【過去記事について】お知らせ&お願い

【芸術】『第22回 文化庁メディア芸術祭 受賞作品展』:《アート部門》デジタルからバイオまで!!

2019年6月2日訪問

第22回 文化庁メディア芸術祭

 

 
【一言】

経産省が主導する「クールジャパン戦略」の一貫、文科省は文化庁のメディア芸術祭、第22回の受賞作品展です!

・アート
・エンタメ
・アニメ
・マンガ
4部門の作品は、様々なジャンルがギュッと凝縮されていて、とっても面白いです!

知らない分野の作品を楽しめるも、この芸術祭の魅力かなぁと!

 
【Twitter140文字感想】

 

 

 

 

芸術祭の概要と内容

 

文化庁メディア芸術祭

 

 内閣と経済産業省が推進する「クールジャパン戦略」の一翼を担う、文部科学省-文化庁が実施する国際的なアートイベント・企画です。

以下4部門で選定が行われます。

◆アート
◆エンターテイメント
◆アニメーション
◆マンガ

 以上の4部門から、応募作品の中から優れた芸術作品を選出し表彰。さらにシンポジウム等まで包括的に行うフェスティバルです!
 

文化庁メディア芸術祭はアート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門において優れた作品を顕彰するとともに、受賞作品の鑑賞機会を提供するメディア芸術の総合フェスティバルです。平成9年度(1997年)の開催以来、高い芸術性と創造性をもつ優れたメディア芸術作品を顕彰するとともに、受賞作品の展示・上映や、シンポジウム等の関連イベントを実施する受賞作品展を開催しています。
文化庁メディア芸術祭実行委員会

【関連リンク】
公式サイト:こちら
文化庁メディア芸術データベース:こちら
メディア芸術祭カレントコンテンツ:こちら

 

 

第22回 文化庁メディア芸術祭

 

 第22回目を迎えた文化庁メディア芸術祭。

 簡単な概要としては、
・募集:2018年8月1日 ~ 10月5日
・景品:[大賞] トロフィー、副賞100万円
・会長:宮田 亮平(文化庁長官)
です。

第22回は、世界102の国と地域から4,384点に及ぶ作品の応募がありました。文化庁メディア芸術祭は多様化する現代の表現を見据える国際的なフェスティバルへと成長を続けています。
文化庁メディア芸術祭実行委員会

 それから、毎年6月頃に行われる受賞作品展。
 今年2019年は従来よりも会期が延長されて16日間になり、舞台も国立新美術館からお台場の日本科学未来館へ変更になりました。

受賞作品展では、多様な表現形態を含む受賞作品と、功労賞受賞者の功績を一堂に展示するとともに、シンポジウムやトークイベント、ワークショップ等の関連イベントを実施します。国内外の多彩なクリエイターやアーティストが集い、“時代(いま)を映す”メディア芸術作品を体験できる貴重な16日間です。
文化庁メディア芸術祭実行委員会

会場:日本科学未来館・フジ湾岸スタジオ・他
会期:2019年6月1日~6月16日(10:00~17:00)
料金:無料
公式サイト:こちら
受賞作品集(電子版):こちら

 

 

 

 

 

芸術祭の感想

 

 文化庁メディア芸術祭の受賞作品展に行ってきました!
 今年は会場が国立新美術館からお台場に変更になったので、少し心配していましたが、展示や会場に関しては何も問題なく楽しめました!

 運営に関しては「作品紛失」という人為的ミスもあったりして、色々と大変ですね。その件に関しては、今回の受賞作品の中でも抜群に好きな作品だっただけに、非常に残念です。

 まずは全体的な感想。
 やっぱり、面白いですよ。経産省と内閣が主導する「クールジャパン戦略」の一貫に含まれるこの芸術祭ですが、複数ジャンル一堂に展示してくれるのは、嬉しいものです!

 というのも、私自身は「アート」と「アニメ」には強い興味があって、「エンタメ」はそこそこ関心があり、「マンガ」には対して興味が皆無なんですよ。

 そういう、場合によっては興味ない分野の作品も見ることが出来るのが、分野複合的な芸術祭の面白さだと思います!
 それに、こういうのは「食わず嫌い」なだけで、実際に観てみるととっても面白いんですよね!

