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【展覧会】『[世界を変えた書物]展』感想&レポ:人間の発見・思考・叡智の詰まった壮大な「知の系譜」

2018年9月11日訪問

[世界を変えた書物]展 

 
【Twitter140文字感想】

 

 


 

 

展覧会の概要

金沢工業大学が所蔵する、コレクション”工学の曙文庫”から選りすぐられた稀覯本の数々を展示。
コペルニクス、ガリレイ、ニュートン、アインシュタインなど世界を一変させた発見や科学技術に関する初版本約100冊を展示します。

(上野の森美術館HPより)

『工学の曙文庫』は金沢工業大学ライブラリーセンター(KIT-LC)に設置された科学的発見や技術的発明が最初に発表された初版本を体系的に収集した稀覯書コレクションで、現在2000余冊を所蔵しています。

(金沢工業大学特設サイトより)

「世界を変えた書物 -原著で辿る科学知の潮流-」講座PV

【展覧会概要】
会場:上野の森美術館
期間:9月8日 (土) 〜 9月24日 (月)
時間:午前10時〜午後5時
料金:無料
主催:K.I.T.金沢工業大学、上野の森美術館
備考:全て撮影可
目録:PDF
上野の森美術館HP:リンク
金沢工業大学特設サイト:リンク
『工学の曙文庫』:リンク

 

 

 

 

展覧会の感想

 

 上野の森美術館での本展は、なんと無料!
 とはいえ、行こうか迷っていたのですが、展示される書籍や印刷物が全て「初版本」であることに驚き、少し気になりだします(笑)

 そして、「展示目録」を見て行くことを決意。だって、あまりにも有名な書籍や著作者なんですもん!

(C.ダーウィン「種の起源」のレプリカ)

 何から書こうか迷いますが、まずはその豪華さから!

 ・アルキメデス『円の求積法』
 ・コペルニクス『天球の回転について』
 ・ニュートン『プリンキピア』
 ・ダーウィン『種の起源』
 ・アインシュタイン『特殊相対性理論(ry』
 ・NASA『アポロ11号任務記録』
 ︙

(I.ニュートン「プリンキピア」)

 アリストテレス等の古代ギリシアから、「科学革命」を生んだ科学者の印刷物、そして現代はNASAによる「アポロ11号任務記録」まで。化学、医学、建築学、物理、天文学……と「科学」と名のつく総ジャンルから、文字通り「世界を変えた」書籍の初版本が並べられています。

 その多くが、学生の授業で習い、教科書や資料集で目にし、今でも小説や雑誌等の書籍類からTVまで様々なメディアで目にする科学者・著作物ばかり!
 これは、美術の知識とか無くても楽しめる、「どこかで名前を聞いたことがある」という展示ばかりなので、楽しかったです!

(G.ガリレイ「星界の報告」)

 展示されるのは、「知の系譜」です。

 世界の謎を解き明かそうとしたアリストテレスによる「自然哲学」は脈々と受け継がれ、新たな発見を加え深化・分化・進化。ニュートンの『プリンキピア』により成立を迎えた「科学革命」で定量分析による仮定の設置と実験を繰り返す「自然科学」へと姿を変え、その流れを全て組んだ理論を大成させたアインシュタインの「相対性理論」へと繋がります。

 以上は若干私の知識を混ぜつつ、かなり簡略化してて間違いがあるかもですが、「科学の変容」はこんなものでは無いでしょうか?

 今回の展示ではそのことが見事に分かるパネル展示などがあり、「知の連鎖」を視覚的に見ることができ、非常に面白かったです!


(「知の連鎖」を視覚化した展示。研究と分野を表す色線が、アリストテレスを出発し、ニュートンを経てアインシュタインに収束する。)

 ディスプレイの仕方も凄かったです!
 近年は所謂「インスタ映え」を狙った美術展が増えてきてウンザリしていて、今回の若干その気質があったものの、会場全体の壁を本棚で覆ったり、「知の森」と題してヨ書物を展示したりと、見事でした!

 また、書物は分野や内容で分類されており、数冊単位で分けられ、まとめられて展示されていたので、とても分かりやすかったです!

 展示されていた作品について。
 いくら「世界を変えた書物」とはいえ、印刷物が大半なわけですから、一点物の芸術作品とは価値とか見方が違いそうです。でも作品は、どれも全てが「初版本」だそう!
 そもそも、教科書で聞くような名前の本の実物を見られるだけで感動なわけですが!

