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【美術展】『プラド美術館』───価値はあっても、興味はない!

3月20日
国立西洋美術館で開催の「プラド美術館展」に行ってきました!!

 

 

【目次】

 

 

美術展概要

 

マドリードにあるプラド美術館は、スペイン王室の収集品を核に1819年に開設された、世界屈指の美の殿堂です。本展は、同美術館の誇りであり、西洋美術史上最大の画家のひとりであるディエゴ・ベラスケス(1599-1660年)の作品7点を軸に、17世紀絵画の傑作など61点を含む70点をご紹介します。

(公式サイトより・一部改変)

告知CM動画

 

17世紀のスペインは、ベラスケスをはじめリベーラ、スルバランやムリーリョなどの大画家を輩出しました。彼らの芸術をはぐくんだ重要な一因に、歴代スペイン国王がみな絵画を愛好し収集したことが挙げられます。国王フェリペ4世の庇護を受け、王室コレクションのティツィアーノやルーベンスの傑作群から触発を受けて大成した宮廷画家ベラスケスは、スペインにおいて絵画芸術が到達し得た究極の栄光を具現した存在でした。 本展はそのフェリペ4世の宮廷を中心に、17世紀スペインの国際的なアートシーンを再現し、幅広いプラド美術館のコレクションの魅力をたっぷりとご覧いただきます。

(公式サイトより)

 及川光博によるPR動画①

及川光博によるPR動画③

 

 本展は、以下の全5章から構成されています。

会場:国立西洋美術館
時間:9:30~17:30(金・土は~20:00)
公式サイト
国立西洋美術館HP
展示作品リスト(PDF)

 

 

 

 

全体的感想

 

 正直に言って、「つまらない」美術展でした。
 どうつまらないか表現するのはなかなか難しいのですが、一言で言えば「よく分からない」ですかね(笑)

 展示出品されている絵画はどれも恐らく高い価値のある作品なのでしょう。だってスペイン王家が莫大な資金と費やして収集した品々ですから。
 
 でも、その良さがあまり分かりませんでした。簡単に言うと、どの絵も「普通」に見えてしまうんですよ。至って普通の、よくある宮廷絵画って感じだから違いがわからないし、良さも分からない。

 

 

 理由の1つには「宮廷絵画だから」というのがあると思います。
 宮廷の絵画は画家の個性を発揮するよりも、伝統に乗って権力を誇示するための絵を描く印象なので、違いがあまり現れないような気がします。

 

 

 それから、今回の美術展のテーマが曖昧というのもあるような気がします。「◯◯美術館展」だと、その美術館の代表的な作品を始めとする絵画を展示しますが、それに一貫性が無いように感じます。

 例えば、昨年であれば『ミュシャ展』とか『アルチンボルド展』などのように特定の芸術家にフォーカスしていれば画風に一貫性はあるし、その遍歴を追っていけます。
 また、『ベルギー奇想の系譜展』や『怖い絵展』のようにテーマを定めていればそれに沿って解釈や鑑賞をすることが出来ます。

 でも、今回の『プラド美術館展』は有名な美術館の作品を集めはしたけど、それをまとめる大きなテーマがあるかと言うと……….ねぇ。

 

 

 これは美術展の展示方法についての不満です。
 展示されている作品に解説がないんですよ!! いや、もちろんメインの展示とか解説が特に必要とされているのであろう作品にはちゃんと解説プレートがついています。

 でも、それが全部じゃないんですよ……..。これまで行った美術展とか博物展は大体ほとんどが解説プレート付きだったので、今回付いてない作品も多くて残念でした。
 せっかく作品を見ても、専門家の解説がなければ勿体無いじゃないですか………。

 

 

 こんなかんじですかね。
 あ、及川光博さんの音声解説はなかなか良かったですよ。上品な感じがして今回の美術展の雰囲気とマッチしていました。

 

 

 

 

 

展示作品紹介&感想

 

・各作品の頭にある番号は作品リスト(PDF)に対応しています。
・掲載している絵画の画像は全てプラド美術館HPより(Copyright ©Museo Nacional del Prado)

 

