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【小説・アニメ】西尾維新著『化物語上・下』

西尾維新『化物語 上・下』

※ネタバレあり

 

 

【一言】
 ほぼ全編がカギ括弧で囲われた、テンポ良く程よいギャグ調の聞いた会話劇小説。
 言葉の使い回しと、言葉遊びに驚嘆……!

 

 

目次

 

 


【内容】

 高校3年生になった阿良々木暦が、怪異に取り憑かれ、魅せられた5人の少女を救う青春群像怪異譚。

 吸血鬼に襲われた阿良々木暦
 蟹に出会った戦場ヶ原ひたぎ
 蝸牛に迷った八九寺真宵
 猿に願った神原駿河
 蛇に取り憑かれた千石撫子
 猫に魅せられた羽川翼

 

 

『化物語』の出来事をタイムライン(年表)としてまとめました。
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【全体的感想】

 

 『〈物語〉シリーズ』や『刀語』などアニメは見たものの、西尾維新先生の原作小説を読んだのはこれが初めてです。

 普通、自分は『原作小説』と冠するものには手を出さなかったのですが、『〈物語〉シリーズ』だけは、西尾維新作品だけはどうしても原作を読みたいと思ったんです。
 他のアニメ作品と比べても群を抜いて会話が多い異色の作品で、
 「これ、原作ってどうなっているんだろう?」
 「この会話を文字で読みたい!」
と心の底から思ったんです。

 

 読んでみると………めっちゃ面白かったです!!
 全編がほぼ会話なので、ページ数に対する文字量は少ない上に、勢いとスピード感のある会話なのでスラスラと読み進められました。ラジオを聞いていると感覚だったこともあります。

 

 分かってはいましたが、『語感』『音感』に優れ過ぎの文章!言い換えや会話の応酬でそれが挿入されるから、楽しく読めましたね。

 それから、四字熟語が多い!至る所に四字熟語、もしくは難しい2字熟語が散りばめられています。………「四字熟語って格好いいですよね(笑)」。漢字が縦に4つ並んでいるだけで、文章全体の知的レベルが上昇したように感じるのはなぜでしょ?(いや、もともとレベル高いですよ)

 忍→高慢横柄
忍野→軽薄皮肉
羽川→説教指導
戦場ヶ原→暴言毒舌
八九寺→慇懃無礼
神原→甘言褒舌

 

  (化物語 下 P.94)

 

 

 ギャグが面白すぎです!まず、阿良々木くんのツッコミ凄すぎ。羽川を除く4人の女の子全てに見事にツッコミを切り返すという……。あの頭の回転というか、西尾先生の文才というかは凄いですね。

 文字でしかわからない、漢字の見た目を使ったギャグとか面白かったですねぇ~。とにかく、全編を通してほとんど笑いながら読んでいました!

 ってか、女の子達がボケすぎ!そのくせ、一人ひとり全く違う方向性だから凄いですよね。
 その場の会話だけじゃなくて、後々になって聞いてくるギャグとかも織り込まれているのがまた凄い……(ラジオネームとか)

 

 

 

 自分はアニメの方を先に見ているので、そこら辺についてもいくつか。

 まず、ほぼ会話っていうのは何度も書きましたが、それが全部アニメの声で脳内再生されました。(神谷ボイス,斎藤ボイス櫻井ボイス……)だからスラスラ読めたというのもあると思います。

 

 上に関連しますが、忍野メメのキャラ像は文字の方がいい雰囲気出ているように感じました。“怖さ”というか、“妖気さ”というか、「すべてを見透かしてる感」が文字の方が出ていました。

 

 アニメとかネットで名言とされているような台詞はたくさんありますが、実際に読んでみてそれが膨大な量の会話のたった一部に過ぎないと知って驚きました。

 もっと決め台詞的な感じで言っているのかと思っていたら、サラッと会話の流れの中に潜んで終わりでした。 これは、アニメ化した時の脚本の書き方や、声を当てるときの間のとり方などが名言化させた効果があったのかもしれないです。

 

 名言関係でもう一つ。キャラ独自の台詞ありますよね。メメの「何かいいことあったのかい?」や翼の「なんでもは知らないわよ、知っていることだけ」とか。

 決め台詞的で格好いいです!

