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【映画】『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形』:”手紙”が伝える美しき”気持ち”。

※ネタバレなし。
※画像は予告映像のキャプチャです。

2019年9月6日鑑賞

ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝
永遠と自動手記人形

 

【評価:4.8/5.0】

 
【一言】

泣きました。
本当に素晴らしい作品でした。
多分、「感情で泣く」ってこういうこと。

繊細な心情描写と些細な言動を映し出す映像は美しく、
登場人物たちが紡ぐ言葉と心は素直で綺麗。
彼女“たち”の物語に感動と拍手と応援と「幸せ」を。

 
【Twitter140文字感想】

 

 

 

 


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7月18日に発生した凄惨な放火事件。
今でも報道を目にする度に胸がとても痛くなります。

先日、9月5日で四十九日を迎えられました。
亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。
また、負傷された方々の1日も早いご回復を祈っております。

素敵な作品がたくさんで、大好きな作品もたくさんです。
頂いたたくさんの夢や希望、愛、優しい気持ちを、お返しできればと心の底から思います。

そして、より多くの方々に色々な作品を見ていただきたいです。
京アニの魅力に気づく方が、ファンの方が増えることが、何よりも応援になるのではないかな、と思います。

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【目次】

 

 

STORY&STAFF

 

……大切なものを守るのと引き換えに僕は、僕の未来を売り払ったんだ。

良家の子女のみが通うことを許される女学校。父親と「契約」を交わしたイザベラ・ヨークにとって、白椿が咲き誇る美しいこの場所は牢獄そのもので……。

未来への希望や期待を失っていたイザベラの前に現れたのは、教育係として雇われたヴァイオレット・エヴァーガーデンだった。
映画公式サイト

予告動画

 

監督:藤田春香
原作:暁佳奈
脚本:吉田玲子
制作:京都アニメーション
音楽: Evan Call
キャスト:石川由依, 浪川大輔 and more.
上映時間:90分
日本公開:2019年9月6日
配給:松竹
公式サイト

 

 

 


 

 

 

映画の感想

 

感想外観

 

 ずっと楽しみにしていた『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』。
 ヴァイオレットの物語を、京アニの新作をずっと心待ちにしていて、映画館で観られたことが本当に嬉しいし、感謝と感激の気持ちで一杯です。

 TVシリーズや原作を知っていれば十二分に楽しめますが、本作が初見でも十分に楽しめます。ぜひ、劇場へ足を運んで、この作品を見ていただきたいです。

 何もかもに感動しました。
 その中でもやっぱり、「物語」が素晴らしかった!
 相手を想う、気持ちを言葉にする、手紙を書く、相手に届ける。

 ここまで紡がれてきたヴァイオレットの物語と、依頼主の少女と身寄りなき少女の物語。「永遠」と冠された彼女たちの人生のエピソードは、長い年月のほんの一瞬の出来事でありながら、いつまでも心に残り、きっと宝石のように輝きを放っています。

 そんな彼女たちの物語を描き出す映像。
 もはや詩的とも評せる丁寧な演出に涙が零れました。

 話す、書く、見つめる、「手を握る」。
ほんの些細な動作の描写がどこまでも繊細で、言葉以上に登場人物の心境を優しく間接的に伝える、あのアニメーションが底なしに愛おしいし大好きです。

 何よりも、誰よりも愛おしき、彼女。
 ヴァイオレット・エヴァーガーデン。

 あの気品のあるメインテーマが、タイプライターを打つ音が聞こえてくるだけで、胸の奥底から湧き上がる懐かしさがたまらなかったです。

 そして、主人公の2人の少女の物語。

 貴族の娘・イザベラが与えたもの、与えられたもの。
 身寄りなき少女・テイラーが探したもの、見つけたもの。

他人の人生なのに、こんなにも感情移入ができるのは、「手紙」が「言葉」で伝えるからなのかもしれないと、そう思いました。

 

 

 

 

彼女と彼女たちの物語

  

