※ネタバレなし。
※画像は予告映像のキャプチャです。
2019年6月7日鑑賞
海獣の子供
Children of the Sea
【評価:4.7/5.0】
【一言】
海を飛び、魚と躍る。
果てしなく壮大な《“生命”の秘密》
鮮明な透明度と彩度を誇る海の中。
STUDIO 4℃の線と描写が駆け跳ねる!
物語は凄くて、内容は難しい。
海、人間、宇宙を貫く生命の神秘。
【Twitter140文字感想】
【 #海獣の子供 】
海の少年と陸の琉花のひと夏。
透明度と青色が織りなす雄大な海原。
躍動感溢れる生き物達の繊細な描写。
劇場の銀幕が水槽のガラスに変わる!「凄いものを観た」
感覚的興奮。
生命の胎動と宇宙の誕生に立ち会う。
壮大な《命への賛歌》に心が呑まれ、映像と音楽に溺れる。 pic.twitter.com/m2CTCpRPyj— ArA-1 (@1_ARA_1) 2019年6月7日
【目次】
STORY&STAFF
中学生の琉花は、夏休み初日に部活で…[中略]..問題を起こしてしまう。母親と距離を置いていた彼女は、長い夏の間、学校でも家でも自らの居場所を失うことに。そんな琉花が、父が働いている水族館へと足を運び、両親との思い出の詰まった大水槽に佇んでいた時、目の前で魚たちと一緒に泳ぐ不思議な少年“海”とその兄“空”と出会う。
映画公式サイト
予告動画
監督:渡辺歩
原作:五十嵐大介
制作:STUDIO 4℃
音楽:久石譲
主題歌:米津玄師「海の幽霊」
キャスト:芦田愛菜, 石橋陽彩 and more.
上映時間:111分
日本公開:2019年6月7日
配給:東宝映像事業部
公式サイト
映画の感想
感想外観
STUDIO 4℃のアニメ作品!
原作は「文化庁メディア芸術祭」で受賞した漫画、音楽は宮崎駿作品を手掛ける久石譲という豪華なアニメーション映画です!
面白かったけど難しかったです!
なんだか、ただただ観ていることしか出来なかったような感覚です。
海と生き物の描写に圧倒されました!
どこまでも青く澄んだ海の中、そこで生きる生き物たちの躍動感溢れる描写はとにかく生き生きとした色に満ちていて、素晴らしかったです!
錆が醸す出す港町の風景と、海中の光景が対照的で本当に印象的でした!
映画を観た感想は、「凄いモノを観たな」だけ。
小さな少女の目を通して見るのは、芸術と科学が融合した、哲学と思想が混ざったような、あまりにも壮大な物語とその内容。
「生命の誕生と神秘」を言葉と音と映像で唄う。
命の連鎖と円環、そしてガイア理論的な“生命”描写と宇宙をも貫く神秘の《祭》。
眼の前のスクリーンに映し出されるのは、圧倒的な描写で描かれる「生命の息吹」を誕生から躍動まで。語りかける言葉よりも、伝えるアニメーションが本当に凄い!
物語はシンプルな構図と濃い中身。
生活することが不器用な少女が、「海に育てられた少年」とであう“ひと夏”の思い出を描き出す。
夏の日差しと少女の感情が重なるような、うだるような暑さ。そこに投げ込まれた少年の純粋さと海の涼しさは、観ていてとっても気持ちよかったです!
「生命」というあまりにも抽象的なものを前に、現実に根ざしたような港町で繰り広げられるファンタジーがとっても良かったです!。
主人公・琉花。
彼女を演じたのは、芦田愛菜。
正直、驚きました。 あんなにも「声の演技の幅」があるなんて知らなかったし、その演技はあまりにも違和感ないどころか上手くて感心を通り越し、感動に至りそうでした。
この作品、どうなのでしょう?
「凄い」というのは、感覚?神経で自然と分かります。
でも、観ているときは「映像」と「音楽」に溺れるような感覚でした。
久石譲さんの無意識下に語りかける雄大な音楽と、STUDIO 4℃の繊細で高品質の映像。
それを楽しんで、あとは流れ込む《生命のダンス》に身を委ねればいいのかな~と。理解不能でも感覚で観る、『2001年宇宙の旅』のような感じです!
米津玄師 MV「海の幽霊」
青く深い《海》の美麗な描写
「アニメーションに飲み込まれる」
この表現に勝るものは無いんじゃないか、という程、スクリーンに映し出される雄大な海とそこに生きる生き物の描写・映像に感動しました!
