トランスレーションズ展:翻訳=他者との意思疎通プロセスの多様なあり方を知る展示!

 こんにちは!
 お元気ですか?

 5月下旬ですね。この間、3月中旬に申請したマイナンバーカードの交付通知がやっと届きました。しかし就職して働き始めると、役所の開庁時間に行くのも一苦労ですね。まぁ在宅ワークなので暇を見つけて行きましょう。

 さて、今回は昨年11月に観た展覧会「トランスレーションズ展」の感想と紹介です。色々な視点での話やテクノロジー活用の例があり面白かったです!
 この日は友達と一緒に行きました。久々に会って観つつ喋りつつ、とても楽しかったです、ありがとうございました!

乃木坂駅にて。

2020年11月23日鑑賞

トランスレーションズ展
「わかりあえなさ」をわかりあおう

21_21 DESIGN SIGHT「トランスレーションズ展」写真画像

展覧会と記事の概要

一言コメント
  • 【翻訳】を「他者と交流するプロセス」と捉えて様々なコミュニケーションの形やあり方を展示。
  • 「テクノロジーが社会を良くする」ビジョンが見えて面白かった!
  • 異文化や他者への理解を促すと同時に、自分自身の言葉や文化や思考を見つめ直すキッカケになりました。
  • 展示の案内方法も良かった!

展覧会のあらまし

展覧会ディレクターを務めるのは、情報学研究者のドミニク・チェン。本展は「翻訳はコミュニケーションのデザインである」という考えに基づき、複数の言語間の翻訳を超え、アートやデザイン、身体表現、動物や微生物との対話にいたるまで、その可能性を多角的に探るもの。
本展では、様々な分野から集まった21作品を、「ことばの海を泳ぐ」「伝えかたをさぐる」「体でつたえる」「文化がまざる」「昔とすごす」「モノとのあいだ」「異種とむきあう」の7つのゾーンに分けて構成。
美術手帖より

展覧会:トランスレーションズ展 −「わかりあえなさ」をわかりあおう
会 場:21_21 DESIGN SIGHT
会 期:2020年10月16日~2021年6月13日
料 金:大人1,200円
展示内容:こちら

展覧会の感想

 「トランスレーションズ展」です。
 《翻訳》とか《コミュニケーション》とかを題材にした展覧会で、娯楽から社会派まで様々なプロダクトやプロジェクトが紹介されているものでした!

 この展覧会は友達と行きました。
 彼女も色々と経験を積んだり思考をめぐらせたりしていて、色々と話せながら見れて楽しかったです! 今回は題材が題材なだけに、違う人の視点や意見を喋って共有しながら鑑賞できたというのは大きな意味があったと思いました。ひとりで観るより考えが深まったと思います(私ほど”テクノロジー”に毒されていないですし 笑)。

 ギャラリーに入る前、その友達から「いつも何を考えて生きてるの?」という超難問を聞かれまして…。まったく上手く返答できなかったのがもの凄く心残りだったのと、「そもそも普段なにを考えてるっけ…?」と今でも悩み続けてます(笑) なので、このブログ記事で思考の軌跡が分かれば良いなぁと少し詳しめに書くよう心がけました(あまり変わらないかな……)




 「翻訳」と言われて思い浮かぶものは?
 この展覧会の趣旨を読んで最初になんとな~く頭の中で考えたのは、この問いだと思います。

 外国語の文章を日本語にしたり、映画の字幕を付けたり。あとは「夏目漱石が”I Love You”を”月が綺麗”と訳した逸話」とか、「川端康成がノーベル賞を受賞したのは翻訳者の手腕で、三島由紀夫のほうが優れていた」とか、俳句「岩にしみ入る蝉の声」が英語にできないとか、”kawaii”が世界共通語になっているとか、国際共通語エスペラントのこととか。

 展覧会では、言語以外のものも含めて他者同士が意思疎通を図るためのプロセスと捉えていました。モールス信号や料理や古の文化まで、異なる存在とコミュニケーションをする過程や試みを「翻訳」と位置づけていて、とても興味深かったです。





 展覧会は、めちゃくちゃ面白かったです!
 私が大好きなテクノロジーの話がたくさんあり、中でも「テクノロジーが社会をより良くする」という素晴らしいビジョンが見えたことが最高にワクワクしました!

 Google翻訳が言語の関連性を見出したり、モールス信号を意思疎通に使ったり、聴覚障害者が音を感じるデバイスや、文章を代読するメガネ、手話を映像に変換するシステム、盲目の人がスポーツを楽しむ取り組み……などなど。

 テクノロジーによって人を助けたり、人の世界を広げたり、表現の幅を伸ばしたり、異文化や他人への理解を促進したり。あるいは自分自身の言葉や文化や思考を見つめ直すキッカケになったり。人への作用がとても大きい展覧会だったし、コミュニケーションという不可視のものを展示していて凄いなぁと思いました。

 あと、私は「Google」がとても好きなので、Googleが開発した機能やそれを使ったプロジェクトを目にできた、体験できたというのは最高でした…!!!!

