こんにちは!
台風19が凄いですね…。
『空の青さを知る人よ』を観てきました!
超平和バスターズが原作で、超楽しみだった作品!
長井龍雪監督の下、岡田麿里の脚本と、田中将賀のキャラクター、そして秩父の風景がどこか懐かしい空気を運んでくれる、心地良い作品でした!
2019年10月11日鑑賞
空の青さを知る人よ
【評価:4.7/5.0】
【一言】
秋の清々しい空気のような。
澄んだ青色の高い空のような。
そんな、素晴らしい映画でした!
「伝える」が真っ直ぐに描かれた作品!
そして、地元への肯定がたくさん!
【Twitter140文字感想】
【 #空の青さを知る人よ 】
青春で止った大人、思春期の少女。
心と向き合い、胸の中を言葉にする。秋晴れの空の下を歩きたい。
そう思える、清々しく作品!ちょっと不器用で、真っ直ぐ。
飾らず素直な台詞に、共鳴する。舞台は秩父。地元を肯定する作品。
「超平和バスターズ」の解と感謝! pic.twitter.com/Z2tiRtIQXK— ArA-1 (@1_ARA_1) 2019年10月12日
【目次】
STORY&STAFF
山に囲まれた町に住む、17歳の高校二年生・相生あおい。…[中略]…姉・あかね。二人は、13年前に事故で両親を失った。当時高校三年生だったあかねは恋人との上京を断念して、地元で就職。それ以来、あおいの親代わりになり、二人きりで暮らしてきたのだ。あおいは自分を育てるために、恋愛もせず色んなことをあきらめて生きてきた姉に、負い目を感じていた。姉の人生から自由を奪ってしまったと…。そんなある日。…[中略]…あかねのかつての恋人であり、あおいに音楽の楽しさを教えてくれた憧れの人…[中略]…慎之介が、ついに帰ってくる…。それを知ったあおいの前に、突然“彼”が現れた。“彼”は、しんの。高校生時代の姿のままで、過去から時間を超えてやって来た18歳の金室慎之介。思わぬ再会から、しんのへの憧れが恋へと変わっていくあおい。一方で、13年ぶりに再会を果たす、あかねと慎之介。せつなくてふしぎな四角関係…過去と現在をつなぐ、「二度目の初恋」が始まる。
映画公式サイト
予告動画
監督:長井龍雪
原作:超平和バスターズ
脚本:岡田麿里
キャラデザ/総作監:田中将賀
制作:CloverWorks
音楽:横山克
キャスト:吉沢亮, 吉岡里帆, 若山詩音 and more.
主題歌:あいみょん「空の青さを知る人よ」
上映時間:110分
日本公開:2019年10月10日
配給:
公式サイト
感想外観
とっても清々しかった!
映画を観た第一印象はこの気持ちよさ!
まさに、秋晴れの少し霞がかった青い空の下を歩きたくなるような、赤く色づく木々の間を歩きたくなるような、そんな作品でした!
丁寧に描き出された舞台である秩父の町並みと自然が、そんな気分をより引き立てていたのだと思います!
「伝えたい」
この映画を観て、登場人物たちの精一杯の生き様と言動を観て感じたのがこの言葉でした。
気持ちを伝える。
丁寧に描写される心の中と、少し乱暴に描かれる彼ら彼女らの姿が、とても上手くマッチして、不器用な姿に共鳴するような感覚を覚えました。
そこには、「言葉」と「台詞」の飾らない素直さのようなものがあったからだと思います!
どこまでも。
真っ直ぐで、真っ青な主人公
田舎が嫌で東京に行きたくて、何でもかんでもに反発したい思春期で、気になる人に心が揺れる青春真っ只中の彼女。
彼女の姿には、昔の自分自身を重ねるし、今の自分自身も重ねたくなります。多分、彼女は私たちの分身なのです。
そして、主演の2人、吉沢亮と吉岡里帆がめっちゃ上手かった!
これは、「田舎」への最高の肯定。
埼玉県の「秩父」を舞台にした三部作と位置づけられた本作は、「人の物語」でもあると同時に「街の物語」でもあって。「超平和バスターズ」の答えなのかもしれないと、とても嬉しくなる物語でした!
あの映像と音楽は、さすが!
