こんにちは!
お元気ですか?
先日、4月からの新年度を迎えるにあたって家のインターネット環境を見直しました。ちょうどスマホの契約更新月でもあるので。光回線の契約とか、新プランのこととか。ショップの定員さんが丁寧に教えてくれて本当に助かりました…(:_;)
さて、今回はそんなインターネットを題材に作品を制作しているアーティストユニット「エキソニモ」の個展の感想と写真です。非常に面白かったです。
2020年9月16日鑑賞
エキソニモ
UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク
インターネットアートへの再接続
- インターネットを題材に作品制作をするユニット「エキソニモ」の大規模な回顧展。(@東京都写真美術館+オンライン会場)
- ネット黎明期から最新作までが展示され、ハード・ソフト両面の進化の歴史が見られたようで興味深かった!
- 無形のインターネットが題材だけど、人間が使うインターフェイスを用いて作品を制作しているところ、先進的な作品がアナログに規定される側面が面白いと感じた。
インターネットが一般に普及し始めた1990年代から、いち早くインターネットそのものを素材として扱い、ユーモアのある切り口と新しい視点を備えた作品でインターネットアート、メディアアートを軸足に、アートの領域を拡張してきたエキソニモ。エキソニモは、現在ニューヨークを拠点として活動する千房けん輔と赤岩やえによる日本のアート・ユニットで、デジタルとアナログ、ネットワーク世界と実世界を柔軟に横断しながら、実験的なプロジェクトを数多く手がけてきました。本展では、24年間に及ぶその多彩な活動を、…[中略]…インターネット上の会場と美術館の展覧会会場を連動させ、エキソニモの全活動の軌跡に迫ります。
展覧会サイト
exonemo UN-DEAD-LINK_Teaser
展覧会:エキソニモ UN-DEAD-LINK インターネットアートへの再接続
会 場:東京都写真美術館
会 期:2020年8月18日~10月11日
料 金:700円
作品リスト:こちら*PDF
アーティスト・ユニット「エキソニモ」の初となる大規模な回顧展です。
もともとネットとか大好きな人間なので、エキソニモの記事をどこかで読んだことがあるし、2018年か19年に東京で作品も観たりして。今回、回顧展を見れて超嬉しいです!
インターネット黎明期からネットやそれに関わる素材を扱って作品を制作してきたエキソニモの個展。
これを展示会場で見ると、昔の分厚いCRTディスプレイPCがスマホに変わったり、何世代も前のソフトウェアを使っていたりと、ネットの歴史が一気に見られるようで超楽しかったです!
また、オンライン会場では、人間のテクノロジーの進化を時間軸で紀元前790万年から追っている素晴らしいタイムラインが見られます!
今回の個展は「UN-DEAD-LINK」という題名。
開催趣旨は「リンク切れ(DEAD-LINK)の作品を再考してアクセス可能にする」というものなのだそう。
正直に言うと「アン・デッド・リンク」という名称を聞いた時にピンとこなかったんですよ。「リンク切れを”un”で打ち消しているのか」くらいで。
で、展示作品を見ているうちに「アンデッドか!」と気がついたんですよね…(遅い! 笑) ゾンビ映画とかで「アンデッド」はよく聞きますけど、「アン・デッド」と区切られると浮かばないものですね。
実際、エキソニモの作品を見てもリンク切れが多いです。
オンライン上で公開していたり、ブラウザから体験できる作品も多いので、なおさらリンク切れは困る事態です。
文字通りリンク切れの作品もあるし、該当ページは閲覧できても「Adobe Flash」が2020年末にサポート終了していたり、ソフトの互換性が無かったり、SSL/TLSプロトコル未対応だったり……と万能かと思われるインターネット上のアーカイブもできないことがあるのだと気づきました。
インターネットを題材にした作品。
そうは言っても形の無いネットを使うのは現実世界の私たちで、人間が使うためには何かしらのインターフェイスが必要で、そういうものが作品を構成しているというのが面白いと感じました。
とても先進的な作品の数々だけど、アナログに規定されるというか。それに、実際にネット上で完結する作品も少なくない中で、展覧会として美術館に展示するには実物が必要ですもんね。
で、そのアナログな装置を使う作品も見せ方やディスプレイの仕方が凝っていて面白いから凄いです!
