こんにちは!
お元気ですか?
咲坂伊緒先生の『ふりふら』。
劇場で観た時は(午後2時という時間もあり、)男性客が私だけという不安な状況になったりもしましたが、とてもいい映画でした!
9月18日は、郵便屋の少女が「愛してる」を伝える『ヴァイオレット』を観て号泣して、少女漫画が原作の『ふりふら』を観て青春って良いなぁと思い、いまは完全に《恋愛脳》なので感想には注意しないと……(笑)
2020年9月17日鑑賞
思い、思われ、ふり、ふられ
4.2 / 5.0
- 思春期真っ只中の4人の青春
- 鮮やかなアニメ演出で丁寧に描く恋愛と人間関係が、優しく爽やかでとても良い!
- 他人の気持ちを思いやりながら、自分のことも大切にするキャラクターたちが好きでした。
偶然出会ったタイプの全く違う朱里と由奈。朱里の義理の弟の理央と由奈の幼なじみの和臣。4人は同じマンションに住み、同じ学校に通う高校1年生。由奈は理央に憧れ、理央は朱里に言えない思いを抱き、朱里は秘密を抱え、和臣はある秘密を目撃してしまう。それぞれの思いが複雑に絡み合い、相手を思えば思うほどにすれ違っていき……。
映画.com
『思い、思われ、ふり、ふられ』予告
脚本:吉田恵里香
制作:A-1 Pictures
音楽:野見祐二
キャスト:潘めぐみ, 鈴木毬花 and more.
上映時間:103分
日本公開:2020年9月17日
配給:東宝
咲坂伊緒さんの『ふりふら』。
すごく良く出来た物語と映画でした!
私は、『ストロボ・エッジ』や『アオハライド』よりもこの『ふりふら』の方が好きです。
縺れる人間関係ではあるけど嫌な感じはしなくて、むしろスッキリ爽やかな印象さえ受けるから見やすかったです!
とにかく物語と構成が凄い!
主人公4人がいるだけでも複雑。
そこに、友情や恋愛や家族の話をいれる。
100分の映画であれば、ともすると煩雑で面倒くさくて、薄い人間関係の表面だけをなぞるような物語になることもある。
けどアニメ『ふりふら』は、すっきり見立てた上できちんと丁寧にそれぞれの人間関係や心情を描いていたから凄いです!
アニメの演出が素晴らしかった!
ラブストーリーとかヒューマンドラマは、いかに演出を上手くするかが、映画をより面白く凄いものにすると思います。
その点、この『ふりふら』はすごく良かった!
音の演出やキャラの身振りの映像、また漫画チックな光や効果が随所に散りばめられていて、漫画原作のアニメだからこその作品でした!
2人のヒロイン。
少女漫画好きで運命の王子様を待つ由奈と、複雑な家庭事情の中で現実的な考えの朱里。恋愛観が正反対の2人が一緒にいるのが好きだし、見る側も色々と考えさせられました。
あと、男子がキザっぽくなくて良かった!
福士蒼汰や北村匠海みたいなお高く止まったイケメンじゃなくて、もっと庶民的で普通の男子に近いような印象でした。
他人の気持ちを思いやることができるキャラクターたちだったのが、とても好きでした。
好きになって、でも相手のことを色々と考えるところ。それゆえに不憫に思ったり、もどかしさを覚えたりもするけど、とても良かったです。
その一方で、ちゃんと自分のことも大切にしているところが、なおさら良かったです。気持ちを伝えたり、慰めたり、心内を話したり、そういうことがきちんと出来るのは大事だと思います。
登場人物4人で上手く物語をつくる
『ふりふら』とても良い映画でした!
人間関係の描き方が上手いと思いました。
登場人物が4人登場して、しかもかなり複雑に抉れ縺れた関係になっているのに、映画では深く考えずスッと頭に入りました。確かに一般的にいえば特異な設定ではないですが、シンプルに描かれていて見やすかったです。
あまり少女漫画を読まないので分からないのですが、少女漫画は三角関係、四角関係とかを描くのが上手いんですかね?
完全な偏見ですが────よくあるラブコメ系は主人公の男の子ひとりに女の子数人が近づく関係で、恋愛ドラマは不倫を含む面倒くさい関係の印象が強いです。
それに対して『ふりふら』は主人公4人に加えてその周囲のキャラが何人かいるにも関わらず、面倒くさくないし、むしろスッキリとした爽やかさすら感じるような感じで、とても見やすかったです!
