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【芸術展覧】『Media Ambition Tokyo 2019』:未来を創造するテクノロジーカルチャーの祭典へ!

2019年2月28日訪問

Media Ambition Tokyo 2019



【一言】

テクノロジー・アートの祭典!
今年は「感覚とセンサー」や「拡張現実」に関する作品が多かった印象で、人体から直接的に近未来を感じられた!

雨天で会場の展望台は雲の中、景色最悪で作品の良さがかなり減少してしまい、非常に残念!

 
【Twitter140文字感想】

 

 

 

 

「MAT」の概要

 

今年で7回目を迎えるMedia Ambition Tokyo [MAT] は、最先端のテクノロジーカルチャーを実験的なアプローチで都市実装するリアルショーケースです。六本木を中心に、渋谷、銀座、虎ノ門、台場など、都内各所を舞台に最先端のアートや映像、トークショー等が集結。国内外のさまざまな分野のイノベーターや企業が参画することで、多彩なプログラムが都市のあちこちに拡大し、MATはこれらを包括する活動体として成長を続けています。2020年、そしてその先の未来を見据えて移動や通信、情報を含んだ都市システムのありかたが大きく変化している今、 都市の未来を創造するテクノロジーの可能性を東京から世界へ提示し、未来を変革するようなテクノロジーアートの祭典を目指します。
MAT2019

Media Ambition Tokyo digest 2013-2017

会場:六本木ヒルズ 他
会期:2019年2月23日~3月3日
公式サイト:こちら

 

 

 

 

芸術祭の感想

 

 「MAT」自体は今年で7回目。
 私は2017年に初めて行って、3回目です!

 いやもう本当にとても楽しくて素晴らしい作品ばかり! それに作品を出展しているアーティストがまた豪華! メディアアーティストの落合陽一さん、「ポケモンGO」のNiantic、日本の民間宇宙開発会社のi Space ……などなど!!

 今回、展示を見るに当たって一番残念だったのは、天候が悪かったこと! バリバリの曇天、ガチガチの雨天!

「MAT」のメイン舞台は六本木ヒルズの52階にある展望台「TOKYO CITY VIEW」なのですが、見事に景色は何も見えず。ほぼ雲の中状態で、眼下にうっすら東京の風景が望める程度。

 これの何が困るかというと、MATに出品される作品は、その会場を生かして「風景を作品に取り入れる」という事をするアーティストさんが多いです。過去3年間見てきた代表としては、やはり【落合陽一】さんでしょう!

 なので、曇っていると作家が制作した作品本来のビジョンやメッセージが見えなくなってしまうんですよ……。これは本当に残念でした。

 さて、作品について。
 何時も通り素晴らしい作品ばかりでしたが、私の素人的な目線から感じたのは、「センサーや五感を使った作品が多い?」という印象でした。

 人間の振動や動きを感知してディスプレイに反映したり、空気の流れをセンサーで可視化したり、普通は聞こえない音や光を拡張したり。

 まぁ、「アートとテクノロジー」という分野において、生活や人間との関わりを表現し出そうとするなら、必然的なことなのかもしれませんが。それでも、そうして【可視化】させることで見えてくるものは本当に大きいと思います!

 あと象的だったのは、「拡張現実(AR)」を用いた作品です。

 現実の世界に仮想世界を重ね合わせるというのは本当に面白いし、今勢いのある分野でもあるので、作品を見ていて楽しかったです!

 Nianticは「ポケモンGO」を使った体験型のAR展示を行っていましたが、メガネ型デバイスという近未来的な、『ソードアート・オンライン』に登場しそうな端末を使っていて楽しかったです!

 それから、これも毎回書いていることですが、「昼と夜」で表情を変えるからこの「MAT」は面白いです!

 例え曇っていても、昼間は日光の明かりが作品を照らし出すのでその全容が分かりやすく、夜は照明のによってより幻想的でテクニカルな雰囲気が出てきます!

 なので、15:00くらいに一度「MAT」を見たあと、森美術館等を鑑賞して、日没後の18:00くらいに再び「MAT」の会場へ再入場するのがオススメです!