21_21 DESIGN SIGHT「トランスレーションズ展」写真画像
Google翻訳を活用した体験型展示





 他者について見たり聞いたり考えたりすることは、同時に自分についてを考えることでもあると思います。あるいは仕組みを知ることで客観的に考えられたり。この展覧会がまさにそうでした。

 盲目の人がスポーツを楽しむ方法を読んだ時、自分は何を観戦しているだろう?と考えたり。日本語の「ぼけっと」にあたる言葉が外国語には無いと知った時、普段どういう場面で使っているか思い浮かべたり。

 問題提起…とまではいかないまでも、考えるキッカケとかトピックを色々と示してくれたと思います。

21_21 DESIGN SIGHT「トランスレーションズ展」写真画像
日本語の「ぼけっと」の概念は外国語にはない





 展覧会の最初、ディレクターの挨拶として以下のようなコメントがありました。

メリカのSF作家であり、自身の作品執筆に加えて、中国語で書かれたSF作品の英語翻訳も精力的に行っているケン・リュウは、「あらゆるコミュニケーション行為は、翻訳の奇跡だ」と書いています。
ドミニク・チェン


 私はSFが好きなので、ここでケン・リュウの名前を見ることになるとは思わず、静かに興奮していました(笑) オバマ大統領も薦めるほど世界中で話題のSF小説『三体』を英訳した作家です。
 作品は短編しか読んでないですが、漢字や英語など”言葉”を題材にした作品が多くて良いです。有名な短編『紙の動物』はここから無料で読めますので、ぜひ!

 SFはヒトの本質に迫るものだと思っています。
 SFに「ファーストコンタクト」というジャンルがあります。『E.T.』や『未知との遭遇』のように異星人や異文明に接触する話です。英語が通じない相手に音・光・信号などで意思疎通を図ったり、数学や物理学を言語にしたり。地球人の反応も友好的なものから批判的なものまで様々。「他者とのコミュニケーション」を考える上で色々と考えさせてくれる示唆に富んだジャンルだと思います。

 話がだいぶ逸れましたね…(笑)




 あと、展覧会の形も良かったです。
 今回、まず最初に会場マップをもらいます。それぞれの展示キャプションはカード形式になっていて、各展示の前で手に取って読み、持ち帰るというタイプでした。

 これ、とても良かったです!
 まず、マップを手に会場内をめぐってカードを集めるというのがなんとなく楽しいですね。作品の前でピックアップできるというのが良いです。
 あと、単純に見やすいです。持ち歩くのに最適だし、観終わったカードの上に次を重ねていけるので整理も楽です。心なしかサクサクとストレスなく見回れた気がします。(A4用紙3ページ分とか大きいので渡されると、折ったりめくったりが大変なのです……)

作品情報の下に置かれている縦長のがキャプション。





 展覧会全体の感想はこんなところでしょうか。
 個別の作品やプロジェクトについての感想やコメントなどは、次から書いているので、そちらもぜひ目を通していただければ嬉しいです!

展示作品の紹介と感想

イントロダクション

ごあいさつ

21_21 DESIGN SIGHT「トランスレーションズ展」写真画像
[前略]…展覧会ディレクターには、国籍を超えてさまざまな表現媒体に携わる情報学研究者のドミニク・チェンを迎えます。
 「翻訳〈トランスレーション〉」ということばは、ある言語を異なる言語に変換すること、そしてそのプロセスを経て意思疎通を図る行為などを連想させます。その行為は、古くから異文化と接触し理解するための手段として行われ、今も私たちの日常のなかで続いています。日々進化するテクノロジーによって翻訳機能がめざましく発展し、言語の垣根を超えて「いつ」「どこ」にでも繋がることが可能となった昨今、かつては未知の世界であったものさえも身近に感じられるほどコミュニケーションのあり方は大きく変化しています。
 「翻訳」を介したコミュニケーションは、文字による言語だけではなく、視覚、聴覚といった感覚や身体表現などを用いて、送り手と受け手をつなぐ「架け橋」の役割を担っています。そして、その過程で生まれる解釈や変換、表現は、デザインやアートにも共通します。本展では、ドミニク・チェンの「翻訳はコミュニケーションのデザインである」という考えに基づき、「翻訳」を「互いに異なる背景をもつ『わかりあえない』もの同士が意思疎通を図るためのプロセス」と捉え、その可能性を多角的に拓いていきます。
 …[中略]…本展が、「翻訳」というコミュニケーションを通して、他者の思いや異文化の魅力に気づき、その先にひろがる新しい世界を発見する喜びを感じていただける機会となれば幸いです。
21_21 DESIGN SIGHT

ことばの海をおよぐ

ことばの港へ

作品:トランス・ポート
英題:Trans-Port

21_21 DESIGN SIGHT「トランスレーションズ展」写真画像

翻訳の宇宙へと誘うイントロダクション。ここは国際空港の入り口のように、さまざまな声が飛び交う「PORT(港)」。 聞き慣れないことばが耳に入るとき、知らない土地に飛びこむ不安と期待がいりまじる。ことばの宇宙から非言語の世界へ、ここから旅立とう。
トランスレーションズ展

