※ネタバレなし。
※画像は予告映像のキャプチャです。
2018年4月26日鑑賞
夜明け告げるルーのうた
Lu over the wall
【評価:3.8/5.0】
【一言】
音楽が踊る!
可愛さが弾ける!
湯浅監督独特のミニマムで揺れ動くようなアニメーションが本当に大好き!
すごく単純な物語だけど、ジワッと心に響く素敵な作品。
ストーリー
小さな海沿いの町には古くから人魚伝説があった。
地元の中学校に通う主人公は友達に誘われてバンドを始めることに。ある夜、練習帰りに少年は人魚の少女に出会う。
音楽が好きなその人魚の少女と仲良くなる少年だったが、人魚を好ましく思わない大人たちが沢山いた。
予告動画
感想
感想外観
湯浅政明監督の作品は好きなのですが、この作品はなかなか都合が合わなくて観れず、ようやく観れました!
ちなみに、「文化庁メディア芸術祭アニメーション部門」で大賞を受賞した作品です!(受賞紹介ページ)
まず何よりも、やはり湯浅監督らしい映像が印象的だし大好きです!
ゆらゆら揺らぐ柔らかい水、ミニマムな身体、奇妙な踊り、独特な生き物……。
凄く不思議だけど、どこか温かみを感じます!
そして本作は「音楽」と「ダンス」が最高でした!
聴くだけで踊りだしたくなるような、なんとも言えない気持ちのいい音楽が使用されていて、ノリノリで観てました(笑)
あと、「歌」も良かったなぁ〜と。歌詞も、歌う人も。
とにかく人魚のルーが可愛い!
外見も然ることながら、彼女の喋り方がもう本当に可愛い! 純粋な好奇心で行動したり、音楽が大好きな所もキュート!
物語の外見は非常にシンプル。
始まりから終わりまでテンポよく進んで分かりやすいです。でも、その中身には深く濃い色々なメッセージや伏線がしっかりと練り込まれていて、楽しめます。
そして、胸にジワッと染み広がる良いお話です。
公開当時から予告編を見ては「ポニョと似てるなぁ〜」と思ってました(笑)
実際に観て、内容に似ている部分があったのも事実です。ただ、『崖の上のポニョ』より本作『夜明け告げる〜』の方が断然面白かったし、良い作品です!
愉快なアニメーション
やっぱり、湯浅監督のアニメーションが最高です!
本作とほぼ同じ時期に公開されたら『夜は短し歩けよ乙女』もまた素晴らしかったです。
『夜は短し歩けよ乙女』予告
さて、そのアニメーション。
軟体動物的というか、落書き的というか。とても簡略化されたミニマムな表現は、映画に滑らかさや温かみを加えているように思います。
生物学法則と物理法則を無視したような身体の動き、関節の曲がり方。ゆらゆら波打つ海や水の表現、あえて細かく描かない落書きの様な生き物。
う〜ん……何と言うか、「すごく良い感じ」なんですよ(笑) 面白いというか、落ち着くというか。
あとあと、湯浅監督ならではの(?)猛スピードで走るシーンが本作でも印象的。
あの溢れ出る疾走感は本当に凄いですよ!
なかなか言葉で表すの難しいんですが、とても気持ち良く見てられる/ファットするようなそんな感覚がします。
あとは、単純に「楽しい」です!!
だって、他のアニメで見られないような斬新な表現が見られるし、普段ならありえない動きをするんですから!
音楽が踊りだす!
本作、とにかく音楽と歌が本当に良かったです!
まず音楽。
これも他のアニメでは中々聴かないような印象の音楽でしたが、とにかくリズム良くて最高にノリノリな音楽ばかりで、本当に楽しかったです!
劇中の人物達がご機嫌なリズムで踊りだせば、観ている私もノリノリで。歌い出せば、聴き入って。
とにかく音楽が流れるシーンでは、足踏みしたくなるほど、センス抜群の音楽でした!
そして歌。
若干ネタバレに触れそうな部分があるので気をつけますが、メロディが素晴らしいと。で、そこに良い歌声が加わるんですよ!
この歌声には聴き惚れましたねぇ〜。本当に良い声!
あと、歌詞が良かった!特に終盤に流れる歌の歌詞が本当に良かった!!
主題歌:斉藤和義「歌うたいのバラッド」
可愛さ爆発!
可愛さが、ルーの可愛さが本当に可愛かった!
とまぁ、「可愛い」を連発しているわけですが、本当に可愛かった……(笑)
まず外見。
ゆらゆら揺れる水で出来た(?)髪の毛が良い感じ♪ 大きくて真ん丸な目が色々な表情を表す様子もまた可愛い!
