※ネタバレなし。
※画像は予告映像のキャプチャです。
2018年8月4日鑑賞
詩季織々
(原題:肆式青春)
(英題:Flavors of Youth)
【評価:3.1/5.0】
【一言】
背景、建物、空気感。 「思い出補正」を思わせる映像は、ため息が出る程に美しい!
モノローグ調で語られ描かれる短編3つ。
“記憶”と“現在”を繋ぐ思い出語りは、胸に染み入るよう。
『詩季織々』という題名がとても大好き!
【Twitter140文字感想】
【 #詩季織々 】
中国を舞台に「思い出」を語る短編アンソロジー。
瑞瑞しく輝き、息を呑むほど美しい映像は、心の中にある思い出の“風景”や“光景”を綺麗に描き出す。
懐古と哀愁が混じり、過去と現在を結ぶモノローグは、切なさと淡い感動を耳に運ぶ。
“思い出補正”のような美しさを放つ抒情詩。 pic.twitter.com/RSwU0p8Ifc
— ArA-1 (@1_ARA_1) 2018年8月4日
感想
感想外観
『君の名は。』や『言の葉の庭』を手掛けたコミックス・ウェーブス・フィルムによる、短編アンソロジー。
映画館で観ようか悩んでましたが、観てきました!
それにしても、タイトル『詩季織々(しきおりおり)』が良いですね! 「四季折々」と「詩」が混ざった絶妙なタイトル!
予告動画
まず魅力されるのは美しい映像。
心の中に残っている、思い出の“風景”や“光景”を、輝かしく、みずみずしく描き出す映像は、息を呑む程に美しく綺麗でした。
そして、短編3作なので、それぞれ違う景色や光景を見る事ができた点が嬉しかったです!
3人の主人公が語りながら物語は進みます。
その一人称視点で語られるモノローグが、とても心地良かったし、題名通り、懐古がこもった「詩」のようでした。
新海誠監督の作品もモノローグが中心で、何だか近しいものを感じて、スッと入ってきました。
「繰り返す日々の中で、
大事にしていたものを並べてみても、
何かを失ってしまった様な気がする―。」#陽だまりの朝食#詩季織々#しきおり pic.twitter.com/QCqfyhoOF3— 『詩季織々』公式 (@shikioriori2018) 2018年7月26日
そんなモノローグで描かれる物語。
「物語」と言っても、その内容がとても鮮明に語られるので、まるで本当の思い出を見ているような気分になりました。
懐古と哀愁が混じった、過去と現在を結ぶ物語は、聴いているだけで、胸が苦しくなるような、切なくなるような。
一方で、あまりにもリアルで細か過ぎて、「他人の思い出を勝手に見せつけられている」ような不快感のようなモノを感じました。
短編は3つ。
『陽だまりの朝食』
『小さなファッションショー』
『上海恋』
そして、それぞれが食・衣・住を主題に据えています。人との関係、距離感、気持ち、感情……沢山、詰まっていました。
個人的には『上海恋』が1番良かったです。
控えめに言っても感動したし、綺麗で切なくて、とても好きでした。
主題歌:ビッケブランカ『WALK (movie ver.)』
ちなみに、来場者特典はポストカードでした!
