2019年2月15日訪問
第11回 恵比寿映像祭 2019
The Art of Transposition
トランスポジション 変わる術
【一言】
第11回 恵比寿映像祭。
テーマは「トランスポジション 変わる術」。
対立軸や比較, 対比という構図の作品が多く、鑑賞するに当たって観やすかった。
考えてみれば、日常や世界を形作る何もかも、「トランスポジション」でできているのかも!!
【Twitter140文字感想】
【 #恵比寿映像祭 】
第11回テーマは《The Art of Transposition──トランスポジション 変わる術》
作風は違う。
けど、テーマが明確で分かりやすい!撮影者─鑑賞者
自然─科学/人間
現実─非現実
テーマの特性上、「対立軸」を取り入れた作品が多く理解しやすい!ディスプレイの設置が素敵! pic.twitter.com/cTOWD5XmRB
— ArA-1 (@1_ARA_1) 2019年2月15日
概要&作品紹介
展覧会説明
恵比寿映像祭は、平成21(2009)年の第1回開催以来、年に一度恵比寿の地で、展示、上映、ライヴ・パフォーマンス、トーク・セッションなどを複合的に行なってきた映像とアートの国際フェスティヴァルです。映像分野における創造活動の活性化と、映像表現やメディアの発展をいかに育み、継承していくかという課題について広く共有する場となることを目指してきました。
第11回開催となる今回は、ポジティヴに「変わる」ことを目指すテーマをかかげました。また、これまで培った地域とのつながりや国際的なネットワークを含め、さらなる充実と発展をはかります。
恵比寿映像祭
会場:恵比寿ガーデンプレイス
※メイン会場:東京都写真美術館
会期:2019年2月8日~2月24日
料金:無料
公式サイト:こちら
芸術祭の感想
恵比寿映像祭の感想です!
恵比寿映像祭は、2018年の第10回に初めて参加&鑑賞しました。と言いつつも、その時のメインは芸術作品ではなく、オカルトで有名な「コンティングリー妖精写真」だったのですが(笑)
そして、面白かったし興味深かったので、今年も鑑賞させて頂きました!
今回の展示はとても分かりやすくて面白かったです!
映像祭の過去のテーマを見るとそうでもないのですが、前回第10回のテーマが「インヴィンシブル」という非常に曖昧なものだった為に、作品自体もかなりバラバラというか、なかなか分かりにくかったです。
しかし今回は「トランスポジション」というテーマ。
これは、数あるテーマの中でも特に分かりやすいものではないかと思っています。というのも、「移動/置き換わる」という意味の今回のテーマは、「対立軸」を作りやすいと感じました。
・撮影者───鑑賞者
・自然───科学/人間
・現実───非現実
︙
こうして対立軸があり、その変化や移動を描くという作品が多かった印象でした。そして、両極端にあるものが描かれる故に、鑑賞者としてもその内容がシンプルに伝わってくるように感じました。
改めて考えれば、世界は「トランスポジション」で形作られているようなものなのかもしれないと思いました。
視点の変更は人間が常日頃から行っているものだし、物事を比較したり優劣をつけたりするのも人間の得意分野。なにか現象があれば必ず対立軸は生じるし、時間の流れに伴う過去-未来といった概念の移動だってトランスポジションだろうし。
こう考えると、なかなか面白い!
子供の成長ビデオだって、朝顔の観察記録だって、天体観測動画だって、何もかもが「トランスポジション」の作品になりそう!!!!!
作品自体が、軽かった気がします。
まぁ、比較できるのって前回の第10回映像祭だけなので、なんとも言えない部分は振り払えないですが。
というのも、「上映時間」が短い作品が多い印象でした。
前回は記録映画とか映像作品で15~20分とか普通に何点もあった気がしたのですが、今回は10分未満の映像作品が多かった気がします。
そういう意味で、「ウェイトが軽い」という意味です。
私、個人的には、映像作品は「鑑賞時間が規定されている」から苦手です。
自分のペースで視聴できず、上映の途中から鑑賞するか、冒頭まで待機が必要だったり、数十分も観続けなければならないのは大変。融通がきかないというか、そういう静止作品と違う部分が苦手。
なので、今回は短い作品や写真作品のようなものが多くて、個人的には”助かり”ました。
それから、ディスプレイ(出力画面) のディスプレイ(展示) が素敵でした!