ディレクターズ・メッセージ

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翻訳とは通常、ある言語で書かれたり話されたりする言葉を、別の言語に変換することを指しています。しかし、一つの言語で言葉を発するプロセスそれ自体も、一種の翻訳行為とみなすことができます。
 アメリカのSF作家であり、自身の作品執筆に加えて、中国語で書かれたSF作品の英語翻訳も精力的に行っているケン・リュウは、「あらゆるコミュニケーション行為は、翻訳の奇跡だ」と書いています。わたしたちは、ただ生きて、呼吸をしているだけの時でも、周りの世界から様々な色や形、香りや手触りといった膨大な量の情報が体に流れ込んできます。それらが無数の神経細胞を走り、身体感覚が感情に転化され、「なんて気持ちの良い日なんだろう」とか、「ああ、悲しい朝だなぁ」などという言葉がひとりでに口から出てきたりします。この時、わたしたちは目の前に広がる真っ青な空の色や、肌寒い冬の空気の冷たさといった、自分を取り巻く世界そのものの在り方を翻訳していると言えるでしょう。
 このような翻訳を行う時、誰しもが少なからず「うまく言い表せない」もどかしさを感じます。わたしたちは常に、精一杯の語彙や身体表現を用いて、沸き起こる様々な感情をなんとか他者に伝えようとしますが、そもそも自分でも完璧にその感情を翻訳しきれることはないのです。
 コンピュータが精確にデジタルデータを複製したり転送したりするようには、わたしたちは情報を伝えることはできません。わたしたちのコミュニケーションには、根源的な「わかりあえなさ」が横たわっています。それでも、わたしたちは互いの「言葉にできなさ」をわかりあうことはできます。別の言い方をすれば、わたしたちがどのように自分の感覚を翻訳しようとしているのか、という過程についてもっと知ることができれば、「わかりあえなさをわかりあう」ことができるでしょう。
 人は幸いにして、表現のしづらさをバネにし、新たな「言葉」をつくり出すことで、それまでできなかったような翻訳を行えるようになります。この展覧会では「翻訳」を、わかりあえないはずの他者同士が意思疎通を図るためのプロセスと捉えて、普段から何気なく使っている言葉の不思議さや、「誤解」や「誤訳」によってコミュニケーションからこぼれ落ちる意味の面白さを実感できるような、「多種多様な翻訳の技法のワンダーランド」をつくろうとしました。
 現在、世界中に7,000を超える言語が存在していると言われています。ひとつの言語が「全ての言語の海」を漂っているのだと実感できれば、日常で使う言葉に対して新しい感覚が生まれるでしょう。また、異なる文化の中で生み出された、他の言語への翻訳が困難な言葉について知ることで、わたしたちの感性はより多様になります。そこから、文字以外の言語の世界へも飛び込んでみましょう。身振り手振りを使い、瞬時にして風景をその場に描き出す手話は、耳が聞こえる人の表現をも豊かにしてくれます。言葉にしづらい感覚を、その場で絵にしてくれるグラフィック・レコーディングによって、わかりあえなさを越えた共感が生み出されます。また、古代の人々がつくり上げた文化に、現代人が新たな解釈を与えて新しい息吹を与える行為も、時を越えた翻訳行為とみなせるでしょう。そして、人同士のコミュニケーションにとどまらず、微生物や植物、動物、そして無機物と対話しようとする営みの数々もまた、「翻訳」の射程を押し広げます。
 この展示を体験し終えた後、あなたの中ではどのような翻訳の可能性が芽吹くでしょうか。この世界に存在するありとあらゆる事物と心を通わせるための、未だ見ぬ言語を想像していただければ幸いです。
ドミニク・チェン

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 展覧会を象徴するような、いくつもの言語を混ぜ合わせてメッセージが表記されていました。同時に、その文章をスラスラと口で話す映像も流されていて、違和感とか淀みとか全然なくて「すげ~」となりました。
 日本語と英語など読める箇所を探したり、「これはスペイン語っぽい」みたいにニュアンスで予測したりと、面白かったです。

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ことばのつながりを見つける

作品:ファウンド・イン・トランスレーション
作家:Google Creative Lab+Studio TheGreenEyl+ドミニク・チェン
英題:Found in Translation

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翻訳は人々がつながる上で大きな役割を果たすが、ときとして混乱も生む。文脈、意図、意味が失われてしまうことさえある。しかし、Google翻訳の技術が改善されていく過程では、「異なる言語同士にも、実はつながりがあることを示す共通点がある」という思いがけない発見もあった。現在、Google翻訳は108の言語に対応しているが、地球上で話されている言語は7000近くあり、その道のりはまだ遠い。 しかし、この発見によって次なる1000の言語に近付くことができたのだ。この作品では、言語が互いにつながりをもつこと、それを研究者たちに示してくれた技術を体感することができる。鑑賞者がマイクに向かって話しかけると、多言語機械翻訳によってそれが複数の他言語へと接続され、その「翻訳」の過程が可視化される。そしてその過程は、話されたことばや使われた言語によって、 常に変化し続ける。言語の世界をさまよって、ことば同士の新たなつながりを見つけてほしい。
トランスレーションズ展

 Google翻訳の研究に際して言語データの特徴を機械学習で抽出したら、思いがけない共通点が見えてきた、という話。
 体験型展示の方も良かったけど、説明文の方がめちゃくちゃ面白かったです! 言語が人類の文化や歴史を包含していて、それが見えてくるのは興味深い。消滅した言語や少数話者の言語を解読・翻訳する手掛かりになるのはロマンしかないし、言語間の共通構造とか「バベルの塔」以前みたいでワクワクする!