深海と浅海を描き分け、生き物の躍動感と“生命そのもの”を描き出すような映像は、それだけでも一見の価値があると強く思います!
海の描写。
場所によって、時間によって、刻々と変化する母なる海の「美しさ」を全て切り取った、まるで油彩画であるかのようなアニメーションが本当に凄いです!
浜辺に寄せる波、光が反射する波紋の影。
深海へ潜るにつれて届かなくなる太陽光。
浅海に満ちるサンゴと魚の明るい海底。
凪状態の静かな海、嵐の中の荒れた海。
海の様々な表情を圧倒的な画力で描き出した、素晴らしい風景アニメーションに心が動かされました。
生き物の描写。
海と水族館で生き暮らす、多種多様な生き物たち。
巨大な身体を目一杯に伸ばすザトウクジラ。
見事な魚影を生み出すイワシの群れ。
麗しい瞳と力強いヒレで水を蹴る亀。
鮮やかな風景を生むサンゴと熱帯魚。
不可思議な格好で人々を驚かせる深海魚。
水中に差し込む光が照らす生物の色、そしてSTUDIO 4℃の独特な映像──揺れ動くたくさんの線──の効果も相まって、生き生きと躍動感溢れる《本物》の生き物がそこにいました。
まさに水族館。
映画館のスクリーンが、水族館の水槽と観客を隔てるガラスになったような生命力を感じました。
『 #海獣の子供 』
観客は映画館の客席にいます。
けど、上映開始してそれは一変。劇場の[スクリーン]が、
客と魚を隔てる《水槽のガラス》に。
目と星を繋ぐ《望遠鏡のレンズ》に。観客と“向う側”とを結ぶ透明な仕切り。
それだけ、画面奥に広がる世界の描写が凄まじく綺麗なんです! pic.twitter.com/yiDyMFjCna— ArA-1 (@1_ARA_1) 2019年6月7日
生命の神秘を描き唄う賛美歌
「凄い作品を観た」
言語化しずらい、感覚的な感想。
この感想と衝撃はずっと記憶に留まって残るんだろうな~と。
映画本編を観ている最中にもそう思ったし、エンドロール終わったあとでもしんしんと残っていたし、感想書いている今でも胸の中で《海》が唸っています。
なんだか、『2001年宇宙の旅』を観た後の心境に似ています!
《生命の躍動》と《世界の神秘》
「科学的な宗教画」を観ているような、「芸術的な哲学」を聴いているような、とても壮大で複雑なのにシンプルな、海馬の記憶を呼び起こすような、凄まじい作品でした。
鮮明な映像と、雄大な音楽と、脳に響く言葉で綴る内容。
人間という存在と超越し、沢山の生命を育む母なる海と一体になり、無数の星と銀河が瞬く宇宙を垣間見るような、一枚の絵画的映画。
命の連鎖と円環、そしてガイア理論的な“生命”描写と宇宙をも貫く神秘の《祭》。
生命の誕生、星々の誕生、子孫の継承と繁栄、銀河の興亡。
ネタバレを避けるために詳細を省きつつも書くと、ただの単語の羅列になってしまいますが、この壮大で意味不明だけど感覚的に伝わる感じが、なんとなく分かるのではないでしょうか。
正直、全て理解できたとは言えません。
内容の理解も朧げなままに、ただただ映像の鮮明さと音楽の波に飲み込まれていくような感覚は、まさに『2001年宇宙の旅』を初めて観た時の感覚そのままです!
でも、今ある知識と感覚と経験を携えて、頭の中の神経全てで思考するような、もしくは感覚に全てを委ねるような、そんな見方で構わないんじゃないかな、とそう思います。
ひと夏の思い出と物語
中学生の夏、不思議な出会いと奇跡的な体験。
生きることに不器用な少女が出会った、「海から来た少年」とのひと夏の思い出。
《青春》とは文字通り、真っ青な海の中で、満天の星空の下で、錆びた鉄の匂いがしそうな港町で、描き出される瑞々しい物語がとっても良かったです!
アニメらしい青らしさと、小説のような感受性の豊かさは、原作が「漫画」という媒体だったからなのでしょうか!?