そして言動もやっぱり可愛い!
人魚のルーは、色々なものに興味や好奇心を持っていて、それが行動力の源の1つ。見るもの色々に驚いたり、喜んだりするのが可愛かった!
音楽が大好きな所とか、友達として仲良くなる所とか。
本当に、何もかもが可愛い………。
シンプルな物語だからこそ
物語は非常にシンプルに感じました。
テンポよく進行していく物語には、煩わしさや面倒臭さが一切なくて、絵本をめくっているように簡単です。
でも、その物語のシンプルさは表面だけの様にも感じました。というのも、中身にはしっかりと「濃く深い話し」や「強いメッセージ」、さらには「伏線」まで込められています。
表面がシンプルだから、その裏に隠れてる濃い部分がとても分かりやすく感じられました。そしてまた、シンプルな物語の積み重ねが、大きな物語を作っていく様子も印象的でした。
何を感じるかはもちろん見る人次第ですが、後半に関しては、私はジワッと胸の中に広がる温かさが心地良かったです。
ポニョ? ルー?
まぁ、正直書く必要ないと思うんですけどね(笑)
本作『夜明け告げるルーのうた』がジブリの『崖の上のポニョ』に似ているなぁ〜というのは予告動画見た時から思っていました。
そして、実際に本作を観てみて、確かに似ている部分や連想させる部分が何箇所かありました。
その点に関しては、やはり宮崎駿監督とジブリが凄いんだと思います。既にやっていた訳ですから。
でも、どっちが“良い作品”だったかと聞かれれば、迷う事なく本作『夜明け〜』を選びます。
だって上でこれまで挙げてきたように、アニメーションや音楽、キャラや物語と何もかもが完成されているから。
そして、子供向けにレベルを落とさない物語であったと思いました。
ネタバレあり感想
以降、映画本編のネタバレあり
ネタバレあらすじ&感想
序盤
動画投稿サイトに自身が演奏したり曲をアップし、称賛のコメントを貰う、足元なる少年。
海辺で祖父(?)と海辺の町で暮らす足元海(カイ)は、友だちと一緒に中学校へ通学する。動画を見た遊歩と、国夫からバンドに誘われるが、「ただの暇つぶし」だと誘いを断る。
この町には人魚伝説があり、大きな岩(断崖)の裏側に「人魚島」と呼ばれる人魚の住処があると言われている。
遊歩と国夫が組んでいるバンド「セイレーン」はいつも人魚島の裏にある場所で練習をしていた。
今回だけとバンドの練習に参加したカイだったが、駄目出しをしすぎて遊歩は泣いて去ってしまう。
そんな時、何処からか不思議な歌声が聞こえていた。音楽にノリノリなその歌声は、海から聞こえてきているように感じた。
オープニングクレジット。
前半
帰り道の船の上で、遊歩に謝ったカイ。その途中、3人は密漁をする男達の船に遭遇。咎めようとカイはスマホを取り出すが、その時、突然に海が盛り上がって密猟者は海に落ちた。
難を逃れて陸に戻った3人。カイも正式にメンバーに。
家に帰ったカイは祖父に人魚らしきものを見たと話す。祖父は海に近づかないよう警告し、「人魚は音楽に寄ってくる」と言う。
部屋に戻ったカイは、倉庫で見つけた父親のバンドの演奏テープを聞いていた。何気なく海に食べ物を投げると、人魚らしき姿が。
その瞬間、海が盛り上がったかと思うと、人魚が部屋の中に入ってきた!
人魚は人間の言葉が分かると反応し、自分の事を「ルー」といった。カイも自己紹介をすると、ルーはカイが海に落としたスマホを届けてくれた。
翌日、海で遠泳大会が行われた。
泳ぐのが苦手なカイはビリで泳いでいたが、突然に猛スピードで身体が飛ぶように泳ぎ始めた。水中を見ると、そこにはルーがいた。
そして夏休みに突入。
カイは「やりたい曲が出来た」と言って正式にバンドに参加する事を表明。
人魚島の遊園地の階段で練習するバンド「セイレーン」。カイは曲を流して遊歩と国夫もギターを合わせる。
すると、ルーの歌声が響いてきた。カイはルーを呼び、遊歩と国夫に紹介する。
本編映像
夜、ルーの不思議な力に驚きながら、3人は家へ帰った。
皆んなと別れた後、ルーとカイは夜の町を散歩する。キスをする男女を見たルーに、カイは「好きの証」だと教える。
野良犬の収容所を訪れた2人。
ルーは海の水を不思議な力で持ってくると、水の中の犬1匹ずつに噛み付いた。すると犬の足は尾ひれになり、海へ入っていった。
中盤
翌日、カイは国夫と共に人魚を祀るお寺へ。由来を聞くと、昔、捕まえた人魚を殺してしまった事で、その祟を鎮めるため祠を建てたという事だった。
雨の昼、日が出てないからルーがやって来た。
ボートで海に出たカイは、ルーに連れられて海の中へ。そこには沈んだ沢山の船があった。
そこで見たのは、ルーの父親やその他の人魚たちだった。
そして、海で亡くなった霊への追悼を捧げる「灯籠祭」でカイ達のバンド「セイレーン」が演奏できる事に!