Ⅰ 芸術

 

17世紀スペイン絵画の際立った特徴の一つに、芸術(家、作品)を表す芸術作品が数多く制作された点を挙げることができるでしょう。それらは自画像などの芸術家の肖像と、絵画や彫刻が超自然的な力を発揮して起こす奇跡の場面とに大別することができます。

芸術家という存在や芸術作品が持つ力に対するこうした自意識の背後には、ものや人のかたちを再現し記録する実用性と、知的で自由な表現手段の創造性のはざまで揺れ動いていた、当時のスペイン社会における芸術の在り方をうかがうことができます。

本章では、芸術とは何か、という根源的問題に対する当時の芸術家たちの取り組みの一端をご紹介します。

(公式サイトより・一部改変)

 

01
作品名:フアン・マルティネス・モンタニェースの肖像
作品英題:Juan MartÍnez Montañés
作者(英名):ディエゴ・ベラスケス(Velázquez, Diego Rodríguez de Silva y)
プラド美術館アーカイブ

  粘土で人物像を制作するマルティネス・モンタニェースの肖像画です。
 右下に粗っぽく描かれている粘土像、誰のでしょう───長い顔、上に曲がった髭といえば………..そう、フェリペ4世です!!

 展示作品の1点目からさっそく本展の準主役級のフェリペ4世が登場です!!

音声解説「彼が見つめるのは、像のモデル? 画家? それとも私たち?」

 

 

02
作品名:触覚
作品英題:The Sense of Touch
作者(英名):ジュゼペ・デ・リベーラ(Ribera, Jusepe de)
プラド美術館アーカイブ

  この絵、好きです!
 描かれたおじいさん、盲目なんですかね? 「触覚」というタイトルも綺麗だなぁ~て。
 額や手の甲のシワとか、触っている石膏像の質感とかがリアルです!!

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04
作品名:無原罪の聖母を描く父なる神
作品英題:God the Father Painting the Immaculate Conception
作者(英名):ホセ・ガルシア・イダルゴ(García Hidalgo, José)
プラド美術館アーカイブ

  中心に描かれたのは聖母マリア、左で白ユリを持っているのは大天使ガブリエル右端で悪魔を倒しているのがミカエルです。そして、この絵には2つのサインが描かれています。1つ目はマリアの足元にある神のサイン、もう1つは画面左下の画家のサイン。

 そしてマリアは「絵」です。キャンバスに描かれている、12の星に囲まれて三日月に乗って降りてくるマリアは、母の胎内に宿った事を表しています。その場面を描くことで、神によるマリアの創造と画家の仕事を重ね合わせているのです。

 神と画家を重ね合わせるなんてなかなか上手いというか、考えますよね。これで画家の立場というか凄さが伝わるんでしょうね。

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05
作品名:聖顔
作品英題:The Veil of Saint Veronica
作者(英名):エル・グレコ(本名 ドメニコス・テオトコブロース)と工房(El Greco (Domenikos Theotokopoulos) and Workshop)
プラド美術館アーカイブ

  画家の権威を高めようとしていた当時、キリストの聖骸布はイエスの自画像という捉え方をして、「絵画」であると考えたそうです。そして、この絵もそんな風潮の中の一枚だそうです。

 キリストの聖骸布を「自画像」と捉えるなんて面白いというか、想像すらしていませんでしたから、意外でした。

 

 

06
作品名:磔刑のキリストと画家
作品英題:The Crucified Christ with a Painter
作者(英名):フランシスコ・デ・スルバラン(Zurbarán, Francisco de)
プラド美術館アーカイブ

  画面右下に描かれた画家の正体は不明で、聖ルカか、もしくはスルバンだと考えられているそう。

 画家とキリストの対話を描いているように見えますが、これもまた画家の神聖を表すような絵画何でしょうね。キリストの立体感?質感?が凄いです。

 

 

08
作品名:偶像を破壊する聖ベネディクトゥス
作品英題:Saint Benedict Destroying Idols
作者(英名):ファン・アンドレス・リシ(Rizi, Fray Juan Andrés)
プラド美術館アーカイブ

