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【小説】伊藤計劃著『虐殺器官』

伊藤計劃『虐殺器官』

 

 

【あらすじ】

9.11以降先進国が抗テロを目的に完全なる情報管理システムを構築して安全と平和を保つ一方、後進国では内戦や虐殺が勃発していた。

 その中心にはいつも、ジョン・ポールなる男の存在が確認され、シェパード大尉率いる特殊部隊は彼の暗殺を命じられる。
 人々を虐殺へと導くジョン・ポールの目的と、“虐殺の文法”の真実とは?

 
※メモ程度の感想なので、読みにくいかもです…。
※若干ネタバレあり

【感想】

〈━━細かな点が凄い━━〉

・一人称視点で語られる物語における視味聴嗅触覚
の膨大かつ詳細な情報
・人類史を延長したような世界設定と国際情勢
・貧困,テロ,安全,内戦……現代社会を投影して拡張させたような物語背景
・機能と能力を完璧に設計された近未来デバイス&メカ
・確実に組み立てられた説明的会話で現実味を帯びる虐殺の文法

 1から100まで、細かいところまでしっかりと作り込まれていて面白かったです。

〈思考させる小説〉

「内容がある小説」って印象。ただ娯楽のため、読んで面白い小説ってわけじゃなくて、台詞と地文でキチンと組み立てられている印象。

 読んでいる読者がただ文字列を目で追うだけじゃなくて、頭で考えながら、文章の“内容”を取り込みながら読む小説。

〈情報量と膨大な名称〉

とにかく情報量が多くて、1から100まで細く組み立てれて描写されているから、濃いと感じたのかもしれません。
 大量の組織名は複雑な軍隊と政治にリアリティを持たせてたし、近未来設定の詳細な描写は頭での想像をかなり助けてくれました。
 
 ルビ振りとか略文字が多くて、組織名とか機関名が多くて楽しかったです。
 俗に『D.C.と軍は略語が大好き』って言うけど、まさしくその通り(笑)
 組織名、システム名、作戦形式や武器メカ名までありとあらゆる物が頭文字を取った略語で表されていましたね。

〈表現描写がGOOD〉

死体描写、虐殺描写が良かった。銃で撃ち割られた頭を“花”って形容したり、焼かれた死体を筋肉レベルで詳細に書き表したり。
 損壊した部位をしっかり指摘して、何に形容したり細く描くからイメージしやすかったです。

〈引用や他作品名〉

至るところに映画や小説の名前、内容、台詞が出てきましたね。伊藤さんが様々な作品を好きという事は聞いていたけど、こうも小説に練り込んでいたとは。これによって登場人物の知的レベルの高さがより顕著になっていたと思います。
 また、自分がその分野の知識が薄い事を後悔した。

 〈映画の印象が……〉

映画を先に観ちゃっているから、近未来のデバイスや装備、メカの形状や外観、キャラクターの外見を自分でイメージ出来ないのが残念。
 もちろん、イメージはしているけども映画として映像化されたビジュアルの影響を色濃く受けちゃっている。音声も映画の声で脳内再生されましたし。

 

 

〈感情の読み取りが難い!〉

登場人物の感情がイマイチ理解出来なかった。
どうしてルツィアを好きになったの?
シェパードの罪意識は結局?

 感情適応調整を受けているからか、意図的に薄くしたのか、描写しなかったのか、理解力不足なのか分からないけど、それによって“殺人ロボット”的な印象を受けたのと、“思考に悩む若者”って印象を受けました。

 

〈読みにくい部分も少しだけ……〉

読みにくい文章って思ったのも事実です。
 「夢」と「現実」、「回想」と「現在」が混ざっている部分が少なくなかった。まぁ、全体の構成的には回顧なんですけど。
 
 あとは、台詞カギ括弧で同じ人物の場合は改行しなかったり。(これはまぁ自分が慣れてないだけ。)

〈世界観設定が凄い〉

現代社会を予見したのか、あまりに的確すぎる世界情勢設定に驚き。
・高度監視社会には『米国NSAの盗聴発覚』『日本のテロ等共謀罪』『トランプ氏の米国入国審査』
・テロは『9.11』『ボストンマラソン』『パリ同時多発』『ロンドンテロ』
・その他、西アジアで台頭する新武力勢力、貧困国の少年兵問題や幼少労働問題………。

〈描かれ方と人称〉

小説の視点が一人称で、「ぼく」と人称する書き方。今まで読んできた小説は第三者視点からの物が多かったから新鮮でした。
 一人称で語られると、小説にかなり主観的な部分が入ってきて、客観的な読み方が出来ないです。『ぼくから見た世界、人』という描かれ方だから、主人公の感情やエピソードって色眼鏡を通した語りになるんですよね。

〈お気に入りの場面〉


 地獄があるかどうかというアレックスとの会話が印象に残ってます。
思えば虐殺器官〈地獄の在り処〉
ハーモニー〈幸せの在り処〉
屍者の帝国〈魂の在り処〉
を問うてたのかもなぁ……。


 ルツィアの「思考は言語に先行する」という部分、映画では理解できず、小説も一回では理解できず。その部分だけ二回読んで理解しました。

 


 『音楽は心を強姦する』という部分が本作で一番好きなフレーズです。
 別の場所で「耳にはまぶたがない。目は閉じれば消えるが、耳は他者が喉を用いて語る物を遮断することはできない」とありました。


 『拳銃で頭をぶち抜いて自殺した父親の、飛び散った脳を誰が片付けたか』って部分にゾッとしましたね。

〈ラスト展開〉

最後、こんな展開が待っていたなんて!!
 まさか、シェパード大尉が…………。

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