 あとは、当たり前ですが書物は全部ラテン語や英語、ドイツ語など日本語以外。なので当然内容を読めるわけではありません(笑)
 それに、印刷なので「著者直筆!」とかいうのもありません。そこは「絵画」と「書物」で違う部分かもしれません。

(アリストテレス「ギリシア語による著作集」)

 それから、数学系の書物は数式や図形が、化学系は実験器具が、天文学系は星のスケッチや軌道計算など図表があって、少し理解できる部分も!

(N.コペルニクス「天体の回転について」)

(アルキメデス「四辺形, 円の求積法)

(O.リリエンタール「飛行術の基礎となる鳥の飛翔)

 今回展示されている書物は全て金沢工業大学の『工学の曙文庫』という書籍ライブラリーのコレクションです。この『工学の曙文庫』を創始した竺覚暁先生が書かれた『図説 世界を変えた書物』というのがあります。

 図書館にあったので借りましたが、まさに今回の展示内容をそのまま図鑑にした内容で、非常に分かりやすかったです!

 

 

 

 

展示書物の紹介

 本当なら全ての展示を紹介したいのですが、展示書物数が膨大で、どの本も有名。「私のお気に入り」だけでも相当数。

 なので「チェック20」と題された、主催側が「是非チェックしたい書物」とピックアップした20冊を紹介しようと思います。

【目次】 ※「▼」をクリックで章へ移動

◆ 

エントランス 
◇ 知の壁
 
◇ 知の森 
  1. 古代の知の伝承 
  2. ニュートン宇宙 
  3. 解析幾何 
  4. 力・重さ 
  5.光 
  6 物質・元素 
  7. 電気・磁気 
  8. 無線・電話 
  9. 飛行 
  10. 電磁場 
  11. 原子・核 
  12. 非ユークリッド幾何学 
  13. アインシュタイン宇宙 
  SP. 東京展特別出展 
◇2つの「知の連鎖」マップ  ▼ 
「知の繋がり」 

 

P.S.

本記事に未掲載の書籍に関して、一応全て写真を撮っているので、コメント(記事最下部)なり、Twitter(@1_ARA_1)のDMなりで一言頂ければ、対応できると思います。

 

 

 

エントランス

※「エントランス」というタイトルは勝手に便宜上名付けました。
 以下、「稀覯書の定義」と「書物の進化の過程」を紹介したかったので。

 

稀覯書の定義

稀覯書(rare book)とは、
「極めて稀(rare)にしか見ることのない本」のことです。


稀覯書(rare book)の条件としては、
1. 極めて少数しか残っていない書物であること
2. 書物の制作が古いものであること
3. その内容が極めて貴重なもので、それが最初に世にでたもの
4. 書物のデザイン、レイアウトやタイポグラフィ、装丁、造本が豪華であったり美しく、美術品的価値をもっていること
5. 副次的には、原著者の署名があるとか、著名人の蔵書であったことの証拠、蔵書票や署名があることなどがあります。


[世界を変えた書物]展でご紹介する書物は、科学技術分野における「稀覯書」です。この、科学技術分野における「稀覯書」とは、重要な科学技術上の発見や発明を記した書物、科学技術の発展に大きく貢献した業績などを最初に世に公表した書物、科学技術に関する内容の「稀覯」な書物、のことを指します。

 

 

 

書物の進化の過程

[世界を変えた書物展でご覧いただく書物は、どれもグーテンベルクが活版印刷術を考案、実用化した以降に出版された稀観かつ貴重な書物です。 ここ数年来、電子書籍が出現、普及し、書物は印刷離れ、紙離れといわれています。知の旅をはじめる前に、まずは最新の書物のカタチである「電子書籍」からその進化の過程をさかのぼってみます。


電子書籍:
1990年代に8cmCD-ROMを使った電子ブックとそれを読む小型専用機が出現したが、あまり普及はし なかった。2007年、アマゾンが携帯電話回線を通じて電子書籍を受信し、読む端末、キンドルを発売し たこと、また2010年、アップルがiPadを発売したことによって一挙に「電子書籍」の流通が盛んになった。

ワード・プロセッサー(ワープロ):
電子書籍の不可欠の前提は当然だが文字が電子化されていなければならないことである。それは基 本的にアルファベット26文字で全てが書ける欧米系の言語ではコンピュータの発明で可能になったが、 ひらがなとカタカナ100文字、漢字10000文字以上を用いる日本語は、1978年にアルファベット・ローマ 字・仮名・漢字変換が可能になったワード・プロセッサーが登場して初めて電子化されたのである。