 全体を通しての感想はこのくらいでしょうか。
 展示されていた作品の紹介と、個々の感想は以下で書きます!

 

 

 

 

展示作品の紹介

 

 展示されていた作品を紹介掲載しつつ、感想を書いていきます!
 できるだけ、作家さん自身のサイト等を参照できたら良いと考えています!

 全部の作品はもちろん、紹介出来ないので、以下の作品を掲載しました。

How to Revolutionalize Art
裏窓―タヌキのめざめ
The Watchers-眺めるもの
Pokémon GO AR展望台
Lexus, Journeys in Design and Innovation
AMPHIBIO
Study for a surrounding entropy
AI Mural
Gate
Modified Paradise “Dress” “ROOSTER” “CAT”
beforce
蝉-Canon
風景と質量と
組曲(Suite)
YADORU
HAKUTO-R Moon Lander & Moon Rover

 

 

作品名How to Revolutionalize Art

 作品というより、支援の形ですね。
 今、「アートが資本主義に飲まれる」ということを憂いている芸術家さんが本当に多いので、こういう形で鑑賞者自身がお金を投じるというシステムが出来上がっていくのは本当に良いことだと思います。

 なお、QRコードを読み取ってダウンロードしようとしたら、iOS限定でした。こういう部分にはまだまだ課題が残りますね。

 

 

 

作品名裏窓―タヌキのめざめ
作 家Julie Stephen Chheng
サイト:作家サイト

タヌキと呼ばれる自然の精霊たちがつくりだす拡張現実(AR)の冒険ゲームです。観客は様々な場所で精霊たちとインタラクティブに遊びながら、自分のアイデンティを見出します。タヌキたちとの出会いを通して、…[中略]…私たちの違いや世界への眼差しが見えてきます。
MAT2019

 会場ではアプリをインストールしなかったので、帰宅後にやってみました。
 これ、ちゃんと会場に貼ってあったタヌキたちを全員コンプリートしなくてはならないのですね……残念ながら、私のアイデンティティは見つけられずです(泣)

 

 

 

作品名The Watchers-眺めるもの
作 家ティエリー・フルニエ 他
サイト:作家サイト

高層ビルから東京の風景を捉えたライブカメラの映像を、それぞれの方法で変容させています。 マリー・ジュリー・ブルジョワは、東京の地平線をパリの地平線と交換し(『消失点』)、マリーヌ・パジェスは、観客の指が触れることで束の間に姿を現すよう、風景を白いベールで覆い(『浮遊する身体』)、アントワーヌ・シュミットは、1時間かけて風景の上を一周する大きな円を描きました(『No Disc』)。本作では、観客が作品を見ており、作品自体もまた風景を見ているのです。
MAT2019

 非常に残念だったというしかない作品です。
 なぜなら、パリのライブカメラ映像は快晴であったのに、一方の東京は雨。しかも六本木ヒルズに設置されたカメラは雲の中なので、何も見えない状態。

 想像したり、ネットに投稿されている動画等で感じるしかないですが、多分、東京の高層ビル群とパリの歴史ある建造物との融合は素敵な風景が広がっているのだろうと思います。

 

 

 

作品名Pokémon GO AR展望台
作 家Niantic x Pokémon
サイト:作家サイト

室内展望回廊で、そして窓から外を見渡したとき、どんな世界が見えるでしょうか? Microsoft Hololensを活用した「ポケモンスコープ」を通して、現実空間にリアルに溶け込むポケモンを探してみてください。…[中略]…AR(拡張現実感)技術により東京の景色がどのように変化するのか、未来の日常をポケモンがどのように彩っていくのかを垣間見ることができます。
MAT2019

 まず、「Microsoft Hololens」を体験出来たのが嬉しいです! メガネ型のデバイスで、視界に映像や情報を重ねることで拡張現実を行うことが出来る端末ですが、話題になっていたので、体験出来てよかった!
 まさに、『ソードアート・オンライン』に登場する「オーグマー」という端末のようでワクワクしました!