  描かれた聖ベネディクトゥスの手にはマリアの聖像と十字架が。彼が破壊した像のは悪魔が取り憑いています。

  確か、当時のプロテスタント教会は偶像崇拝を禁止していたので、その事を表しているのか、それとも異教徒の信仰する像を壊しているのでしょうか…….。
 なんにしても、神の力は凄いってことですね。

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Ⅱ 知識

 

 ベラスケスは、犬儒学派の古代哲学者《メニッポス》をルーベンスの《泣く哲学者ヘラクレイトス》との関連のもとに制作しました。偉大な古代の哲人には似つかわしくなく、当時の市井の貧しい一老人であるかのようなベラスケスの哲学者像は、同時代にナポリで活躍したジュゼペ・デ・リベーラによる「乞食哲学者」と称される一連の作品と関連付けられ、そのリアリズム、そして知識と貧困が分かちがたく結び付けられて表象されている点で共通します。

本章は、こうした作品群を通じて、17世紀の美術における知識、とりわけ古典古代の哲学や思想の表象について探ります。

(公式サイトより・一部改変)

 

11
作品名:ヘラクレイトス
作品英題:Heraclitus
作者(英名)ジュゼペ・デ・リベーラ(Ribera, Jusepe de)
プラド美術館アーカイブ

  ギリシアの哲学者ヘラクレイトスで有名なのは「万物は流転する」という考え方ですかね?

 この絵の何が良いって、頭良さそうなこの表情ですよ!! ちょっと性格は怖そうですけど、いい人そう(笑) あと、この顔『スター・ウォーズ』で見たような………

 

 

12
作品名:聖ヒエロニムス
作品英題:Saint Jerome
作者(英名):アントニオ・デ・ペレーラ(Pereda y Salgado, Antonio de)
プラド美術館アーカイブ

  聖書のラテン語訳をしたことで知られる聖人です。

 この絵、モティーフがたっぷりですね。横倒しになった骸骨、木でできた十字架、開かれた本には「最後の審判」の絵が。そして聖ヒエロニムスが耳を傾けているのはラッパの音色。

 おじいさんの身体が本当にリアルで凄いです……….

 

 

13
作品名:視覚と嗅覚
作品英題:Sight and Smell
作者(英名):ヤン・ブリューゲル(父)、ヘンドリク・ファン・バーレン、ヘラルト・セーヘルスら(Brueghel the Elder, Jan; Balen, Hendrickvan; Seghers, Gerard (and others))
プラド美術館アーカイブ

  ブリューゲルですね!(本展と同じ期間、東京都美術館でやってますね)左下の花瓶に刺さった花束なんかまさにブリューゲル。

 これは「驚異の部屋」ですかね!? 色々なものがギュッと詰まっている感じが大好きなんですよ!! 絵画に彫刻、細々とした器具や地球儀などまるで『ミッケ!』みたいです。

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Ⅲ 神話

 

古典古代の神話に基づく絵画や彫刻は、教会の影響力が強かった17世紀のスペインにおいては、限定されたかたちで制作され受容されました。それは、神話主題に不可欠であった裸体人物像が不道徳であるとされたからです。

しかし、王宮や貴族の邸宅には裸体画ばかりを集めた秘密の部屋が作られ、特定の人々はそれらを享受することが許されていました。ベラスケスは当時のスペイン人画家としては珍しく《マルス》などの裸体画を描いていますが、それは彼が宮廷画家であり、王室コレクションに蓄積されたティツィアーノやルーベンスらの神話画を熟知していたからこそ可能だったのです。

本章ではそうした裸体表現を中心として17世紀スペインの宮廷で制作され、また受容された様々な神話画をご紹介します。

(公式サイトより・一部改変)

 

14
作品名:マルス
作品英題:Mars
作者(英名):ディエゴ・ベラスケス(Velázquez, Diego Rodríguez de Silva y)
プラド美術館アーカイブ

  描かれているのは軍神マルス。戦争の神の彼が、その象徴である武具を脱いでいます。普通の中年のおじさんとして描かれていますが、それは平和をベラスケスなりに表したのですかね。