 作品を構成する何もかもが素晴らしい。
 でも何よりも、作品の根幹を成す物語それ自体がクオリティの高い、隙も抜け目もない文学作品そのままで、とても良かったです。

 観ていてとても満足感を感じられるし、「いい作品を観たな」って思える映画で、誰にでも、どんな人にでも観てほしいと思いました。

 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』という作品。
 TVシリーズでも、本劇場版でも、作品が大切にしているのは、「相手を想う、気持ちを言葉にする、手紙を書く、相手に届ける」という展開と、その間に挿話される登場人物の気持ちの変化、そして相手に届いた手紙と想いの先の物語だと感じます。

 登場人物の気持ちが、感情が、表面に描かれた以上に伝わってくるから、物語はより濃く深く面白くて感動的なものになるのだと、改めて感じた作品でもありました。

Violet Evergarden CM

 本外伝「永遠と自動手記人形」
 TVシリーズで描かれてきたヴァイオレット・エヴァーガーデンの物語であり、依頼主である貴族の娘・イザベラと、孤児院の少女テイラーの物語です。

 むしろ、後者2人の女性の物語。
 ヴァイオレットは一歩引いた所から彼女たちを眺め、聞き上手な性格で心の言葉を引き出し、それを伝えるのが役目。狂言回し的な立場でありながら、ヴァイオレット自身の物語も描く、本当に重厚で凄いストーリーだと思います。

 そして、副題に冠された「永遠」
 その意味は、観ればきっとわかります。
 90分で語られる物語は彼女たちの“人生”のほんの一瞬を切り取っただけで、それなのに、いつまでも胸の中で生き続け、強い想いと輝きを放っています!

 手紙だと、
 伝えられるのです……
 素直に言えない心の中も伝えられるのです。

 手紙だからこそ、だと思います。
 形として見えることのない登場人物たちの気持ちを、「登場人物自身の言葉」として伝えるのが手紙というツールだから、こんなにも感動するし、違和感も抱かないのではないかな、と思いました。

 

 

 

 

さり気なくも詩的な映像演出

  

 手紙だから、登場人物自身の言葉として伝えたい気持ちを知ることができるから、感動的な物語になるのだと書きました。

 でもそれ以上に私が大好きなのは、映像。
 丁寧に描かれた比喩的な演出とか文学的な背景とかがあるからこそ、五感を超えた質感や感覚が伝わってくるように感じました。

 情景を描き出す術が丁寧。

 室内での立ち位置や距離感とか、目線の動きや瞳の煌めきとか、髪の動きや結い方、歩き方、風のなびく風景や、市街地の喧騒とか。

 比喩的な演出や、文学的な風景・自然の描写、詩的な行動、対比が鮮明な存在……を繊細に描くアニメーションの細かさや綺麗さ、考え抜かれたであろう効果が素晴らしいです。
 本作のTVシリーズや『響け!ユーフォニアム』と『リズと青い鳥』などが特に印象深いですが、本作も本当に見事でした。

 「言葉で表現されない」からこそ、良いんだと。
 というか、だから私は好きです。

 言葉で描写されるのは「確定した事実」のように感じます。
 手紙に綴る思いは心の中で強く決心した感情だろうし、台詞に顕れる言葉はキャラの発言として確定したもので、揺らぐことのない事実。

 でも、京アニの演出はそれではありません。
 間接的に描かれる登場人物の心境や心情は、秀逸な演出によって鑑賞者に伝わるけど、それは「事実」ではなく、「さりげない気分」とでも表現できるような柔らかい表現だと思います。
 アニメや物語やキャラクターに“厚み”が生まれるというか、余韻や余白のような心地よさと“生きている”感じがするし、観る人の心持ちで表情が変わるから面白いし凄いな、と。だから、大好きなんです!

 本外伝では、「手」がとても印象的でした。

 ヴァイオレットの金属の義手、イザベラやテイラーの“生身”の手。
 その対比がとても印象的だし、対比を超えた温かさのようなものも感じられました。かなり明確に描かれているので、強いメッセージなのだろうな、と思います

 特に、「手を握る」という動作がねぇ……!!