全体の感想はそんな感じでしょうか。
今回はリアルな展覧会場に加えて、オンライン上での展示もありました。なので情報量が膨大というか、家に帰ってからも楽しかったです。
エキソニモだからこそ、これだけのネットアーカイブができるのでしょうし、もちろん新型コロナの影響もあるでしょうから、とても良いときに展示を観ることができたと思います。
エントランス
はじめに
このたび、東京都写真美術館は「エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク [インターネットアートへの再接続]」展を開催いたします。
インターネットが一般に普及し始めた1990年代から、いち早くインターネットそのもの を素材として扱い、ユーモアのある切り口と新しい視点を備えた作品でインターネット アート、メディアアートを軸足に、アートの領域を拡張してきたエキソニモ。エキソニモ は、現在ニューヨークを拠点として活動する千房けん輔と赤岩やえによる日本のアート・ ユニットで、デジタルとアナログ、ネットワーク世界と実世界を柔軟に横断しながら、 実験的なプロジェクトを数多く手がけてきました。
本展では、24年間に及ぶその多彩な活動を、初期のインターネットアートから本展が 初公開となる新作《UN-DEAD-LINK 2020》 を含む近年の大型インスタレーション までの作品群によって構成し、展覧会会場とウェブ上に構築したインターネット会場と を連動させ、エキソニモの全活動の軌跡に迫ります。
本展のテーマである「UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク」には、インターネット上 で接続できなくなった、リンク先が存在しない、いわゆる「デッド・リンク DEAD-LINK」 の作品を再考し、「アン・デッド・リンク UN-DEAD-LINK」として、アクセス可能にする という意味がこめられています。
コロナ禍によって、世界中の景色が一変し、人間同士の物理的な距離をだれもが意 識せざるを得ない現在、オンラインとリアルを自由に横断してきたエキソニモの活動を 考察することで、メディアの歴史のみならず、今日的な表現のあり方、そして人やモノと のつながり方の未来と新たな可能性を探求していきます。
最後になりましたが、本展覧会の開催にあたり多大なご協力を賜りましたエキソニモ、 関係各位に深く感謝の意を表します。
主催者
展覧会について
本展は、美術館の展覧会会場とインターネット会場によって構成されています。
展覧会会場の作品は、実作品と記録映像/記録展示に別れ、年代順に並べられています。同時に各作品はエキソニモによる5つのキーワード(Internet インターネット/Platform プラットフォーム/Interface インターフェース/Random ランダム/Boundary 境界)によって分類され、関係付けられています。
インターネット会場では、本展で発表するオンライン作品《Realm》、《UN-DEAD-LINK 2020》のほか、作家自身が、本展のために作成した年表をご鑑賞いただけます。年表をもとに、作家による全作品解説や様々なキーワードから、展示作品の背景や作品同士のつながりを発見していくことができます。
展示より
オンライン会場はこちら。
5つのキーワード
エキソニモ自身が設定した5つのキーワード。
単語ごとに5色のケーブルで各作品が接続されて連結されています。
単にジャンル分けするのではなく、ケーブルで繋ぐところがパソコン類っぽくて、展覧会会場の入り口からワクワクでした!
展示作品
基本的に、会場での展示と作品リスト(PDF)の順番、またオンライン会場の時系列順とも同じなので、ここでもその通りに掲載していきます。
また、オンライン展示の方では作品の動画やオーディオコメンタリーが聴ける作品もあるので、ぜひ覗いてみてください!
作品名:Signature , 2020
制作年:2020
ミクスト・メディア
「exonemo」 署名 (シグネチャー) を様々なメディアやマテリアルを 使って表現した作品。「m」部分は、ビットコインのチャートの上下で 表すなど、エキソニモが普段使うような機材を組み合わせて文字を表 現し、多様なメディアを扱うというエキソニモの作品のスタイルの表 明にもなっている。
オンライン展示
展示会場に入る前室の作品。
「EXONEMO」の署名を、彼らを象徴するような素材で構成するというのがとても好きだし、ひと目見た瞬間に「あ!」と分かるのが素晴らしいですね。署名だし、展覧会での名刺代わりにもなるし、作品でもあり、自己紹介にもイントロにもなっていて…面白い!
