカイキキ」に紹介が掲載されています。

「スーパーフラット」セオリーの発案者にしてそのセオリー代表作家。アーティスト、キュレーター、コレクター、映画監督、有限会社カイカイキキ創業者。
カイカイキキ

村上さん自身、自分の評価をよく分かっている方なので、たった短いバイオグラフィが掲載されているに留まります。

 そして、(訳わからないアニメ調の作品を発表する)村上隆さんが海外で高く評価されている理由が、『奇想の系譜』の著者・辻惟雄さんにあるのです。

 と言うのも、村上さんは自身を「日本画の歴史と潮流」の一部にしっかりと位置づけているんです。その中で提唱したのが「スーパーフラット」という美術概念で、その説明の援用として用いたのが、美術史家・辻惟雄氏だったわけです。
 なお、村上さんは東京藝術大学の日本画科において初の博士号を修得した方でもあります。

 村上隆さんについて語りだすと、それだけで終わってしまうので、人物に関してはこんなところで(笑)

 

 

「スーパーフラット」という美術概念

村上隆「スーパーフラット」

 

 上述した村上隆さんの説明で、彼と辻惟雄さんの関係の説明は簡単に出来たと思います。さて、次は何度も登場する「スーパーフラット」とはなんぞや? というお話。

 「スーパーフラット」は村上隆さんが提唱する美術概念で、簡単に言ってしまえば「日本は社会も美術も全て超2次元的」という考え方のことです。

 大日本印刷(DNP)さんが運営するWeb美術用語辞典「artscape」に詳細な説明が解説されています。

平板で余白が多く、奥行きに欠け遠近法的な知覚を拒むなど、伝統的な日本画とアニメーションのセル画とに共通して見られる造形上の特徴を抽出した概念。現代美術の文脈に、日本特有のオタク文化の美意識を導入するために用いられることが大半…[後略]artscape

まぁ、”平たく言えば”、日本画とオタク文化とを繋ぐような概念でしょうか。

 これだけだと具体的な部分は分からないので、『リトルボーイ―爆発する日本のサブカルチャー・アート』という村上隆さんの著作(Amazon)から引用します。

日本のいまはsuper flat。
社会も風俗も芸術も文化も、すべてが超2次元的。この感覚は日本の歴史の水面下を澱みなく流れつづけ、とくに美術にわかりやすく顕在化してきた。…[中略]…日本人のオリジナルコンセプト、「super flat」。村上隆(2005)「SUPER FLAT TRILOGY 拝啓 君は生きている」『リトルボーイ―爆発する日本のサブカルチャー・アート』

つまりは、「超2次元的」に集約されるのかもしれませんが、要するに平面的なイメージが多いということだと私は解釈しています。

 ということで、村上隆さんと辻惟雄さんの関係、そして「スーパーフラット」という概念について簡単に紹介しました。かなりスペースを割いた印象もあるものの、かなり重要なことだと思います。

 

 

 

 

美術展の感想

 

 ようやく感想です!(笑)
 行ったのは2月28日の木曜日だったので、感想書くのが随分遅れました。「来場者10万人突破」というニュースと目にしましたが、本当に凄いですね。

 いつも通り、感想を書いていきたいと思います!

 私は日本美術は苦手です。
 日本画とか仏像とか陶器とか、諸々を含めて日本美術はあまり好きではありません。なので、今回の目玉に据えられている「伊藤若冲」とかも大して興味はないです。それに、日本美術の展覧会に行ったのなんて超久しぶりです(笑)

 ただし、「苦手」にも種類がありまして(笑)
 絵師や彫刻師個人には全く興味ないのですが、描かれた「主題」は好きです。妖怪退治とか絵巻物とか。なので、そういう部分で今回は楽しみました!