 インスタレーションの方は、マイクに向かって質問への回答を話すと、多言語に翻訳される、というもの。宇宙船の操舵室みたいで格好良かったです! 私は「いま楽しみなこと」みたいな質問で、「美術館を見ること」と答えました。(焦ってテンパったから日本語がおかしいww) 早すぎてプロセスが分からなかったのが残念。

一見すると、言語は人々を分断する壁のようにも見えますが、コンピュータによる言語分析を介することで、私たちがつながる方法を示唆するパターンが見つかることもあります。
 それには「機械学習」という技術が鍵を握ります。ここでは、言語や文法に関するルールを覚えさせる代わりに、何百万もの文章例を機械に提示しています。すると時間が経つにつれ、機械翻訳モデルはその文章内にある単語同士のつながりを予測し、正確に意味を「学習」できるようになっていきます。
 このインスタレーションでは、マイクに向かっていくつかの質問に答えると、あなたのことばが100以上の言語を含む機械学習モデルによって翻訳されます。同時に、ことばを翻訳しているあいだに生じる「言語間のつながり」を観察することもできます。
 これは、現在108の言語をサポートしているGoogle翻訳と同じタイプの技術です。とはいえ世界中で話されている言語の数は7000近くあり、まだまだ道のりは遠いですが、この技術は次なる1000の言語を目指して進展し続けています。
トランスレーションズ展

21_21 DESIGN SIGHT「トランスレーションズ展」写真画像
21_21 DESIGN SIGHT「トランスレーションズ展」写真画像

1. ひとつの言語から学べることは、あらゆる言語に適用できる。
これまで見たことのない言語であっても、ある言語の知識があればコンピュータは別の異なる言語を理解できることを研究者たちは発見しました。この発見により、ほとんど知られていない言語や遠隔地の言語、さらには絶滅の危機に瀬している言語でも翻訳が可能になります。
トランスレーションズ展

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2. 言語には私たちの歴史をひもとく手がかりがある。
機械学習モデルに新しい言語が導入されると、過去の民族の移動に関する事前知識がなくても、それらをある言語族にグループ化することができます。そこでは、日本語とトルコ語の構造的な類似性など、知的好奇心を刺激するような言語間の関連性が浮き彫りになります。
トランスレーションズ展

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3. 人類共通の価値観か、言語から浮かび上がってくる。
機械学習モデルでは、モデルがその意味をどのように推測したかという結果に基づいて、単語がグループ化されていきます。たとえば多くの言語内で「家族」ということばは、母親、家、そして生活ということばに関連付けられています。「愛」ということばは、父、友人、兄弟といったことばに関連付けられます。どれだけ異なる言語間であっても、固有の価値観や人間観を越えたつながりが見えてきました。
トランスレーションズ展

感覚の風景を豊かにする

作品:ポジティブ辞書編集
作家:ティム・ローマス+萩原俊矢
英題:Positive Lexicography

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心理学者のティム·ローマスは、世界中から感情にまつわる翻訳不可能なことばを収集し、 日々データベースを更新している。今回、本展のために、 1700語を超えるデータの中から200語あまりを展覧会ディレクターのドミニク·チェン が厳選し、邦訳も担当。 それぞれのことばを提示するビジュアライゼーションをデザイナーの萩原俊矢が制作した。翻訳できないことばを直訳したときに生じる不可思議さ、認識のズレを味わってみてほしい。
トランスレーションズ展

 世界各地の翻訳不可能な感情にまつわる言葉。
 めちゃくちゃ面白くて、映し出される画面をずっと見ていたかったし、全部写真に撮りたかった展示です。
 全部を見れたわけではないですが、ヒンディー語の「カル(昨日、もしくは明日)」という単語が気に入りました!
 この「ポジティブ辞書」はティム・ローマスのサイトで公開されています! Google翻訳とか使えばなんとか読めます……とはいえ”翻訳不能”なので意味は削がれてしまうでしょうけど……。

drtimlomas/lexicography
The Lomas Lexicography: An index of 'untranslatable' words r…

ことばの世界の多様さを知る

作品:翻訳できない世界のことば
作家:エラ・フランシス・サンダース
英題:Lost in Translation: An Illustrated Compendium of Untranslatable Words

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イラストレーターのエラ·フランシスサンダースが、世界中の翻訳できない表現を集め、イラストとともに紹介する本。日本でもベストセラーになっている本書から、この展示のために作家本人が選りすぐったイラストを展示。「世界にはこんな言い回しが存在するんだ!」という驚きと同時に、深い共感や親しみを感じる表現も少なくない。
トランスレーションズ展

 それぞれのお国柄や地域の特色が見えて面白かったです。
 こう…言葉で表現したいけど上手い単語が見つからない、そんなムズムズする様子を表現する単語がいっぱい。日常的なシーンで使う感覚的な言葉が飾られていて楽しかったです!
 これをサラッと会話に入れられたら面白いですけど、この言葉が持つ意味合いを互いに共有していないと通じないですからね……。

異なることばをひとつにまぜる

作品:言葉にならないもの−個人的な言語
作家:ペイイン・リン
英題:Unspeakableness – Personalized Language

21_21 DESIGN SIGHT「トランスレーションズ展」写真画像

複数の言語を母語とするポリグロット(多国語話者)の頭のなかでは、異なることばはどうやって共存しているのだろう? この作品では、トリリンガル(三ヶ国語話者) やクアドリンガル(四ヶ国語話者)の人が、自分の慣れ親しんだ複数の言語を織り混ぜながら、自分の物語を紡ぎ、語っている。 それぞれの言語で最も美しいと思えることばを散りばめて書かれたテキストは、何語にも似ていない語感で、まるでその人だけの言語のように聞こえる。 そして、どの言語でも言い表せない感情の数々が行間からこぼれ落ちていく。それはまた、新しいことばが生まれる瞬間につながっているのかもしれない。
トランスレーションズ展

 スピーカーが話す映像と、その隣でテキストが表示されます。
 正直、話している言葉はなかなか聞き取れなかったのですが、スクリプトの方は楽しく読みました。そもそも「何語なのか?」を考えたりとか、日本語の使い方を見たりとか。
 何人かの映像の中で、ひとり、数学者だか物理学者だったかの方がいて、「数学」を言語として使っているのが面白かったです!(数学は全銀河の共通言語ですからね → cf. 映画『コンタクト』や『メッセージ』など