上手くいかない毎日を過ごす少女・琉花。
彼女の前に突然表れた魅力的で驚きと新鮮さに満ちた世界への扉。
《運命》と呼ぶにはあまりにもチープだし申し訳なく感じる、「海の少年」。
彼が探す生命の秘密と神秘の根源。
展開していく物語よりも、両者の出会いによって移ろいゆく感情的な面、そして相手への意識が芽生える様子がとっても良かったです。
上で書いたように、抽象的で難しそうな内容。
でも、その語り部たる主人公・琉花の物語はシンプル。
あんまりにも壮大な物語にとって、それを語る地盤は小さいほうが良い。
軸と構図と展開は至ってシンプルで、漫画&アニメ作品的には「現実」と謳っても差し支えないような、藤沢と江ノ島を舞台にした物語です。
この「小ささ」とか「身近さ」が大切なのだろうと、強く思いました。
STUDIO 4℃のアニメーション
1番最初にも書きましたが、STUDIO 4℃らしさ全開!
圧倒的で繊細な映像描写と表現は、素晴らしいの一言に尽きます!
社名の4℃は水の密度が一番高い温度で、作品クオリティーの高さを保証する。
STUDIO 4℃会社案内
引用したのは、「STUDIO 4℃」という社名の由来。
なんだか、この作品を作るべくして制作したかのような、そんな“縁”を感じます!
STUDIO 4℃の代表作といえば、『鉄コン筋クリート』、そして『マインド・ゲーム』でしょう。独特な映像表現が印象的で、物語を描くと同時に見事な装飾までもたらしてます。
本作でも、その特徴が随所に観られて、むしろ頂点とも呼べるような映像を堪能することができました!
TEKKONKINKREET Trailer
まず、「線の多さ」でしょう!
特に人物の輪郭とかが印象的ですが、髪の毛や顔のパーツ、さらには走る時の描写など、線の多さと緻密な描き込みが本当に凄いです。まるで銅版画のように精緻なラインが登場人物を輪郭づくるのです!
個人的に、この描き方が本当に好きなんですよね。
同スタジオの『ハーモニー』はシャープな線が印象的でしたが、やっぱりこの煩雑さの体現みたいな描写が大好きです!
それから、背景。
まさに『鉄コン筋クリート』のような空気が臭ってきました。
本作の舞台は港町。
家や建物、電柱や船等々には茶色い「錆」が生じ、さらに活気と雑踏が交じる“生きてる感じ”が背景から伝わるんですよね。
両作とも見ていれば、きっと分かるはずです!
それに、その「錆」の茶色い街並みと対照的な、鮮やかな海の風景は本当に印象的でした!
他にも、崩れるほどの疾走感で描き出される「スピード」とか、心情や場面で大きく表情やデザインを変える顔とか、色々と繊細な演出&描写がありました!
俳優=芦田愛菜の演技が凄い!
上に挙げた『鉄コン筋クリート』や『マインド・ゲーム』もそうだし、本作でもなのですが、有名な俳優を起用しているところが、それも主役級のキャラクターなのが凄い(?)です。
『マインド・ゲーム』では今田耕司が、『鉄コン筋クリート』では蒼井優がそれぞれ主役を演じているし、本作『海獣の子供』では芦田愛菜が中学生の女の子・琉花に声を当てています。
芦田愛菜が本当に凄かったです!
上手いというか、凄いんですよね。本物の声優と変わらないというか、下手したらそれ以上のシーンもあったりして。
事前に配役を知っていたので、正直、「大したことないやろ」と思っていた部分はあります。けど、映画が始まったら芦田愛菜だということは全く意識しなくなりました。
静かなシーンも、感情を溢れ出す場面も、泣き叫ぶような感情や、言葉にならない悲しみとかも、どのシーンもとっても上手で、本当に驚きました!
昨今、「声優以外の起用は反対」みたいな風潮あるじゃないですか。
あれは、少し言い直すべきです!
確かに芸人とか芸能人に分類される人物は失敗する場合が多いです(例外はもちろんある)。でも、「俳優」の場合は違うことも多いです!
本作『海獣の子供』の芦田愛菜、『鉄コン筋クリート』の蒼井優、他の映画でも最近見た『プロメア』の松山ケンイチや堺雅人等々、素晴らしい「声の演技」をされている場合も多いですし!
音楽と作品の雰囲気
映画作品内の劇伴を手掛けているのは、久石譲。
スタジオジブリで宮崎駿作品を手掛けていたり、数々の邦画やドラマの音楽を手掛けられている、有名な方です!!
予告PV等で流れている音楽を聴くだけでも、久石譲の荘厳で表情豊かな音楽の片鱗を垣間見ることが出来るわけですが、本編内でも凄かったです!