 本展を観にいった理由はたった1つ。
 「”スーパーフラット”を鑑賞し、村上隆さんが援用する辻惟雄先生が推す作品をこの目で観る」ということでした。

 なので、長々と村上隆さんについて説明したわけです。なので、今回は日本美術という視点ではなく、現代美術的な視点で展覧会に臨みました。
 この点に関する感想としては、「確かにどれも平面だな」ということ。奥行きが無いというか、どこか写真のコラージュ的にも思えるように、面に広がっているんですよね。

 確かにどれも凄い作品でした。
 天皇に献上され、皇居の美術館・三の丸尚蔵館が所蔵する作品とかはなかなか観られないでしょうから、本物を観れたというのは非常に嬉しい!

 日本美術に詳しいわけではないので分かりませんが、当時の作品から比べたら凄いし、超絶技巧で「奇想」というのも分かる気がします。
 しかし、「奇想」を言われると、やはり西洋美術における奇想を連想してしまうので、期待とは違ったという感も否めなかったです。

 若冲の「動植綵絵」ではないですが、とにかく「生き物」が多かったです!
 鳥獣・木花草・幻獣・人間と、そりゃテーマにするなら当然のモティーフですが、それが何とも目立っていると感じました。まさに動物園!

 当時の日本なので、外国の動物は噂や伝聞を元に描いたのでしょう、極楽浄土図に登場しそうな奇怪で異形な格好をしていて、面白かったです!

 印象的だったのは、「対比」の構図が非常に多いこと。屏風などは対にして飾るため、その構成になるのは必然的なのかもしれませんが、こうして何枚もの作品で対比が使われると、自然と心に残ります。

 あとは、これまた当然ですが、やっぱり「縦のライン」が綺麗ですね!
 掛け軸とかなら当たり前なんですが、この「縦」の線が綺麗に描かれている作品って、個人的に大好きなんですよ!

 「主題」という点で一番期待していたのは、「歌川国芳」です。

 以前に行った『酒呑童子絵巻展』もそうだったのですが、妖怪退治とか英雄譚とかが大好きなので、 もともと国芳の浮世絵はネットで散々目にしていました(笑)
 でもやっぱり、本物を観られるのはいいですね!

 

 

 

 

 

展示作品と感想

 

 

 展示されていた作品を挙げながら、感想を簡単に書いていきます。まぁ何度も言うように日本美術は苦手なので、大した感想は書けないし、偏ること必須でしょうけど(笑)

作品リスト:PDF
都美公式サイト:こちら
展覧会特設サイト:こちら

 

 

伊藤若冲《幻想の博物誌》

◆生没:1716-1800

京都の青物問屋の長男として生まれ、40歳で家督を弟に譲り画業に専念。40代前半から約10年をかけ完成させた「釈迦三尊像」3幅と「動植綵絵」30幅を相国寺に寄進した。写実と幻想を巧みに融合させ、濃密な色彩を使い精緻に描かれた花鳥画から、墨の濃淡を自在にあやつり、確かな画力を駆使して描かれた水墨画まで、個性的で多彩な作品を数多く遺している。
奇想の系譜HP

 

 

作品名旭日鳳凰図
制作年:宝暦5年(1755)
所蔵:宮内庁三の丸尚蔵館

伊藤若冲『旭日鳳凰図』

 解説によると、有名な「動植綵絵」の2年前に制作された作品だそう。まず、鳳凰と旭日という描かれたモチーフが縁起物すぎて大好きです。
 そして、さすが「鳥を描く天才」ですね、本物を間近で見ると、羽の軽さとか足や爪の質感とかが本当に丁寧でひしと伝わってきます。

 少し、手塚治虫の『火の鳥』のエピソードを思い出しました。

 

 

 

作品名旭日雄鶏図
制作年:不詳
所蔵:米国・エツコ&ジョー・プライスコレクション

伊藤若冲『旭日雄鶏図』

 縦のラインがとても綺麗! 私、日本美術で特にそうなのですが、「縦のライン」が綺麗な作品が大好きなんです!
 背筋ピンと伸ばした鶏の堂々たる姿がとても格好いいし、背景の朝日も真ん丸で素晴らしいですね! 今にも高い声で鳴きそうなこの場面がとても気に入りました!