 ポケモンとのコラボも良かったです!
 視界にポケモンが現れて、視線を向ければ動いたり鳴いたりしてくれます。外には伝説のポケモン達がいて、「晴れていたら格好良かっただろうな~」とここでもガッカリ。

 

 

 

作品名Lexus, Journeys in Design and Innovation
作 家Lexus
サイト:作家サイト

レクサスLC500h “ストラクチュラルブルー”
モルフォ蝶の壮観な青い羽は、実際には色素を含んでおらず、特定の波長だけを反射する構造により青く輝いて見えます。この自然の妙技に触発されたレクサスエンジニアは、青色顔料を使用しない鮮やかで深みのある青を開発しました。
MAT2019

 LEXUSは毎年出展していて、本当に面白い作品を見せてくれます!

 今年は「モルフォ蝶の色」を車体に取り入れたものです。やっぱり自然のシステムって凄いと思うし、それを再現したエンジニアも凄いな~と。
 この車を持っていたら、めっちゃ自慢できそうですwww

 

 

 

作品名AMPHTBTO
作 家亀井潤
サイト:作家サイト

21世紀は「水」の世紀である。
地球の気温は2100年までに3.2℃ほど上昇すると予測されている。その結果生じる海面の上昇により、沿岸地域に位置する数々の大都市が水没する可能性が現実的なリスクとなっている。
…[中略]…未来の人類は、この水没した世界にどのように適用していくのであろうか? AMPHIBIOは水中での呼吸を可能とするエラとして機能する服のコンセプトである。最新の3Dプリント技術を用いることによって作られ、水没した都市の水上および水中で生活する未来の人間のためにデザインされている。AMPHIBIOは多孔質かつ撥水性の材料でできており、水中に溶け込んだ酸素を取り込み、蓄積した二酸化炭素を水中に逃がすことができる。このエラのメカニズムは水に棲息する水中昆虫の呼吸メカニズムからヒントを得て作られた。
MAT2019

 この作品も自然界のシステムを基にしたものですね。
 これ、まだコンセプトの段階ですが、実際に使用出来るようになれば、人類の可能性ってぐっと広がりますよね! まさにSF映画の世界ですよ! このスタイリッシュなデザインも素晴らしいし、なにより格好いい!

 亀井潤さんはバイオミメティックス・デザイナーという肩書で、この「AMPHIBIO」も発表された時は結構話題になりましたよね!

 

 

 

作品名Interpreter for the Alien Art Thinking

Interpreter for the Alienは、染みついた思考パターンを相対化し新しい発想法を開発するワークショップである。組織やコミュニティ内で流通している、がしかし改めて細かく定義することなく使われている単語や概念を、地球外の視点から見つめ直し、あらたな定義を作り出そうと試みるものである。たとえば「クリエイティブ」という言葉は、ある組織においては、たんに「作る」ことを指すだけかもしれないし、別の組織では「新しい・従来には無かった」という定義かもしれない。別の惑星から来たエイリアンに対して、「クリエイティブ」な状況を伝えるための新たな言葉、説明をゼロから考え出し、導出するプロセスのなかで、これまで気づかなかった言葉のポテンシャルが引き出され、従来使っていた考え方の枠を超える機会が生まれることになる。
MAT2019

 ワークショップが作品として出展される当たり、本当に幅が広いです。これは「言葉の新たな定義を探る」という趣旨ですが、なかなか面白いと思いました!
 日常生活でも言葉のきちんとした定義なんて考えないし、様々なバックグラウンドを持つ人との間で定義を話し合うという試み自体が、新しい思考の道を示しそうです!

 企業の研修とかでやるのもいいですが、こういうのを小中学校とかで行ってみると生徒たちの思考力とかが身につきそうだと思いました!