なんというか、「響く優雅な音楽」なんですよね。
豊かとか厚みという表現がぴったりというか、音色の幅が広いというか。まぁ、他の作品でも聴いたことある方は分かると思います。
それから、主題歌は米津玄師
今まさに話題&人気のシンガー・ソングライターです!
いい歌でしたよ!
当然、「海の映画」を観たエンドロールでこの曲を聴くわけですが、彼の声がそのまま波間に揺らめくような響きで、とても印象的でした。歌詞も、何回か読んでいると“味”と“思い出”が滲んでくるようです。
映画全体の雰囲気。
結局、物語はシンプルで、映像が綺麗で、音楽が豊かで、でも内容はちょっと難しいような作品でした。
個人的には、好きな部分の雰囲気・空気を目一杯に感じれば良いんじゃないかな~と思います。アニメーションとか音楽を聴くだけでも、この映画の価値を十分に体感できると思います!
ぜひ、「海の雰囲気」を感じて頂けると嬉しいです!
以降、映画本編のネタバレあり
映画の感想
※ネタバレあり
この作品の背景に何を見る?
章タイトルが曖昧でゴメンナサイ。
目次でネタバレは避けたいのです。
で、どんな内容かと言えば、文化庁メディア芸術祭での贈賞理由コメントに違和感を持ったので、それと絡めて簡単な感想と私自身の考えを少し書こうと思います。
本作の原作『海獣の子供』は2009年の第13回文化庁メディア芸術祭のマンガ部門において優秀賞を受賞しています。
そこの贈賞理由に
環境危機を受け、「文明」に対する批判、懐疑が世界中を覆っている。人類はこのままでいいのか? 私たちは間違っていなかったのか? そんな人類すべての恐れや想いを五十嵐大介は美しいファンタジーに変えた。
第13回文化庁メディア芸術祭
と述べられています。
でも、これって違うんじゃないかな?と。
原作を読んでいませんし、本作の理解も到底浅いと思いますが、少なくとも「環境問題」を絡めるべきではないと私は考えます。
確かに、軍関係者との密談や経済利益を優先するような言動、海岸に打ち上げられた大量の深海魚等の内容は、環境問題とも通じそうです。
けど、本作のテーマって「生命の尊厳」とか「命の壮大さ」とか「海の美しさ」とか「中学生の夏」とかではないでしょうか?
科学の目を通しては決して見えない、素敵な景色を私達の前に描き出してくれたり、生命と宇宙の繋がりを繊細な描写で視覚化して見せたり。
平たく言えば、「自然の素晴らしさを体感する」ことがこの作品の重要なところで、だからこそ中学生という主人公の目を通した物語なのだと私は思いました。
物語を見て、映像を観てその美しさに惹かれて、その中で生命の神秘を感じることこそが大切だと思います!
物語:少年と少女の出会いと日々
物語の導入は、夏休みの始まり。
夏休み初日から上手くいかず、“飛べなくなった”中学生の「琉花」。
彼女が水族館で出会った、水槽の中を“飛ぶ”不思議な少年「海」。
※区別をつけるため、「海(人物名)」は「ウミ」とカタカナ表記しますね。
運命的な出会いだということが、心の琴線を高く鳴らすように響きました。ウミの無邪気な笑顔が本当に明るくて、とっても印象的でした!
次の日。
学校の教室で“誰か”から隠れる琉花。そんな彼女を見つけ出すウミ。そして日が落ちた夜の海で「ヒトダマ」なる隕石を目にする2人。
映画『君の名は。』で星降る夜に「それは、まるで夢のような景色だった」という台詞がありますが、まさにそれを“体験”したようなシーンでした。
それからウミが「光っているものは、見つけられたがっている」という言葉が、昼間の琉花のこと、隕石のこと、を含めてとても心に残っている風景でした。
ウミの兄「空」とも出会う。
ウミ、ソラ、琉花の3人で過ごす日々。
ウミと見た隕石のこと、夕日の砂浜でソラと出会ったこと、母親から逃げるために船で沖合にでたこと。
これまでの平凡な日常と、何も無いはずの夏休みがガラリと楽しいものになった、素晴らしい時間! 映像も明るくて見ていてワクワクするような場面が何度も登場して、嬉しかったです!
物語:少年が抱える苦痛と運命
ソラとウミの背景が琉花の父から語られます。
「彼らは、ジュゴンに育てられた」
この事実を知った時は驚きましたし、『海獣の子供』という作品のタイトルの意味がここで判明して、ちょっと嬉しかったです!