 松の造形も良い!
 若冲は動物の絵が評価されているような印象ですが、個人的には植物も非常に綺麗で細かくて好きです!

 

 

 

作品名糸瓜群虫図
制作年:不詳
所蔵:京都・細見美術館

伊藤若冲『』

 これもやっぱり「縦のライン」です。まぁ、日本画は屏風や掛け軸に描くので、必然的に画面構成が縦になるのでしょうけど。
 垂れ下がるヘチマのなんとも言えない伸び具合も好きですが、蝶やバッタなど、何匹も描きこまれた昆虫を探すのも楽しいです!

 

 

 

作品名象と鯨図屏風
制作年:寛政9年(1797)
所蔵:滋賀・MIHO MUSEUM

伊藤若冲『象と鯨図屏風』

伊藤若冲『象と鯨図屏風』

 六曲一双の屏風です。
 解説パネル「陸の王者と海の王者が、互いにエールを交換」しているようだと書かれていました。しかし、私の感想は真逆で「覇を競い合っている」ように映りました。

 墨の色を活かして、鯨は真っ黒、象は真っ白という対比が綺麗でした!

 

 

 

作品名鶏図押絵貼屏風
制作年:不詳
所蔵:個人蔵

伊藤若冲『鶏図押絵貼屏風』

 「鶏の画家・若冲の集大成」と銘打たれたこの作品。六曲一双で12羽の鶏が描かれています。
 確かにこれは凄い。墨の質感や掠れ具合が、羽の質感そのままに表現されているようで、個人的には彩色された作品よりも、こっちの方が好きでした。

 京都文化芸術振興プラン実行委員会が制作した解説ページと解説動画があったので、掲載しておきます。

 

 

 

 

曾我蕭白《醒めたグロテスク》

◆生没:1730-1781

京都の商家に生まれ、伊勢や播磨を放浪した後、40歳を過ぎて京都に定住。18世紀京都画壇の鬼才たちの中でも、最も激烈な表現を指向した。20代後半には、室町時代の曽我派の直系にあたると自称して曽我姓を名乗った。漢画を学び中国の仙人や聖人といった伝統的な故事を多く描いているが、その表現は独創的で狂気に満ち、時に見る者の神経を逆なでし、混沌の渦へと落とし入れる。
奇想の系譜HP

 

 

作品名雪山童子図
制作年:明和元年(1764)頃
所蔵:三重・継松寺

曾我蕭白『雪山童子図』

 今回の展覧会でも楽しみにしていた作品の1つです。
 この作品が、釈迦が前世で修行していた雪山童子の姿で、帝釈天が鬼に姿を変えて試している場面を描いたものです。

 解説にもありましたが、「群青と真紅の対比」が本当に綺麗。鬼の方は現代のイラストと言っても遜色ないくらい鮮やかな青色が使われていて非常に印象的でした。
 ネットの画像だと分かりませんが、斜めから見ると、腕に巻いた金の腕輪が輝くんですよ!

 

 

 

作品名虎渓三笑図
制作年:不詳
所蔵:千葉市美術館

曾我蕭白『虎渓三笑図』

 これ、めっちゃ好きです!
 そして、やっぱり「縦のライン」です。流れ落ちる滝、そして切り立つ山の様子も鉱物の結晶のように見事な縦方向の幾何的な線形で綺麗です。

 ゴツゴツした雄大すぎる自然の中で、橋の上で喋る人間や丸い太陽などがどこか可愛らしくも見えてきます。
 水墨画とかの掛け軸だと、淡く柔らかい印象のイメージがあるので、その点でも本作は記憶に残る一作でした。

 

 

 

作品名富士・三保松原図屏風
制作年:宝暦12年(1762)頃
所蔵:滋賀・MIHO MUSEUM

曾我蕭白『富士・三保松原図屏風』

曾我蕭白『富士・三保松原図屏風』

 こちらも六曲一双の屏風。
 何よりも驚いたのは、「虹」を描くというところ。富士山や三保松原が定番な題材なだけに、より一層に驚きが強まりました。

 作品は綺麗な対比になっていて、「右=虹=円」で、「左=富士山=三角」と図形的なコントラストのおかげで、風景が一段と映えます!