シーンの”どこ”を切り取って、登場人物の”なに”にクローズアップをするのか。感受性豊かな年頃の少女と、他人との距離を考える年齢の女性とをいかに描き出すか、本当に見事な映像構成でした。
それに、聴覚から心を揺さぶる音楽素晴らしかったし、あいみょんの歌う主題歌がまた最高に良かったです!!!
あいみょん –空の青さを知る人よ【movie ver.】
軽めの物語で、”あなた”に問う。
そんな印象を受けた作品だったです。
『ここさけ』や『さよ朝』のノリで「重たい作品」を覚悟していたのですが、意外とラフな作品でした。
多分、登場人物の人生にフォーカスを最大限絞るのではなく、主人公を通した観客に主眼を置いているんじゃないか、そんな気がしました。
このTVCMが好き!
映画『空の青さを知る人よ』TVCM
映画の感想
心地良い秋晴れのような映画
この映画、本当に気持ち良かったです!
観終わった後の胸中はまさに「秋晴れ」と表現するしかない清々しさで満ちていて、とっても心地よかったです!
心が洗われるというか、秋の涼しくなって少し寒いくらいの透明感ある空気が肺一杯に吸い込まれていくような、明け方の誰もいない静寂を独り占めするような、そんな感覚です。
物語の舞台が「秋」です。
だから、作品全体が紅葉に色づく橙色の空気に満ちていて、それが客席にまで流れ込んでくるような感じがしました。
丁寧に描かれる秩父の風景。
リアルで細部まで綺麗な秩父の町並みや山並みは、程よく色づいたカラフルな葉で覆われて、赤色の鉄橋がまたよく似合う!
この舞台としての描写は、「秋晴れ感覚」に大きく寄与していると強く感じました!
そして、ストーリーも綺麗!
底なしに真っ直ぐで透明な物語が、鑑賞後の「秋晴れ感覚」を演出するとても重要な要素だと思います!
「淀み」が無いんです。
スッと胸の中に落ちていくような感覚の物語で、なのに丁寧で、だから綺麗に感じたし、公開時期的にも「秋」をいの一番に連想したのかな、と。
だから、残念でした。
鑑賞した公開初日の10月11日。
超巨大でワルプルギス級と呼ばれた台風19号の影響で天気は雨模様。
せっかくなら、快晴で青空が気持ちい天気の日に映画を鑑賞したかったな、と心の底から思いました!
素直な言葉で伝える気持ち
「伝える」
これがこの作品の一番のモノだと思います。
登場人物たちの言葉はとても真っ直ぐ。
心がとても綺麗だから、そしてあまりにも不器用で、大人なのに成長途中で、子供なのに”おませさん”で。
「私は、あか姉みたいになりたくない!」
時には、あまりに真っ直ぐ過ぎて相手を傷つけてしまうこともあるし、距離感を勘違いして、見誤ってしまうこともあるし、相手のコトを分かったつもりになってしまうこともある。
でも、それでもいい。
フィクションだから許されることなのかもしれないけれど、むしろ肯定したいと感じる気持ちがあります。心の中を飾らずに真っ直ぐに「言葉」として表現することの難しさみたいなものが、しっとりと感じられました。
伝える主人公たちは皆んな不器用。
さすがの脚本。伝えるべき「気持ち・想い」はきちんと胸の中にあって。でもそれを「伝える」術を持っていなくて。
なんとか形にしようとして、でもそれがなかなか出来なくて、少し乱暴になってしまったり、上手く表現出来なかったり。
キャラクターの内面がとても丁寧に描かれているから、逆にそれを表に出す部分で藻掻く彼ら彼女らの姿が印象的に映りました。
そんな背中からは、どこか人間くさい生き様のような、戸惑いのようなものが感じられて、精一杯に一生懸命に手を伸ばす姿が生き生きと息づいていて、得も言われぬ感覚になりました。
それがどんな内容であれ、まだ自分が気づいていない感情であれ、隠したかったコトであれ、向き合うのを躊躇っていた心であれ、「伝える」というアウトプットをするまで。
なんだか、彼ら彼女らの心に共鳴していくような、そんな気持ちになりました。
心の不安と登場人物
登場人物たちは真っ直ぐ。
丁寧な心と不器用な行動でなんとか自身の想いに向き合って、気持ちを伝えようとする姿が大好きです!
『あの花』や『ここさけ』と違って本作の登場人物の半数以上は「大人」だけれども、過去2作と違い思春期と青春のまま時間を止めたようなキャラクター像でした。
相生あおい、がいい!