 

 

 

作品名Study for a surrounding entropy
作 家ロビン・ジャンガース
サイト:作家サイト

無線電波の情報を介して、環境の中のカオスを召喚する。
私たちを取り巻く大気は、いついかなる瞬間も電磁波のノイズの海のような様相を呈している。ランダムな事象が空中を伝播する中、人工的なコミュニケーションは、秩序、予測可能性、対称性などの兆し、すなわちエントロピーの乱れをもたらす。本作は、この地鳴りのような ──間違いなくそこに存在するのに、はっきりと捉えることが難しい── カオスを、現前化しようとする試みである。
無線ドングルとアンテナで構成される通信機器は、プロセスの「水晶玉」として機能する。鑑賞者はこのデバイスに近づいたり触れたりすることで、能動または受動的に出力結果に影響を与えることになる。電波環境そのものが出力を形づくるため、サイトスペシフィックな作品とも言える。
デバイスの背後にあるディスプレイは、計測されたカオスの視覚的解釈を、音と共に提示し続ける。
MAT2019

 正直、作品のコンセプト自体は「鑑賞者自身が干渉を施し」、「大気のカオスを形にする」という程度しか理解出来ませんでした。

 この作品に惹かれたのは、ディスプレイに出力される「視覚的解釈」です。以前に観た映画『メッセージ』に登場した異星人のコミュニケーション手段とされた”言語”の表現に瓜二つで、感動しました。
 人間のコミュニケーションによって生じるカオスを観測して示した姿が、異星人の言語に似るなんて!

 

 

 

作品名AI Mural
作 家ima×the design lab
サイト:作家サイト

芸術を学習したAIが現代の象徴を壁画として描き、新しいアートを創出します。
記録に残る人類最古の芸術は”壁画”です。AIによる芸術の学習も壁画から始めることにしました。AIは、二万年前のクロマニョン人によって描かれたラスコーの壁画から、人類は何をどのような表現で描いてきたのかを学びます。その後、AIが現代の象徴と言える図像を選び出し、それをペンプロッターを用いて描き出します。クロマニョン人が自らのテリトリーの中から壁画の題材を導き出したように、AIはインターネット上から描くべき題材を自ら選び出し描写します。
凄まじい勢いでクリエイティブな分野にまで侵食しはじめたAIによる新しいアートをお楽しみください。
MAT2019

 凄いと思ったと同時に疑問も浮かんだ作品でした。
 AIがインターネット上の膨大なイメージから、題材を選択するさいに「人間の注目度」を選んでいるそうで、それは確かに「壁画」と通じるところがありそうです。それに、処理というのはAIの大得意とするところですしね。

 しかし、自分で描くという点には少々疑問が。
 いまは自ら「アートを生成する」という人工知能が開発されている中、また「印刷」という技術を用いれば解決する中において、AI自身が描くという意味はなかなか見いだせませんでした。
 ペンプロッターなので、機械が制御するという点ではうってつけのツールなのかもしれませんが。

 

 

 

作品名Gate
作 家イメージソース
サイト:作家サイト

ディスプレイやプロジェクションの映像を再生したまま、ARと同期・マッピングする仕組みのプロトタイプから派生した作品。新たなメディア/インターフェース/体験/表現手法の可能性を模索するプロジェクトの一環として制作。ディスプレイが別の空間とつなぐ役割を果たし、ディスプレイを通じてその空間を垣間みることができる。
MAT2019

 「ディスプレイが空間をつなぐ」という、まさに「Gate」の役割を果たす作品です。
 ディスプレイを覗き込んだときに、現実の姿とは違う世界が描き出されるのは非常に面白いものの、「ディスプレイ」という固定的なツールを使う意味は何なのかな~と疑問に。
 スマホとかゴーグルのような移動可能なデバイスを用いた方が遥かに大きな可能性を秘めているように感じてしまうのは、やはりアート素人だからでしょうか……? でも、「1つのテーマを与えて、何人かのアーティストがディスプレイ上で別々の世界を描き出す」なんて使い方は面白そうですね。

 

 

 

作品名Modified Paradise “Dress” “ROOSTER” “CAT”
作 家Another Farm
サイト:作家サイト

我々が何気なく目にする動植物の多くは人間の手で改良され続けている。特に、人間と共生してきた家畜やペット、観葉植物は、それらの意思とは無関係に変えられてきたのだ。 品種改良の歴史は長く、とりわけ衣料と共に発達した蚕の改良では実用性を重視し、病気に強く、質の良い糸を作るための品種が常に研究されてきた。
近年の科学技術の発展は遺伝子をもコントロール可能にする。今日、生態系はさらに複雑になり、我々は「人は神の領域に踏み込み、生命をも自由に創造して良いのか」という倫理的問いに直面しているだろう。
本展は人間と関わり合いの深い”蚕”と”動物”を中心とした作品で構成されている。急速発展するバイオアートとともにAnother Farmというフィルターを通して、芸術と科学、そしてテクノロジーとの関わり合いが現代社会においてどのような意味や問題を持つのか、本展が問いかけるきっかけとなる事を願っている。
MAT2019