────下手なシャレを失礼しました(笑)
どここまでが作家さんの指示で、どこからがキュレーターさんの仕事なのか分からないのですが、なかなか素敵な展示の仕方が目立っていて、楽しかったです!
東京都写真美術館を3フロア分=全館を使っての展示。
かなりスペースを広く使っていたし、画面も液晶パネルやスクリーンなど様々。個人的には、腰を下ろすための「椅子」が凝っていて好きでした!
映像祭の全体に関する感想はこのくらいでしょうか。
無料でこのクオリティは本当に驚くべき内容だし、しかもかなり丁寧に作成されたパンフレット?までいただけるので、本当に至れり尽くせりで感謝です!
展示の紹介&感想
展示されていた作品を紹介していきます!
もちろん全部は難しいので、私が気に入ったもの、好きな作品を中心に挙げて、感想も含めて書いていこうと思います!
開催プログラム等は、公式HPに掲載されています!
・恵比寿映像祭について:こちら
・開催プログラム(展示作品):こちら
・アーティスト:リンク
第11回テーマについて
展示会場の最初に掲示されていたものです。
今いる位置から違うところへ移動すること、あるいは、すでにあるものや作法を異なるものに置き換えてみることをトランスポジションといいます。第11回目を数える恵比寿映像祭では、「トランスポジション」をキーワードに、多様な作品やプログラムをご紹介いたします。
視点の変化や編集の緩急、ひとつの主題を異なるメディアやメソッドで表現すること、あるいは前提となる文化や物理的な環境を変えることなど、多様なトランスポジションの妙によって、アートや映像表現の面白さは形作られます。さらに社会的立場や役割の交換、表現されたものを解釈し直すこともトランスポジションとするならば、多くの示唆に富んだ作品が含まれることになるでしょう。
有為転変は世の習いと云うように、時代や社会は常に動いていきます。トランスポジションは、既存の方法を否定し壊すことだとは限りません。これまでの常識やルールがうまく機能しないとき、意識的に異なる場所に立つことは、ひとつではない答を模索し続ける術であるとともに、変わらないもの、換え難いあり方を見出すための問いでもあります。
第11回恵比寿映像祭では、アートと映像を介して様々なトランスポジションを味わうことを通じて、能動的なアクションと創造性について、作り手、送り手、そして受け手となる観客のみなさまとともに考えてみたいと思います。
恵比寿映像祭ディレクター 岡村恵子
恵比寿映像祭
作品紹介&感想
作品と感想です。
作家自身が映像等を公開している場合は、できるだけそれを掲載しました。まぁ、大した感想は書いていないので、どうぞ作品だけ観てください!
※作品の紹介文は、パンフレットから引用しています。
作家:ルイーズ・ボツカイ
作品:エフアナへの映画
制作年:2018
種類:シングルチャンネル・ヴィデオ
紹介ページ:リンク
作家サイト:リンク
作品の動画
見れない方はこちらから。
南米アマゾンの奥地、ブラジルとベネズエラにまたがる森で原初の暮らしを守る先住民ヤノマミ族。ボツカイは、その一集落を訪れ、人々、とりわけ女性たちに、カメラを介し敬愛に満ちた眼差しを注ぐ。…[後略]
個人的に、こういう「訴える系」のドキュメンタリー作品が好きです。作品が持っているパワーが計り知れないほど大きいし、アートが提示し鳴らす警鐘の音が好きです。
映像作品内で、アマゾンを「この地球や、森の豊かさを担っている」とし、「ブラジル政府は我々の地に経緯を払うべきだ」と語るヤノマミ族の言葉が胸に刺さりました。
作家:市原えつこ
作品:デジタルシャーマン・プロジェクト
制作年:2015-
種類:インスタレーション
紹介ページ:リンク
作家サイト:リンク
文化庁メディア芸術祭:リンク
コンセプトムービー
亡くなった人が、家庭用ロボットに憑依し、死後49日が来るまでの間、家族とともに時を過ごすことができるデジタルシャーマン・プロジェクト。…[中略]…魔術や信仰と科学やテクノロジーは一見すると相反するもののように見えて親和性が高いと考える市原…..[後略]
故人の人格や性格的な特徴をプログラムして、3Dプリンターで作成した顔を貼り付けたもの。確かに憑依したように見えるけど、そこに「魂」はいないわけで。ロボットとかAIの人格議論にも繋がりそうな、興味深いテーマ!