とても個性的で、でも中性な感じ。
本当に真っ直ぐで、青々しくて、でも人の気持ちを考えられる高校生で。自分の将来の進路に不安を抱えて、恋の進展に気を揉んで、姉との関係、友達との関係、田舎で暮らすこと、東京に憧れること。
彼女は真っ只中。何でもかんでもに反発したい思春期で、気になる人に心が揺れる青春のド真ん中。
少し目つきが悪くて相手を睨むような表情になったり、口が悪かったりするけれど、その内側の本音も含めて、感情を表に出せる彼女が羨ましいし、大好きに思いました。
「空の青さを知る人よ」
劇場公開まであと1か月ということで本日から4週に渡り主要キャラクターの総作監修正をお届けします。
第1週目は #若山詩音 さん演じる「相生あおい」!
上京しバンドで天下をとるという夢を持つあおい。東京でのプロデビューを目指す理由とは…#空の青さを知る人よ #空青 #CLW pic.twitter.com/nKpE4PzGNZ— CloverWorks (@CloverWorks) 2019年9月10日
それに、可愛い!
ここがめっちゃ大切!(笑)
他の登場人物も同じ。
成長して大人になったキャラクターも、心の中に残るモノはまだまだ幼き頃のまま。霞んでくすんでいても、丁寧に向き合って磨けば光る。
あおいには昔の自分の姿を重ねたくなるし、大人のキャラクターには今の自分を重ねたくなるような、「あなたの物語」でもあるように感じました。
主演の2人の演技が超上手かったです!
俳優の吉沢亮と若山詩音の2人が凄い!
相生あおいを演じた若山詩音は本当に上手い!
高校生のまだ垢抜けない声色でありながらも、どこか遠くを見ている期待と諦めのような感情が籠もる演技が素晴らしくて、後半に進むにつれて感情が昂ぶる姿がまた本当に見事!
金室慎之介を演じた吉沢亮。
高校生の姿と、大人の姿、両方を演じたわけですが、その差がとても綺麗で、本物の声優か別々の人が演じているのかと思うほど。その一方で同一人物が演じていつからこその繋がりが良かったです!
吉岡里帆も良かった!
感情や様々なものを抱えて、それを胸の中に隠している様子が、見事でした!
「地元」を肯定する物語
本作の舞台は秩父。
観ていて感じたのは、誰もが心の中に抱く「故郷と地元への肯定」なのではないかな、と考えました。
そしてその内容は、多分観客毎に受け取るモノが違うのだと思います。けど、ロケーションもバックグラウンドも違うけど、必ず共通するモノもあるはずです。
もしかしたら、「感謝」なのかも。
『あの花』と『ここさけ』では、秩父の街は背景でしかなかったけれど、この『空青』ではまるで主役の1人のように描き出されます。
三部作を通しての長井・岡田・田中の三人の感謝の気持ちであって、これが「超平和バスターズ」としての答えなのかもしれないと、思えてきました。涙も溢れてきました。
「空の青さを知る人よ」#あの花 #ここさけ に続き、今作も秩父が舞台ですので何度も秩父へ取材に行っています。
この写真は秩父橋へロケハンに行ったときの様子です。三作目ともなると、この場所を歩く皆さんの足取りも力強いです。#空の青さを知る人よ #空青 #超平和バスターズ #CLW pic.twitter.com/HjbRgCRl95— CloverWorks (@CloverWorks) 2019年7月23日
あのシーンとか、
あのセリフとか。
そのカエルとか。
誰の胸にも響く、地元讃歌で、故郷賛美の物語であるのです!
秩父の映像と物語の映像
アニメーションと映像はさすが!
そして、音楽も主題歌も最高でした!
映像作品としての表現。
ストーリーとキャラクターを描き出すのに、本当に計算された画面構成が光っていると感じました。
シーンの”どこ”を切り取って物語を動かし、登場人物の”なに”にクローズアップして感情を描き出すのか、とても良かったです。
感受性豊かで何事にも感化されて、しかし我を貫きたい年頃の子どもたちの姿に光を当てたり。他人との距離感を図ろうとする大人たちの立ち位置を導き出したりと凄いなぁと思わされるし、これだからアニメーションは面白いです!
迫力と滑らかさも凄いです!
映像の迫力が凄い!