それから、パンフレットを買ったら<カセットテープ>を店員さんから渡されて驚きました……「え、カセットテープですか?www」と思わず聞いてしまいました(笑)
美しい映像
『秒速5センチメートル』の桜。
『言の葉の庭』の雨、
『君の名は。』の街並み。
コミックス・ウェーブ・フィルムが描き出す映像は、現実をリアルに描き出し、そして輝く美しい作品に変えてしまいます。
新海誠 監督作品集&新作特報(公式)
そんな美しさは、本作『詩季織々』でも……いや、本作だからこそ余計に美しく感じました。
『詩季織々』の物語は、3人の主人公がそれぞれの過去と現在を語るモノローグ。
主人公の心の中に残る、懐かしい思い出の“風景”や“光景”が、とてもみずみずしく、そして輝かしく描き出されます。
「思い出補正」という言葉があります。
記憶の中に残る光景が美化されていく事です。
本作の映像は、まさに「思い出補正」をアニメーションにしたようでした。
多分、普段普通に生活するだけでは、日常の風景はなんの変哲もないシーンなんだと思います。でも、回顧する時、そのシーンはとても鮮やかな色彩を放つものだと思うんです。
キラキラした光に満ちた本作『詩季織々』の映像は、現実の風景ではなく、思い出を語る主人公たちの心の中にある光景を描いているんだと感じました。
それから、本作は短編が3つ。
なので、様々な季節やシチュエーションの場面を見る事が出来ました。
田舎の風景に映る自然、都会のビル群のガラスが反射する日光、古い部屋に舞う埃、無機質なマンションの一室。
春も夏も秋も冬も、雨も晴れも雪も。
美しい映像を全て詰め込んだ作品でした。
モノローグで語られる物語
モノローグで語られる本作。
思い出の風景を描くのに、主人公自身が語るというのはとても良い方法だと感じました。
「『人の物語』を語るとき、三人称ではあり得ない」という趣旨の言葉を聴いたことがあります。
その人自身の物語を描くのに、三人称で傍観するような方法よりも、主人公が語る思い出に没入するようなモノローグ調は、より物語を“近く”に感じさせます。
主人公たちが語る思い出を追体験するような、思い出の中に入り込んだような、そんな感じがしました。
ある意味、題名にある「詩」であるかのように、主人公がつらつらと、自分の感じた事や考えた事を話す本作。
その言葉選びもまた、美しい映像と同様に、「思い出補正」が重ねられたような、綺麗な言葉ばかりでした。
「遠い日のいつか言われた言葉を、
何故か今思い出してる。
その問いにどう答えたか、
今ではもう忘れてしまったけど―。」#上海恋#詩季織々#しきおり pic.twitter.com/LzjMMGOmSL— 『詩季織々』公式 (@shikioriori2018) 2018年7月28日
『彼女と彼女の猫』
『秒速5センチメートル』
『言の葉の庭』
新海誠監督の作品は何作もありますが、それは全て主人公のモノローグ形式。この描き方が大好きだったから、本作もスッと頭と胸の中に入ってきました。
『彼女と彼女の猫』本編(公式)
生々しい物語の弊害
「生々しい物語の弊害」。
ちょっとキツい表現ですが、作品を見ていて感じた事を表すのには最適かと思います。
美しい映像、細部まで語られる思い出。
とてもリアルに描かれた物語は、しかしリアル過ぎて少し嫌いでした。
なんだか、主人公の思い出に、勝手に足を踏み込んだように感じたし、一方で「知りたくもない過去を無理やり聞かされてる」ような威圧感も感じました。
リアルで綺麗な事は素晴らしいことですが、それが今度は不快感のようなものを感じさせてしまう。
「アニメ」って現実とは違うから、色々な感情を乗せて見られるし、純粋に楽しんだり出来るんだと思います。
でも、一点の欠陥もなく、架空の主人公をまるで本物のように描き出してしまうと、違和感が生まれるのかなぁ〜と。
「不気味の谷」という思考概念があります。
ロボット開発等の分野で用いるこの考えは、「人間でないモノが、人間に似すぎると、人間は不快感を感じる」というもの。
これが本作にも当てはまるのかなぁ〜なんて。
この点は、逆に残念でしたね。
短編1:陽だまりの朝食
~『#詩季織々』紹介~
「陽だまりの朝食」《テーマ:食》
北京で働くシャオミンは、ふと故郷・湖南省での日々を思い出す―。【監督:#イシャオシン】
中国湖南省出身の次世代を担う若き映画監督であり俳優。#しきおり pic.twitter.com/opp5cYtArd— 『詩季織々』公式 (@shikioriori2018) 2018年6月14日
「温かいご飯の美味しさ」を、「一食一食の思い出深さ」を教えてくれるような短編でした。
麺、スープ、キノコや肉など丁寧に描かれた具材からなる、熱々の湯気が立ち昇るビーフンが本当に美味しそうでした!