あと、メインの4人を平等に均等に扱っているのが嬉しかったです。
最初から「負けヒロイン」とか「かき回し役」として決められているのではなくて、どの人物もきちんと「好き」に真剣なところが印象良かったし、キャラが大事にされているようで嬉しかったです!
主人公4人の物語。
その関係の中身が「恋愛」だけに留まらず、友達関係や友情のこと、学園生活や生徒関係のこと、家族や兄妹のこと、進路や将来のこと……等々と思春期と青春の様々なことを扱っていた点がまた凄いです。
それでいて、さっぱり小綺麗にまとまっています。
映画は100分間。それなのに薄っぺらい人間関係ではなく、4人に対してこれだけ物語を充実させられるのは本当に凄いと思います。原作の良さか、アニメ映画の脚本家の手腕なのか分からないですが、すごいです。
で、さっきも少し書きましたが爽やかな印象なのが良かったです!
ドロドロしたのも嫌いじゃないけど、精神的に疲れるんですよね….(笑) 面倒くさいお話は観終わった後に非常に疲れるんですよ…。
その点、この『ふりふら』はとても見やすかったです。
確かに四角関係に加えて家庭事情とか学校のこととか色々と詰まっているけど、その作り方が上手いのと、フォローの仕方が良かったので、観ていて特定のキャラに不快感を抱くことがなかったし、観終わったあとも気分悪くならなくて良かったです!!!
気分と雰囲気を描くアニメ演出
アニメの演出が素晴らしかったです!
漫画っぽい演出を自然と入れることができるのは、アニメが持つ強みだと思います(実写では難しいですからね)。
漫画の映像化で相性が良いのは作画アニメやCGアニメだと思います。その中でも、『ふりふら』は自然で良かったです!(とはいえ原作を読んでいないので勝手に言っているだけですが)
まず、映像が良かったです!
本当に漫画っぽい演出が多くて、とても好きでした!
例えば。
悲しいシーンではどんよりした曇り模様だったり、選択肢に悩んでいる時にはウユニ塩湖のように世界が2つに別れたり、恋をした時に花畑が広がったり。シャボン玉が弾けたり、紙吹雪が舞ったり。
まさに「劇的」な演出が多くて、観ていて「お~」と楽しかったし、よりキャラクターの心情が描かれているようで良かったです!
それから、「音」も印象的でした。
無音になったりとか、主人公たちの会話をかき消すように雑音を入れたり、口の動きだけで声が聞こえないようなシーンがあったり。
なかなか言葉で伝えるのは難しいですが、観ていて「良いなっ」と思った場面がちょくちょくありました。
BUMP OF CHICKENの主題歌と挿入歌も良かった!
まぁ、あまり歌詞がしっかり聞き取れなかったところが多いですけど、雰囲気とか曲調はピッタリだったので良かったです!
BUMP OF CHICKEN 「Gravity」スペシャルMV
2人の女の子と男の子
本作の主人公の4人。
- 少女漫画に憧れ、運命の王子様を待つ由奈
- 複雑な家庭事情の中で現実的に生きる朱里
- 思ったことをそのまま言葉にする和臣
- 叶わぬ相手への恋心を諦められない理央
特に2人のヒロインが印象的でした。
消極的な由奈と、積極的な朱里。
恋愛観も、性格も、家庭環境や生活面でも、色々なところが正反対の2人なのに、意気投合して友達になって、ずっと一緒にいる2人。
単純に別々の価値観を比較しながら見ることもできたし、タイプの違う恋愛の様子を観れたのも面白かったです。それに、どちらに共感するかで自身の恋愛観がバレそうですね(笑)
私は、由奈の方が好きでした。
少女漫画が好きで、「王子様」を待ち焦がれていて、運命的な出会いを信じている、ピュアで乙女な彼女。
そもそも、”そういう映画”を期待して観に行ったので、まさしくど真ん中なヒロインなところが大きいし、アニメの中くらい夢を見たいですからね(笑) それに彼女の台詞はとても澄んでいて心に残りました。
あと、可愛かった!