タイプライター:
タイプライターは活版印刷の延長上にあるもので、アルファベットの場合大文字小文字併せて52個の活字を交互に機械的に印字出来るメカニズムである。日本語は字数が多いので少なくとも1000字以上を扱えるタイプライターでなければならず、それは欧文タイプに較べると遥かに活版印刷に近いものであった。

活版印刷:
1450年代、ドイツのヨハネス・グーテンベルクが、アルファベット26文字の多数のセットを作り、この字すなわち「活字」の組み合わせによる印刷術を考案したことにより、書物の大量生産が可能になって、学術情報の流通量が爆発的に増加した。このことによって十七世紀以降の科学革命が起こるのである。

グーテンベルク以前「写本の時代」:
グーテンベルクが活版印刷術を実用化する前は、書物は手書きであり、複製もまた書き写しで作られる以外に手段はなかった。こうした書物のことを「写本」と呼んでいる。

 

 

 

 

「知の壁」

旅のはじまりは、圧倒的な「書物の壁」との出会いからはじまります。
まずは、建築関連のその美しい書物をゆっくりお楽しみください。

 「チェック20」の書物を紹介すると前置きしながら、第1章ともいえる「知の壁」ではその20冊は出てこないので、適当に何冊か紹介します。

 

0017
著者:ヨーハン・ベルンハルト・フィッシャー・フォン・エルラッハ
書名:歴史的建築
刊行地:ウィーン
刊行年:1721

 

 

0006
著者:ウィトルウィウス
書名:建築十書(ドイツ語版)
刊行地:ニュールンベルク
刊行年:1548

 

 
※以下は建築とは関係ない「書簡」の展示。

9904
著者:オーヴィル・ライト
書名:米国航空協会競技認可証自筆書名
年:1929年4月1日付

 

 

9901
著者:アルベルト・アインシュタイン
書名:自筆研究ノート
年:年代不詳

 

 

 

 

「知の森」

オリジナル原書は、それ自体が、そのマティエール(素材感)、テクスチュア(質感)など作品(オブジェ)としての魅力に溢れています。

ここでは参加者は森の中のエクスプローラー「知の探検者」となります。

科学的発見、技術的発明は常に先人の成果に関連しながら、次の新たな「ひらめっき」や「発見」へと、「知の連鎖」を繰り返し、人類の文化を前進させてきました。「知の森」のネットワーク、科学の結びつきを体験するとともに、原書の魅力を感じ取ってみてください。

 

 

1「古代の知の伝承」

近代科学は中世に細々と伝えられてきた古代の科学知識を書物にして継承し普及させることによって始まった。アリストテレス自然学、ユークリッド幾何学、古代ギリシア数学、アルキメデス物理学、そしてアリストテレス=プトレマイオス天動説宇宙などの理論が広く共有されることとなり、次いでそれらの限界が認識され、超えられることによって近代科学が成立するのである

 

0101
著者:イシドールス
書名:言語学
刊行地:アウグスブルグ
刊行年:1472

科学及び技術用語を含む術語を解説した一種の百科全書。イシドールスは6世紀スペインの人で、この書物を書くことによって、古代の科学技術の知識を中世に伝える役目を果たした。数学、天文学、解剖学、地学、鉱物学、工学、建築学、農学、気象学などの古代科学技術の貴重な概説を含んでいる。

 

 

 

0102
著者:エウクレイデス(=ユークリッド)
書名:言論(幾何学原本)
刊行地:ヴェネツィア
刊行年:1482

ユークリッドはプトレマイオス一世がアレクサンドリアに創った大図書館兼研究所「ムセイオン」の数学部門の長。本書は、彼以前のギリシア幾何学の全成果をこの一冊に体系としてまとめたもの。中世・近世を通じて教科書として用いられ、現在もなお中学校や高等学校で教えられている。

 

 

 

0104
著者:アリストテレス
書名:ギリシア語による著作集
刊行地:ヴェネツィア
刊行年:1495-1498

アリストテレスは師プラトンと並ぶ古代ギリシア最大の哲学者だったが、同時に最大の自然科学者でもあった。彼は自然の研究では、実際の経験、観察から出発し、論理的推論によて研究すべきであるとし、自然科学研究の基本を確立した。つまり「科学的な考え方」を確立したのである。

 

 

 