 

 

 

 

長沢芦雪《京のエンターテイナー》

◆生没:1754-1799/p>

京都・篠山の下級武士の子として生まれ、円山応挙に師事。応挙が創った写生画法を忠実にたどる弟子がほとんどを占める中で、大胆な構図と才気あふれる奔放な筆法で独自の画境を切り開き、エンターテイナー的な遊び心ある個性的な作品を多数遺している。
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作品名白象黒牛図屏風
制作年:不詳
所蔵:米国・エツコ&ジョー・プライスコレクション

長沢芦雪『白象黒牛図屏風』

長沢芦雪『白象黒牛図屏風』

 通称「白黒図」と呼ばれる本作。
 これもまた見事な対比の構図になっています。

 凄いし、特筆すべきなのだろうと思い書いてますが、作品自体は好きじゃないです。象と牛の対比という部分に違和感を感じるし、ぶくぶく太った巨体がどーんと描かれているのも、どこか品がないような……

 

 

 

作品名方広寺大仏殿炎上図
制作年:寛政10年(1798)
所蔵:個人蔵

長沢芦雪

 この「大炎上中ですよ!」という雰囲気が伝わってくる、炎の勢いとか強さが伝わってくる黒煙とか燃え上がり方とかが大好きな作品です!

 細かいのは、芦雪自身の署名まで燃えているようなフォントとカラーなのがお気に入りです!

 

 

 

作品名方寸五百羅漢図
制作年:寛政10年(1798)
所蔵:個人蔵

長沢芦雪『方寸五百羅漢図』

 「約3センチ四方の極小空間に、白象に乗る釈迦とそれを取り囲む羅漢たちが描かれる」と解説にありました。
 米粒よりも小さい羅漢の像は、とにかく「凄い」というしかないですよ。

 そして、この作品は村上隆さんにも影響を与えました。村上さんもまた「五百羅漢図」という超巨大な作品を制作発表しましたが、この作品などが元だと言います。

 

 

 

 

岩佐又兵衛《執念のドラマ》

◆生没: 1578-1650

戦国武将・荒木村重の子として生まれ、一族の滅亡後、母方姓「岩佐」を名乗り、京都で絵師として活動を始める。北庄(福井市)に移住し、20余年を過ごした後、寛永14年(1637)、三代将軍徳川家光の娘千代姫の婚礼調度制作を命じられ、江戸に移り住み、そこで波乱に満ちた生涯を終えた。大和絵と漢画双方の高度な技術を完璧に修得し、どの流派にも属さない個性的な感覚に長け、後の絵師に大きな影響を与えた。
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作品名山中常盤物語絵巻 第四, 五巻
制作年:不詳
所蔵:静岡・MOA美術館

岩佐又兵衛『山中常盤物語絵巻』

岩佐又兵衛『山中常盤物語絵巻』

 「源義経伝説のうち、母である常盤御前の仇討ちを題材とした極彩色絵巻」というのがこの山中常磐物語絵巻です。

 何が凄いって、山賊たちが屋敷に押し入り、女性達を襲って、逃走するまでの過程が本当にリアルに描かれています。女は犯され無様な姿を晒すなら「いっそ一思いに殺してくれ」と懇願し、賊は殺したそう。

 とにかく細部まで丁寧で、小さな金の装飾が光って綺麗だし、倒れた屏風にまで細かく絵が描かれています。御前を襲う賊の表情や、女性たちの苦悶の顔とか生々しすぎ!