 ただ、批判的な部分も少なくないかなぁと。
 まず、芸術関係のお仕事をされている方から「雑すぎる」と聞いたことがあります。そして、私自身もそれを強く感じます。

 以下の作品紹介における4分野の内容を見ると分かるのですが、特に「アート」と「エンタメ」が雑すぎるんですよね。その中身があまりにも色々なものを含みすぎていて、分類になっていないとすら思えます。
 逆に、「アニメ」と「マンガ」はしっかりと別々に分類しているんですよね。

 その話を聞いた方は「文化庁の《メディア芸術》に関する認識の甘さ・雑さが露呈している」と評価していらっしゃいました。
 個人的には、やっぱり背景に「クールジャパン戦略」があるのかなぁと。経産省主導なので「対外販売」が主軸にあるので、アニメやマンガ等の「コンテンツ」としてプロモーションしやすい分野を強化しているのかなぁ~と。

 もう一点、私個人的な批判としては「差がありすぎるのでは?」という事。

これは「アニメ」と「マンガ」で顕著なのです。まぁ、私自身がアニメを毎クール30本観ているという、量的な問題かもしれませんが。

 「アニメ」と「マンガ」の作品概要紹介や贈賞理由。
 これ、他の「アート」や「エンタメ」ではその作品の表す主題や社会的な意義・意味をしっかりと解説しているように思えます(素人の私の目には)。

 しかし、「アニメ」と「マンガ」の解説を見ると、「『あの花の』岡田麿里が~」とか「第◯回文化庁メディア芸術祭でも受賞している△△△の~」とか、作者個人の資質を重視しているように思えるんです。

 まぁ実際、私自身もアニメ作品を他人に紹介する時は、スタッフとか制作会社から入ります。でも、「芸術」として観る時にそこをピックアップするのは違うんじゃないかな~と。
 審査はアニメ制作の第一線で活躍している方等がされているようなので、専門性とかの面では問題ないように思うのですがね。

 あとは、「コレが全てと思うなかれ」ですね。

 この文化庁メディア芸術祭って応募型の芸術祭です。
 つまり裏を返せば「応募してなければ存在しないと同様」な訳です。

 米国のアカデミー賞の「公開された全映画」みたいな対象範囲ではないので、例えどんなに素晴らしい作品があっても、応募されていないことには陽の光が当たらないんですよ。

 個人的に現代美術やメディアアートの展示や大量のアニメを観ている身としては、もっといい作品はいっぱいあります。なので、そういうのが評価の舞台に上がっていないのは悲しいなぁと。(まぁ、作者の都合とか色々あるでしょうが)

 なんだか、批判的な内容になってしまいましたね(笑)

 でも実際には凄く面白いし、普段は触れない分野の作品も観られるし、「大賞」と銘打たれた作品ばかりが並んでいるので、(一応)クオリティは高いと思うんです!

 あと、今回は会場がお台場でしたが、悪くないですね。
 少し遠いのが欠点ですが、それを除けば「日本科学未来館」の外観がガラス張りで国立新美術館に似ているし、海の近くってだけで気分が良いですよね。
 とかいいつつ、国立新美術館と違って会場が複数だったり展示がバラバラなのは良くないと思いますけど。

 

 

 

 

展示作品の紛失

 

 今回の第22回受賞作品展では、「作品の紛失」という問題が発生しました。

 私がどうこう書くのは本当に申し訳ないですが、書かないわけにもいかないので、作家さん自身のTweetを引用掲載させていただきます。

・メディア芸術祭公式サイトでの謝罪
・「ねとらぼ」の記事

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

展示の紹介

 

 展示作品の紹介です!
 基本的に全て撮影可能だったので、写真を合わせて紹介していきます!

 それでも、ぜひ掲載した動画を見てください!
 作家本人の投稿なので、作品によっては本編全てアップされているものもあります!

 なお、作品解説は公式サイトから引用しています。贈賞理由については、引用箇所の「作品概要&贈賞理由」からより詳細な説明を読むことが出来ます!
 本来なら、「贈賞理由」が最も重要なのでしょうが、紹介している余裕がないので、本記事では省きます。(引用だらけになってしまいますしね)

 本当は全文紹介したい!
 特に現代アートは「コンセプト」がとにかく大切なので、ぜひご自身で読んで頂きたいです!

 
◇アニメーション部門の感想👇

◇エンターテイメント部門の感想👇

◇マンガ部門の感想👇

 

 

《アート》部門

 

アート。
アートの定義に関しては、芸術祭の応募要項にて

インタラクティブアート、メディアインスタレーション、映像作品、映像インスタレーション、グラフィックアート(写真を含む)、ネットアート、メディアパフォーマンス等
文化庁メディア芸術祭実行委員会

となっています!