作品名:KAO
制作年:1996
インターネットアート
使用技術:Javaアプレット/CGI[Perl]
#Internet #Platform
エキソニモがインターネットを用いて初めて制作した作品。ウェブ上で、福笑いのように顔のパーツを配置して送信すると、ネット上の顔と混ざりあい、それぞれの特徴を引き継いだ子供の顔が作られる。次の人が顔を送ると、その特徴を引き継いだ顔が作られ、次々に遺伝していく。1996年の段階で、インターネットを利用した観客との双方向性のある作品は珍しく、…[中略]…「Javaに関する技術・応用・表現大賞 ’97」を受賞している。
オンライン展示
「こんな作品があったのか」と驚き感心しました。
1996年はYahoo!がサービスを開始した頃。インターネットも個人で使うにはまだ草創期といえる時で、そこでアートに用いるって凄いなぁと。インターネットの即時性・双方向性・コミュニケーション性・伝播性みたいなの全部詰め込まれた作品ですもんね。
2021年版といえば「遺伝的アルゴリズムで作るエッチな画像」プロジェクトとか、似たようなものですかね。
作品名:DISCODER
制作年:1999
インターネットアート
使用技術:Javaアプレット/CGI[Perl]
#Internet #Interface #Random
キーボードから入力された文字をあるウェブページに侵入させることで、HTMLのコード/規則に矛盾を生じさせるアプリケーション。キーボード操作によって、バグをHTMLに侵入させたり取り除いたり、他のバグに影響を及ぼしたりする。その結果起こる矛盾で、ウェブページは変化していく。「ウェブページの整合性を破壊する装置」として、ハッキングを思わせる感覚で、実験的にインターネットのシステムに介入していくこの作品は、…[中略]…1999年に発表されると、アートだけでなく、ゲーム的要素を持つユニークな試みとして一躍注目された。
オンライン展示
ウェブページって静的に見えても裏では色々なプログラムが走っていたり、一見するとグラフィカルな外見も無数の文字列で描写されていたりして、バグを発見したり、ウイルスを排除したりと、裏側・専門的な部分で色々と動いているものです。その秩序を誰でも簡単に破壊するアプリというところが面白いな~と思いました。テロっぽいというか、ある意味で”オープン化”というか。
作品名:FragMental Storm
制作年:2000-
インターネットアート
使用技術:Adobe Director/CGI (Perl) [2000/2002]; Java/CGI(Perl) [2007]; Objective-C/CGI(Perl) [2009]
#Internet #Platform
利用者の入力したキーワードをもとにインターネット検索を行い、見つかったページの画像とテキストデータをリアルタイムにカットアップ(バラバラにして組み立て直)し表示していくソフトウェア。目まぐるしく切り替わる画面と、検索の偶然性が楽しめる作品で、インスタレーション版の他に、iPhone用のアプリとしても発表された。
オンライン展示
なんかもう「サイケデリック」みたいな言葉しか浮かばない感じ。まさに幻覚みたいに色々なイメージが重なる感じで目まぐるしいです。ネット上に氾濫する画像の海に溺れる感じというか、SF映画で時々見る「多元宇宙のシーン」みたいな感じで、私はとても好きでした!
作品名:rgb f__cker
制作年:2003
インターネットアート
使用技術:Adobe Director [20031, Adobe Flash [2007]
#Internet #Platform
誰もが「クリエイター」として気軽に点滅する色面によるヴィジュアルを創造することができるツールで、創造したものを広く公開して楽しむことができるプラットフォーム。四角形、色、点滅(フリッカー)速度の設定という最小限のルールをベースに、いかに使うかはユーザーの想像力に委ねられている。ユーザーは自由にマウスをドラッグすることで、任意の位置に任意の比率、サイズで四角形を描くことができる。四角形は、光の三原色であるRGB(赤緑青)それぞれの明度と点滅速度を設定することができ、それによって様々なパターンと点滅リズムをもつ「作品」を制作し、鑑賞することが可能となる。
オンライン展示
ただ色とりどりの四角形が表示されるだけなんですけど、いつまでも眺めていられます(笑)
前の作品でもそうでしたけど、「作家が作って展示」ではなくて、「ユーザーが誰でも参加できる」というインターネット最大の特徴を作品に取り入れているところが素晴らしいと思います。