 

 

 

 

誰よりも逢いたかった、彼女

  

お客様がお望みなら
どこへでも駆けつけます
自動手記人形、ヴァイオレット・エヴァーガーデンです

 ずっと、彼女に会うことを心待ちにしていました
 あんなにも完璧で、なのに不完全で、愛らしくて格好良くて憧れる、それでいて欠けたものを探している、そんな彼女が大好きです。

 ハイヒールが鳴らす整った足音が聞こえるとワクワクして、その人形のように端麗な彼女の美しく編み込まれた金糸の髪が目に入るだけで、言葉にならない感情の昂ぶりを感じます。

 弦楽器が奏でる気品あるテーマ「Theme of Violet Evergarden」が耳を撫でるだけでフワッと心が軽くなり、あの世界観へと没入していくのを感じました。

 そして、金属製の彼女の手が、タイプライターを打つ堅くも優しい音が胸に響いてきて、それだけで感極まってしまいそうでした。

 彼女、ヴァイオレット・エヴァーガーデンの物語。
 「愛している」の意味を探し、たくさんの人々の感情に触れ、言葉にして届けてきた彼女が今回、出会う・触れる・得るモノ。

 今までのどんな感情よりも優しいモノでした。

 そうか、彼女は初めてだったか。
 彼女の成長を見守る親のような感じもしますが、見ていてとても微笑ましい、嬉しい、そんなモノでした!

 そして、彼女の言動にはいつも心が揺すられっぱなし。

 子供のように純粋で無垢な彼女(実際にまだ14歳程)。
その行動はどこか愛らしさすら覚えるようでとっても大好き! でもだからこそ、軍隊で身についたであろう規律とかに未だに縛られる彼女のふとした瞬間が悲しいです。

 そして、真っ直ぐな言葉に感動します。
 相手を想う気持ちと、ささやかな配慮とが混ざった彼女の台詞は、じんわりと胸に響くし、TVシリーズを見ているとなおさら感動するものでした。

 

 

 

 

イザベラとテイラー

  

 本作の主人公はヴァイオレット・エヴァーガーデン。
 でも作品の中心で物語を語るのはイザベラとテイラーという2人の少女。

 貴族の娘イザベラと、孤児のテイラー。
 真逆の2人でありながら、それを繋ぐ物語とヴァイオレットが素晴らしかったです。

 なかなかネタバレなので書くのが難しい話です。
 物語の中での2人の立ち位置や関係性も若干のネタバレになるし、でもそこが一番大切なところだから書きたいし……。

 2人を繋ぐのは、手紙です。

 TVシリーズでもそうでしたが、「手紙を書く」もしくは「ヴァイオレットの仕事」というのは最後の最後、物語のまとめ的な役割が多かったと思います。
 その前には、登場人物のバックグラウンドや現在の状況が描かれ、彼ら/彼女らの“人生”の一幕が語られるから、その手紙の内容が意味を持つのがこの作品

 でも、本作はそれ以上。
 根幹的な部分は変わらないけれど、「90分」という時間の中で、“人生”の「前」も「後」も描いていて、大きな含みを持たせた物語がとても良かったです。

 それから、「手紙」
 残念ながら、ここはネタバレになるので、伏せます。

 けど、「手紙」という中では、とっても大切なことだったと思います!

 

 

 

 

美しい映像と、綺麗な音楽

  

 それから、音楽、主題歌と劇伴も。

 TVシリーズと同じ。
 あの質の高い「いい音楽」が背景で響き、ヴァイオレットや登場人物の背中を押すように、感情演出をより鮮やかにするようで、大好きです。
 この音楽を聞いただけで、作品世界へと没入していきます。

 また、主題歌が最高。
 『ヴァイオレット~』はTVシリーズの
・OP:TRUE「Sincerely」も、
・ED:茅原実里「みちしるべ」も、
・挿入歌:結城アイラ「Violet Snow」
 作品や物語をそもまま表現したような歌詞が見事でしたが、本作でもそう。今回の劇場版の主題歌は茅原実里の「エイミー」という曲で、やっぱり歌詞が素晴らしかったです!