 

 

15
作品名:音楽にくつろぐヴィーナス
作品英題:Venus and Music
作者(英名):ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(Titian (Vecellio di Gregorio, Tiziano))
プラド美術館アーカイブ

  ルネサンス期のヴェネツィア派で重要な画家だったティツィアーノの作品の中でも傑作と謳われる1作です。

 スポットライトが当たっているように浮かび上がる白い肌のヴィーナスが綺麗ですね…….。豊満な身体と優雅な雰囲気はさすがです。

 

 

16
作品名:ルクレティアの死
作品英題:The Death of Lucretia
作者(英名):ルカ・カンビアーゾに帰属(Cambiaso, Luca (Attributed to))
プラド美術館アーカイブ

  ルクレティアは悲しい人物です。
 彼女を強姦しようと脅す男に対し決して屈しなかったルクレティア。しかし最後には犯されてしまいます。行為後、父と夫に事態を話して復讐を頼むと、彼女は自殺してしまうのです。

 あまりに有名な悲劇の話ですが、何度見ても悲しいですね……。そして、肌がとても白いから、流れる紅い血がより目を引きます。

 

 

17
作品名:アンドロメダを救うペルセウス
作品英題:Perseus Releasing Andromeda
作者(英名):ペーテル・パウル・ルーベンス、ヤーコプ・ヨルダーンス(Rubens, Peter Paul; Jordaens, Jacob)
プラド美術館アーカイブ

  星座にもなっている有名なお話ですね。
 海の怪物クジラを鎮めるための生贄に差し出された美しきアンドロメダ。岩に縛られ繋がれた彼女を見つけたのはペガサスに乗る英雄ペルセウス。彼は見たものを石に変える怪物「メドゥーサ」の首をクジラに突きつけ倒すと、アンドロメダを救って末永く幸せに過ごすのでした。

 左下にはメドゥーサが描かれた盾、背後にはペガサスが描きこまれています。1つ気になったのは、この絵ってアンドロメダの乳首が塗りつぶされたんですかね??

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Ⅳ 宮廷

 

宮廷において美術は、国王及び国家を称揚する為政のためのプロパガンダとして制作され、また国王の品格や富、権力を誇示するために収集されました。

ベラスケスが宮廷画家として仕えた国王フェリペ4世は、稀代のメガ・コレクターで、40余年の治世で3000点を優に超える数の絵画を収集したとされます。彼はマドリードのアルカサル(王宮)に加えて、ブエン・レティーロ離宮とトーレ・デ・ラ・パラーダ(狩猟休憩塔)という二つの宮殿を造営させ、内部をスペイン、イタリア、フランドルなどヨーロッパ各地から集めた絵画で飾り、17世紀絵画の縮図をマドリードに残したのです。

本章ではスペイン・ハプスブルク家の宮廷美術を特徴づける、肖像画と宮殿装飾の二つの観点から、フェリペ4世の代に描かれ収集された作品を中心にご紹介します。

(公式サイトより・一部改変)

 

21
作品名:狩猟服姿のフェリペ4世
作品英題:Philip IV in Hunting Dress
作者(英名):ディエゴ・ベラスケス(Velázquez, Diego Rodríguez de Silva y)
プラド美術館アーカイブ

  当時、狩猟は戦争の訓練とされ、強さを表すものとされていました。
 派手な印象が無い本作。太陽の沈まない国と呼ばれた天下のハプスブルクでしたが、財政難だった当時、フェリペ4世は質素な生活を心がけたそう。

 ベラスケスによるこの絵は描き直しの跡がはっきりとみてとれます。質素な服装でも、その威厳が現れているのが凄いです。

 

 

22
作品名:甲冑姿のカルロス2世
作品英題:Charles II in Armour
作者(英名):フアン・カレーニョ・デ・ミランダ(Carreño de Miranda, Juan)
プラド美術館アーカイブ

  彼もまた首が長いですね。
 カルロス2世はハプスブルク家の長きにわたる近親婚の影響か、先天的な知識障害などを持っていて、子孫を残すこと無く死んだため、彼の代でスペイン。ハプスブルク家は途絶えました。