青春のモヤモヤを全部ぶつけて走り出したくなるような、抱えているもの全部を投げ出して飛び出したくなるような、そんな勢いと力強さのあるシーンが度々登場してとても印象的でした。
そして、滑らかさも。
本作はバンドが1つの主役になっていて、主人公のあおいはベースを弾きます。その指の動きや身体の揺れがとても滑らか。実際の演奏映像を元にしたロトスコープという手法で、指の動き1つ1つまでが滑らかでした!
「空の青さを知る人よ」
実写で撮影した映像をセル画にトレースする「ロトスコープ」という技法を取り入れて制作しています。
今回はその撮影の様子を少しだけお見せします。ここからどのような映像になるのか、ぜひ劇場でお確かめください!#空の青さを知る人よ #空青 #超平和バスターズ #CLW pic.twitter.com/hTwAGpc10z— CloverWorks (@CloverWorks) 2019年7月2日
秩父の風景も綺麗!
最初に少し書きましたが、綺麗な自然や有名な名所が背景として登場して、最高でした!
これは、音楽アニメなの!
青春映画でもあり、音楽映画でもありました。
「音楽」が彼ら彼女らの心を描き出すツールで、自己表現の方法で、会話の言葉でもあるんです!
主人公たちの曲。
「ロック」って社会に反発するような音楽なわけで、そのベースを練習するあおいは、その姿がもうメッセージ。「今の自分の世界は嫌いだけど、周りに合わせてテンポを刻まなくてはならない」という気持ちが伝わってくるように感じました。
フィクションの中の音楽は、真っ直ぐに登場人物の気持ちを描き出すのにうってつけのツールなのかもしれません。
劇中のBGMも良かったです!
手掛けるのは『ローリング☆ガールズ』や『Fate/Apocrypha』等々の劇伴を担当した横山克。
本作の劇伴は、映画作品らしく結構強調されるような部分や、物語と音楽が相互に高めていくような印象を抱く部分が何箇所もあり、私はとっても好きでした!
そして、あいみょんの歌う主題歌。
うん、めっちゃ良い!
主題歌の「空の青さを知る人よ」
EDテーマの「葵」
両方とも本当にいい曲でした!
作詞もあいみょん本人ということでしたが、作品に合いすぎていて鳥肌が立ちました。この曲を映画館で聴くことが出来て本当に良かったです!
あいみょん – 空の青さを知る人よ【OFFICIAL MUSIC VIDEO】
あなたへ、少し軽めの。
映画を観た印象は「軽めだな」と。
『心が叫びたがってるんだ。』の身が詰まり胸が苦しくなるような物語とか、『さよならの朝に約束の花をかざろう』の身が引き裂かれるような愛情とか、そういう「重たい」内容を覚悟していたので、正直に言えば拍子抜け感はありました。
でも、それも良い!
『ここさけ』や『さよ朝』は「主人公の物語」がメインだったと思うんです。彼女たちがどういう選択をして、どう生きるのかを描き出した「キャラクターの人生」の物語。
一方で『空青』は観客へ「あなたの物語」を描こうとしていたのではないかな、と感じました。
もちろん高校生と大人の彼らは自分の道を進むのに一生懸命です。でも、その姿はどこか中性で、観客が自分自身の背景を重ねながら観ることで、より深くなるのかな、と。(というか、重ねずにはいられない?)