TRUE「Sincerely」 MV Full Size

茅原実里「みちしるべ」 MV Full Size

茅原実里「エイミー」 MV Full Size

 映像の美しさはもう、素晴らしいの一言

 詩的な演出を支えるアニメーションは髪の動きの滑らかさや、一挙手一投足まで丁寧で滑らかな動きで描き出される映像。
 光のゆらぎや輝き、陽光の温かさや天気で変わる明度、部屋のランプの明かりや、ガス燈の明かりなど、「撮影」行程で加えられる効果。

 作品世界に吸い込まれるように美しい美術と、映像は京都アニメーションだけの表現で、とても大好きだし、素晴らしかったです!

 京アニがYouTubeで公開しているこの「制作風景」という動画では、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』といい作品が完成するまでを、順を追って映像で紹介しています。

 あの美しい世界が構築されていく様子も素晴らしいですし、「静止画がアニメになる」という基礎を知る上でも貴重なものだと思います!

制作風景 第1弾「総作画監督」

制作風景 第2弾「動画(中割り)」

制作風景 第3弾「ペイント」

制作風景 第4弾「美術」

制作風景 第5弾「3DCG」

制作風景 第6弾「撮影」

 

 

 

 

 

事件と作品と感想

 

 事件と作品の関係をどう捉えるか、ずっと考えていました。

 「京都アニメーション」にも、社会にも大きな影響を与えた事件を経て公開された本作。作品を観るに当たっても、感想を書くに当たっても、避けることは出来ないし、「触れざるを得ない」ものだと思います。

 考えた結果、感想の最後に別見出しで書くことにしました。

 事件前に作品が完成していたこともあるし、「ヴァイオレットの物語」それ自体を観る上では別の価値観を重ねるのは相応しくないのではないか、という思いがあります。
 一方で、「生きた証」であるというプレスリリースがあり、高い志と作品愛を胸に抱いて制作に携われた方々のいわば遺作に近しいものでもあり、それを無視することは作品と制作者への冒涜にもなりうるとも思います。

 また、社会的背景によって作品の認識や受け取り方が影響されるのは、アニメに限らずおよそ作品とされるものはすべてだと思うので、排除することもまた不可能だし、してはならないと思います。

 なので、作品の感想部分では事件と区切った感想を主として書きました。
賛否両論があるとは思いますが、作品の感想に関する私の見解で、やはり書かないわけにはいかないので、場所をとって書きました。

 

 

エンドロールの感動

 

 映画を観ていたら、こんな思いも不安も吹き飛びました。
 それほどに、物語に没入するし、映像世界に引き込まれます。

 だからこそ、「エンドロール」という緊張が緩むところで一気に感動が押し寄せるのだと思います。

 そして、本作ではそのエンドロールに「意味」があります
 亡くなられた方も含め、作品制作に携わったスタッフ全員をクレジットするという対応が上映前に公表されたことで、エンドロールの流れる文字列に大きな「意味」が加わりました。

 正直、亡くなられた方や負傷された方の名前はほとんど知りません。
 でも、「完成を目にできなかったのは辛いだろうな」と強く感じたし、改めて一人ひとりが関わって丹精を込めて作られた作品で、色々な思いが込められているのだと感じました。

 

 

 


 

 

 

以降、映画本編のネタバレあり

 

 

 


 

 

 

映画の感想
※ネタバレあり

 

イザベラとテイラーの物語

  