てっきり主人公は琉花なのかと思っていましたが、物語の題名&主軸にいるのは、ソラとウミなのですね。
彼らが抱える大きな苦悩。
長く海中にいたことによる健康的な面での問題、そして「海に育てられた」ゆえの短命という宿命。さらに、クジラの歌声が呼ぶ《誕生祭》への探求。
そんな彼らの行末を予見するかのように、海岸には沢山の深海魚が打ち上げられ、荒々しい台風が接近。どんどんと暗くなる空模様と荒れ狂う波。
そして、ソラが消えてしまうという、悲しい事故まで起きてしまう、映画の中盤。
どんどんと物語が重たく辛く苦しい方角に進んでいっているようで、見ていて胸がズキズキ・ドキドキしていました。
それでも、琉花の目を通して物語を観る観客としては、彼女の胸の奥底に眠る「好奇心」とか「心の強さ」というような、目に見えないものに助けられていたように感じます。
ソラとの別れ。
どこか浮き世離れした、飄々とした彼は、物事の状況を正確かつ冷静に見つめるキャラクターだった彼。
そんな彼でも/だからこそ「生」への執着が強かったのに、海の中へ入って消えていく時の姿はとっても狼狽えつつも、受け入れ諦めたような背中だったのが、本当に辛かったです…….。
「ウミのために」
自らの身を犠牲にして琉花に託す当たり、兄だなぁと。
命を伸ばすために様々な研究や調査を受けてなお、「科学では見えないもの」を体内に留めるソラとウミの姿は、綺麗な海の景色の中にあって、とても切なく感じました。
物語:少女と少年の結末
「私は宇宙」
《誕生祭》の中で琉花がそのことを感じ、存在が消滅しそうになる中に現れたウミ。彼は、琉花の体内の隕石を自ら引き受けて体内に入れる。
収束する《誕生祭》
気がついたら、海を漂っていた琉花。
琉花が消えてしまうのではないか、本気で心配したけど、この結末もやっぱり悲しい。ソラは、隕石をウミに託したわけだけど、どんな形で用いようとしていたのでしょう?
そして、通常の生活に戻る。
夏の思い出を振り返る。
世界の神秘に触れた夏。
言葉では伝わらない約束をした夏。
うだるような暑さがまたやってきて、でも琉花の心はこれまでに無いくらい、晴れ晴れしているように感じました!
エンドロールが終わって。
母親が第二子を出産し、琉花がその「へその緒」を断ち切る。
「命を断つ感触がした」と琉花。
母親との物理的な繋がりは断ち切られても、それはむしろ「命が生まれた産声」への第一歩なのではないかと、そう思った映画でした。
物語と映像:生命と海の”誕生祭”
琉花が、ソラから口移しで体内に留めた隕石。
そして、大きなザトウクジラに飲まれた彼女。
直接の「歌」が彼女のお腹から響き出す。
繊細で鮮烈な映像で描き出される「生命」。
これは、本当に凄かったですね、なんとも言葉に現し難いです。
水に溶けた生き物の記憶が映像イメージとして描き出されます。
小さなシナプスが繋がっていくような、
細胞の卵が次々と分裂していくような、
それが宇宙の誕生と同調するような。
本当に、奇跡的としか言いようがない映像が次々と映し出されていきました。美しい映像と、哲学的・科学的な移ろいが本当に神秘的でした。
小さな細胞だったものが気がついたら大きな宇宙になっていて、いつの間にか「私=宇宙」という構図にもなっていて。
地球そのものが大きな生命体であるという「ガイア理論」や、宇宙を結ぶ光のウェブと神経の構造が似ていたり、そういう、哲学的な内容を、見事な映像で表現していましたね。
映画内で何度も触れられた言葉「どこから来て、何になるのか」。
これはゴーギャンの絵画『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』という作品名が頭に浮かびます。「死と生」を凝縮したような作品として、コレは結びついてしまいました。
世界の秘密を描く物語。
命のわけを語る物語。
誕生祭の様子はとにかく圧巻。
わけも分からず、ただ映像と音楽に飲み込まれていく感覚は、まさに『2001年宇宙の旅』の感覚そのまま。
本当に、凄かったです。
本作ではパンフレットを購入しました!
中身は美しい映像がそのまま詰め込まれたかのような構成になっていて、購入して良かったです!
ただ、サイズが大きくてバッグに入らない(笑)
まぁ、嬉しいことなので構いませんが!
最後まで読んでくださり、
本当にありがとうございました!!