この話を語る主人公がいるのは、雨降る都会。
そんな寒々しい“今”とは対照的に、思い出の中のビーフンはとても温かく、優しそうでした。
\公開まであと3日!/
「陽だまりの朝食」#イシャオシン 監督コメント🎬
「この物語は食と故郷と家族愛が繋がる内容にもなりますので、この作品をご覧頂いて、皆様に自分の思い出と感情を呼び起こして楽しんで頂ければと思います。」#しきおり pic.twitter.com/a0kifys8x8
— 『詩季織々』公式 (@shikioriori2018) 2018年8月1日
短編2:小さなファッションショー
~『#詩季織々』紹介~
「小さなファッションショー」《テーマ:衣》
広州の姉妹、人気モデルのイリンと専門学校生のルル。幼くして両親を亡くした2人は、共に助け合いながら仲良く一緒に暮らしていた―。【監督:#竹内良貴】
本作でオリジナル作品の初監督デビュー!#しきおり pic.twitter.com/3LrJrg0lPb— 『詩季織々』公式 (@shikioriori2018) 2018年6月15日
純粋に、「人の関係」が良いなぁ〜と思えた作品です。
服が好きで、憧れのモデルという仕事に生きがいを感じる輝かしい姿は見ていて羨ましかったです。
妹との生活も、上手くいっているようで。
しかし、そんな幸せな生活が少しずつ変わっていきます。
それでも、そんな中で紡がれる「人の関係」って、温かくて優しくて良いなぁ〜と。
最後にはウルッと目に涙がにじみました。
\公開まであと2日!/
「小さなファッションショー」#竹内良貴 監督コメント📽️
「今までアニメーションの中に出てくる中国人というと、どうしてもステレオタイプなものが多かったと思うのですが、今作では今を生きる等身大の若者像を描けたのではないかと思います。」(続)#しきおり pic.twitter.com/nEFMApOdl7
— 『詩季織々』公式 (@shikioriori2018) 2018年8月2日
(コメント続き)
「小さなファッションショー」#竹内良貴 監督🎬
「日本と中国では文化や習慣の違いなどはありますが、人の感情に国境はないと思っています。」#しきおり pic.twitter.com/HWqxb8RPoc
— 『詩季織々』公式 (@shikioriori2018) 2018年8月2日
短編3:上海恋
~『#詩季織々』紹介~
「上海恋」《テーマ:住》
1990年代の上海。石庫門(せきこもん)に住むリモは、幼馴染のシャオユに淡い想いを抱きながら、いつも一緒に過ごしていた―。【監督:#リ・ハオリン】
中国のアニメーションブランド“Haoliners”の代表であり、本プロジェクトの総監督。#しきおり pic.twitter.com/JxjLQXstMx— 『詩季織々』公式 (@shikioriori2018) 2018年6月16日
仲良し幼馴染の3人組。
主人公のリモは、シャオユに好意を寄せる。そして、2人はカセットテープに自分の声を録音して渡すという事をします。
「手紙」でもなく、「SNS」でもなく、「カセットテープ」。
なんだか、そのアナログな媒体がとても素敵で、この物語が大好きになりました。
【#思い出アイテム紹介】
<カセットテープ>#リ・ハオリン 監督「カセットテープは音声を録音して、面と向かって言い辛い事も伝える事が出来る道具だと思います。手紙など文字で伝えるより、声で伝える方が感情を表現できる良い点もありますよね。」(続)#しきおり pic.twitter.com/0J6p0plPla
— 『詩季織々』公式 (@shikioriori2018) 2018年7月25日
見ていてモヤモヤしたり、嬉しくなったり、悲しくなったりする物語。
切なすぎて、最後には泣いてしまいました。
\いよいよ明日公開!/
「上海恋」#リ・ハオリン 監督コメント🎬
「『#詩季織々』は特別な作品です。中国特有の文化や雰囲気を含んでいる一方、愛情や感情等の表現方法は日本や他のアジアの方も共感できるのではないかと思います。この作品を通じて皆さんと共有したいです。」#しきおり pic.twitter.com/84RAFAIgM9
— 『詩季織々』公式 (@shikioriori2018) 2018年8月3日
「上海恋」の舞台である上海は刻一刻と開発が進み、石庫門のような古い町並みが壊されてきている場所もあります。昔から見てきた上海の風景を、美しい背景としてアニメーションの中に残したいという、#リ・ハオリン 監督の思いも本作には込められています。#しきおり pic.twitter.com/Eswm0qPPEd