 この2人が主役の本作。
 彼女たちの言葉や心には、本当に感動しました。

 何から書けばいいのか悩ましいくらい、本当に良いエピソードばかりでしたから。映画を観終わって書いている今でも、ずっと余韻に浸っています。

 2人の関係と過去。
 イザベラの本名は「エイミー」で、貧しい彼女は捨てられた子供。テイラーを拾い、自身の妹として育てていくことを決意します。

 「何にもない僕のたった一つの大切」

 愛する妹を守るために、自分自身を捨て、名前を捨てたイザベラの苦しさ理解することはできないけれど、考えるだけでも辛いものだったのだろうな、と。
 なんだか、2018年に観た『さよならの朝に約束の花をかざろう』というアニメ映画を思い出すような、家族の絆が描かれていて、胸に響きました。

「これは貴方を守る魔法の言葉です。《エイミー》ただそう唱えて」

 イザベラがテイラーに当てて綴った短い短い手紙。
 色々と話したいことも、後悔も願いもあっただとうと思うのに、この短いフレーズに決めたところが秀逸だと感じました。キャッチーで、それでいて思いが伝わる手紙だなと思います。

 郵便配達員ベネディクトがテイラーに読んであげる時の、まるで魔法の言葉を聞いたかのように様子を変えるテイラー。そして、愛おしいものを抱きしめるように何度も繰り返しシスターに読んでもらうテイラー。
 その姿がとても、印象的でした。

 そんな経験と愛情が、テイラーを変える。
 「郵便配達人は《幸せ》を届ける」

 養護施設を抜け出してヴァイオレットを訪ねC.H郵便社にやってきた彼女。
 あの日、自分に《幸せ》を届けてくれたベネディクトに憧れて、郵便配達員になりたくて。「自分がされたから、他人にも」ってなかなか難しいし、それを純粋なまでに真っ直ぐできる彼女は、幼いとはいえ、凄いです。

 そして、手紙を書く。
 姉・エイミーへの手紙を書く。

 手紙を受け取ったイザベラの姿と描写に感動しました。

 名前を聞いた瞬間に、それまでまとっていた貴族夫人のオーラから、よく見知ったイザベラの姿が垣間見えました。手紙を読み、号泣する彼女。
 自分を覚えていてくれたこととか、手紙を書いてくれたこととか、本当に沢山の思いが胸の中で渦巻いて、それまで抑えていた感情が爆発したような、そんな印象を受けました。

 隠れていたテイラーが泣き、ベネディクトも泣き。
 それを観ていた私も、彼女たちからもらい泣きしました。

 物語のラスト。

 紫のドレスではなく、真っ白いドレスを身に着けたイザベラが、湖に向かって「テイラー」と叫んだ声が、風に乗ってテイラーの元に届くような演出。

「君の名前を呼ぶ、
 それだけで二人は永遠なんだ」

 絵に描いたようなラストかもしれません。
 でも、それで良かったし、だからこそ感動した部分も大きいと思います。

 

 

 

 

ヴァイオレット・エヴァーガーデン

  

ヴァイオレット・エヴァーガーデン。
 彼女の名前と存在を、愛しみを持って呼びたい。

 様々な人と出会う度に、新しい感情を知り、成長をしていく自動手記人形。そんな姿を見て、物語を知ることが本当に嬉しいし、感動です。

 本外伝で描かれたのは「友達」という存在

 学園に3ヶ月暮らす中で、イザベラの自由奔放な性格と触れていく中で、ヴァイオレットの中にもこれまでの規律や礼儀を超えた「友達」としての“距離感”が生まれていて、とても微笑ましかったし、優しかったし、嬉しかったです!

 イザベラと過ごす時間がとっても良かった!

 最初は心を閉ざしたイザベラ。
 でも、彼女はヴァイオレットに嫉妬し、しかし興味を持って近づいていきます。会えばどんな人でも心を開くヴァイオレットの性格が大きいのかなぁと思います。

 「普通の会話をしよう」というイザベラの言葉にキョトンとした表情を浮かべるヴァイオレットが可愛かったし、風呂に誘われた彼女が「友達はみんなそう」と言われ一緒に入浴したり。髪を結い遊ぶイザベラを注意しつつも、楽しそうな彼女。

 これまでのヴァイオレット像ではあまり想像できない姿。
 誰かに自分の髪を触らせたり、裸を見せたりってなかなか許しそうにないです。だから、ヴァイオレットの「新しい表情」を見られて嬉しかったです!