王子様を待っているだけあって、彼女自身がお姫様みたいだし。声も「可愛い女の子」そのまま。調べたら、今回の由奈役のオーディションが初デビューだそう!!!
それから、本作では男性陣が見やすかったです。
原作漫画ではどうだか分かりませんが、アニメ映画ではとても庶民的?な印象がして、とても良かったです。
これも偏見ですが、福士蒼汰さんとか北村匠海さんみたいな「THEイケメン」みたいなキャラより、少しカドのとれた親しみやすいキャラだったかな、と。
(私が男だからだと思いますが、)あまりキザすぎると恥ずかしくて見ていられないので……(笑)
あと、キャラデザも丸くなっていましたかね?
少女漫画っぽい絵柄というよりは、いわゆるアニメ絵に近い感じ。この辺は賛否両論あるんでしょうけど、(原作を後から読んだ身としては)有り難かったです。
相手を思いやることができる優しさ
どのキャラクターも「相手のことを思いやる優しさ」を持っていて、観ていてとても心地よかったです。嫌な気分にならなかったのが良かったし、色々な意味で嬉しかったです。
恋愛観が真逆の由奈と朱里の2人が仲違いせずに友達でいたり、喧嘩をするより、話したり相談したりする時間の方が長かったりと、とてもいい関係です。
もちろん、相手を考えすぎて、好きになった相手への行為に奥手になっちゃったり、誰かに譲ろうとしたり、我慢したり、寂しい思いをしたりと、見ていて不憫に感じることもありますし、もどかしさを覚えることもあります。けど、やっぱり優しさを持っている人は強いと思いましたね。
「相手を思いやる優しさ」を持っている一方で、きちんと「自分を大切にする」ところを各々が持ってるところがすごく好きでした。
相手だけを思って潰れちゃうのではなくて、きちんと気持ちを伝えたり、話したり、行動したりする姿はとても強くて格好いいと思いました。
とあるキャラの、
「『私なんか』って思わないようになりたい」
という台詞がとても胸に刺さりました。
以降、映画本編のネタバレあり
市原由奈
ヒロインの1人、市原由奈。
少女漫画に憧れ、運命の王子様を待つ乙女。
まさに少女漫画のヒロインっぽくて、見ていて心配になりながらもキュンキュンさせてくれるようなキャラクターでした。
運命の王子様に出会い、再会した瞬間。
最初は「犬のウンコ」の出会い。
その時に由奈の目がキラキラしたのが本当に印象的でした。映画と分かってはいても「恋が始まる感じ」にドキドキと期待しますよ。
そして、学校で王子様に再会。
その時の「ふわ~」と風が通るような”あの感じ”がとても良かったし、そういう運命的な出会いには本当に憧れます。驚きと喜びが溢れ出すような印象的なシーンで、とても好きでした!
朱里の悪い噂を否定しにいく。
これ、本当に勇気が必要だったと思います。凄いですよ、彼女は。
それに、行動の理由が「大事な友達のため」であると同時に、「私が自分を嫌いにならないように」というところなのが印象深いです。相手の目をみて話せるよう、自分のげんこつで顎を上げる動作とか胸に刺さりました。
理央に告白をする。
理央のことが好きだと知って、お洒落をしたり、遊びに行ったり、勉強会をしたりと、距離を縮めていく2人。
そんな中で、理央の心の中には別の好きな人がいるということを知ってしまう。その悲しさは本人にしか分からないだとうけど、やっぱり辛いなぁと思います。
それでも。
告白して、振られて。
結末が分かっていても、それでも言葉にして伝える勇気を出したことが凄いと思います。「凄い」という言葉で片付けるのが申し訳ない。
そして、文化祭。
理央が王子様の衣装だとかっ!
もう一度きちんと思いを伝えようとする彼女もだし、由奈への気持ちに気づいた理央もだし、2人が走るシーンは、定番だけどとても好きです。
そして、シャボン玉が飛ぶ中で、外階段を駆け上る場面は本当に名シーン! BUMP OF CHICKENの挿入歌も相まって、とても瑞々しく眩しい青春って感じで、この映画の中で一番好きなお気に入りシーンです!