 コンセプトは好きですが、やっていることはイマイチ理解できず。
 服や鶏などの造形が設置されていますが、これは人工的に整形したものなのか、「蚕をバイオハックしてこの形の繭を作らせた」のか、それによっても意味合いは違ってくるような気がします。

 しかし、中国の医師がニュースになったりしたように、遺伝子操作の問題は決して傍観できる問題では無いのは事実です。(ただ、個人的な話をすれば、私はバイオアートが好きなので、面白い問題と受け取ってしまうのですが。)

 

 

 

作品名beforce
作 家nor
サイト:作家サイト

自然界で形成されるパターンの美しさと複雑さの中心にある「せめぎ合う引力」は、拮抗の表れとして「カオスの縁」を成し、ごくわずかな変化が全体に大きな作用を及ぼします。本作では、規則正しい幾何学模様を重ね合わせた時に、周期のずれによって視覚的に発生する縞模様(干渉縞)「モアレ」に着目。幾重の布のレイヤーによって生まれる多様なモアレは、ミクロレベルではシンプルなパターン(部分)ですが、集合として全体を成すことで複雑化され、ムクドリの群れのように高いレベルの組織化された抽象的パターンを創出します。また、干渉の連続により生み出される複数の「うねり」の中には、互いに作用し合うことで台風の目のような「ねじれ」が立ち上がります。このねじれは、絶えず成長するように有機的に変化し続け、全体を巻き込む大きな力となります。気流が台風に、潮の流れが渦となるように、単純さと複雑さは常に共生的で互いに絡み合っているのです。
MAT2019

 なんだか、演繹法みたいですね。小さな部分(ミクロレベル)は一般的で普遍的な内容でありながら、マクロレンズでは特殊なパターンが生じるという部分が。
 あとは、自然界にある「フラクタル構造」とかも、この同じパターンの繰り返しが総体的に複雑な様相を生み出すのかもしれないと感じました。

 モアレの展示なので、これは身近なところでも観察出来ます。
 印刷とかが有名ですが、Wikipediaには漫画とか医療とかも載っていました。

 

 

 

作品名蝉-Canon
作 家佃 優河 (Digital Nature Group)
サイト:作家サイト

「BioPunk」
コンピュータ単体で、生物単体で、できないことが生物とコンピュータの掛け合わせで可能になる。だが「身体に電極を刺し電気刺激を与え行動を制御する」という行為は、一見するとグロテスクで、ディストピアを想像する人も少なくはない。しかし、そのような行為は必ずしも悪いとはいえない。「アート」として「技術が浸透していくときに拒絶されうるか?」という感情の側面を考えることは「BioPunk」の実現を考える上で重要だ。
「セミ」が「パッヘルベルのCanon」を奏でた。セミという生物は日本では身近であり、部屋の外に出るだけで「BioPunk」を考えるきっかけになる。そして、音楽とは人間の感情と強く結びつくものであり、感情的な面から作品をみる事を促す。普段、セミの音は不快感を与える。しかし、本作品では独奏に加え四重奏であっても、うるささを感じず、どこか物悲しささえ感じるかもしれない。
MAT2019

 この作品は凄い面白いと思いました!
 私自身が「バイオアート」とか「バイオパンク」とかが好きなのもあり、作品のコンセプトがとても好きです。

 まず、「身体に電極を刺し電気刺激を与え行動を制御する」という行為が「必ずしも悪いとはいえない」として、「「技術が浸透していくときに拒絶されうるか?」という感情の側面を考えること」を定義したコンセプト。
 正直、個人的には、倫理観を抜きにすれば、感情だけで考えるならば、「面白い」から大賛成なのですが、そこは議論の余地が大いにある部分でしょう。

 そして、感情に訴えかけるツールとして「音楽」を選択するところも凄い!
 不快なセミの鳴き声が、BioPankによって美しい音楽に変わった時、「拒絶」という感情がどう変わるのかは、非常に興味があります!(多分、人間は勝手だから許容するのでは?)