皆んなにバレないように変装するカイ達はルーに歌われる事に。しかし、ルーが人魚だとバレてしまい、その場から逃げることに。
しかしルーの動画がネットに投稿されてしまい、日無し町は観光客や取材によって一躍有名に。
役場では詳細を聞こうと「セイレーン」を呼ぶが、詳しくは話さない。
そこへやって来たカイの祖父は「人魚と関わるな」という。それは、彼の母親が人魚に食い殺されるという苦い経験があったからだ。
町は、人魚を使った町おこしと、人魚から手を引くという2つの意見で別れていた。
その頃、港の「活き〆ワークショップ」には海から巨大な男が現れた。その男は猛烈なスピードで活き〆をこなしていった。
本編映像
日無し町ではついに「人魚ランド」が再オープン。それを記念した椅子レースまで開催。
ランドの特設ステージでは「セイレーン」がライブを実施。カイは参加しなかったが、ルーはステージへ。
しかし、スポットライトやカメラのフラッシュがルーには辛い。それでも、ルーは楽しそうに踊る!
一方、「セイレーン」の遊歩と国夫は代わりのバンドが用意された事に怒る。
後半
しかし人魚フィーバーにも終わりが訪れる。
不思議な事や奇妙な力を持つ人魚に町の人は怖がり、定置網に掛かった魚や養殖を喰われたりと、被害が出た。
更には、家出した遊歩の事を「人魚に喰われた」という大きな誤解が広がっていた。
そして、「日無しが人魚にやられる」と人魚狩りの風潮が高まっていった。
そしてついに、ルーが捕まってしまう。
ルーに対し迫りよる水産会社の社長や町人。とうとう怒りに燃えた遊歩の父である社長は太陽の光に当てるように指示。
日光に弱いルーは叫び声をあげる。すると、その声を聞いた父親が自分が燃えるのも顧みずにルーの元へ向かった。
ルーの元に辿り着いた父親だったが、人間の手によって大きな釜の中に閉じ込められてしまった。
遊歩は自分が喰われてなく、ルーは良い人魚だと町の放送を使って知らせる。
放送を聞いたカイは、ルーを助ける方法を思いつき、船でルーが囚われてる場所に駆けつけた。
父親や遊歩の祖父も手伝い、遊歩とカイはルーを助けるため頑張る。
水門を開け、音楽を奏でてルー達に力を与え、日光と同じ成分のライトを壊し、ついにルー達を逃すことに成功した。
徐々に海の水面が増し、町は浸水していく。
人魚のせいだという町民に対し、カイは「おかげ様」の祟りだと見抜く。
カイたちと沖に逃げていたルーと父親は、町の人を助けるために力を使う。
人魚や海の生き物達の力を借りて、2人は浸水する町から町人を助ける。
しかし2人は段々と疲れ、力が弱まっていく。
そんな中、夜明けが近づき、朝日が差し込み始めた。
終盤
人魚たちを助ける為カイは1人、人魚島のステージで歌を歌い始める。
歌に力づけられるように、人魚島たちは町に溢れた海水を海へと戻そうとする。
強まる日光に負けないように、パラソルや傘を差しながら力を合わせる。
挿入されたのは、カイの祖父と母親の物語。
海で人魚に噛まれた母親。しかし、それは母親を救うための行為だった。
祖父はそれを理解すると、涙を流す。
全てが終わり、カイはルーに「好きだから、ずっと一緒にいて欲しい」と告白し、ルーも大好きのキスをする。
人魚も、町のみんなも、祝福のダンスを踊り、楽しい時間がすぎる。
しかし、突然人魚たちは消えてしまった。
寺の僧は「お陰岩が無くなったら、人魚は生きていけない」と呟く。
そして、いつも通りの日常が戻ってきた。
カイは山の向こうの高校に、遊歩は東京の高校に進学することを決める。
町には、カラフルな傘が沢山飾られていた。
最後に遊歩が一言「ねぇ、陽のあたる町になったね!」
エンドクレジット。
最後まで読んでくださり、
本当にありがとうございました!!