山本朱里
ヒロインの1人、山本朱里。
親の再婚によって、微妙な家庭内の環境をなんとか維持しようとひとりで頑張るあまり、無理してしまう彼女。
友達とのやり取りや恋愛で、自信満々に積極的な姿を見ているからこそ、積もった感情が溢れ出す姿を見るのは辛いです……。
最初こそ、由奈と対立軸にあるキャラだと思っていました。
少女漫画的な思考ではなくて、現実的でサバサバ?したような感じ。
だけど、物語をずっと追っていくと、そうでもないのかなーと感じました。
彼女がいた家庭環境がそうさせてしまっただけで、心の中では少女漫画的な乙女チックなものに憧れていることもあるかな、と。
だってそうじゃなきゃ、初対面の由奈が「王子様を待っている」なんて打ち明けた時に馬鹿にせず真面目に聞けない気がします。家族がやり直せると信じているのだってそう。
今まではそれを出せなかったけど、身近にいる由奈に影響されたのか、もしくは好きな人ができて変わったのか……。映画の前半と後半では全然印象が変わりました。
「嫌な役回り」を引き受けたようなところ。
彼女たちが生きている世界でも、物語的な意味でも、少し嫌な役回りを演じることになっただけに、最終的に大団円のハッピーエンドを迎えることが出来たのが本当に嬉しかったです!
色々なことを我慢したり、諦めたりして生きていた彼女が、和臣に対しては「好き」という気持ちに嘘をつかないところが良かったです。
文化祭での由奈の幸せな内容から一変して、朱里をめぐる内容は目が離せない不安でドキドキするものだっただけに、最終的な結果が幸せなもので本当に良かった!
山本理央
男性主人公の山本理央。
朱里の弟で、彼女が好き。でもその思いを伝えることができないまま、ずっと胸のうちに抱えている彼。
見た目もイケメンでクールのキャラだけど、彼の言動を見ていると、とても優しくて他人思いで、男でも友達になりたいと思うような正真正銘のイケメンですね。
映画の冒頭。
灰色の雨の中、青色の紫陽花が印象的な場面。
少なくとも、良いコトでないのは分かりました。
でもその内容が、告白を前にした時間で、朱里と理央の親が再婚するタイミングという状況。そして朱里が意図的にスマホを水没させた理由が「なかったことにする」ためだと分かった時の悲しさはとても大きかったです……。
だから、その言えなかった思いをずっと抱えてきた辛さは推し量れないほどのものだろうし、同じ家族という状況は察することすら難しいですが、大変だっただろうな、と。
雨の中、朱里にしたキス。
そのシーンだけ見れば、強引で非難されるべきものなのだろうけど、彼の事情と内側を知っているだけに、責めづらいのも事実。一方で、朱里がひとりで頑張ってきたことも知っているから余計に難しい……。
だから、この2人が発した台詞
「優しい嘘をありがとう」
という言葉が、胸に響きました。
乾和臣
男性主人公の、乾和臣。
由奈の幼馴染で、率直に言葉を発する真面目なタイプ。
あまり感情を表に出さなかった分、少々分かりにくいというか印象が薄いところも否めませんが、要所要所でキメてくるんですよね。
展望台に朱里を連れて行く。
「遠くへ行きたい」という朱里に、「少し時間をくれないか」と言って連れて行った先が、街が見下ろせる高台。そこからの景色を眺めながら、自分の体験を語る場面。
いわゆる「キザな行為」というところでは、私はこういうのに憧れるかも。その人しか知らないお気に入りの場所とか、色々なエピソードを特定の人にだけ話すとか、そういう限定的な共有に。
だからなのか、『耳をすませば』の地球屋とか『ハウルの動く城』の草原とかは結構好きです。
あとは、理央の気持ちを察して行動したり、逆に自分自身の夢を諦めずに頑張ったり、そういう細かいところが好きなキャラでした。
ということで、『ふりふら』の感想でした!
鑑賞してからだいぶ時間が経ってしまいましたが、感想の骨子は鑑賞当日に書いたので鮮度は良いはずです!(笑)
あと、来場者特典には描き下ろし漫画を頂きました!
それから、原作の漫画。
今回、この感想を書き終わったあとで、1~4巻までが無料公開されていたので、読んでみました!!
面白かったです!
もともと絵が綺麗だし、物語もやっぱり100分の映画より厚いし、台詞を文字で読めるし、良いですね! それに何より、やっぱり多分、私は少女漫画とか好きなのかもしれません。
読んでくださり、
ありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!