 

 

 

作品名本性房怪力図
制作年:不詳
所蔵:東京国立博物館

岩佐又兵衛『本性房怪力図』

 好きです!
 感想はそれだけなんですが、左上で岩を持ち上げる坊主の怪力さが如実に伝わってくるし、投げ落とされた岩に右往左往する敵兵士の姿がまた滑稽!

 

 

 

作品名洛中洛外図屏風(舟木本)
制作年:不詳
所蔵:東京国立博物館

岩佐又兵衛『洛中洛外図屏風(舟木本)』

 これは、本物が凄い。
 とにかく細かくて、金の「すやり霞」の合間に見える街や城の様子は、人々で賑わっていてとても細かく綺麗!

 しかし!
 あまりに細かすぎるため、ガラスケース越しに鑑賞するのは不可能。これは観賞用ルーペを持参するか、ネットで高画質画像を探して拡大鑑賞した方がいいですね。(私は後者でした)

 

 

 

作品名伝岩佐又兵衛 妖怪退治図屏風
制作年:不詳
所蔵:愛知・徳川美術館

岩佐又兵衛『伝岩佐又兵衛 妖怪退治図屏風』

 題名が「伝岩佐又兵衛」となっているのは、「他にまったく類題がない画題」だからだそう。要するに、又兵衛オリジナルという説が濃厚なのだそう。

 妖怪退治の題材が大好きな私にとっては、鎧に身を固め、馬に乗る武士たちが、黒雲に紛れて出現した怪異に立ち向かうこの構図だけでご飯何杯でもいけちゃう!
 ただ、妖怪のビジュアルがどこか異国風なのが個人的には少し悲しかったりします。

 

 

 

 

狩野山雪《狩野派きっての知性派》

◆生没:1590-1651

九州肥前国の生まれで、京狩野の狩野山楽に16歳の頃弟子入りし、その後婿養子となる。妙心寺など京都の大寺院のための作画を多く遺した。伝統的な画題を独自の視点で再解釈し、垂直や水平、二等辺三角形を強調した理知的な幾何学構図で知られる。日本で最初の本格的な画家伝である『本朝画史』は、山雪の草稿を元に息子の狩野永納が完成させた。
奇想の系譜HP

 

 

作品名梅花遊禽図襖
制作年:寛永8年(1631)
所蔵:京都・天球院

狩野山雪『梅花遊禽図襖』

 花咲く一本の老梅に、紅葉した蔦。
 異なる季節を1つの画面に詰め込んだ作品です。

 酒呑童子伝説に登場する「四季の庭」もそうですが、季節の移ろいを1つの場所に押し込むのが日本人は好きなのでしょうか? なんとも贅沢ですね!

 

 

 

作品名龍虎図屏風
制作年:不詳
所蔵:個人蔵

狩野山雪『梅花遊禽図襖』

狩野山雪『龍虎図屏風』

 龍は寸墨、虎は彩色で描かれた屏風。
 題材に合わせて、描く材料をこうあって変えることが出来るのかと感嘆しました。イメージ通り、龍はその猛々しさを漂わせているし、虎は美しい毛並みと色が豊かに表現されているし。

 今回の展覧会の中で、初見にして記憶に深く刻まれた作品となりました。

 

 

 

 

白隠慧鶴《奇想の起爆剤》

◆生没:1685-1768

臨済宗中興の祖と呼ばれる禅僧。駿州原宿(現在の沼津市)に生まれ、15歳のときに出家。「不立文字(言葉に頼るな)」といわれる禅宗において、白隠は夥しい数の禅画や墨跡を遺している。職業画家ではない、仏の教えを伝える手段として描かれた一見ユーモラスで軽妙、かつ大胆な書画は、蕭白、芦雪、若冲など18世紀京都画壇・奇想の画家たちの起爆剤となった。
奇想の系譜HP

 

 