0106
著者:レギオモンタヌス
書名:アルマゲスト(偉大なるプトレマイオス)
刊行地:ヴェネツィア
刊行年:1496

プトレマイオス(90-168 頃活動)はエジプト、アレクサンドリアの天文学者・地理学者。彼が確立した天動説は、コペルニクスが地動説を発表するまで、1300年ものあいだ信じられてきた。ドイツの天文学者レギオモンタヌスは熱烈な信奉者で、プトレマイオスの著書をラテン語に抄訳し注釈を加えて初めて出版した。これが本書である。

 

 

 

0107
著者:アルキメデス
書名:四辺形, 円の求積法
刊行地:ヴェネツィア
刊行年:1503

アルキメデスは古代最大の数学者、物理学者、工学者。本書はアルキメデスの著作で最初に印刷出版されたもので、彼の放物線で囲まれた図形の求積法の新しい解析を含んでいる。この求積法は17世紀に確立された微積分法の原点になった。これはアルキメデスの数学における最も大きな貢献とされている。また、円周率の確定に関する論文も含まれている。

 

 

 

2「ニュートン宇宙」

プトレマイオス天動説宇宙モデルは、陽が東から昇り西へと沈む日常の経験とは合致するが、惑星観測の結果とは矛盾する。千年以上もの間、観測結果に合致させるために手直しがっ加えられてきたため、このモデルは非常に複雑なシステムになってしまった。
もっと簡単に観測結果を説明できるはずだと考えたコペルニクスは、地球を中心に置くのではなく太陽を中心に置くことで単純で安定的なシステムになることを発見した。この太陽系の惑星運動の法則を発見したのがケプラーである。一方、ガリレオは月を観測して月が地球と同じ物質で出来ているであろうことを示した。地上では石は必ず落下するのに、なぜ月は落ちてこないのか?物質間に働いてそれを可能にしている力、ケプラーの法則を可能にしている力、すうなわち万有引力を発見したのがニュートンである。こうして、あらゆる星や物体の運動が解析可能で予測可能なニュートン宇宙が誕生したのであった。

 

0201
著者:ニコラス・コペルニクス
書名:天球の回転について
刊行地:ニュールンベルク
刊行年:1543

「地動説」という新しい太陽系モデルを確立した科学史上最大の業績。プトレマイオス「天動説」が実際の観測結果と合わなくなり、コペルニクスは古代ぎりしあのアリスタルコスの唱えた太陽中心説に着目してモデルを組み替えたのである。この後、ケプラーが楕円軌道を、ニュートンが引力の法則を発見して、その正しさが証明された。

 

 

 

0202
著者:ヨハネス・ケプラー
書名:新天文学
刊行地:プラハ
刊行年:1609

ケプラーは観測結果と整合的な太陽中心の惑星運行法則、いわゆる「ケプラーの三法則」を発見した。その第一、第二法則が発表されたのが本書である。第一法則は「惑星は太陽を中心とする楕円軌道を運行する」、第二法則は「太陽と軌道上を移動する惑星とを結ぶ直線は同一時間に同一面積を描く」である。

 

 

 

0203
著者:ガリレオ・ガリレイ
書名:星界の報告
刊行地:ヴェネツィア
刊行年:1610

望遠鏡の発明に刺激されたガリレオは、早速自ら望遠鏡を制作し、天文観測に応用した。彼はまず月を、そして木星や金星を観測し、その観測結果を本書に纏め、美しい図版を付けて出版した。本書はコペルニクスの天文学的仮説を可視的に初めて実証し、センセーションを巻き起こした。また、太陽と惑星間に働く力の合理的説明を要求したのである。

 

 

 

0205 / 0206
著者:アイザック・ニュートン
書名:自然哲学の数学的原理(プリンキピア)
刊行地:ロンドン
刊行年:1687

ニュートンは、本書で新しい宇宙観、宇宙の新しい「パラダイム」を作り上げた。第一部では有名なニュートンの三法則、慣性の法則、運動の法則、作用・反作用の法則を提示。第二部では流体力学を論じ、第三部はニュートン最大の業績である万有引力論が発表されている。

 

 

 

 

3「解析幾何」

数学、数の学は四則演算からタルターリアやカルダーノによる三次、四次方程式の解法など代数学へと発展し、それはネーピアの対数やライプニッツの微積分の発見などによって、さまざまな物理現象の解析ツールとなっていった。一方、空間の学である幾何学は、デカルトによって空間座標の概念が与えられて代数学で取り扱えるようになった。
解析幾何の成立である。重要なことはこれによって空間内での動きが運動方程式で記述できるようになったことであり、例えば星の運動を解析してロケットをその星へと飛ばすことが出来るようになったのである、

 