 

 残念だったのは、物語を100%楽しめなかったということ。怪異の正体と対処法の謎解きが出来なかったり、オチを知ってしまっていたり……。

 

 忍のキャラが全然違いますね。アニメの元気のいい忍に慣れているから、『化物語』時代の陰キャラ忍には違和感が……。

 

 

 あとは、普段、一度映像化された作品を見たあとで原作を読むと、見事にその映像で脳内再生しながら読み進めていくのですが、今回は全く違いました。
 アニメの風景があまり思い浮かばなかったです。だから、自分の頭の中で色々と想像しながら読めました。これは凄く嬉しい!
 多分、シャフトのミニマム化された映像のお陰で背景とかが具体的なイメージとして記憶に残っていないからだと思います。
 

 

 表紙にも貼ってあるシールでお馴染み(?)になっているであろう『100%趣味で書かれた小説です』。あれで終わりかと思っていたら、上巻のあとがきに触れていましたね。趣味と執筆とパーセンテージのお話が。

 

 


 


【ひたぎクラブ】

 

<あらすじ>

 高校3年生になった阿良々木暦は、階段から落ちてきた一人の少女、戦場ヶ原ひたぎを受け止め、そして驚く──彼女には体重と呼べるものがほとんど無いに等しかった。
 怪異の専門家、忍野メメ曰く、彼女は“蟹”に取り憑かれているという。重みを失った少女の物語。

 

 

 

 『ひたぎクラブ』を読んで第一に思ったのは、「ヶ原さんの毒舌最高!」ってこと。スラスラと水道の蛇口をひねるみたいに暴言毒舌を吐けるのが凄い……。
 でも、その暴言も阿良々木くんのツッコミがあってこそなんですかね??

 

 

怪異の『おもし蟹』についてメメが解説していた伝承って本当なのでしょうか??言い換えや変換など口承らしい各地でのズレとかがリアリティが加えられているんですよね。
 それにしても、よく考えてありますよね。

 

 ヶ原さんが自分と家族の過去を話すシーン。これはアニメの方が不気味で重かったです。暴力を受ける回想や、宗教の人々の描写。アニメーションだけじゃなくて実写写真を使った表現とかが良かったのかも。

 

 忍の名前の由来ってここで出てきたんですね。『ハートアンダーブレード』と上手いように合っていて凄すぎ。
 すっかり忘れていましたよ(笑)

 

 オチ、分かってても笑っちゃいます。でも阿良々木くんに体重が加算されたとしても、その後の物語に全く影響を及ぼしていないような気がするのが気になりますけど………。

 

 

 

 豆話と言うか、この章の些事。
 初めて化物語を見たとき、『ひたぎクラブ』が『ひたぎCRUB(蟹)』じゃなくて『ひたぎCLUB(会)』かと思ってたんですよ(笑)

 

 (ネットや本で調べた限りですが……)
 『蟹』は母親の象徴だとか。そう考えると母親関係で悩んでいたヶ原さんに前に現れたのが蟹だというのも納得? あとは、幸運を招く象徴でもあるらしく、病気の回復の象徴とか………阿良々木くんに出会えたのは幸運?

 それから「ハサミで悪縁を断ち切る」とも言われるらしく、それなら「過去の重みを断ち切った」と解釈すれば分からなくもないような…。
 他には、「前に進む必要性」「攻撃性」も象徴するようです。

 

 


 


【まよいマイマイ】

 

 

 <あらすじ>

 阿良々木暦は公園で大きなリュックを背負った小学生、八九寺真宵を見かける。どうしても目的地に辿り着けない、“迷子の蝸牛”の物語。

 

 

 この章はアニメで見た方が面白いと思いました。
 まず、阿良々木くん八九寺に暴力を振るうシーンはやはりアニメの方が迫力と勢いがありましたね。

 

 それから、『実はヶ原さんには八九寺が見えていなかった』というのもアニメの方が衝撃が大きかったです。『絵として形になっていた物が実は見えていない物だった』という方が効果的かもしれないです。(その事実を知っていたからかもしれませんが……)
 

 

 それから、最後の『ただいま帰りました!』と言うのもアニメの方が感動しました。

 

 八九寺真宵の名前の由来が文字で読めたのは良かったです。名前の由来と怪異の訳。ここは、やはり口頭での説明よりも文字の方が読みやすいし、理解しやすいと思います。
 

 一番心に残った台詞は

「真のロリコンは、決して自身をロリコンとは認めないそうです。何故ならば彼らはあどけなき少女を既に立派な大人の女性として認めているのですから」

 ですね。(笑)…………べ、べつに私はロリコンではありませんよ??