 ヴァイオレットの行動には本当に感動しました。

 中でも、「手」が良かった。
 劇中で何度も描かれた、「手を握る」シーン。

 咳き込むイザベラの手を一晩寝ずに繋いでいた彼女。
 さらに、手を重ねた彼女が発した「手を繋ぐと、心が温かくなる」という言葉に胸がジーンとなって、見ているだけなのに、私の心も温かくなりました。

 彼女の心の変化を感じられた、別れの場面。

 手紙を書き携えて学園の校門で出るヴァイオレット。
「代金はきっと払う」と伝えるイザベラ。
 それに対して、「代金を受け取りたくない」と自分でも理解出来ていない不思議そうな顔をしながら答えるヴァイオレット。きっと、友達としての気持ちが心の中に芽生えていたのでしょうね。

 そして、「また会える?」とイザベラ。
 観客である私が心の中で唱えた言葉を放つヴァイオレット。
「わからない。」
 「でも、お客様がお望みならどこへでも駆けつけます」

 とっても心が清々しい、良い別れの場面でした!

 

 

 

 

手紙で、想いを伝え”あう”

  

 イザベラがテイラーに当て書くと決意した手紙

 ヴァイオレットに自身の過去を話して「なんにもない」と伝えるイザベラに対して、それを否定して「私に友達をくれた」とヴァイオレット、本当に良い娘!

 沢山の想いを、あの短い手紙に込めたと思うと、涙が滲んできます。

 その手紙は、テイラーの元へ。
 そして、その短い文章が、テイラーの人生を動かす

 文字を勉強して、「エイミーへ手紙を書きたい」と慣れない手付きでタイプライターを打つテイラーの姿が印象的だし、その内容がまた感動的でした。

 これこそ、「手紙」のあるべき姿なのかもしれないと、そう感じました。

 手紙って「想いを伝え“あう”」ものなんだ、と。
 TVシリーズのエピソードの多くは「送る」だけでした。
 恋人へ、母から娘へ、妹から兄へ。

 「届かなくていい手紙はない」
 というヴァイオレットの言葉が印象的ですが、「返信」が描かれるのは極めて稀だったと思います。(王女の公開恋文くらい?)

 でも、今回の『外伝』では、「返事」が描かれます
 ここが1つ、大切な部分だろうし、90分と時間的制約が伸びたからだと思います。やはり、「やり取り」というのも手紙の大切な役割であり、意味であると思うのです。

 

 

 

 

題名と名前と物語

  

 「エイミー」

 本作の主題歌が茅原実里の「エイミー」だと聞いた時、何のことだろうと不思議でした。
 一般的には人名ですが、公式HPにはその名は掲載されていないし、原作も未読だったので一体なんだろう、と。「花の名前かな?」とか思ったりして。

 でも、映画を観て、意味が分かって感動しました。

 「エイミー」
 イザベラの過去の、本当の名前。
 そして、妹を守る魔法の言葉。

 この言葉も大好きだったし、主題歌の歌詞が凄い。
 TVシリーズのTRUEの歌うOPも、茅原実里のEDもそうでしたが、作品と物語をそのまま歌うかの如くの歌詞が、ジーンと耳に染みていきました。

 この作品、少し変わっていますよね。
 日本の作品で登場人物や主役の名前を作品名にすることって少ないと思うんです。
漫画作品とかは知りませんが、洋画とか必ず改題の邦題になりますから。

 しかし、本作は名前。
 作品名『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』も、
 主題歌「エイミー」も。

 私自身は、洋画好きというのもありますが、制作者が一番思いを込めて伝えたいというキャラクターが題名になっている作品名は大好きです。
そういう点では、「ヴァイオレットが主人公だよ、彼女の物語だよ」と訴えているように感じるし、エンドロールで流れる主題歌からは「これは彼女(エイミー)の物語だったんだ」と言ってるようで、余計に感動しました。

 

 

 

 

積み重ねた物語の記憶

  

 本作は初見でも十分楽しめます。
 けど、TVシリーズを見て物語を知っていると、十二分に楽しめる素晴らしい「外伝」に仕上がっていました!