0303
著者:方法序説
書名:ルネ・デカルト
刊行地:ライデン
刊行年:1637

近世最大の哲学者ルネ・デカルトは、数学、物理学者でもあった。本書には「方法序説」の他「光学」「幾何学」「気象学」が収められている。「方法序説」において「我思う、故に我あり(コギト・エルゴ・スム)」が全ての至高の基礎であるとし、これが近代哲学の出発点となった。しかし本書で最も重要なことは、「幾何学」において空間座標の概念を示し、解析幾何学を創始したことである。このことによって、「運動」が代数で解ける様になったからである。

 

 

 

 

4「重さ・力」

物の重さは地球の引力によるものだが、古代には物の性質の一つとして考えられていた(例えばアリストテレス)。この重さを力と捉えて、その釣り合いの法則をたてたのがヨルダヌス・ネモラリウスであり、それを厳密に定式化して静力学を確立したのがステヴィンである。一方、タルターリアは大砲の命中精度を上げるために砲弾の弾道を研究し、弾道が常に下方へ曲げられて放物線を描くことを突き止めた。タルターリアは動力学を創始したのである。ガリレオは物の落下を実験的に研究し、落下速度は重力加速度によって決定されることを実証し、標準的な重力加速度 – 地球引力の大きさ – を発見したのである。ガリレオの発見した振子の等時性を用いて正確な時計を発明したホイヘンスは、その過程で振子運動の遠心力を研究した。ニュートンはホイヘンスの遠心力を知って、月が落ちて来ないのは、月に働く地球引力と月が地球の周りを回っていることで生じる遠心力が釣合っているからだと結論し、万有引力論を確立したのである。

 

 

 

 

5「光」

古代ギリシアで研究された光学はアラビアで保存され、アル=ハゼンが集大成したものが中世にヨーロッパに伝わり、ウィテロなどによって研究された。ケプラーはウィテロを補う形で視覚を研究し、直進する「光線」とレンズによって網膜に外界の「像」が構成されて「見える」ことを明らかにし、光の「屈折」の法則を説明した。一方、にゅーとんは白色光がプリズムによって赤から紫までの多様な発色を示すことを発見し、その原因は光線が光の微粒子の流れであることとした。現代の量子力学では光は波動(電磁波)であり粒子(光子)でもある量子というものであることが明らかになっている。ニュートンが提起した色彩理論はヤングによって研究され、あらゆる色彩は三原色の混合であるが示され、カラー写真、カラー印刷、カラー・テレビが可能になったのである。

 

0508
著者:ロバート・フック
書名:微細物誌
刊行地:ロンドン
刊行年:1665

「フックの法則」で知られるフックは、17世紀最大の実験科学者であり、さまざまな重要な科学器具を考案、改良、製作した。本書は、自身が考案、製作した複合顕微鏡を用いて種々の観察を行い、その結果をまとめたもの。植物の細胞を発見し、細胞(セル)と名付けた。フック自身の手になるエッチングは精密で迫力に満ちている。

 

 

 

 

6「物質・元素」

世界を構成している基本的な元素は何かという問いは古代ギリシアから考えられて来た。基本元素が判れば、その組み合わせによってあらゆる物質を、とりわけ金が創れるはずだと考えた中世の人々は盛んに錬金術を研究した。その一つの方法と考えられていたのがブルンシュヴィ匕やボルタが実践した蒸留であった。蒸留は物質変換術の一つとも考えられていたのである。ボイルは混合物と化合物とを区別し化合物を分解して成分を得る実験を行って粒子と考えられる元素を抽出しようとした。ラヴォアジェはボイルの考え方を発展させて精密な定量実験法を案出し燃焼を研究、燃焼が物質と酸素の結合現象であることを明らかにした。酸素の発見である。彼は他に窒素、水素、炭素など幾つかの元素も発見している。デーヴィはヴォルタの発明した電流(直流)を用いて物質の電気分解を研究し、多数の元素を発見し、これを表すための元素記号を提案した。

 

0601
著者:ヒエロニムス・ブルンシュヴィヒ
書名:真正蒸留法
刊行地:ストラスブール
刊行年:1500

ブルンシュヴィヒは、ストラスブール生まれの外科医。本書っでは様々な病気やけがの薬について、薬草からの蒸留抽出法を美しい挿絵を用いて記述している。本書は薬剤製造の最も権威あるハンドブックとして16世紀まで重用された。化学の始めt言っても良い。巻末には貧しい人のために、安価に入手できる薬のリストも。

 