作品名隻手
制作年:不詳
所蔵:岐阜・久松真一記念館

白隠慧鶴『隻手』

 白隠の作品は、どこが素晴らしいのか一切分かりませんでした。しかし、この作品だけはコンセプトがしっかりと通っていて、少なくとも「なるほどな」とは思えた作品です。

 解説には、「『隻手音声』とは『両手をたたけば音がするが、では片手ではどうか。それを聞いてこい』という白隠が創出した公条」を視覚的に描いたものだそう。

 

 

 

 

鈴木其一《江戸琳派の鬼才》

◆生没:1796-1858

尾形光琳に私淑した江戸琳派の祖、酒井抱一の忠実な弟子としてしばしば代作もつとめるほどだったが、師の没後は個性的な作風に傾斜していった。自然の景物を人工的に再構成する画風は、抱一の瀟洒な描写とは一線を画し、その奇想ぶりが近年急速に再評価されつつある。
奇想の系譜HP

 

 

作品名夏秋渓流図屏風
制作年:不詳
所蔵:東京・根津美術館

鈴木其一『夏秋渓流図屏風』

 「ビビットな群青」とはまさしくその通り!
 これは本物を観ないとわからないですが、毒々しいまでに真っ青な川の青さが引き込まれるほど深くで濃いことい驚きました。

 また、それ以上に、紅葉した落ち葉のグラデーションが好みでした!

 

 

 

作品名柳に白鷺図屏風
制作年:不詳
所蔵:米国・エツコ&ジョー・プライスコレクション

鈴木其一『柳に白鷺図屏風』

 「縦のライン」が綺麗なのはモチーフが柳だからでしょう!
 淡く茶けた背景と柳の緑の中で、真っ白な鷺の姿が浮かび上がるように映えていて、とても印象的でした!

 

 

 

作品名藤花図
制作年:不詳
所蔵:京都・細見美術館

鈴木其一『藤花図』

 これもやっぱり「縦のライン」ですね。
 そして、私自身が「藤の花」が大好きなんですよ!

 この作品は、藤の花の花びら1枚1枚が丁寧に描かれていて、その紫色のグラデーションがまた大変に美しかったです。下に垂れ下がる様子が本当に綺麗でした!

 

 

 

作品名百鳥百獣図
制作年:天保14年(1843)
所蔵:米国・キャサリン&トーマス・エドソンコレクション

鈴木其一『p』

 「アメリカから初めて里帰りした其一の奇想を代表する作」と解説に。

 まさに「動物園」と評するに相応しい、沢山の動物が描きこまれ、陸の生き物から空を飛ぶ鳥、さらに麒麟等の空想上の生き物まで。これはいつまで観ていても本当に飽きません!
 とても楽しい!

 

 

 

 

歌川国芳《幕末浮世絵七変化》

◆生没:1797-1861

江戸本銀町生れ。文政末期「通俗水滸伝豪傑百八人之壷個」シリーズで人気を博す。役者絵の国貞、風景画の広重と並び、武者絵の国芳として第一人者となった。戯画、美人画、洋風風景画にも発想の豊かな近代感覚を取り込む一方、役者絵や風刺画など、幕府の取り締まりをかいくぐり、機知に富んだ作品で庶民の支持を博した。
奇想の系譜HP

 

 

作品名一ツ家
制作年:安政2年(1855)
所蔵:東京・金龍山浅草寺

歌川国芳『一ツ家』

 解説には「旅人を泊めては殺め、金品を奪っていた老婆。観音菩薩が美しい童子に化け、一晩の宿を頼む」というストーリーの一部が紹介されていました。
 この作品は「浅茅ヶ原の鬼婆」や「一つ家の鬼婆」として有名な伝承でもあります。(妖怪退治物語が好きなので、こういう知識だけは増える 笑)

 とにかく、鬼婆の形相が凄まじいですね。
 ギョロリと目玉をむき出して、口を歪め歯をしばり、旅人の首を掴んで今にも包丁を振りかざそうとしている、衝撃的な場面。
 強盗殺人の決定的な瞬間を捉えた作品ですね!