伝えかたをさぐる

信号でことばを書く

作品:ハロー モールス
作家:タニア&ケン・フィンレイソン+Google Gboard team
英題:Hello Morse

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エンジニアのタニア·フィンレイソンは、モールス信号によって自身の「声」を見つけた。彼女の首の動きはモールス信号の「ツー」「トン」に翻訳され、コンピュータが文字を認識し、人工音声で読み上げられる。 モールス信号が強力なコミュニケーション手段になることを実感したタニアは、この技術をより多くの人々に提供したいと考えた。そこで彼女と夫のケンはGoogle Gboard teamと連携して、モールス信号が打てるキーボードを開発し、iPhoneとAndroidを使用する何億もの人々に無償で公開した。このプロジェクトによって、誰しもがスペルチェックや予測変換といった現代のキーボードに内蔵される機械学習の機能に、モールス信号対応のデバイスからアクセスすることができる。
トランスレーションズ展

 身体的に不自由な人がコミュニケーションをするツールは、手話を使ったり目線で文字盤を見たりと方法は色々とあるのだと思います。その点、モールス信号は2種類(・,ー)だけなので、入力や認識が楽なのかも。またモールス信号はアルファベットの使用頻度に基づいて作られている(高頻度の「E」は単音「・」のみ、「T」は長音「ー」のみ)ので、使用者の負担が減ると思います。
 展示の中で面白かったのは、モールス信号とアルファベットの対応を覚えるための図。日常的に使う単語と組み合わせていて良いデザインだなぁと。でも、個人的に好きなのはこっち
 すでにGoogle Gboardにはモールス信号入力の機能が追加されてますし、今回の展示をブラウザ上で体験できるツールも公開されています。


 あと、個人的に好きなのがGoogle日本語入力の開発チームが、4月1日エイプリルフールに企画したネタ動画とサイト。なかなか面白くて好きです!

Google 日本語入力モールスバージョン

Google 日本語入力 - モールスバージョン
Google 日本語入力はシンプルで高速な Windows と Mac OS X 用の日本語入力ソフトウェアです。インタ…

振動で音を聴く

作品:Ontenna(オンテナ)
作家:本多達也
英題:Ontenna

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Ontenna(オンテナ)は、音の聴こえない聴覚障がいの人たちでも音を感じられるデバイス。デザイナーの本多達也が大学時代から研究開発を始め、現在は富士通で販売されてい る。周囲の60dBから90dBの音を捕まえて、256段階の振動と光の強さに変換することで、音が聴こえない人でも音のもつ特徴を体感することができる。たとえばOntennaを付けて真夏の公園へ出かけてみた聴覚障がい者は、 生まれて初めてセミの鳴き声を「体験」したという。 音の聴こえない人だけでなく、健聴者の音の感じ方にも変化をもたらし、ともにコミュニケーションを切り開く可能性をもっている。
トランスレーションズ展

 音を振動と光に変換するインターフェイス。
 実際に手で触れて振動を体験できましたが、最初はちょっと驚くものの、あまり違和感なく目から入る風景と振動が結びつきます。慣れれば日常生活をサポートしてくれそうです。
 私みたいに健聴者は想像しかできないですけど、多分、音の情報は視覚外のこととか周囲の調子を知る上で大事なのだろうと思うので、こういうデバイスがあるだけで違うと思います。
 あと、これは障害者だけでなく、健聴者の使用も想定しているところが気に入りました。

メガネで文字を聴く

作品:FabBiotope
作家:島影圭佑
英題:FabBiotope

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父親がある日、文字が読めなくなる「失読症」になった島影圭佑は、代わりに文字を読み上げてくれるメガネOTON GLASSを仲間とともに発明した。メガネに取り付けられた小型カメラが写した文字を認識し、耳元でことばをささやいてくれる。現在は、当事者であり、つくり手である弱視者と、エンジニアが協働し、発明し続けるプロジェクトくFabBiotop〉に取り組んでいる。本展示の開始に合わせ ウェブ上で連載を始め、〈FabBiotope〉について紹介する とともに、プロジェクトへの参加者を募集している。
トランスレーションズ展

 《FabBiotope》は恐らく「Fab=モノづくり」、「Biotope=生物の集まり」の造語だと思います。”Fab”は楽しい工作や社会を良くする発明など前向きな意味が含まれていて、”Biotope”は動植物がつくる相互補完の小さな生態系や環境全体を指す言葉なので、このプロジェクトの内容にとても合っていると思いました。
 「音声読み上げ機能」という意味では、スマホでもスマートグラスでも十分に代用できます。ただこの《FabBiotope》が違うのは、製品の完成で終わるのではなく、様々な人が課題意識や目的を持ってプロジェクトを回していくという形になっているところなのだと思います。

こころの内側をひらく

作品:moyamoya room
作家:清水淳子+鈴木悠平
英題:moyamoya room

21_21 DESIGN SIGHT「トランスレーションズ展」写真画像

こころの中で抱える複雑な気持ち=モヤモヤは、どれだけことばを尽くしても伝えにくいもの。そもそも自分自身でもよくわかっていないこともある。そんな「こころの内側」を翻 訳するために、複雑な思考や対話のプロセスをかたちや色で描いていく「グラフィックレコーディング」の手法を用いたワークショップを本展のために実施した。そのプロセスは3つ。〈①こころのモヤモヤを語る → ②モヤモヤを視覚化する → ③視覚化されたモヤモヤを囲んで、みんなで対話する〉。あなたのこころにあるモヤモヤも、こんなかたちで誰かと対話してみてはどうだろう?
トランスレーションズ展