 全体的な印象としては、デジタルから電子的なもの、そしてバイオアートまで幅広く集まっていましたね。
 個人的に大好きなメディアアートの祭典「Media Ambition Tokyo」でもそうですが、「人工知能」とかは大きな問題点に挙げられる傾向にあるようですね。

 

 

大賞
作品名Pulses/Grains/Phase/Moiré
作 家古舘健
ジャンル:サウンドインスタレーション

300台を越えるスピーカーとLEDライトを使用…[中略]…各個のスピーカーは一定の規則にしたがった単純なクリック音とLEDの発光しか行わないが、それらが鑑賞者を囲うように壁面一体に設置され、音と光が重層的に合わさることで、複雑なレイヤーが存在する新たな音響環境を形成する。
作品概要&贈賞理由

 音と光で見せるインスタレーション作品。
 展示されていた会場は小さな教室くらいの広い空間で、照明は一切なくまさに「暗闇」が相応しい一面の闇です。

 そこに、「バチバチバチ」と音を立てながら赤いLEDライトが光ります。一見すると平行線とか斜線とか規則性があるように見えるのですが、「全体」や「間隔」とかを俯瞰すると不規則に感じてきます。

 作品が曲面を描く壁に沿って設置されています。
そのせいでなかなか不思議な空間に仕上がっています。作品を正面に立った時に、背中を除く全方位からクリック音が聞こえてくるので、かなりハマる空間です。

 周囲の他人も一切見えないほどの暗闇&LEDライトの光度なので、完全に一人っきりで観ているような感覚に陥るのも面白い体験でした!(私が観たときが空いていたのかな?)

Pulses/Grains/Phase/Moiré

 

 

 

優秀賞
作品名Culturing <Paper>cut
作 家岩崎秀雄
ジャンル:メデイアインスタレーション、バイオアート

バクテリアを使用した作品。始めに、作者自ら…[中略]…論文を書き、その論文中の主観的な記述部分を切り取る。…[中略]…そして、研究対象としたバクテリアを「主観的記述が切り取られた部分」に植え付ける。バクテリアは、論文の空白部分をゆっくり運動しながら増殖していく。
作品概要&贈賞理由

 私の大好物のバイオアートです!
 しかもこの作品は面白いですね、あるバクテリアに関する論文を書いて、それをバクテリアに食べさせるという! しかもビジュアル的に面白い図表をメインにしたりと、視覚的に楽しいです!
 文字と生物の融合やコラボレーションって、どこか美しいですよね! そもそもアルファベットが曲線や直線や装飾があって綺麗だし、生物は言語化できない感覚的な美しさがあります!

 作品の問題意識というか、制作意図も面白い! 「客観的なはずの論文が実際には主観的な表現で満ちている」ことを指摘し、その部分をあえて切り取り研究対象のバクテリアに侵食させるという!
 贈賞理由にも書いてありますが、「学生時代を思い出させる」とはまさに同感です(笑)

Culturing ‘Paper’cut, 2018 version (Hideo Iwasaki)

 

 

 

優秀賞
作品名datum
作 家平川 紀道
ジャンル:メディアインスタレーション

映像データの各画素を、空間を表すXとY、色の混合要素R、G、B、フレーム数にあたる時間Tの、6つの数値を空間座標として持つ点として捉えると、映像中の全画素を6次元空間に浮かぶ点の集合と考えられる。これに任意の回転を加える
作品概要&贈賞理由

 この作品、というかシリーズは本年度の「恵比寿映像祭」でも出品されていて、そこでも観ていました─────が、個人的にはあまり理解できていない作品。

 風景を切り取った画像を「点」として認識し、様々な座標情報と組合せて六次元的に分解する───というようなことは分かるような気がするんですけどね。

 でも、綺麗さとかは分かります!
 写真の風景が「点」でバラバラにされて、フッと再び元の風景写真に戻る瞬間があって、そこの気持ちよさとかは観ないと分からないです!

Norimichi Hirakawa | datum, 2017, Moerenuma Park, Sapporo

 

 

 

優秀賞
作品名discrete figures
作 家真鍋 大度/石橋 素/MIKIKO /ELEVENPLAY
ジャンル:ダンスインスタレーション

数学的・集合知的な方法を通して身体表現をつくり出すダンスパフォーマンス。AIと機械学習によって身体像や動きを捉え直し、その数値データと分析結果をコレオグラフィに反映させた。
作品概要&贈賞理由

 この作品も難しかったです。

 人工知能による大量データ解析についてはそれなりに勉強したし、他の作品で何度も観たことあるので理解できるのですが、それを用いた本作の意義という部分がイマイチ理解できず。
 ダンスの新表現という点ならまぁ納得できるけど、本作に関しては純粋に「ダンス」に焦点を当てただけの受賞理由ではないような気もするし……と。

 でも、そのダンス自体はとっても面白かったです!
 なんだか、アーティストのミュージックビデオでありそうな表現でしたね。

Rizhomatics Research x ELEVENPLAY x Kyle McDonald presentan “discret figures”