— 『詩季織々』公式 (@shikioriori2018) 2018年8月2日
以降、映画本編のネタバレあり
ネタバレあらすじ
陽だまりの朝食
《現在》
冷たい雨が降る中、地下鉄の駅を出たシャオミンは、幼い頃に祖母と食べたビーフンを、学生時代に食べたビーフンを思い出す。
《思い出》
湖南省の日課は、毎朝熱々のビーフンを食べること。
シャオミンは祖母と一緒に毎朝決まってビーフンを食べる。その店は看板を掲げる事も無く、無口な夫婦が営む、しかしとても美味しいビーフン屋だった。
「食べる事が好きな人は、美味しいものに出会う運に恵まれている」
ところが、そのビーフン屋が閉店してしまう。
商売繁盛を妬まれて追い出されたのか、店主が以前働いていた料理店に呼ばれたのか。
シャオミンは成長し、中学に通い始める。
そこでも毎朝、通学路にあるビーフン屋でビーフンを食べる毎日。
しかし、彼のもう1つの目的は、店の前を毎朝自転車で通学する、同じ中学に通う栗色の髪が美しい女の子を見るため。
シャオミンは、その女の子に恋心を寄せていた。
ところが、ビーフン屋の主人が転職を考え、そこは釣具屋に。しかも、商売は上手くいってない様子だった。
さらに、追い打ちをかけるように、シャオミンと同じ中学に通う元ビーフン屋の息子が喧嘩をし、ナイフで刺されて怪我してしまう。
息子の怪我を受け、釣具屋も閉めてしまった。
時間は流れ、シャオミンが中学3年生になった時、再びビーフン屋が復活した。主人と妻、息子の3人で仲良く営業する姿を見るシャオミン。
しかし、彼が想いを寄せていた少女は中学を卒業し、遠方の高校へ入学したという。
彼の初恋が終わった朝だった。
《現在》
雨の中、ビーフンのチェーン店に入ったシャオミンは、やはり朝御飯にビーフンを食べる。
しかし、幼い頃にビーフンを一緒に食べた祖母が倒れたという知らせが。
急いで故郷へ帰ったシャオミンは、息を引き取る直前の祖母に会うことが出来、言葉を交わすことができた。
そして、祖母は亡くなってしまう。
小さなファッションショー
服が大好きなイリン。子供の頃は背が高い事が嫌いだったが、モデルの仕事をしている大人になった彼女は、高身長に感謝していた。
スタジオで写真撮影をしている中、彼女は雑誌の編集長に「今、何が見える?」と問われる。
最初は嬉しかったモデルの仕事も、今では日常になってしまっていた。
その日、イリンは誕生日だった。
マンションでは同居する妹のルルがケーキやご馳走を作って待っていたが、イリンは連絡に気が付かず、職場の誕生日パーティーに出る。
ベロンベロンに酔い、マネージャーの助けで自宅に帰ったイリンを、ルルは優しく迎える。
その翌日、重要なオーディションがあったにも関わらず、イリンは二日酔いで寝坊。
オーディションにはギリギリ間に合ったが、結末は落選。受かったのは、同じ事務所で勢いのある新人若手の後輩だった。
《回想はじめ》
イリンとルルは姉妹。
2人は母の愛情を受けてすくすくと育つが、母が亡くなると、2人は別々の家に預けられた。
イリンがモデルとして成功すると、ルルを引き取る事に。預けられた家で辛い経験をしたイリンは、ルルも同じだろうと、周囲の反対を押し切って引き取ったのだった。
そんなイリンが子供の頃から好きなのは、母親が作ってくれた服の色、赤や朱色に似た明るい赤色だった。
《回想終わり》
オーディションに落ちたイリンは、このままでは駄目だと半ば恐怖を感じ、美しさを保ち、また向上させるため、ダイエットや運動にのめり込む。
マネージャーやルルの心配を他所に、美容を求めるイリン。
そして、大きなファッションショー・イベントの当日。元気な後輩とは対照的に、イリンは疲労と負担で体調が良くなかった。
それでも、何とかランウェイに立ち、歩き出したイリン。ところが、数歩進んだところで倒れてしまった。
脚の怪我から復帰したイリンが目にしたのは、街中に後輩の写真がある風景だった。
「自分の代わりはいくらでもいる」
そう感じたイリンは、モデルを辞めようと決意する。その事をルルに話し、言葉を重ねる2人。しかし、最後には口喧嘩になってしまう。
ルルは家を飛び出し、それからは学校の帰りも遅くなり、イリンと顔を合わせなくなってしまう。
ルルと喧嘩した状況にたまらなくなったイリンは、マネージャーに相談する。
