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【美術個展】名和晃平「Biomatrix」:自然物と人工物の中間、機械的で生命体的な作品。

2018年11月17日訪問

名和晃平「Biomatrix」

 
【一言】

名和晃平さんの新作個展です。
自然と工業の融合、人体と鉱物の結合、機械的に“呼吸”する細胞。
気味悪さと美しさが共存するかの作品は、無機でありながらも非常に有機的。

私個人的にはとても好きな作家さんと作品です!

 
【Twitter140文字感想】

 

 

 

 

個展&作者の概要

デジタル画像の「Pixel(画素)」と、生物の最小構成単位である「Cell(細胞)」をかけ合わせた独自の制作概念「PixCell(ピクセル)」をもとに、さまざまな表皮のイメージを生成する名和晃平。素材の使用や技法の新たな開発に、有機的な生体のイメージを交差させ、鑑賞者の視触覚を刺激する新たなビジョンを打ち出してきました。自然も人工物もすべては粒子の集合であるという認識に基づき、固体と液体の区分さえもたない名和の彫刻は、重力や物理の普遍的な法則に従って形づくられます。それは、あたかもDNAのように粒子に読み込まれた情報が、おのずと空間を彫塑する生成プロセスによって特徴づけられています。

(公式HPより)

会場:SCAI THE BATHHOUSE
会期:2018年10月10日~12月8日
公式サイト:こちら

 

 

 

 

全体感想

 

 名和晃平さんの個展「Biomatrix」です。
 会場が上野の奥、上野公園を抜けて藝大を過ぎたあたりの雰囲気素晴らしい小道入り組む感じのところで、初めて行きましたがお洒落な食事処があったりして、とても気に入りました!(展示会場の建物もお洒落!)

 さて、個展と作品の感想を。
 展示してある作品は全部で5点とその数は決して多くはないものの、しかしどの作品もインパクトが強いので強烈な印象を残します。

 今回の個展のタイトルにもなっている「Biomatrix」、人間の腕が見える「Particle-AJMMNN」、丘陵チックな立体が印象的な「Velvet」など。

 名和さんのコンセプトにも「『Pixel(画素)』と、生物の最小単位である『Cell(細胞)』をかけ合わせた」とあるように、作品はどれも自然的で人工的、生命体的で機械的、有機的で無機的に感じました。

 多分、まだ「バイオアート」という分野の概念は曖昧なのだと想いますが(Wikipediaのページも無いし)、名和さんの作品はどこか違う気がします。

 あくまでも私の感想ですが、「バイオアート」って生命体を元に無機的な芸術作品を作り上げる[生命→無機的]というものだと認識しています。
 その一方で、名和さんの作品は無機的な人工物からまるで生命体であるかのような作品を生む[無機→生命的]という順番な気がします。

 だからなのか、どこか親近感を持つような柔らかさがあると同時に、人工物が自然に近づくからこその気味悪さというようなものも感じました。

 「不気味の谷」という現象があります。
 最近何かと話題の「人工知能(AI)」や芸術分野等で見られる心理現象で、中でもロボット工学が有名でしょうか。小説や映画題材にもなってきました。

 単純化すれば「人間でないモノが、人間に似すぎると、人間は嫌悪感を覚える」というもの。

 ロボットを例に説明すると「外見や性能が向上してヒトと類似していく過程で、ロボットに対する人間の好意的な感情が、ある一点で急落し嫌悪や不快を抱く現象」で、グラフが谷のようになる事から名付けられました。

 一応、「不気味の谷」は人間に似ることで生じる現象ですが、本展で並べられていた作品は人間の造形をしていたり、生物を構成する細胞がクローズアップされたようだったりと、これに当てはまる部分があるのではないかと考えました。

(画像はWikipediaより)

 今回展示されていた作品は全て材料が「ミクストメディア」と表記されていました。
 しかし、過去に覚えたことがないほど強く「作品の材料を詳しく知りたい!」と思いました。また仕組みの解説も知りたいと思いました。

 今回は本当に何の材料が用いられているのか分からず、金属なのか他の素材なのか不明。「Biomatrix」に関してはドロドロと流動的に動き、変形しても元に戻る形状記憶(?)的な性格を持っているようにも見えたり。

 一体、何で出来ていて、どうやって動いているのでしょう……(『Biomatrix』に関しては若干説明がありました。)
動画

 全体的な感想はこんな感じです。
 今回の会場は上野でしたが、近くに「寛永寺」があったので行ってきました。日本史の授業で習ったり、大河ドラマ『西郷どん』で登場したりと、有名な歴史の舞台です!

 

 

 

 

展示の紹介

 

 展示作品は全部で4点だったので、全て紹介します。
 「Biomatrix」のみ解説文があったので、そちらも合わせて掲載します。

 

作品名:Velvet #1 (Magma)
制作年:2018
材料:ミクストメディア

タイトルの「velvet」はビロードのことで、織物の織り方です。Wikipediaによれば「柔らかで上品な手触りと深い光沢が特徴」だそう。
 確かに作品はモフモフで触ったら気持ち良さそうです!