 

 

 

作品名風景と質量と
作 家落合陽一
サイト:作家サイト

僕はメディア装置の表現が好きな理由は,作家の個の消失とコンテンツなき抽象性にある.それはコンテンツ性に頼らず機能的な主体を取り戻し,鑑賞者に追体験させるメタ機能だ.それは文脈とビジュアルデザインの無間地獄が作るパズルゲームを超えたものに思えたのだ.
メディアアートの制作で,風景の一つとして過ぎ去っていく瞬間と瞬間が物質性を伴って現象に変換され,その展示自体も風景にされて行く.一連のプロセスを感じながら過去に変換することが好きだ.アナログな身体と物理現象の中でそこにあるデジタルを研ぎ澄ます.デジタルでしか見えない世界認識で,失われつつあるものを切り取り,手触りを与えるプロセスを通じ,時間と空間の解像度との対話するときのみ,自己のアナログな精神を実感する.そんな風景とメディア装置に関わる世界認識について,光学定盤のキャンパスの上に詩的なプロセスで切り取り,インスタレーションの連作で表現する.
MAT2019

 

 今、様々なメディアで話題の落合陽一さん。
 彼の作品は、背景の風景までを表現の一部に取り込むから美しいです! 残念ながら、今回は雨天だったので風景もクソもなかったのですが。

 あと、言うことが難しい!
 なんとなくは分かるものの、表面的な理解だけで、絶対に本質的な部分は分かっていないと思います。

 

作品名1. 光を纏う枯れ木

枯れた木を見ていると質量を感じる.質量のない世界では生きも死にもしない木が,その生を終えて乾燥して,半永久的に枯れ木になる.まるで動物が光を纏っているようだ.窓辺に佇むその逆光に恋して.
MAT2019

 この作品を観た時の第一印象は「龍みたいだな」と思いました。「質量」という観点から言えば、想像上の動物であるから質量があるはずはないけれど、生死老が描かれる龍伝説の存在の方が、枯れ木より質量あるんじゃないかと思ってしまったり。

 

作品名2. 焦点の散らばった窓

メディアの研究や作品を追いかけるうちに,様々なフレームで切り出される世界への憧憬がさまざまな枠の中に見えるようになった.視点のバラバラな窓を通じてアナログとデジタルの違いを眺めている.
MAT2019

 綺麗だと思うものの、ここに「アナログとデジタルの違い」は感じられませんでした。この丸窓に親近感がわくのは、日本の茶室とかであるから、日本人そのものに馴染みが深いからでしょうかね。

 

作品名3. 波の形をした鏡

鏡の形はそれ自体にテクスチャを持たず,波のように光景を風景に変換する.風景の中にある波が好きだ.時間が物理量に変換される過程を眺めることそこに漂うこと,世界との接続を感じる一瞬をずっと留めていたい.
MAT2019

 「光景を風景に変換する」とは、そもそも両者の言葉の意味を深く考えたことがなかっただけに、衝撃的だった。波が固定されたような作品では、時間そのものまで固定しているような錯覚に陥るという気がするのも感じられました。

 

作品名4. ブラウン管とコンクリ

質量を持つメディア装置は壊れる.ブラウン管に感じるノスタルジアはナムジュンパイクの時代にあったビデオアートの先駆性と異なっている.我々が今ブラウン管にみる質量性は液晶やLEDや有機ELの時代から見た価値観に基づいている.テクノロジーは変わる.メディアアートの時代性は時代によってそのテクノロジーの風化を伴うエイジングをする.しかしデジタルデータはどうだろうか.もちろん処理能力が上がればより高精細に見えるようなアルゴリズムもあるかもしれない.しかし解像度の足らない画像データから見えるのはノスタルジアだろうか,それともエイジングだろうか.
MAT2019