そこでマネージャーから諭されたのは、イリンの高慢な態度と口調。一方で応援もしてくれた。
そして、再びモデルをしようと決意し、ルルとの仲を治そうと決めたイリンにマネージャーが渡したのは、住所が書かれた紙だった。
帰宅し、その紙の眺めるイリン。
「行きたくない……」そんな思いが生まれ始める中、裏面に小さな文字を見つける。
そこには「頑張って!」と書かれたルルのメッセージがあった。
翌日、住所の場所に向かったイリンを迎えたのは、ルルだった。
イリンが復帰するようにと、彼女が好きな赤色のドレスを用意し、ファッションショーを企画したのだった。
そして、イリンは再びモデルを始め、ルルは学校を卒業して服を専門とする仕事をするように。
忙しい2人だが、時々、部屋で2人だけの「小さなファッションショー」をする。ルルが服を作り、イリンが着るのだ。
上海恋
《現在》
建築デザイナーとして会社に勤めるリモ。ところが、仕事が上手く行かず、両親との仲も悪くなり、ついに家を出て一人暮らしする事に。
幼馴染の友達に手伝ってもらい、引っ越しをする。そして、荷解きをしている最中、ダンボールの中から一本のカセットテープを見つける。
それは、中学受験をする時に、シャオユがくれたものだった。
それを知ったリモは、カセットテープを聴くため、古い住宅街の中にある実家へ向かう。
《過去──中学生の頃》
リモ、シャオユ、男友達の3人は仲良し幼馴染で、いつも一緒に遊んでいた。それぞれ好きな曲が録音されたカセットテープを持ち寄っては、それを聴いたりしていた。
そんなリモは、シャオユの事が好きだった。
ある日、遊んで帰ろうとするシャオユが地面に足をかけて転んでしまう。リモは彼女を“おんぶ”しながら家まで送ることに。
そこでシャオユは、「この足じゃ学校に行けないから、授業を録音してきて」とカセットテープを渡す。
翌日、リモは授業を録音したカセットテープをシャオユに届ける。
その日から、カセットテープを使ったリモとシャオユのやり取りが始まった。他愛のない雑談や、質問を録音し、相手に渡す。受け取り、声を吹き込んでまた渡す。
そんな事を繰り返すうち、2人の距離は縮まっているように思えた。
そして高校受験が近づいてきた。
シャオユが打ち明けたのは、「父親の望みで、遠方の難関大学付属高校を受験して、受かったら引っ越す」という事だった。
シャオユと離れ離れになると知ったリモは、「親父の言う事に従うのか?」と強い口調で言うとその場を去ってしまう。
それから、3人の距離は離れてしまう。
しかし、シャオユと離れたくないリモは、勉強を頑張ってシャオユと同じ難関大学付属高校に行くことを決める。
これまでの遊んだ生活から抜け出し、勉強に集中する日々が続いた。
一方、リモが同じ高校を受験するとは知らないシャオユは、勉強漬けのリモに当ててカセットテープを送る。
しかし忙しいリモは、聴くこともなくテープを箱にしまうのだった。
そして受験が終わる。
リモは難関大学付属高校に無事に合格していて、その事をシャオユに伝える為に彼女の家を訪れた。
しかし、そこにシャオユはいない。近所の人の話では、シャオユは受験に失敗し、父親は激怒。家族で引っ越してしまったらしかった。
そして、リモは父母とともに高校の近くに引っ越す。
引っ越しの日、トラックの荷台から道路を眺めていると、そこに映ったのは、大きく手を振るシャオユの姿だった。
《現在》
実家でカセットレコーダーを探し出したリモは、箱の中から出てきたテープを再生する。
そこには、シャオユの言葉が。
「向日葵のように太陽の方を向いていたい。リモと離れたくないから、父親の言う難関大学付属高校は受験しない」
それを聴いたリモは、涙を流す。
それから少し過ぎる。
新たに開発された地区でホテルを始めたリモと友達。
そこに、一人の女性が訪ねてくる。その姿を見たリモは、笑顔を浮かべるのだった。
【#しきおり思い出 紹介】
「上海恋」の舞台、石庫門。#リ・ハオリン 監督にとっても思い出の場所との事。
「祖母が石庫門に住んでいたので、小さいころから週1~2回くらい通っていました。友達や仲間が近くに住んでおり家族のような感じがあるため、石庫門の雰囲気が気に入っています」#しきおり pic.twitter.com/vtHne9Fbhb
— 『詩季織々』公式 (@shikioriori2018) 2018年7月15日
最後まで読んでくださり、
本当にありがとうございました!!