 

 

24
作品名:王女イザベル・クララ・エウヘニアとマグダレーナ・ルイス
作品英題:The Infanta Isabel Clara Eugenia and Magdalena Ruiz 1
作者(英名):アンソロ・サンチェス・コエーリョ(Sánchez Coello, Alonso)
プラド美術館アーカイブ

  宮廷では、矮人や道化は「慰めの人」と呼ばれて、王族の引き立て役として扱われたそう。

 この作品でもそうで、右側の矮人は王女イザベラを引き立たせる役として描きこまれています。

 王女が手に持っているブローチに描かれているのは父親であるフェリペ4世です。

 

 

25
作品名:矮人の肖像 
作品英題:Portrait of a Dwarf
作者(英名):フアン・バン・デル・アメン(Hamen y León, Juan van der)
プラド美術館アーカイブ

  申し訳ないとは分かっていますが、「可愛い」という印象を持ってしまいます。

 そして、この絵もそういう印象を与えるように描かれているそう。わざと豪華な服を着せて、その体格差を強調するように描かれています。

 先日、『グレイテスト・ショーマン』という映画を見ましたが、そこでも小人症の人物が登場したのを思い出しました。

 

 

26
作品名:バリェーカスの少年
作品英題:The Boy of Vallecas 
作者(英名):ディエゴ・ベラスケス(Velázquez, Diego Rodríguez de Silva y)
プラド美術館アーカイブ

  ベラスケスが描いた矮人。

 一見するとその小ささという特徴がわからないほど、「普通」に描かれていますよね。ベラスケスは身体の特徴を強調して描くのではなく、等身大で描きました。

 

 

32
作品名:西ゴート王テオドリック
作品英題:Theodoric, King of the Visigoths
作者(英名):フェリクス・カステーリョ(Castello, Félix)
プラド美術館アーカイブ

  この絵については一言だけ感想を。

 まさに、絵に描いたような王様像じゃん!!!!!!

 

 

 

 

Ⅴ 風景

 

17世紀のスペインにおいて風景画は他のジャンルほどの隆盛は見ませんでしたが、フランドル、次いでイタリアの作例が多数流通し、そうした影響下からこの分野を手掛ける画家たちが現れました。

ベラスケスの肖像画の傑作《王太子バルタサール・カルロス騎馬像》は、その背景にマドリード北郊グアダラマの写実的な山並みを近代絵画を思わせるような素早さで描き込んでおり、スペイン風景画の歴史においても傑出した重要性を有する作品です。これによって19世紀末、ベラスケスは理想化されないスペインの現実の風景に美を見出した先駆者としても高く評価されたのです。

本章では、17世紀のスペインで受容された風景画の諸相を、フランドルやイタリア、フランスの作例も交えて紹介します。

(公式サイトより・一部改変)

 

34
作品名:王太子バルタサール・カルロス騎馬像
作品英題:Prince Baltasar Carlos on Horseback
作者(英名):ディエゴ・ベラスケス(Velázquez, Diego Rodríguez de Silva y)
プラド美術館アーカイブ

  子どもながらにして馬に乗り、軍隊の指揮棒を持っている姿が描かれています。その権力と地位を象徴して描かれたものです。

 馬がずんぐりむっくりなのは、下から見上げることを想定して描かれたからだそう。

 

 

35
作品名:ローマのティトゥス帝の凱旋門
作品英題:The Arch of Titus in Rome
作者(英名):フアン・バウティスタ・マルティネス・デル・マーソ(Martínez del Mazo, Juan Bautista)
プラド美術館アーカイブ

  紀元後82年に建設されたこの凱旋門は、有名なパリのシャルル・ド・ゴール広場にある凱旋門を始めとする後世に建てられた凱旋門のモデルになっています。

 パッと見ただけでは普通のアーチにも思えてしまいますが、右下や門の下の描かれた人のサイズと比べると、その大きさが分かります。

 

 

36
作品名:聖セラピアの埋葬のある風景
作品英題:Landscape with the Entombment of Saint Serapia 
作者(英名):クロード・ロラン(Lorrain, Claude)
プラド美術館アーカイブ

  画家は古代の遺跡を自由に散りばめて理想の風景を描きあげました。

 ローマの建築物にコロッセオ、奥はピラミッドのようなものまで見えます!!