でも、多分、市原さんが考えたのは、「お別れ」の形を現代風にしようとしたのかなぁとも。彼岸に胡瓜で作る馬の現代版的なイメージなのかな~と思いました。
作家:市原えつこ
作品:都市のナマハゲ
制作年:
種類:
紹介ページ:リンク
作家サイト:リンク
作品の動画
「ナマハゲ行事」が持っている機能を再解釈し、現代の都市に移植する試みを行っている。
コレ、すごく魅力的でした! このコンセプトだけで、映画1本が完成しちゃいそうなほどのSFチックな内容が気に入りました!
まず、ナマハゲの様相がドローンやVRゴーグルみたいに現代機器が寄せ集められる形で、なんだか『千と千尋の神隠し』の「オクサレ様」とか、付喪神みたいな印象を受けました!
しかし、「ナマハゲ行事が持つ機能」とは何でしょう? すっかり脱魔術化した都市において、どんな意味を持つのかは、もっと詳しく知りたかったです。
以下は、展示されていた、「秋葉原のナマハゲ」の説明と写真です!
ドローン、電子パーツ、VRゴーグルといった「秋葉原の都市の幸」がふんだんに使われたナマハゲ。インターネットの監視データを元に、悪事を犯したものを特定し、更生させる。頭上のドローンは「先立人(ナマハゲの立ち入り可否を確認する者)」の役目も兼ねている。都会は空気が汚いので、防毒マスクを装着している。
作家:岡田裕子
作品:エンゲージド・ボディ
制作年:2019
種類:インスタレーション
紹介ページ:リンク
作家サイト:リンク
岡田裕子「第11回 恵比寿芸術祭:トランスポジション 変わる術」
新作を発表します!
2019.2.8ー24
@東京都写真美術館☆関連イベント☆
岡田裕子|ラウンジトーク
2.24(日)13:30-
@東京都写真美術館2F ロビー岡田裕子《エンゲージド・ボディ》のためのドローイングhttps://t.co/p94pLnuoNg pic.twitter.com/7KeLcOmsnp
— Mizuma Art Gallery (@MizumaGallery) 2019年2月7日
再生医療の実現は、人間の細胞の「置き換え」によって、延命装置となるだけでなく、社会や個人間の新しい関係をつくりだしていくのではないだろうか。…[中略]…現代医療の進化によって、人間同士のリレーションシップの在り方はどのように変わっていくのか、新たな問いが未来へ投げられていく。
私が大好きな「バイオアート」のような作品でお気に入りです! そして、再生医療もまた「トランスポジション」だということに気が付きました。
人間の臓器をアクセサリーとして用いた本作は、どこか趣味悪いように感じながらも、不気味な美しさと湛えていて、とても印象的だったし、好きです! 気味悪いくらいの色のコントラストがまたナイス!!!