 

 

 

7「電気・磁気」

摩擦した琥珀が険や糸くずを引きつけること – すなわち摩擦静電気の存在は古代から 知られていたが、摩擦起電機を発明して静電気の性質を調べたのがゲーリケである。 その強烈に強いものが雷であり、静電気にプラスとマイナスがあることを証したのがフラ ンクリンで、このことは静電気への関心を一挙に高め、電気に関する知見が高まった。 蛙の神経に対する静電気刺激の影響を調べていたガルヴァーニは、電線を繋いだ の脚が静電気刺激を与えなくても痙攣することから、動物電気の存在を推定したが、 ヴォルタは二種類の電線の接触と蛙の体液によって電気が生じたことを見抜き、電池 (電堆)を発明した。初めて持続的な電流(直流)が生み出されたのである。一方、磁 石が鉄を引き付けることや、方位を指すことも古来より知られていて、羅針盤(コンパ ス)が考案されていた。ギルバートは地上における磁針の挙動を研究して、地球もまた 大きな一個の磁石であることを明らかにした。電流が磁力を生させることを発見したの はエルステッドだが、それを解析して電流と磁力の関係を法則化したのがアンペール である。これによって磁気から電流を生じさせることが可能になった。ファラデーはコイ ルに磁石を抜き差しすることで誘導電流(交流)を発生させる交流発電機を発明、これ は電流によって磁石を回転させる電動機(モーター)の発明でもあった。

 

0711
著者:トーマス・オールヴァ・エディソン
書名:ダイナモ発電機・特許説明書, 特許番号 No.297, 587 合衆国特許局
刊行地:ワシントン D.C.
刊行年:1884年4月29日

1831年の電磁誘導現象の発見は、直ちにっ快適な力の電気力への変換につながった。エディソンは、元プロイセン陸軍将校のフォン・ジーメンスによる、「ダイナモの原理」を用いて発電機を発明したのである。本書は、エディソンが更に効率の良い発電機を開発した時に、特許取得のために提出した説明書である。

 

 

 

 

8「無線・電話」

音声の強弱を電流の強弱、音声電流に変えて伝送知る電話を開発したのは音声学者ベルだったが、一方、ヘルツは非常に早い電気振動は空気中を伝播することを発見した。この電気振動(電波)を音声電流で変調して送受信するのがラジオであり、これを双方向にしたのが無線電話、その最新の形が携帯電話ということになる。画像信号とともに送受信すればテレビである。

 

 

 

 

9「飛行」

空中を自在に飛翔することは古来、人間の憧れだった。ゲーリケの実験から真空の存在を知ったテルツィは、中を真空にした銅製風船を作れば空気より軽いので飛ぶと考 え、飛行船を考案した。このアイデアは後にモンゴルフィエ兄弟によって熱気球という形で実現し、現在の飛行船に結実している。一方、鳥をモデルにした飛行方法もまた古 代から夢想されて来たが、リリエンタールは鳥の翼の力学を研究してハング・グライダー に応用し、飛行機の原型を創った。ライト兄弟はこのグライダーの飛行実験を繰り返 し行って安定的な飛行を確立し、エンジンを搭載してプロペラによる推進力を加え めての動力飛行を行った。火薬の爆発力によって物を飛ばすというアイデアも古くから あったが、これを固体燃料ロケットという形に昇華したのがゴダードである。彼は更に燃料の燃焼コントロールがより容易にできる液体燃料ロケットを考案し、これがスペース・ シャトルを始めとする現在のロケットの主流となっている。

 

0906
著者:ウィルバー・ライト
書名:航空実験
刊行地:シカゴ
刊行年:1901

ライト兄弟はリリエンタールらのグライダー研究所を読み、実際の飛行実験をもとに自転車の部品を用いて安定性を操縦性に優れたグライダーを設計製作していた。次いで軽く改良したエンジンを搭載し、1903年12月、ノース・カロライナ州キティ・ホークで1分、255mの動力飛行に成功。数日後には30分、40kmへと伸ばした。本書は動力飛行のために行われたグライダー飛行実験の記録である。

 

 

 

 