 真っ赤なこの作品。光の加減や毛の密度などで赤くなったりオレンジ色をしたりと、まさに「マグマ」のよう。
 丸い球状の塊が集まって構成されている部分もマグマのイメージそのもの。その一方で、どこか気持ち悪さを感じるのも事実です。

 気持ち悪さがどこから来るのか考えると、この形状とか表面の質感とかって菌類──カビとかにそっくり。腐敗した食べ物とかキノコのイメージにもピッタリです……。あと、体の表面にこういう腫れ物が生じる伝染病って多いので、生理的な嫌悪感もあるのでしょうか。

 アニメとかを見ていると顕著に感じますが人体が爆発したりする様子ってブクブク膨れ上がり、膨張した体液が幾つもの球体を作る描写が多いと思います。『エヴァンゲリオン』の使徒とか、『PSYCHO-PASS』の執行シーンとかが挙げられると思いますが、そいういものを思い出しました。
「PSYCHO-PASS」(1分30秒前後から)

 

 

 

作品名:Velvet #2 (Moss)
制作年:2018
材料:ミクストメディア

 「マグマ」の「苔」版ですね。
 「velvet」がビロードだと説明しましたが、ビロードは漢字表記で「天鵞絨」と書きます。そして、その天鵞絨という色があり、深緑のような感じです。今回の作品の色と似ているかもしれません。

 先程「菌類のよう」と表現しました。こっちの『Moss』もそのような雰囲気あるのですが、真っ赤な『Magma』と比べると落ち着いていて、侘び寂び的な、盆栽的な雰囲気があって、好きです。
 形状で見ても、集合体恐怖症的な気持ち悪さが無いと感じました。

 

 

 

作品名:Particle-AJMMNN #1
制作年:2018
材料:ミクストメディア
補足:ダミアン ・ジャレとのコレボレーション作品

 作品名の「particle」は「粒子」の意味ですが、後半の「AJMMNN」が意味不明です。
 衝撃的な造形にまずは目を引かれますが、作品を近くから見ると鉱石のような、金属片のような粒子から構成されているように見えます。

 この滑らかな「肉体感」が凄すぎですよ!
 マネキンとか人形とかでは決して表現できないような、フィギュア的な柔らかさと曲線をもった造形が素晴らしいです!! しかも、このヒトが複雑に融合したようなビジュアルが最高です!! 飛び出した手足が印象的ですが、お尻の割れ具合とか、おへその窪み具合とか、細かい部分がリアル!

 ダンサーのダミアン・ジャレとのコラボということで、もしかしたらダンスの様子等を写し取って立体作品にしたのかもしれません。

(感想は下の作品に続く)

 

 

 

作品名:Particle-AJMMNN #2
制作年:2018
材料:ミクストメディア
補足:ダミアン ・ジャレとのコレボレーション作品

 この作品「影」も凄いです。
 人間のパーツが影になっているという面白さもありますが、作品自体が複雑な形をしている上にグレーなので、真っ黒な影で輪郭とか凹凸が浮かび上がるのが不気味な部分もありながら、凄いと思います!

 ポンペイの石膏遺体像のようです。

 人間が「鉱質化」したりとか、「融合して結合」という描写はSFではおなじみな気がします。有名なオカルト話というか都市伝説で「フィラデルフィア計画」というものがあります。
 ニコラ・テスラが発明した「テスラコイル」を兵器利用すべく米軍が海上で実験を行うも、実験していた軍艦が消失。数千キロ離れた海に瞬間移動し、船内の乗組員は壁や床と身体が溶け込んでいたり、半透明になったりしたとか。
 ……まぁ、この都市伝説を思い出したってだけの話しですけど(笑)

 

 

 

作品名:Biomatrix
制作年:2018
材料:ミクストメディア

本展の中心となる作品シリーズ「LIQUID」(2003年〜)では、シリコーンオイル、金属粉、顔料などを組み合わせた液状素材を使用し、液面に気泡(セル)を発生させています。次々と湧き上がり消滅する気泡———そのひとつひとつは、皮膜をつくる細胞の要素であると同時に、粒子の運動が引き起こす現象の単位となります。電気的に制御された液体素材のプールは、視覚情報を増幅する皮膜となり、細胞のパターンを生成する「Pixel(ピクセル)」の基盤として捉えられます。マグマや血液のように終わりのない循環を続けるシリコーンオイルは、高粘度の特性に従い、鑑賞者の予測を裏切る速度で液面の動きを描きます。細胞を生成する枠組み(マトリクス)のように整然とした配列は、同時多発的に広がる気泡の生成と消滅、そして表面張力の破裂音と共に空間を満たし、変化する視覚情報の連続が鑑賞者の感覚を刺激していきます。

(公式サイトより)

 薄暗い空間の中、地面から煌々と輝く赤茶色の光を覗く人々にシルエットは、火山の火口でマグマを見る観光客のよう。
 次々に浮上する気泡は、なんだか無機質なはずの作品が「呼吸」をしているようで印象的でした。
動画

 格子状に規則正しく区切られた表面は、しかし発生する気泡により段々とその姿を替えていき、不規則な大きさで、されど規則的な円形へと変化します。
 コポコポと気泡が湧き上がる作品の表面は、金属光沢を放ちながらも、液体のように流動的。気泡の出現により波紋の様に広がる円形のシワが、とても綺麗。

 しかし、気泡の出現は規則正しかったセル状の表面を崩し、不規則で不揃いの格子へと形状を変えさせていきます。その様子もまた美しいような、悲しいような。
 不思議なのは、この不揃いのセルがいつの間にか元の規則正しい状態に戻っている点。その方法が全く分かりません……。

 結構、「異様な光景」なんですよ。一面に規則正しく並んだセル状のモノが呼吸するように気泡を発するって。しかも金属的な輝きを放っている機械的なビジュアルなのに、段々と変化する様子はまるで生物のよう。
 本当に不思議な作品で、しかし非常に面白い作品でもありました!


動画

 

 

 


 

 展示内容の紹介は以上です!

 名和晃平さんは有名なので名前や代表的な作品は知っていましたが、こうして実際に自分の目で作品を見ることで受ける感覚的な衝撃が凄いです。
 お気に入りの展覧会でした!

 

 

 


 

 

 

 最後まで読んでくださり、
 本当にありがとうございました!!

 


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