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37
作品名:祈る隠遁者
作品英題:Praying Hermit
作者(英名):ジャン・ルメール(Lemaire, Jean)
プラド美術館アーカイブ

  この絵好きです!

 古代の遺跡感が良いですね。彫刻や壁画、オベリスクまで。しかもそのオベリスクにはエジプトのヒエログリフのような文字までしっかりと刻まれています。

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40
作品名:城のある港湾風景
作品英題:Port with Castle 
作者(英名):パウル・ブリル(Bril, Paul)
プラド美術館アーカイブ

  風景図以上の何も無いのですが、この絵は「雲」と「空」が好きです!

 モクモクとした雲、スコールのような雨が降っているようにも見えます。そして、海の青色と同じにも関わらず、空はどこか不穏な空気が漂っているようです。

 

 

42
作品名:ブリュッセルのオメガング もしくは鸚鵡(オウム)の祝祭:職業組合の行列
作品英題:The Ommegang in Brussels: Procession of Guilds
作者(英名):デニス・ファン・アルスロート(Alsloot, Denis van)
プラド美術館アーカイブ

  展示してあった実際の作品は高さ131cm、幅382.8cmとかなり横長の大きな絵だったので細部まで見て楽しむことが出来ました。

 日本の大名行列にも似ているこの絵は、職業組合の集まりで、長い竿の先につけられているのがその組合の職種を表す象徴だそうです。

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Ⅵ 静物

 

風景画と並んで、静物画も17世紀の幕開けとともに誕生した新たな絵画ジャンルです。スペインの静物画は「ボデゴン」と通称され、トレドでまず制作されました。

そこで確立された、宗教的神秘すら感じさせる厳格で荘厳な構図は、世紀を通じて基本的な特徴として引き継がれました。ベラスケスが独立した静物画を手掛けたかどうかはわかりませんが、彼は初期セビーリャ時代、迫真的な静物描写を大きく取り込んだ厨房画―酒場で飲食する人々を描く風俗画―により名声を博しています。

本章では、17世紀スペインにおける静物表現のパノラマを、国際的な文脈のなかで振り返ります。

(公式サイトより・一部改変)

 

43
作品名:食用アザミ、シャコ、ブドウ、アヤメのある風景
作品英題:Still Life with a Cardoon, Francolin, Grapes and Irises
作者(英名):フェリペ・ラミーレス(Ramírez, Felipe)
プラド美術館アーカイブ

  欧州各地で静物画が成立したのは1600年ごろだそう。

 この絵、菖蒲のリアルさとブドウのプルッとした艶やかさが良いです!

 

 

44
作品名:ブドウのある八角形の静物
作品英題:Octagonal Still Life with Bunches of Grapes 
作者(英名):フアン・デ・エスピノーサ(Espinosa, Juan de)
プラド美術館アーカイブ

  同じブドウでも、みずみずしさが凄いです!

 解説によると、薄く溶いた半透明の絵の具を塗り重ねて描かれたそう。

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50
作品名:犬と肉の寓話
作品英題:Fable of the Dog and the Prey
作者(英名):パウル・デ・フォス(Vos, Paul de)
プラド美術館アーカイブ

 肉を持って橋を渡っていた所、向いに肉を持った犬を見つけ、その肉も手に入れようと鳴き声を上げた瞬間───向かいの犬は水面に映った自分の姿だったというオチの、有名なイソップ童話が題材です。

 この犬の「アッ」て表情がたまらなく最高です(笑)

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Ⅶ 宗教

 

カトリック教会が対抗宗教改革を推し進めた17世紀は、宗教美術にとって史上最も実り豊かな時代のひとつでした。教会は信仰の道具として美術を最大限活用し、美術には神の教えを正しく伝えるだけでなく、民衆の心と感情に直接訴えかけることを求めました。