もしかしたら、岡田麿里の姿勢が変わったのかも。
『あの花』と『ここさけ』は「学生時代の自分を描いた」という作品。そして2017年に『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』という自伝を出版。その後2018年に監督を務めた『さよ朝』は「岡田麿里の100%が見てみたい」というP.A.WORKS代表の声で作られた作品。
そういう経緯があって、もしかしたら「岡田麿里の物語」に一旦区切りを付けるような感覚もあったのではないかな、とそう感じました。
とは言いつつも、軽かったです。
決して失礼な意味ではないですが。
もしかしたら、やっぱり「東宝」なのかなぁと不安になります。
『君の名は。』が大ヒットしたことで、東宝社内では映画企画により「エンタメ性」を求めるようになりました。
本作もその流れを汲んでいるのかなぁと心配になります。それにプロデューサーに川村元気も入っているからなおさら。
長井龍雪監督や岡田麿里の描きたい物語が観たいし、フジテレビ系だから大丈夫だとは思うんですけどね……。
以降、映画本編のネタバレあり
映画の感想
※ネタバレあり
台詞でめくる物語
『空青』という作品は、本当に「台詞」の真っ直ぐさと強さが異常なほどに大きくて、胸の中をそのまま語りだすようなモノローグや、それを口に出した瞬間の空気とか、そういうものが本当に凄いです。
その台詞に焦点を当てながら、簡単に物語を振り返ります。
冒頭。
秩父橋のたもとでベースを弾くあおい。
彼女の回想。
亡き父母の葬式の日に親戚から投げられた「お姉ちゃんの言うことをよく聞くのよ。これからは2人で頑張らなくちゃ」という言葉。
学生時代の慎之介に幼いあおいが放った「あかねとあおいは一緒!」
そして、タイトルバック。
「探している、どんな夢も叶う場所を」
お堂でのシンノとの出逢い。
あおいが彼に話す胸の内。東京に出たいという真意。
「あか姉がここに、私に縛られているよりは」
シンノが13年後の慎之介を見る。
慎之介とあかねをカップルにする作戦のハズが、秩父に戻ってきた大人の姿を見て、のガッカリしたような言葉。
「こんな俺で、来たくなかった」
慎之介とあかねの過去を調べる。
図書館に所蔵されていた卒業アルバムに書かれていた 、あか姉の一言は────
井の中の蛙大海を知らず
されど、空の青さを知る。
あおいは地元応援演歌のバンドに参加。
ダメ出しを続ける慎之介に嫌気が差した彼女に、シンノが優しく言葉を掛ける。昔のように、信じて応援してくれる。
「お前なら絶対できる」
そんなあおいは、理由を話す。
「私が地元を出たいのは、あか姉のため」
やりたいことを全部我慢して、これまでのように迷惑を変えたくない。幸せになってほしい。そんな想いが彼女の中にある。
そして、デコピン。
「私はシンノが!!」と言葉に出しそうになって、慌てて引っ込める。顔を真っ赤にしながらお堂から走り出す、あおい。
家で。
あか姉に対して発した言葉。
「私ははあか姉みたいになりたくない!」
やりたいことを我慢して、こんなところで一生を過ごして、馬鹿みたい。
言ってしまった言葉は取り返しがつかない。
曖昧な関係が続く中、音楽祭のリハ。
音楽堂の裏手で出会う慎之介とあかね。
彼女がリクエストした慎之介のデビュー曲「空の青さを知る人よ」
隠れて無く彼女の姿が、あおいの心に響く。
そして、家の台所で見つけたノート。
「あおい攻略ノート」
完璧に見えた姉の頑張りを形で目にした時に、あおいの中であか姉への想いがより一層に高まっていく。
「私はシンノが好き」
そう告白したあおい。
シンノの声は聞いていると温かくなる。触られればもっと好きになってしまう。心の中を話すあおいの得も言われぬ表情。
そして、シンノと慎之介が逢う。
さらに、あか姉が土砂崩れに巻き込まれる。
あおいの知らせに冷静な慎之介に対して、シンノは怒る。
「ガッカリさせないでくれ」
「俺はここから出られなかった。でも、お前は前へ進んだ」
あおいとシンノは飛び出し、走り出す。
慎之介だって、覚悟を決める。「俺は行く!」
あか姉の元へ、空を飛ぶ2人。
あおいは、気がつく。
「空、青いね。出たい、出たいと思っていたけど、こんなに綺麗だったんだ」
坑道の中へ。
シンノがあかねと逢う。
話して、あかねが気づく。
「そっか。あおい、あの頃の私と同じくらいか」
晴れて一件落着。
帰りの車は、3人だけに譲る。
あかねは告白への返事をする。
「今度は、ツナマヨのおにぎりでも作ってみようかな」
一人で帰り道を歩くあかね。
失恋に涙をする───
「泣いてないし!