10「電磁場」

ファラデーは電磁誘導を発見し交流発電や電動モーターを可能にしたが、数学に疎かったので電磁誘導を定式化することは出来なかった。これを行ったのがマクスウェルで、彼は磁力を、磁気の渦動と磁気強度の変化、つまり「場」における変化に応じて電流が生じることだと捉えて、「マクスウェルの方程式」と呼ばれる四元方程式に定式化した。「電磁場」の発見である。この「場」の変動による波動が電磁波であり、その空中伝播の速度が光速に等しいことから、マクスウェルは光も電磁波の一つであると予測したのであった。ローレンツはマクスウェルの創始した電気磁気学を専門としたが、マイケルソンとモーリが行った光の速度実験、高速で運行している地球の運行方向に放っ た光の速度と、運行方向に直角に放った光の速度が等しかったことから、唯一の合理的説明は、ある速度で運行している系においては運行速度に応じて空間が縮む、ということでしかないと結論した。これが「ローレンツ短縮」である。アインシュタインは「マクス ウェルの方程式」と「ローレンツ短縮」から、その相対性理論を導いたのであった。

 

 

 

 

11「原子・核」

レントゲンは低圧ガスを封じ込めた放電管の陰極線による発光現象の研究を行っていたが、その際偶然に物質を透過する放射線、すなわちX線が出ていることを発見した。これに興味を持ったベクレルは、ウラン鉱石からX線に似た感光作用を持つ放射線が出ていることを発見したが、師のこの発見に刺激されたキュリー夫人は、夫ピエールとともに、 放射線を発出しているのはウラン原子であることを突き止め、その放射線を出す性質を 「放射能」と命名したのである。ラザフォードはウランからの放射線にα線、β線の二種あ ることを発見し、直線はプラスに帯電した重い粒子、ヘリウム原子核であり、β線はマイナス に帯電した軽い粒子、電子であること明らかにした。またこの放射線はウランが別の元素に変換(壊変)する過程で発出されることを明らかにし、さらにα線を窒素原子にぶつけて原子核が変換することを示した。核分裂の第一歩である。ラザフォードは原子核が陽子と中性子から成ると考え、中性子の存在を予言したが、これは弟子によって実証された。湯川はこの陽子と中性子を結ぶ中間子の存在を予言し、その存在も後に実証された。ハーンとストラスマンは中性子をウランにぶつけるとウランの核が二つに分裂し強力なエネルギーが 出ることを発見した。原子力の発見である。しかしこの発見は不幸なことに第二次大戦直前に行われたため、最初の原子力利用は兵器、原子爆弾になってしまったのである。

 

1101
著者:ヴィルヘルム・コンラート・レントゲン
書名:新種の輻射線について
刊行地:ヴュルツブルク
刊行年:1895-1896

1895年秋、ヴュルツブルク大学物理学教授レントゲンは、クルックス管を用いて陰極線の実験をしていた。その際、紙に包んだクルックス管から2mも離れた所に置いてあったシアノ白金酸バリウムを塗った紙が蛍光を発しているのを発見した。彼はこの蛍光を生じさせた放射線をX線と名付け、基本的性質を確かめた。本書はこの発見の第一報と第二報であり、講演報告をまとめたもので、最初のレントゲン写真の公表でもあった。

 

 

 

1104
著者:マリー・スクウォドフスカ・キュリー
書名:放射性物質の研究
刊行地:パリ
刊行年:1903

ピッチブレンドからウランの放射能の300倍も強い放射能を持つ新元素ポロニウムの分離に成功したキュリー夫妻はさらに研究を続け、ウランの100万倍強い放射能を持つ新元素を発見した。夫妻はこれをラジウムと名付け、1902年には純粋なラジウム0.1gを分離するのに成功した。これらの研究のすべてを学位論文にまとめたのが本書である。キュリーは核物理学を開拓したのである。

 

 

 

1113
著者:湯川秀樹
書名:素粒子の相互作用について
刊行地:東京
刊行年:1935

湯川はこの論文で、原子核の中の陽子と中性子を結びつけている核力をなしている中間子の存在を予言した。1947年、イギリスのセシル・パウエルが宇宙線の中からπ中間子を発見、1948年には粒子加速器によってこれが作られて湯川理論が証明された。この功績によって1949(昭和24)年、日本人初のノーベル賞を受賞したのである。

 

 

 

 

12「非ユークリッド幾何学」

ユークリッド幾何学は「平行線は交わらない」という前提から総てが展開されている。それでは「平行線は交わる」という前提から出発してユークリッド幾何学を展開できるであろうか?これを行ってユークリッド幾何学を完全に読み替えてしまったのがロバチェフスキーと ボヤイである。「平行線は交わらない」のは平面の上でのことで、曲面上では「平行線は交わる」のである。ロバチェフスキー幾何学は凹面上の幾何学であり、リーマンは凸面上の幾何学を考えた。この2つを総称して非ユークリッド幾何学と呼ぶ。ところで曲面とは二次元 の平面が三次元(高さ)へ曲がったものである。従って非ユークリッド空間は三次元ユーク リッド空間が四次元へ曲がったものということになる。ミンコフスキーは、縦・横・高さに次ぐ四つ目の次元は時間であろうと考え、リーマン幾何学を適用した世界空間を構想した。アインシュタインはこのミンコフスキーのアイデアの上に相対性理論宇宙を築いたのであった。