 「ノスタルジアか、エイジングか」ここでも2つの概念の対比が出てきました。
 個人的には、「郷愁と風化」は全くの別物だと思うし、デジタルデータにあるのはエイジングでしかないと思います。しかし一方で、画像に切り取られた景色がノスタルジアを想起させることもあるし。
  今回提起されている、「テクノロジーの変化」と「解像度の足らない画像データ」の2つにあるのは、エイジングだと私は思います。

 

 

 

作品名組曲(Suite)
作 家ヤニック・ジャケ
サイト:作家サイト

絶え間なく揺らめくシンプルなグラフィックを用いた、映像と音による巨大なポリプティック(連画)。流体力学とジオメトリの統合によって、豊かで複雑な、抽象的映像が生み出されます。ミニマル・ミュージックやセリエル音楽で多用される、反復の原則からインスパイアされた音楽は、時間とともに進展し、ずれとともにやがて複雑な倍音を生成します。
MAT2019

 正直、音楽とかは全くわからないものの、この一列に並んだ線が、音に合わせて動く様子というのは、とても印象に残るものがありました。
 すごくデジタル的でありながら、音楽のせいか、線という表現だからか、とてもアナログ的にも感じられました。

 

 

 

作品名YADORU
作 家WOW
サイト:作家サイト

東北の湯治場を中心に発達した「こけし」。現在は鑑賞品の印象が強いこけしですが、元々は子どもの手遊び人形として親しまれていました。その絵柄には「五穀豊壌」や「子供の成長」などの願いがこめられています。人に見立てる依り代として、また祈りをこめた土産物として、人々はこけしにさまざまな想いをやどし、広めてきました。 YADORUは、東北に古くから伝わる郷土玩具をテーマに、工房見学を始めとしたフィールドワークを通して伝統を学び、そこに自分たちのもつ表現技術と解釈を加えて作り上げた実験的な連作の一つです。未彩色のこけしをキャンバスに映像が投影される、身近な工芸を少し違った角度から見つめ直す試みです。
MAT2019

 まぁ、第一印象は「気持ち悪い」ですよ。
 でも、地域の土産物とされる「こけし」に地元の人の顔が投影されるというのは、小規模コミュニケーションを大切にする現代らしい作品のように感じました。

 

 

 

作品名HAKUTO-R Moon Lander & Moon Rover
作 家HAKUTO-R
サイト:作家サイト

HAKUTO-Rは、ispaceが2021年までに行う2回の月探査ミッションを統括するプログラムです。
独自のランダー(月着陸船)とローバー(月面探査ロボット)を開発して、2020年に月周回と2021年に月面探査の2回のミッションを行います。SpaceXのFalcon9を使用し、それぞれ2020年半ば、2021年半ばに打ち上げを行う予定です。
ランダーは、ロケットから地球の静止軌道で切り離された後、エンジンを点火し、月まで航行、そして月周回軌道投入後に、エンジンを逆噴射をしながら月面に着陸していきます。HAKUTO-Rのランダーは30kgのペイロード(荷物)を搭載可能です。
月面着陸後、ランダーに搭載されていた小型軽量のローバーを展開し、月面の探査を行います。
MAT2019

 日本の民間宇宙開発会社「i Space」のプログラム!
 Googleが主催して大きな話題になった月面レース「Google Lunar XPRIZEコンペティション」のプロジェクトが一度は頓挫したものの、こうして再起動!
 ランダーの胴体面に描かれた日本企業のマークが誇らしいし、2代に渡る「はやぶさ」の成功も記憶に新しいですし、民間化が進む宇宙産業のなかで、日本勢の躍進が期待できるというのは、とても嬉しいものです!

 

 

 


 

 

 

 展示内容の紹介は以上です!

 やはり、作品のコンセプトを全て完璧に理解するのは無理です。
 それでも、身近な問題や鑑賞した時の第一印象を大切にしながら様々なことを考えさせてくれるから、この「MAT」はとても面白いし大好きです!

 

 

 

 最後まで読んでくださり、
 本当にありがとうございました!!

 

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