 

 

 

優秀賞
作品名Lasermice
作 家菅野創
ジャンル:メディアインスタレーション

ホタルなどの群生する生物に見られる同期現象に着想を得た…[中略]…生物の場合、そのコミュニケーションは不可視だが、本作ではレーザー光によってコミュニケーションをするため、そのネットワークは視覚的である。
作品概要&贈賞理由

 これはめっちゃ凄かったです!
 真っ暗な空間の中で、緑色のレーザーライトが点滅を繰り返していて、その不規則なリズムとなんとも言えない「格好良さ」が占めていて良かったです! この作品もカタカタという音と、パッパッという音が反響して、なんとも言えない雰囲気でした!

 地面に広く四角ゾーンがあって、その中を無数のロボットが移動している作品です。
作者は「群生生物のコミュニケーションを視覚化」したということでしたが、足元の枠内で激しく動き回るロボットを見ていると、顕微鏡でペトリ皿の中を覗いているような、不思議な体感でした。

 これは、「ライブ感」が重要な作品ですね!

 

 

 

新人賞
作品名SPARE (not mine)
作 家Jonathan Fletcher MOORE
ジャンル:インタラクティブアート

ロサンゼルスの道路は使い古されたタイヤで散らかっている。本作は、その破棄されたタイヤから作られた自走する立体作品。ロサンゼルスは…[中略]…自動運転車の登場で、交通、労働環境に大きな転換期が訪れようとしている。…[中略]…この作品は、自動車業界に起こっているAIの利用や自動化の勃興と、人間が受ける影響について探求している。
作品概要&贈賞理由

 これはまた難しい作品でした……。
 私は最初は解説を読まずに作品をみるようにしているのですが、この作品は何を意図しているのか分からなかったです。

 でも、それが現代美術かなぁと。コンセプトが大事ですからね。
 そのコンセプトは、「ロサンゼルスの自動車業界に対する危機感」のようなものが根底にあるのですね。

 「機械が自ら動かす」という点を「AI」と重ねているのだろうな、と。多分、設定された動きをただ従順に実行するだけという、愚かさを提示しているのだと、私は感じました。

 

 

 

新人賞
作品名Total Tolstoy
作 家Andrey CHUGUNOV
ジャンル:メディアインスタレーション

19世紀のロシアを代表する文豪、トルストイがロシア正教会から破門された1901年から亡くなる1910年のあいだに執筆した日記を基に、日記が執筆された10年を約11分間の色と音声で表現した作品。
作品概要&贈賞理由

 「個人の生涯を色で表す」というところで、その色の赤緑青の「RGB」の混ぜ方も、トルストイの日記の単語やアルファベットからと、しっかりと決めているところが重要だなぁと思いました。

 でも、こういうのって他にもありますよね。
 例えば、ブラウザ上のアプリケーションで、「音楽」を奏でるとそれを「色」で表示するようなものは何度か見たことがある気がします。

Andrey Chugunov – Тотальный Толстой/Total Tolstoy

 

 

新人賞
作品名watage
作 家euglena
ジャンル:メディアインスタレーション

タンポポの綿毛…[中略]…手のひらに乗せても感知できない重さの綿毛は、風を起こさずとも鑑賞者の動きや呼吸にも反応して揺れる。鑑賞者はそれにより、わずかな大気の流れが起きていることを認識できる。
作品概要&贈賞理由

 今回のメディア芸術祭の中でも最も好きだった作品です!
 「タンポポ綿毛」そのものを組合せて作られた球形や独創的な形状の作品。

 この作品が展示されている部屋も照明が落とされて暗闇に近く、青白いライトに照らされた作品が浮かび上がうようで、本当に綺麗でした!

 作品は、ほんの少しの空気の揺らぎでもフワフワと影響されます。
 息を止めて、そっと覗き込んでも、誰かが背後で動けば空気の流れが起きて、やっぱりフワフワと揺れる綿毛のボールやタワーがとっても弱々しいのに、可愛くて大好きです!

 やっぱり、人工物とは違う、自然の造形の見事さってありますよね!

watage

 

 

 

 


 

 

 

 展示内容の紹介は以上です!

 今回は「アート」分野の記事でした。
 残りの感想はまた後日アップしていきます!

 
◇アニメーション部門の感想👇

◇エンターテイメント部門の感想👇

◇マンガ部門の感想👇

 (写真はお台場にある南極観測隊「宗谷」です……芸術祭とは全然関係ないです笑)

 

 

 

 最後まで読んでくださり、
 本当にありがとうございました!!

 

*1: 『watage』は科学未来館の7階

コメントを残す