作家:デヴィッド・オライリー
作品:エヴリシング
制作年:2017
種類:ヴィデオ・ゲーム
紹介ページ:リンク
作家サイト:リンク
作品の動画
[前略]…本作は、決められた物語や結末が存在しないヴィデオ・ゲームである。プレイヤーは人間以外の何者か──動物、植物、昆虫、粘菌や原子、地球や銀河系───に変容し、それらの視点から世界を眺めることが出来る。
人間という視点から離れて、違う存在からの視点から世界を眺めるという内容は、まさに「トランスポジション」そのものだと感じました。
実際にゲームをプレイ出来るのですが、ゲームが苦手な私はうまく操作することが出来ず……(笑)
作家:デヴィッド・オライリー
作品:おねがい、なにかいって
制作年:2009
種類:3DCGアニメーション
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作家サイト:リンク
作品の動画
3DCGアニメーションはこれまで多くの場合、人工的な表現であることから、リアルさに欠ける(あるいは、それゆえに過度にリアルさを求める)ものであると認識されてきた。オライリーは、人工物であるCGによる表現が、鑑賞者に情動を伝えることができることを、本作およびこれまでの作品において、一貫して提示してきた。…[後略]
これは作品そのものというより、解説文が好きだったので、ここに掲載しました。私自身、映画を観るのが好きで、ピクサーとかアメコミとか、CG作品のクオリティが上がっていると感じています。
そんな中で、「過度にリアルさを求める」と言われると、なんだか色々と考えてしまいました。確かにリアルさだけじゃないよな────。
作家:ユニヴァーサル・エブリシング
作品:トライブス
制作年:2018
紹介ページ:リンク
作家サイト:リンク
作品の動画
「群衆規模における人間行動の研究」として制作された《トライブス》は、一定の条件下で、群衆の動きが、どのように変化するかをシミュレートした映像である。…[中略]…俯瞰するとき、群れをなす人々は、統計上の数値のように制御や操作可能な対象と捉え得る。しかし、ひとたびその中の一人ひとりに視線を寄せるならば、自分自身もまた彼・彼女ら同様に、変転する状況に翻弄され、ただ右往左往する存在に過ぎないことが想起されるだろう。
この作品も「トランスポジション」を体現しているようで、印象的でした。演算されたシミューレーション内の人間の動きを見ている限りは他人事でも、いざ自分自身がどうかと問われているよう。
傍観者か、当事者か、視点の変更が色々な作用をもたらすのだなぁと、まじまじと感じました。
作家:ミハイル・カリキス
作品:とくべつな抗議活動
制作年:2018
種類:シングルチャンネル・ヴィデオ
紹介ページ:リンク
作家サイト:リンク
作品の動画
児童文学『鉄の女』の中で子どもたちが聞く不思議な音。不思議な音は、触れることで伝わり、大人による環境破壊を訴える生き物たちの声と共鳴する。このことを起点に…[中略]…映像の前半で、環境問題における正義と責任について討議した子どもたち。後半に、仮面を被り扇動者として現れる彼らの背景は、…[中略]…まるで微かな音の力が、山を動かしているようだ。
最初のボツカイ氏と同じように。「訴える系」の映像作品です。
前半。社会問題に関する子どもたちの議論は本当に真っ直ぐで、大人が恥ずかしくなってきます。環境破壊が生き物を苦しめるという流れで、「人間は動物?」「人間は人間だよ」「人間も動物でしょ」…といった議論が生まれてくるのが凄いし、面白いです。
後半。仮面を被り、抗議や苦痛の叫びのように音をだす子どもたち。シャーマンのような仮面は、まるで「自然が憑依した」かのように思えました。
作家:黒川良一
作品:ad/ab Atom
制作年:2017
種類:インスタレーション
紹介ページ:リンク
作家サイト:リンク
作品の動画
《ad/ab Atom》(原子/原子からの意)は、量子力学によって決定づけられた自然界上のナノレベルデータおよび顕微鏡で検出された物質に基づくオーディオ・ヴィジュアル・インスタレーションである。…[中略]…肉眼では感知できないナノレベルデータが、人間の知覚可能な現象に変換され、原子スケールの空間へ旅するような視聴覚体験が生み出されていく。
科学データを再構築して生み出された映像作品。顕微鏡の倍率をどんどん上げてミクロ以下の世界へ没入していくような映像は、まるでアメコミ映画『アントマン』のワンシーンのようでした。
真っ暗な空間のなか、設置された液晶パネルが白黒の光を放ち、それが激しく点滅する様子はなんだか好きでした。音楽?音?もテクノミュージックのようで、空間を含めた作品の印象が良かったです!
展示内容の紹介は以上です!
本当は、恵比寿ガーデンプレイスの他の会場で開催している展示も観たかったのですが、時間の都合上、ここだけに……。
ぜひ、来年も参加できたら良いと思っています!
最後まで読んでくださり、
本当にありがとうございました!!
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