はぁ~、空、クソ青い」
そして、エンドロール。
「地元」への想い
上で書いたように。
本作は地元への讃歌であり、
秩父三部作の集大成である作品。
「地元」への肯定が心に染みました。
『空の青さを知る人』
この題名に全てが詰まっています。
あか姉の好きな言葉。
「井の中の蛙大海を知らず。されど空の青さを知る」
あか姉は地元の良さを誰よりも知っていたのかもしれません。「ここでしか出来ないことがある」と慎之介にも言っていたし、「誰かに振り回されてない」と語気を荒げていましたし。
「空の青さ」
この言葉が、「地元」を肯定するフレーズのような気がします。
だから、あおいの視点が印象的。
シンノと空を飛ぶ中での「空、青いね。出たい、出たいと思っていたけど、こんなに綺麗だったんだ」という台詞とともに、秩父の風景が上空から俯瞰されるあのシーンが素晴らしかったです。
それに、エンドロール直前の「空、クソ青い」という台詞も、今の若者言葉での、ロックミュージシャンとしての、最高の肯定なのだと思います。
それに、物語自体もそう。
そもそもこの作品の中心にあるのは「音楽での地域おこし」で、行政と住民が一体になってすすめる様子が描かれています。
さらには、視察と題して様々な観光名所を渡る新渡戸さんの姿も描写されていきます。
『あの花』と『ここさけ』で秩父を舞台にした作品を作ったことへの、根源的には岡田麿里が自身の故郷への感謝の気持ちなのではないかな、と感じました。
あとあと!
ツグくんが着ているパーカーの背中の文字が「ANH」で、色的にも完全に『あの花』だったのが、もう!!!!
前に進みながら昔を思う
この作品。
ある意味では、「少し不思議」なSFです。
昔の学生時代のシンノが帰ってくる物語。
でも、過去と現在の視点に「当事者」がいることで、単なる「回想」だけで終わらない、不思議な感覚がありました。
このことを一番強く感じたのは、あおいが演歌バンドの一員として練習に参加するも、慎之介に「女がベースをやるからだ」と言われたところ。
「大きくなったら俺たちのベースな!」と満面の笑みで言ってくれた昔のシンノの面影はなくて、その落差がズドンと胸に刺さりました。
でも、お堂には当時のままのシンノがいて、彼は「お前なら絶対できる」とやっぱり背中を押してくれる、あの頃の優しいシンノのまま。
過去の回想に浸るのではなくて、物語として「前に進みながら昔を思う」ということが最も上手く描き出していた作品なんじゃないかな、と思いました。
そこで大切なのは「相生あかね」の存在。
彼女は、まるで時が止まったかのように、どこか淡々と人形のように生きているようで、でも心の中では待っている人がいて、地元で自分の人生を歩んでいるという思いがある、そんなキャラクター。
過去のシンノ、現在のあおい、その2人の間に立っているのがあかねで、とても難しい立ち位置にいます。しかも、なかなか本当の感情を表にださないからなおさら。
過去と未来の間にある現在で歩みを緩めるような彼女が物語の中心にいて、エンドロールでは彼女も報われたようで、本当に嬉しかったです。文字通り、止まった時間が動き出したようで!
主題歌と、飛ぶ青春
あいみょんの主題歌が最高でした!
まず、挿入されるところがもう───!!
題名は「空の青さを知る人よ」
映画タイトルに合わせたのかと思いきや、もっと深い意味があって感激と感動で鳥肌ものでした!!
金室慎之介のソロデビュー曲。
劇中でそんな登場をした主題歌。
そうすると、題名も歌詞もストンと納得。
「空の青さを知る人」はどう考えても「相生あかね」のことで、多分彼女へのラブソングなんだろうなぁと。一方で、「自分と地元」という面を見つめているような歌詞にも思えて。
まさか、こういう挿入とは思いませんでした!
そして、飛ぶ青春!!
シンノに手を引かれて山を駆け、空を飛ぶ!
あのシーン、めっちゃ大好き!
驚いているあおいが最高に可愛いし、楽しそうで無邪気な笑顔のシンノが嬉しいし、気がついたら「お姫様抱っこ」になっているところとか、何もかもがエモすぎる!!
しかも、そこで主題歌。
慎之介も含めた3人が決心を固めたその瞬間から流れ出す主題歌が、本当にベストタイミング過ぎてもう素晴らしい!
あか姉の様子が不安ではあったけれど、心から楽しめるシーンでした!
本作の感想は以上です!
ぜひ、秋の晴れたお天気の良い日に劇場で御覧ください!
それから、来場者特典を頂きました!
『あの花』、『ここさけ』、『空青』のクリアファイルと、「あの花ラジオ」の復刻版が聞けるコードです!
空青公開記念 復刻版「あの花ラジオ」特別編 予告
最後まで読んでくださり、
本当にありがとうございました!!