 心のモヤモヤを誰かに話して考えるWS。
 まずこの展示を見て思ったのは「図化能力がスゲ~」ということ。もちろん方法はこれ以外にも、マインドマップとかロジックツリーとかでも良いんでしょうけど、最初にこのクオリティを見せられると…(苦笑)
 モヤモヤを誰かに話すのはとても大事だと思います。たとえ解決しなくても、意味はあると思います。一緒に行った友達が「何かモヤモヤありますか?」と聞いてくれました。ただ、ちょっと考えたものの上手く答えられず……。
 そもそも何にモヤモヤしてるのか認識するのって難しいし、それを言葉で伝えるのも難しいですね。だからこそ雑談的に語りながら図示して広げて深めて探すのが大切なのでしょうね。

体でつたえる

うごきのことばをつくる

作品:ビジュアル・クレオール
作家:和田夏実+signed
英題:Visual Creole

21_21 DESIGN SIGHT「トランスレーションズ展」写真画像

日本手話*を主な言語とする人々と「世界と自分の関わり」を探っていく実験映像。頭のなかにあっても、ことばにできないイメージをどう伝えることができるのか? ここでの登場人物たちは、手や顔、身体を使ってイメージをつくり、空気をこねるように、ときにはそのものに憑依しながら表現を展開させていく。一人ひとり異なるイマジネーションの世界を、現実の空間内に残すように展開される視覚身体表現からは、音声言語とは異なる世界の広げ方が見えてくる。
*手話:日本語や英語のような主に音声を媒体とする言語(音声 言語)とは異なり、 手や顔、 上体の動きなどを媒体とする言語 (視覚言語)。音声言語と同様に国や地域によって文法が異なる。
トランスレーションズ展

 これはイマイチよく分からなかったものの、帰宅後にリリース*PDFを読んで分かりました。手話の手の動きに合わせてアニメーションを重ねることで視覚化するということ…ですよね?
 昨今流行りの拡張現実(AR)とか複合現実感(MR)があって良き。これなら他言語の人とジェスチャーで話すのも楽しくなりそう。

手で世界を描く

作品:…のイメージ
作家:和田夏実+筧 康明
英題:An image of…

21_21 DESIGN SIGHT「トランスレーションズ展」写真画像

雨が降る、雲がうまれる、飛行機が飛ぶ…といった表現をそれぞれ日本手話で表すと、目の前に自分の表したいものの造形が描かれていくインタラクティブな映像作品。手で雲のかたちをつくるとともにスクリーン上に雲のビジュアルが生まれ、手を動かすスピードや量に応じて雨が降り、手の動きに応じて飛行機が飛んでいく。 音の言語では名詞や動詞がそれぞれ分けて表されるが、視覚の言語では一体となって表現されていく。あなたが描く手の動きから、一体どんなイメージが生まれるだろうか。
トランスレーションズ展

 丸い円の中で手を動かすと、手話の内容にそったアニメーションがスクリーンに映されるというもの。
 ここで体験できたのは「雨・雲・飛行機」の3種類だけですが、もっと増えたら楽しいかも。もともと手話はジェスチャーよろしくイメージを手の動きで表しているものも多いので、こうして視覚的なイメージと合わせられると、覚えるのも簡単かもしれません。

スポーツを観戦/感戦/汗戦する

作品:見えないスポーツ図鑑
作家:伊藤亜紗(東京工業大学)+林 阿希子(NTTサービスエボリューション研究所)+渡邊淳司(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
英題:Sports Guide Without Sight

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本作品は当初、目の見えない人とともにスポーツを観戦する方法を探る研究から始まった。しかし、そもそもプレイ中のアスリートたちの内部で起きる身体感覚は目に見えない。そう実感した研究者たちは、アスリートの感覚や競技のエッセンスを誰でも追体験できるよう、異なる2つの「かんせん」方法を編み出した。ひとつは、試合の流れや力の駆け引きを リズムや身体感覚を通して翻訳する「感戦」。もうひとつは、その種目をプレイする選手の主観的感覚を身近な日用品を使って翻訳する「汗戦」。それらを通して見えてくるのは、目 で見る「観戦」とは違う、スポーツのまったく新しい姿だ。
トランスレーションズ展

 「スポーツの翻訳」、ひいては「感覚の翻訳」って面白い。
 でも確かに、体験してみないと伝わらないよな、と思います。アスリートと一般人の感覚は違うでしょう。また例えば、パラスポーツの「ブラインドサッカー」とか音と声がメインのスポーツの感覚って説明されても分からないですもん。
 その上で、大掛かりな機械とかシステムとかを準備するのではなく、日用品など手軽なものでその感覚を翻訳する方法を探っているところがとても良いと思いました(例えば、アルファベットの木片を使ってフェンシングを翻訳したりとか)。
 概要はサイトで公開されています。