この作品、ウェブ上で実際に体験できます。私も試そうと思ったら……まさかのAdobe Flash Playerがサポート終了という…。まさに「デッド・リンク」で笑っちゃいました(笑)
作品名:Natural Process
制作年:2004
記録展示
ミクスト・メディア
#Interface #Random #Boundary
《Natural Process(ナチュラルプロセス)》とは、2004年にGoogleのトップページを絵画化した作品《A Web Page》のたどる過程を追いかけるプロジェクトで、絵画作品とそれを取り巻くシステムで構成されたインスタレーションなど様々な形態で発表されてきた。インスタレーションで、展示室に設置された《A Web Page》は、来場者や周囲の様子も含めてウェブ中継され、インターネットと現実空間における価値の変化を提示する。ウェプページをウィンドウごとそっくり描いた作品は、絵画作品であると同時に、デジタル・オブジェクトのアナログ化でもあり、作家はこれをウィンドウ越しに見る「インターネットの風景画」でもあるととらえている。
オンライン展示
これ、大好きでした。
Googleが好きということもあるし、「ブラウザのトップ画面」という誰もが見知ったエントリーページを描く絵画作品なんて最高じゃないですか。ある意味、”モナリザ”に次ぐくらい有名なテーマで、総閲覧数ではモナリザ以上でしょうね(笑) しかもよく見ると「MicrosoftのInternet ExplorerでGoogleトップページを開く」という笑えるジョークになっているのが最高です(笑)
本当は絵画の実物を見れるはずだったのですが、新型コロナの影響で不可能となってしまったようです…残念。
「Natural Process」を発表してから16年が経ちました。
2004年、森美術館で開催された「六本木クロッシング」という日本の現代美術作家を紹介する展覧会で発表した作品でした。
それまでメディアアート系の展示に呼ばれることが多かった自分たちは、「現代美術」の「美術館」での展示ということから、そこをター ゲットにしたアイデアを考えました。それは、アートの”メインストリーム”とみなされる「絵画」を用い、権威的な美術館という制度を利用 して「価値」がどう変化していくのか、そのプロセスを追う実験でした。
そのために「最も価値が低いビジュアル」として、インターネット上のデジタル画像をアナログな絵画に変換して展覧会場に設置、それ をもう一度ウェブ中継することでデジタルに再変換してインターネットに戻すことにしました。インターネット出身ともいえる自分たちが、アウェイな状況の中で連れてくる「最も価値が低い」ビジュアルとしては、当時インターネットを開始するときに必ず開く「Googleのトップページ」を選びました。あまりに当たり前に背景化したこのイメージは、世間一般にはまだYahooを使う人たちが多い中で当時、情報感度の高い人たちが使う先端のツールだったもので、自分たちのアイデンティティを表明する意味も持っていたからです。
Google社に展示の報告をしたのは会期が始まってからでしたが、結果、中継を見たGoogleアメリカ本社のトップが気に入っていると 担当者から知らされました。会期中の反響は様々で、ウェブ中継をジャックしてパフォーマンスをする人が現れたりと、楽しい出来事も ありました。会期終了の間際に、終わった後の絵画の行く先を想像し、Google社に収まることが一番面白い展開だと思い打診したと ころ、購入されることになりました。
Google社に収蔵されてからは、会社の入り口近くに飾られたこともあり、取材などが入るたびにその前で記念撮影するスポットのようになり、多くの雑誌やテレビなどで絵画が登場しました。個人的には「タモリ倶楽部」で使われたときが一つの盛り上がりのピークでした。
その後、担当者も退社し、連絡も途絶え、Google社のオフィス移転などもあり、絵画がどこにあるかも分からなくなってしまいました。初展示から8年経った2012年、NTT ICCでの「ハインターネットアートこれからーポストインターネットのリアリティ」展での再展示の計 画が持ち上がり、Google社にコンタクトをとりました。絵画は新しいオフィスの、NDAを交わさないと入れないエリアに飾られていまし た。久しぶりに見た絵画からは、なんともいえない「アウラ」のようなものを感じました。日進月歩で進化し続けるインターネットの8年前 の画面がそのままそこにモノとして留まっている。当時は「最も価値が低いビジュアル」だと思っていたものは、すでに歴史の一部として 意味を持ってきてしまっている。インターネットの世界でこんな感覚が起こるというのは想像もしなかったことでした。