 

 

 

 カタツムリについてもしらべました。
 あまり「迷う」という意味は出てきませんでした。逆に、「渦巻きがはじまりと終わりを象徴する」という解説が。 でも、その渦巻きが「途切れることのない循環」を象徴する事もあるようです。
 また、殻の模様を迷路と捉えることもできるそう。
 あとは、カタツムリの口の中には尖った歯が並んでいるそうです。噛まれたら………(笑)

 

 

 

 


 

 

【するがモンキー】

 

 

<あらすじ>

 暦の後輩、スポーツ万能でバスケ部のキャプテンである神原駿河。彼女は左腕に包帯を巻き、唐突に引部活を引退し、暦の元へ通うようになる。
  持ち主の願いを叶える、“猿の手”と“願い”を巡る物語。

 

 

 阿良々木くん神原の会話が面白すぎ!気持ちに良いくらいに褒めちぎって、エロい視点を盛り込んでいますよね。

 

 『ヴァルハラコンビ』のネーミングセンスが凄いですね。「戦場ヶ原ひたぎ」と「神原駿河」の双方の名前を見事に組み入れて、昇華させてます!
 心の底から感心しましたよ!

「神原の『ばる』と、戦場ヶ原の『はら』で、『ヴァルハラ』なのよ。で、ヴァルハラっていうのは、北欧神話で、最高神オーディンの住む天上の宮殿のことで、戦士した英雄の霊が迎えられる、戦いの神様の聖地っていういみがあるから―」

「・・・・・・・ああ、神原の『神』と戦場ヶ原の『戦場』か」

「それでヴァルハラコンビ」

 

(化物語 上 P.311)

 

 

 学習塾跡でのバトルシーン描写がすごかったです!ここは逆にアニメ以上って感じたかもしれません。文字だけだから、逆に想像が膨らんで、激しい脳内再生ができました。
 バトルに戦場ヶ原が入ってきたときの緊張感は、文字の方がより一層高まりました。

 

 

 猿については、夢占い的な解釈を少し。(とは言っても、猿ではなく悪魔だったわけですが……)
 猿が象徴するのは「弱さ」や「独占」だそう。
 それ以外だと、昔から「知恵」の象徴と言う事ですから、“猿の手”が考えて願いを叶えるという部分につながるのかな?
 

 


 


【なでこスネイク】

 

 

<あらすじ>

 忍野メメの依頼で山頂に建つ北白蛇神社に御札を貼りに行った暦は異様で奇怪な光景を目にする──蛇が斬り刻まれていた。
 別日、暦は妹の友人である千石撫子と出逢い、事の詳細を聞くこととなる。
 蛇の呪いをかけられた少女の物語。

 

 う~んなんだろ、撫子の印象が全然違いました。アニメを先に見たから、声とかは花澤香菜さんの消えそうなくらいに薄い声で脳内再生されるんですが、性格とか見た目が全然違う形でイメージしたんです。特に服装とかは。(そこが面白いんですけどね。)

 ブルマーとかスク水きた撫子が全然エロく脳内再生されなかっかったです(泣)。残念というかなんというか……。

 

 

 斬り刻まれた蛇死体についても、荒れ果てた北白蛇神社についても、怪異が溜まるような、吹き溜まりになるような雰囲気が大して感じられませんでした。文字ではそう書いてあるのですが、いまいち抽象的だったというか……。ボヤッとした状態で読み進めてました。
 でも、神社までの参道山道はアニメ以上にリアルに険しく想像できました。

 

 

 以前にネットで読んだのですが撫子の名前、「手が無い」ってことで蛇を暗示してるんだとか。(流石すぎる……)

 

 蛇に関しては、色々と象徴するし、解釈も沢山あって微妙ですが……『人間関係と情欲』を司る事があるとか。
 まぁ、神格化されていることもあれば、忌む対象でもあることもあったりと、難しいところですよね……。でも、神秘的って点は変わらないようです。

 

 


 

【つばさキャット】

 

 

 <あらすじ>

 成績優秀、温厚篤実な委員長の中の委員長、羽川翼。彼女の中に隠れる、ゴールデンウィークに解決したはずの怪異──ブラック羽川が再び姿を現した。
 猫に魅せられた少女の物語。

 

 冒頭の、ひたぎのデート。ここまで感動するとは思わなかったてす。アニメよりも感動しました。
 まず、お父さんのと車内での会話が良かったなぁ〜と。不器用なお父さんが娘について話す内容と話し方が。

 そして、星空。降るような星空。阿良々木くんがが目を開けて見た瞬間が想像できるようでした。
 ひたぎの告白が、「これしかあげるものがない」って会話がとても良かったです。

 

 

 羽川の身の上、文字で読むほうが重く感じました。家族関係については文字の方が深刻度が増す気がします。

 

 『つばさキャット』の場合はゴールデンウィークの話とバラバラに混ざっているので、少し分かりづらいような、感想も書きづらいような………。

 

「斜め七十七度の〜」が生で読めました(笑)

 

 忍野メメの去り方、めっちゃ格好いいじゃないですか!!“流浪の専門家”、格好いいですねぇ〜〜〜!

 

 

 

『化物語』の出来事をまとめたタイムラインです。(最初のものとは別バージョンです。)


 

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