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本サイトは、東京工業大学とNTTが共同で行なっている、スポーツを観戦する新しい方法をさぐる研究の成果を公開するためのサイ…
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目の見えない人のスポーツ観戦といえば、 ことばによる実況中継が主流です。それはそれで有効なのですが、ことばを使うとどうしても説明的になってしまったり、 タイミングが遅れたり、一体感がなかったりする、という弱点がありました。 そこで私たちは、 ことばを使わないで、リズムや身体感覚で競技の様子を伝える方法を考えました。ヒントになったのは、視覚障がい者向けの長距離走の方法です。目の見えない人が走るときは、一本のロープを輪にして、それを伴走者と共有しながら走ります。このロープ、たかがロープとあなどることなかれ。 「ここは頑張るぞ」「ちょい注意」など、ことばにする以前の相手の心の動きが、ロープのテンションを通じてダイレクトに伝わってくるのです。このロープのようなものを使えば、かなりの情報伝達ができる。そう確信しました。たとえば柔道では、「手ぬぐい」を使って翻訳を行いました。晴眼者二人が手ぬぐいの両端を持ち、目の見えない人が真ん中を片手で握ります。晴眼者は、それぞれ翻訳する選手の動きに合わせて、手ぬぐいを引っ張ったり、上下させたり、ねじったりします。もちろん細かい技の種類は伝わりませんが、目の見えない人は体ごと上下左右に引っ張られるので、カのせめぎあいや駆け引きをダイレクトに感じることができます。手ぬぐいの質感やハリが、柔道の道着に近いのも功を奏しました。 体験した目の見えない人がまっさきに口にしたのは、「緊張感」ということば。方法はシンプル·ローテクですが、 触覚的な「感戦」だからこそ、体ごと競技に巻き込まれ たかのような緊張感が生まれます。
トランスレーションズ展

文化がまざる

料理から翻訳を考える

作品:Translation Zone
作家:永田康祐
英題:Translation Zone

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日本で揃う食材を使って、外国の料理をつくってみる。 すると、複雑な文化のねじれが生じてくる。料理という行為を科学的に突きつめてみれば、日本のおでんとフランスのポトフ は同じものとして定義できる。しかし、それでも私たちにとっておでんとポトフは同じではない。本作品では「料理の翻訳」にまつわる考察に始まり、情報の伝達によってあいまいな意味や感情がこぼれ落ちていくことに焦点を当てる。そのとき、文化の中にたゆたう「翻訳しきれないもの」の姿が見えてくるだろう。
トランスレーションズ展

 「文化を翻訳する」って難しいと思います。
 日本食なら出汁とか旨味とか調理方法とか火加減とか、単純に言葉での翻訳では難しいものですね。
 ここで上映されていた動画は、展覧会開催中はVimeoでも閲覧できるようです。(公開範囲がプライベート設定になっていたので、リンク載せない方が良いのかな…?)

昔とすごす

縄文オープンソースプロジェクト

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縄文の魅力を現代に伝える縄文文化発信サポーターズが、2018年に発足した「縄文オープンソースプロジェクト」。
このプロジェクトは、火焔土器や土偶の3Dモデルをパブリックドメインでウェブ上に公開しました。
以来、SNSやブログで多くの人が、縄文土器を現代の様々な用途に「翻訳」してきました。
ここでは、アーティストとデザイナーによる翻訳作品を4つ紹介します。
トランスレーションズ展

縄文オープンソースプロジェクト
縄文文化財のオープンソース化し、誰でも自由に文化財の造形を活用することができる環境を生み出すためのプロジェクトをスタート…
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炎のかたちが氷になる

作品:火焔氷器
作家:Takram
英題:Flame Iceware

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国際的に活躍するデザイン・イノベーションファーム Takramの緒方毒人と成田達哉による氷の器。「作品をつくるときには、見る人の視点を変えることを重視している」と語る彼らは、火焔土器を「燃えさかる氷」に翻訳してしまった。コップとしてドリンクを注いでも良し、器として料理を盛り付けても良し。もしくはファッショナブルな保冷剤として贅沢に使うのもアリかもしれない。
トランスレーションズ展

 火焔型土器はそれだけでワクワクするものですが、それを氷属性にして《火焔氷器》としてしまうところ、厨二心をくすぐります(笑) あと、重々しいボックスに保存されているところがオーパーツ感あるというか、SF感あって好きです(笑)

古代と未来をむすぶ

作品:祝詞ロボット・縄文編
作家:市原えつこ
英題:Ritual Prayer Robot (Jomon ver.)

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アーティストの市原えつこは、3Dプリントされた火焔土器を見て、「ロボットが祝詞を上げながら礼拝の踊りを捧げる」という儀式を構築。もともとデジタルシャーマン・プロジェクト〉という四十九日をテーマにした作品で「ロボットのイタコ化」を手掛けていた市原は、縄文人たちが火焔土器に抱いていたかもしれない信仰心を受け継ぎながらも、誰も見たことのない未来の風景を幻視した。ロボットの読み上げる祝詞は能楽師・安田 登の音声を収録。
トランスレーションズ展

 市原えつこさんの作品は《デジタルシャーマン》や《サーバー神輿》など色々なところで拝見していて、ここでもまた新しい「日本古来の風習 ✕ テクノロジー」の不思議な世界観を楽しめました。
 ただ、「ロボットが土器を拝む」というシュールな光景は訳が分からなすぎて面白かったです(笑) なんか『猿の惑星2』とか人類滅亡後の世界観があって、嫌いじゃないです(笑)

縄文スタイルを生活に

作品:縄文のある暮らし
作家:長岡造形大学
英題:Life with Jomon

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オリジナルの火焔土器は新潟県長岡市馬高遺跡で発掘された。そこから車で15分の距離に位置する長岡造形大学の、鋳金、鍛金、ランドスケープデザイン、プロダクトデザイン、グラフィックデザインを専門とする学生と教員たちが、火焔土器に加えて3Dモデルが公開された土偶の女神像「ミス馬高」 (重要文化財)を、さまざまな現代の生活プロダクトへと翻訳した。 あなたなら、 どの縄文グッズを日常で使うだろうか。
トランスレーションズ展