しかし、最終的にマーケティング部門の担当者から言われたことが「描かれているブラウザがChromeじゃない他社製のものなので出せない」という驚きの回答でした(2004年の制作時にChromeは存在してません)。それなら、「ライブ中継をしながら、ブラウザをChromeに描き直すパフォーマンスをする」という提案をしましたが受け入れられず、展示は不可能になってしまいました。
そこで苦肉の策として生まれた新作が「Natural Process – 403 Forbidden」でした。ウェブをブラウズしていると時々出会うこのエラ ーは、何かしらの理由でアクセスが禁止された時のもので、会場には絵画と同じサイズの枠のみを展示し、事の経緯を説明するテキストを書いて掲示しました(ちょうどこのテキストのように)。
GoogleがChromeを持っている間はこの作品の再展示は不可能なのかと、いよいよ死蔵のピンチでしたが、前回絵画の貸し出しを断 られてから8年経った2018年、ニューヨークを拠点とするインターネットアート系の組織RhizomeがNet Art Anthologyという企画 でNatural Processを取り上げたいと打診してきました。そこでマーケティング的な判断を回避するために、Rhizomeから直接アメリカのGoogle経由で話を通し、ついに絵画を借りることができました。実に14年ぶりに公の場での展示が実現したのです。
そして今回、エキソニモ最大の回顧展がここ東京都写真美術館で行われることになり、「Natural Procerss」も外すことはできない作品として、再展示の準備を進めていました。話自体はスムーズに進むかに見えたのですが、新型コロナウィルスの影響でGoogleのオフイスに絵画を受け取りに行くことが不可能になってしまいました。というわけで今回、実物の絵画の展示は実現しませんでした。
絵画の展示の代わりに、当時、画像をキャンバスに転写する時に使ったのと同じスクリーンキャプチャの分割画像を使い、実物大の型 紙を再現しています。
16年前にアナログ変換された一枚のデジタルイメージがたどるプロセスを、今後も注意深く追っていこうと思います。
エキソニモ
作品名:ZZZZZZZZapp
制作年:2004
インターネットアート
使用技術:Javaアプレット
#Internet #Random
exonemo.comに日々送られて来るスパムメールのリンク先の画像を、自動的に収集して放送する番組。画像は、変換行程でデータにずれを発生させてチューニングをずらし、音は、その画像の生データがそのまま音に変換される。この作品は、“頼んでもいないのに押し付けられる情報をカスタマイズするための電波装置”である。
オンライン展示
画像が乱れて砂嵐っぽくなった映像とザッピング音が延々と続く作品。
元の画像がちょっと分かると面白いし、このザッピング音も聞いていると耳に馴染んで心地よくなるんですよね(笑) スパムメールをこうやって遊びに変えられるのって良いですね。
作品名:The Road Movie
制作年:2005
オンライン・インスタレーション
#Internet #Boundary
日本各地を旅するバスにウェブカメラを仕掛けて自動的(5分ごと)に周囲の風景を撮影し、撮影した画像をバスの折り紙の型紙に取り込んで、ウェブに記録し続けるシステム。このサイトで型紙をダウンロードし家のプリンタでプリントアウトして組み立てれば、ある時点のバスとそのバスに関連した周りの風景が、部屋の中に出現する仕掛けになっている。部屋の中に立体的に再現される風景は、室内に内包されつつ、 遠く離れたブの向こうの風景でもあり続ける存在となっている。
オンライン展示
風景をバスの側面に貼って立体化して記録するって、ただ風景の写真をアーカイブするだけじゃなくて面白いなぁと。バスの思い出と旅先の思い出が残せるのって良いですね。言い換えれば「Googleストリートビュー」のローカライズ版とも言えそうです(G-ストリートビューは2007年開始だそう)。
作品名:Object B
制作年:2006
ミクストメディア
#Interface #Random #Boundary
改造したオンラインのシューティングゲームと電気工具を組み合わせた、ロボットのようなオブジェによるインスタレーション。コンピュータで制御される電気工具のロボットは、予測できない方法で動き、マウスやキーボードを叩きながら、ゲーム内のアバターを予期しない方法で動かしていく。さらに、鑑賞者もゲーム空間に入り、仮想空間内から作品を体験することができる。通常のオンライン上のシューティングゲームでは対戦相手を実際に見ることはできず、 存在を確認できない想像上の存在でもあるというネットの性質を再現し、ゲームの向こうで奇怪なオブジェが操作をしている状況を作り出している。