 とにかく、ちらちらとTVシリーズやヴァイオレットの物語が頭に浮かぶ行動や台詞が随所に散りばめられていて、嬉しかったし、それで感動してウルッと視界が滲みました。

 上述したように、ヴァイオレットが歩く姿や、TVシリーズを飾った美しい劇伴、背景等々をもう一度観ることができただけで、感無量とさえ感じました。

 イザベラとの会話がとても大きかったです。

 拗ねるイザベラに対して「私は孤児です」と一言。
 この一言だけで、ヴァイオレットが歩んできた壮絶な戦場での日々が脳裏でフラッシュバックして、ウッとなり、一気に物語が深みに達したように感じました。

 また、「会いたい人とかいないの?」という問い。
 いる。ずっとある人に会うためにこの仕事を続けて、ある感情を伝えるためにこの仕事をしているんだもん。ギルベルトの名をだざすとも、宝石に視線を落とすだけで分かる、その気持ち、素晴らしい演出です。

 また、テイラーがC.H郵便社で「働きたい」といい、ヴァイオレットが「私からも」とお願いをした場面。

 ヴァイオレットが入社する時の映像を重ねるという、これまた嬉しい演出。
 素晴らしかったですね。

 

 

 


 

 

 

 映画の感想は以上です!
 初見でも十分に楽しめるので、ぜひ劇場に足を運んでいただきたいです!

 写真は、購入したパンフレットと、来場者特典の短編『アン・マグノリアと十九歳の誕生日』、そして原作です!

 それから、昨年2018年に行った『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の原画展の感想と写真を投稿した記事がこちらです。

 また、9月25日には京アニのファン感謝イベント「私たちは、いま!」の特別原画展に行ってきました!

 

 

 

 最後まで読んでくださり、
 本当にありがとうございました!!

 

4 COMMENTS

ara-meosto

>うーじ( id:majiuji )さん
コメントありがとうございます!
返信が遅れてしまい申し訳ありません。
京都アニメーションさんは、過去作品も含めて、インタビューやHP等から「誰がどんな思いで作っているか」という《スタッフの顔が見える》ような感覚なので、より作品からの想いが印象でした。
90分ということもあり、TVシリーズや原作以上の「物語」と「登場人物の感情」が深く濃く描かれていて本当に素晴らしい作品だったと思います。
「映画館で観る」からこその没入感とか音楽の感覚とかも含めて、とても良い劇場版でした!
こちらこそ、ありがとうございました!

返信する
majiuji

ara-meostoさん
本日やっと観賞できました。そして、記事を読ませていただきました。改めて素晴らしい記事内容です。有難うございます。
事件の事は私も切り分けて考えるべきかなと思う一方、そうなり得ない部分もありクレジットの際には、とても悲しい気持ちにもなりました。また、改めて、どれだけたくさんの方の努力や仕事があって、この素晴らしいが出来ているのだと思いました。
作品については、ここでは書きませんが、ara-meostoさんの書かれている点、とても強く感じました。登場人物みんなの成長や時間の流れも感じられ楽しめましたし、バイオレットの今後は与える立場的な部分がとても印象的でもありました。上映期間も延長されるようですし、また、観に行きたいなと思っています。ありがとうございました。

返信する
ara-meosto

> うーじ( id:majiuji )さん
コメントありがとうございます!
「せっかくなら初日に観たい」と思ったので、行ってきました。普段は空席も目立つのに今回はほぼ満席で、注目度を感じました。
ぜひぜひ、うーじさんも楽しんでください!

返信する
majiuji

もう行かれたんですね。自分も近々行こうと思っています。記事はそのあと読ませていただきます!

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