 

 

 

作品名相馬の古内裏
制作年:弘化2~3年(1845~46)頃
所蔵:個人蔵

歌川国芳『相馬の古内裏』

 この浮世絵は特に有名ですよね!
 右の骸骨「がしゃどくろ」が大きく取り上げられますが、左側にいる人物が主人公です。描かれているのは平将門の遺児で妖術を操る滝夜叉姫で、源頼信の家老大宅光国が退治へ対決する場面です。

 なお、この滝夜叉姫は「酒呑童子」伝説で童子を倒す頼光四天王の1人、卜部季武とも戦っています!(こうして妖怪退治の物語は繋がるんですよ!)

 

 

 

作品名宮本武蔵の鯨退治
制作年:弘化4年(1847)頃
所蔵:個人蔵

歌川国芳『宮本武蔵の鯨退治』

 若冲が描いた鯨と違い、なんだか可愛い!
 キャラクター性があるというか、模様や目がキュートというか!

 宮本武蔵といえば、やはり巌流島での二刀流の戦いが印象的ですが、こうした様々な逸話を観られるはやっぱり楽しいです!

 NHKのびじゅチューン!で放送されていました!

 

 

 

作品名鬼若丸の鯉退治
制作年:弘化2年(1845)頃
所蔵:個人蔵

歌川国芳『鬼若丸の鯉退治』

 「鬼若丸」は武蔵坊弁慶の幼名と言われています。
 比叡山の稚児だった鬼若丸が、古池に潜む化け鯉を短刀一本で退治した様子が描かれています。

 水飛沫を立てる鯉の躍動感と、表情一つ変えずに押さえつける鬼若丸の凄さが伝わってきます!

 

 

 

作品名吉野山合戦
制作年:嘉永4年(1851)頃
所蔵:個人蔵

歌川国芳『吉野山合戦』

 「縦のライン」とかの話ではないです(笑)
 あまりにも縦に長過ぎます(笑) 「相馬の古内裏」や「鯨退治」は紙3枚を横に使ったものでしたが、この浮世絵は縦に繋げているんです!

 画面下部にいる兵僧は横川覚範、塔の上にいるのは源義経の臣下・佐藤忠信です。縦長に描かれた構図がとても斬新だと感じました!

 

 

 

 

作品名朝比奈小人嶋遊
制作年:弘化4年(1847)頃
所蔵:個人蔵

歌川国芳『朝比奈小人嶋遊』

 これはただ単純に、「日本版ガリバーだ!」とひと目見て嬉しかっただけです(笑)

 静岡市美術館で行われた「没後150年 歌川国芳展」では

小人島を訪れた大力の朝比奈。小人の大名行列を、巨体を横たえ、笑みを浮かべて眺めている!

と解説がありました!

 

 

 


 

 

 

 展示内容の紹介は以上です!
 今回の若冲やその他琳派等の日本画と、現代のアニメ作品を融合させた作品の展覧会が以前行われていたので、その感想を掲載しておきます。

 

 いつも買っているポストカードのお土産は、衝撃的な印象だったこの作品にしました。

 

 

 

 最後まで読んでくださり、
 本当にありがとうございました!!

 

2 COMMENTS

まるで『王様と乞食!』村上隆と私の共通点と違い。なぜ東京画廊、山本代表は私を村上隆に匹敵するアーティストと評価したのか? | 札幌市のパステル画家、ジクレー版画家、現代美術家

[…] ンセプトを企画しスーパーフラットの概念を作ったのは村上隆本人です。     辻 惟雄の『奇想の系譜』が近年注目を浴びて来たことを踏まえて、「伊藤若冲という日本美術の傍系と見 […]

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村上隆と私、横田昌彦の何が共通しているのか?東京画廊 山本代表が私を村上隆に匹敵するアーティストの評価した理由。 | 札幌市のパステル画家、ジクレー版画家、現代美術家 横田昌

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