オンライン展示
これはよく分からなかったです。
展示されていたのが記録映像だったのでイマイチ作品の全貌が掴めませんでした…。電気工具がゲームを操作するという趣旨は分かりますが、面白さは伝わらず…。実際に体験しないとダメですかね。
作品名:断末魔ウス
制作年:2007
ミクスト・メディア
#Interface #Random #Boundary
マウスを破壊する記録映像と、その時のデスクトップ上のカーソルの動きを記録したソフトウェア作品。作品を起動すると(マウスが破壊される)映像と一緒に、デスクトップ上の自分のマウス・カーソルが、実際に壊された時の動きを再現する。物質としてのマウスは破壊されれば復元することは不可能だが、デジタルな存在であるカーソル(矢印)は、何度でも繰り返し蘇り、同じ動きを繰り返すことができる。物理的な死と、デジタルな死を比較している。
オンライン展示
切ったり潰したり燃やしたりと痛めつけて、その動きを記録すると……鬼の所業では(笑) 私自身もマウスの故障とか接触不良とかでカーソルが予想外の動きをすることはたまにあるので、そういう延長線で親近感を覚えたのかもです。
作品名:Supernatural
制作年:2009
ミクスト・メディア
#Internet #Boundary
(ユリ・ゲラーが行ったような)超自然力を使って分割されたスプーンの片方を展示会場、もう片方を作者の自宅に置き、その両方をWeb中継して接続した作品。メディアテクノロジーを使用して、2つの分離された空間が、2つのスプーンと同様に、「見た目に自然で、おそらく超自然」な形で再接続される。
オンライン展示
「(ユリ・ゲラーが行ったような)超自然力を使って分割されたスプーン」という説明がものすごく悪意ある感じがして好きです(笑) 他方でWEB中継はまさに超自然な形といえるのかな、とも。
このコロナ禍でZoomを使って福笑いとか顔を繋げる遊びとかが流行ったこともありますけど、それを2009年にすることが先進的なのでしょうね。
作品名:Spiritual Computing Series – 祈
制作年:2009
ミクスト・メディア
#Interface #Boundary
コンピューターに接続された二つの光学式マウスを合わせたオブジェ。それぞれのマウスが発する光が相互に干渉することで、デスクトップ上でカーソルが勝手に動きだすことを発見し、マウスが重なった形状から連想される「祈り」によって奇跡が起きたと想像できる状況をそのまま作品化。既製品であるマウスやコンピュータをそのまま彫刻の素材として使用しているが、実体はその中で不可解にやりとりされるデータの流れを想像したり、精神的な活動を連想する行為にある。
オンライン展示
これも好き。というか「テクノロジーと宗教」を合体させたような作品は大好物なので、当然これも。
マウスが合掌して、その祈りか電気信号かどちらかが「触れていないPC画面」の中でカーソルを動かすんですから、面白いです。あと、無線マウスの方が合掌っぽいかもしれないですけど、「祈祷の筐体とコードで繋がっている」という状況がサイバーパンク感あって最高です(笑)
作品名:Antibot T-shirts
制作年:2010
インターネットアート/オンデマンドTシャツプリントサーヴィス
使用技術:CAPTCHA
#Internet #Platform #Random #Boundary
インターネット上でのBOT(悪意あるプログラム)の侵入を防ぐために認証用に開発された技術「CAPTCHA(キャプチャ)」。BOTには解析不能で、人間にしか解読できない歪んだ文字や数字であるCAPTCHAをグラフィックに見立てたTシャツをオンライン上で作れるサーヴィス。「ANTIBOT」というタイトルには「BOTを排除する」というニュアンスが込められ、そのメッセージTシャツを着ることで、BOTに解析されることを拒む。逆にBOTと共存する世界を前提とするSF的な世界観がベースにある。
オンライン展示
ただのお洒落?なTシャツとも思えますけど、「BOT排除の対策」を人間が着るシャツに実装するというのが面白いと思いました。
今後、例えば「監視カメラと人工知能による監視社会になった時、反体制派が機械の読めないシャツで通信する」なんて妄想も膨らみます(笑)
作品名:Fireplace
制作年:2014
シングルチャンネル・ヴィデオ
#Interface
マウスやキーボードを暖炉の中で燃やす様子を撮影した映像作品。 昔、 皆があつまるリビングの中心には暖炉があったが、今そこにはテレビがある。そしてそこに暖炉の映像を中継する番組があり人気を誇っている。そして、これからはスマートデバイスを個人が持つ時代になって来ている。そんな分散化されたディスプレイに、レガシーなデバイスを燃やす新しい暖炉を届ける。