そのため、明晰な様式で、宗教主題を現実的に解釈して描く写実的な絵画が作り出されたのです。図像面においても、とりわけ熱い信仰を集めた聖母や聖家族にまつわる解釈が刷新され、様々な聖人の殉教や幻視といった場面が新たに造形化されました。

本章では、スペインを中心に、同様にカトリック圏であったイタリアとフランドルの作品も織り交ぜ、17世紀カトリック美術の特色と各地域による差異を浮き彫りにします。

(公式サイトより・一部改変)

 

51
作品名:東方三博士の礼拝
作品英題:The Adoration of the Magi 
作者(英名):ディエゴ・ベラスケス(Velázquez, Diego Rodríguez de Silva y)
プラド美術館アーカイブ

  イエスの誕生を祝福する場面を描いた絵画。
 黒人がいるのが意外です。当時は奴隷だった印象があるので。

 左下のオレンジ色のマントを羽織った人物はベラスケス自身。マリアはベラスケスの妻、そして幼子イエスは生まれたばかりの娘をモデルにしているそう。

 ベラスケスは画家の仕事の他に王宮の仕事をしており、最終的には王宮の鍵を全部預かるまでに出世したそうです。

 

 

52
作品名:聖霊降臨
作品英題:Pentecost
作者(英名):ファン・バウティスタ・マイーノ(Maíno, Fray Juan Bautista)
プラド美術館アーカイブ

  キリストが復活して50日目、聖母と十二使徒たちが祈りを捧げると、炎のような光が現れて各人は異国の言葉を話せるようになり、伝道へと出発しました。

 色とりどりの服が綺麗で、そんな人物たちが見上げた空にはハトと天使。神々しさが伝わってきて、なかなか好きです!!

 

 

55
作品名:使徒聖大ヤコブ
作品英題:The Apostle James the Greater
作者(英名):グイド・レーニ(Reni, Guido)
プラド美術館アーカイブ

  イエスの使徒であるヤコブ。

 この絵は特にこれといって解説があったわけでもないのですが、この純粋な祈りに満ちた感じがとても気に入った作品です。

 

 

60
作品名:聖アンナのいる聖家族
作品英題:The Holy Family with Saint Anne
作者(英名):ペーテル・パウル・ルーベンス(Rubens, Peter Paul)
プラド美術館アーカイブ

  背後にいる老婆が聖母マリアの母である聖アンナです。

 そんなことより、このマリア様めっちゃ美人で可愛くないですか!? 超タイプなんですけど!!! 他の宗教画に比べても、どこか人間味というか普通の乙女な雰囲気が漂っていて好きです。

 

 

61
作品名:小鳥のいる聖家族
作品英題:The Holy Family with a Little Bird
作者(英名):バルトロメ・エステバン・ムリーリョ(Murillo, Bartolomé Esteban)
プラド美術館アーカイブ

  当時、聖人信仰の機運が高まり、イエスの父であるヨセフは模範的な父親としての姿が評価されて信仰されました。

 描かれているのは聖家族とはいえ、育パパのいる普通の良い家族像のように見えます。

 チワワ(?)が可愛い!!!

 

 

 

 

Ⅷ 芸術倫理

 

イタリアに遅れること1世紀以上、スペインでは17世紀になって、美術をただの職人芸ではなく知的な学問、高貴な芸術として位置づけ、画家の地位向上を目指す運動が隆盛しました。並行して美術理論に対する興味が高まり、美術に関する様々な文字による記録も飛躍的に増加しました。

それらを通じ、スペイン美術を歴史として記述する一ページがこの時代に初めて記されたのです。

本章では、他の章の絵画作品を理解する一助として、プラド美術館図書室に所蔵される17世紀の重要な美術理論書のオリジナル初版本を展示し、理論と実践の関係について探ります。会場ではこれらの書籍には独立した章を設けず、1-7章内の随所で関連する絵画作品とともに展示します。

 

※省略

 

 

 


 

 

 

 毎回、美術展に行ったお土産に買っているのがポストカード。
 今回は、フェリペ4世のこれにしました!!

 

 

 最後まで読んでくださり、
 本当にありがとうございました!!

 


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