 

 

 

 

13「アインシュタイン宇宙」

アインシュタインは、マイケルソン=モーリの実験からいかなる運行系においても光速は一定 と結論し、「ローレンツ短縮」に基づいて運行系においてはその運行速度に応じて空間が縮むのであり、従って各運行系内での運動を比較できる絶対的な基準点はなく、それらは相対的にしか捉えられないことを明らかにした。そのあらゆる相対的な運行系の存在する 「場」、すなわち宇宙は、「マクスウェルの方程式」とミンコフスキーの「四次元時空間」で表されることを証明したのである。我々の世界は光速より遥かに低い速度で運行しているため、空間と時間が独立しているニュートン宇宙なのだが、光速に近い速度で運行している世界は、空間と時間が一体となった「四次元時空連続体」であり、そこでは運行速度が 光速に近づくにつれて時間が遅れていくのである。このようにして宇宙の全体像を明らかにしたアインシュタインは、これを「アインシュタイン宇宙」と呼ぶならば、我々の世界はその 特殊なものとして「ニュートン宇宙」と呼ばれるべき世界であることを示したのであった。

 

1301
著者:アルベルト・アインシュタイン
書名:
一般相対性理論の基礎
刊行地:ライプツィヒ
刊行年:1916

アインシュタインは本書で、相対性の一般理論を作り上げた。すでに発表していた「特殊相対論」を、慣性力による等速直線運動だけでなく、加速や減速や遠心力といった非等速運動系にも適用すべく、彼はミンコウスキー時空間とリーマン幾何学を援用する形で、宇宙内に分散する質量によって生成する空間(時間的量)を意味する「重力の場」という概念を提起した。それによりあらゆる運動を説明できる統一宇宙論を構築したのである。

 

 

 

 

SP「東京展特別出展」

 

SP08
著者:チャールズ・ダーウィン
書名:種の起源
刊行地:ロンドン
刊行年:1859

有名なビーグル号の航海に乗船したダーウィンは、フィンチ(スズメの一種)の14種類もの変種がガラパゴス群島に生息し、変種ごとに群島の特定地域に繁殖しているのを見た。彼は当初この事実を軽視したが、最終的には、14の変種が独立して発生したとは考え難く、エクアドルの原種から展開したと見るのが妥当と考えた。そしてダーウィンは本書で、種は常に環境に適合するように変化するという彼の進化論を、世に問うたのである。

 

 

 

 

2つの「知の連鎖」マップ

 

それぞれの時代の科学者、技術者たちは、常に先人の「叡智」に刺激を受け、新たな叡智を重ねることで「知の連鎖」を繰り返し、人類の営みを魅力的なものへと創造してきました。本展覧会では、そうした「知の連鎖」の関係を2つの視点でマップに表しご紹介します。

 

知の連鎖①:13のカテゴリーマップ

「知の森」では全体を 13 のカテゴリーにわけ、それぞれのカテゴリーのなかの「知の連鎖」に着目し ご紹介しています。

 

 

知の連鎖②:系譜マップ

時代やカテゴリー領域の枠を超えたサイエンティストたちによる四次元的な「知の連鎖」。それを「知の系譜」としてあらわしたマップでは、系統的、体系的にそれらをたどってみることができます。 

 

 

 

 

「知の繋がり」

現代を生きる私たちは、膨大な情報量の中で、新しい「知の繋がり」の方法を模索しています。
書物との出会いによる人の脳内での「知の繋がり」の過程。
「書物」と通して人と人とが、情報を共有して、伝達する様子。
過去から現代、さらには未来に向けての知の連鎖は、時空を越えて繋がる様子を区間インスタレーションとして紹介します。

 

シンボルモニュメント

書物において発表された科学技術の業績は、それを呼んだ人々にそれを乗り越える新たな業績を生むように促します。こうした書物による知の創造の連鎖の幾つかを展示でお見せするとともにこのモニュメントに表しました。

 

 

 

 


 

 

 

 最後まで読んでくださり、
 本当にありがとうございました!!

 


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