オンライン展示
解説文の「昔は居間に暖炉があり、今はテレビがあり、暖炉を中継する番組が人気」という説明、なんだかとてもスッキリと腑に落ちました。
マウスとかキーボードとかを燃やす様子を笑顔で眺めるって様子もヤバいな、と(笑)
作品名:HEAVY BODY PAINT
制作年:2016
シングルチャンネル・ヴィデオ
#Interface #Boundary
[前略]…ヴィデオ映像が再生される液晶モニタに、直接ペイントをするシリーズ。 液晶モニタには、絵具のボトルの映像が映し出されていてその周囲はそのボトルの絵具の色で塗りつぶされている。固まった絵具のテクスチャとは対照的に、手持ちカメラの揺れによって映像がかすかに震え、立体的な視覚効果を生み出している。さらに4K(3,840×2,160ピクセル)で撮影された高精細な映像により、モニタ内の映像とモニタ外の絵画の境界が曖昧になり、鑑賞者にあたかも実物がそこに存在するかのような錯覚を与えている。
オンライン展示
これ最初、「液晶ディスプレイにペイントされている」と見ても分からなかったんですよ。「リアルな絵だな」くらいで。遠目に見ながら「ウォーホルのスープ缶かなの~」くらいで。
で、解説を読んで液晶だと理解はしたものの実感が掴めず、近づいてようやく映像だと認識しまして…。なのであまり解説文のような錯覚とかは抱きませんでした。
作品名:I randomly love you/ hate you
制作年:2018
ミクスト・メディア
#Interface #Random #Boundary
メッセージアプリ上で、“I ○○ love you” (私はあなたを○○愛している)/ “I ○○ hate you” (私はあなたを○○憎んでいる)という会話が2者間で繰り返されている作品。○○に挿入される副詞は、300種類ほどの選択肢からランダムに選ばれている。生成される言い回しは、英語としてぎりぎり意味が通じるが一般的に使われないものであったり、少々違和感のある表現が使用されている。また、2者間の感情が右と左のモニターで逆になるように設定されている。「love」「hate」という人間の強い感情であるはずの言葉が、機械上では淡々と処理され続ける情報に過ぎないというコントラストを見せている。
オンライン展示
この作品は、あまり刺さりませんでした。
「愛と嫌悪をプログラム通りに機械が投げ合う」というのは面白いと思います。ただ何分、私は英語が読めないので…(笑) このメッセージの内容や意味が分かれば見方が一気に変わるんだろうなぁと思います。
逆に言えば、「love / hate」だけは理解できるので、実際のSNS上でのやり取りも他人から見ればこんな感じなのかな~とも。
作品名:Shotgun Texting
制作年:2019
ミクスト・メディア
#Interface #Random #Boundary
ショットガンでキーボードを撃ち、その時に入力されたテキストが、そのまま作品のタイトルとなって金属板に刻まれている。横のモニターで流れているのはドキュメント映像。“Shotgun Texting” という言葉は、オンライン上で大量のメッセージを一斉に送る行為を表すネット用語であり、またスプレー缶を銃で撃ってペインティングを制作した、ウィリアム・バロウズ (William Burroughs) の「Shotgun Painting」からも触発されている。「ペンは剣よりも強し」という格言の現代版とも言え、アメリカという制作拠点ならではの作品となっている。
オンライン展示
《断末魔ウス》と似たものを感じます。
「くぁwせdrftgyふじこlp」とかキーボードを拭いた時の文字列とか、予想外に出力される文章ってなかなか味があって好き。それがショットガンならなおさら….(笑)
作品名:Realm
制作年:2020
オンライン・インスタレーション
使用技術:HTML/JavaScript /Node.js Server(Web Socket)
#Internet #Platform #Interface #Boundary
「領域」を意味する《Realm》は、スマートフォンとウェブブラウザの二つの方法で接続できるオンライン作品である。同じアドレスに接続しても、各画面に映し出される映像も体験も異なり、各画面の下には「You can’t touch there from your desktop/mobile(デスクトップ/携帯からそこに触れることはできない)」という言葉が浮かび上がる。見えない風景、美しい墓場の写真群のイメージは、二つの全く異なったものが共存している環境を示唆している。NYで新型コロナウィルス感染拡大によるロックダウンを経験したエキソニモ自身が、家族以外の誰とも接触できない日常の中で近隣の墓地を訪れる体験の中から創り出された詩的かつインターネットアートでしかできない表現となっている。
オンライン展示
スクリーンに屋外の風景が映されていて、そこに半透明の四角形が置かれています。で、スマホからこのページにアクセスして画面をタップすると、その跡がスクリーンの四角形に反映される、というもの。(現在もオンラインで体験できて、PCとスマホの両方からアクセスすると体験できます)
なんか不思議な感じで、目の前の大きなスクリーンに映っている風景を手元のスマホで触れるって体験が面白かったです。
作品名:UN-DEAD-LINK 2020
制作年:2020
オンライン・インスタレーション
使用技術:UNITY/Node.js Server (WebSocket)/MIDI
#Internet #Interface #Boundary
スイス・バーゼルのギャラリー[plug.in]で2008年に発表された《UN-DEAD-LINK》は、3Dシューティングゲーム内でキャラクターが死ぬと、グランドピアノが鳴り、3Dのゲーム空間と現実のオブジェが連動する構造の作品である。1999年の自衛隊の航空機墜落事故によって東京一帯が停電となる体験や、当時続いていたイラク戦争における死者数のレポート、また家族の死の体験とが結びつき、情報と死の関係性をテーマに制作された。新作となる《UN-DEAD-LINK2020》は、新型コロナによって毎日のように感染者数や死者数がメディアで伝えられる現状と、知人の感染や死などのリアリティから、2020年の状況に合わせてアップデートされている。
オンライン展示
これ、凄い作品でした。
展示会場では「設置されたピアノが時折鳴って、”Player 1 killed”と表示」されるもの。正直、意味が分からない。けどオンライン会場の方を覗くと風景がガラリと変わります。オンライン会場では「仮想空間の展示会場内走り回るキャラを鑑賞者が手で殺す」という内容が展開されます。
現実世界では何が起きているのか理解できないけど、誰か死んでいるのは分かる。で、それが実は誰かの手で殺されていたものと判明する。見えざる手によって殺されている。こんなことを考えながら見れる展示でした。
作品名:The Kiss
制作年:2019
インスタレーション
#Interface #Random #Boundary
ここ数年の間に、スマートフォンは当たり前のような存在になり、まるで身体の一部になったかのように多くの人々の手の中に握られている。そしてその小さな画面から溢れ出す大量の情報によって人々の感情が揺り動かされ、出会いやすれ違い、分断を生み出してきた。そんな時代を象徴するモニュメントはどんな形を取るのだろうか、という問いから、本作は、「あいちトリエンナーレ2019」の「情の時代」というテーマのもと委嘱作品として制作された。大きな手の彫刻は社会主義の啓蒙的なモニュメントを連想させながら、二つの腕が掲げるスクリーンに映された顔同士は、まるでキスをしているかのように重ね合わされている。しかし実際にはただ目を閉じて個別に撮影された二つの顔の映像でしかない。また、手の彫刻部分は3Dプリンターで出力されており、データとして簡単に複製し、拡大縮小できることで、啓蒙的なモニュメントとは異なる軽妙さが与えられ、本作が象徴するメッセージ性に不確かさを残し、作品自体の抽象度を高めている。
オンライン展示
「あいトリ」関係のリリースとか見ると必ず目にした印象的な作品。東京で見れるとは! 思ったより小さかったです。
解説文とは別に、今のネット恋愛とかSNSでの告白とか写真を送り合ったりとかエロイプみたいなのとか、人間関係がスマホで完結する様子を象徴しているように見えました。
あるいは、よく政治的指導者がキスしている加工画像を目にすることがありますけど、そういうのが市民レベルに降りてきたーなんて捉え方もしてました。
あと、今のコロナ禍では安易に触れたりキスしたりも難しい状況(キスやハグ禁止とかマスク着用キスとか…)の中でこの作品を見ると、また違う見方ができるなーと思いました。
ということで、「エキソニモ」の個展の感想と写真でした。
見ていてとても面白かったですし、それに色々と勉強にもなって最高の展覧会でした! こうして感想を書き残しておくことができたのも良かったです。
テクノロジー関係の感想記事は下のようなものもあります。気になる内容があればぜひご覧いただけますと嬉しいです!
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これからもよろしくお願いします!