 このプロジェクトはとても気に入りました。「縄文芸術を現代の生活に入れる」というのが面白いし、それも”翻訳”になるんだなぁ~って。
 土器をモチーフにした製品はどれも良いですね。ただ、洗ったり掃除したりと手入れが大変そうなイメージが湧きました(笑) なので、展示してありましたが、植木鉢とかは相性がとても良いかもしれません。

土器が巨大建築に

作品:東京オリンピック選手村 −縄文2020
作家:noiz
英題:Tokyo Olympic Village – Jomon 2020

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コンピュータアルゴリズムを駆使した建築設計で知られるnoizは、火焔土器を東京の中心にそびえ立つ巨大建築物に翻訳。「縄文のDNAが残っていそうな土地から『シン・ゴジラ』的にこんなものが突然生えてきたら」という想像から生まれたアイデアだという。土器の3Dモデルに複数回、数学的な処理を施すことで、まるでサンゴ礁のような「生物っぽさ」も生じている。
トランスレーションズ展

 これ、めちゃくちゃ好きでした(笑)
 イメージ画像として掲げられていた「東京タワーと高層ビル群と縄文土器」のビジュアルがカオスすぎて大好きです(笑) 土色に緑化というのも良いし、東京の街にこんなの出現したら最高だろうな~と。
 しかも、コンセプト文にもあるように、有機的というか生物的というか、妙な曲線とかがあって、それがまた素晴らしすぎます!

モノとのあいだ

コミュニケーションの距離を見る

作品:観賞から逃れる
作家:やんツー
英題:Couldn’t seen well

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絵画、彫刻(仏像)、映像(ディスプレイ)の3つの作品が、タイヤやローラーなど動力をもつ既製品と組み合わされ、配置されている。鑑賞者が作品に近づくと、3つの作品は鑑賞者との距離を測り、それぞれの方法で距離をとろうとする。ここでは現代の「社会的な距離 (ソーシャル・ディスタンス)」を可視化するとともに、作品自体が「鑑賞」を拒否することで、普段の私たちは何を「見て(鑑賞して)」いるかを改めて考えさせられる作品でもある。
トランスレーションズ展

 「見られてなんぼ」の作品が自分で逃げ回ったり動くのは、鑑賞を拒否されているようだし、でもちょっと不器用な動きが滑稽だったりしました(笑)
 ただ、大きく動きが付いたことで、逆に目を引くというか、どんな動きをするのか、どのこセンサーで感知しているのか、とか色々と考えてしまう面もありました。

異種とむきあう

植物の声なき声を聴く

作品:密やかな言語の研究所:読唇術
作家:シュペラ・ピートリッチ
英題:Institute for Inconspicuous Languages: Reading Lips

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植物の葉っぱにも唇が付いている? 葉には気孔と呼ばれる無数の小さな穴が空いていて、光合成や呼吸のために使われている。この気孔のかたちがまるで動物の唇のように見える ことから、ここでは葉っぱの気孔の開閉を読唇術や人工知能を用いて「読み取り」、植物たちが何を言っているのかを解釈しようと試みる。人間の持つ特徴をヒントに、声なき植物の「言語」を確立しようとする作品だ。
トランスレーションズ展

 着眼点がおかしい(笑) 私だって理科の授業で「植物の気孔は口みたい」と顕微鏡で見てスケッチした記憶があります。が、それを読み解こうとする試みが面白いです。しかもちゃんと見ると、ただ開閉しているだけでなく、喋っているように見えてくるから不思議です(半開きとかすぼめたりとか)。
 冷静に考えれば、音を発する人間の口の動きと、そうでない気孔とでは役割も動きも違うわけですけど、ここまで真剣にされると説得力があるというか…(笑)

見えない生き物と話す

作品:NukaBot v3.0
作家:Ferment Media Research
英題:NukaBot v3.0

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日本の代表的な発酵食品のひとつである「ぬか床」の中には100種類以上の微生物がひしめいている。ぬか床をかき混ぜて野菜を漬ける。それは人の手に宿った菌と微生物が混ざり合い、 乳酸菌や酵母、そのほかの菌たちが野菜の糖質を代謝して、豊かな味と風味をつくりだす行為だ。さまざまなセンサーが取り付けられたヌカボットは、この菌の発酵状態を日々計算して私たちに伝えてくれる「翻訳装置」である。「元気?」と尋ねれば、「そろそろかき混ぜたら?」と答えるヌカボット。目には見えない微生物たちの声に、耳をすませてみよう。
トランスレーションズ展

 「ぬか床の様子を教えてくれる」ロボット。
 まず開口一番にでたツッコミは「桶いっぱいのぬか床を使ってる現代人は少ないでしょ笑」というとこ。すごくニッチな分野ですよね(笑) もう”お婆さんの勘”とか必要ないんですね。
 実際に話しかけて体験することができて、桶が喋ってました(笑)
 ぬか床を使う現代人は少ないですけど、菌の状況を見られるなら、酒蔵とか納豆作りとか発酵食品の製造でも活躍できそうだと思いました。

異なる動物と愛し合う

作品:Human×Shark
作家:長谷川愛
英題:Human×Shark

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サメとヒトが愛し合うことは可能なのか? もし可能な日がやってくるとして、異なる生物に対して自身をアピールするには異種の境界を超えた「翻訳」が必要となる。そのヒントとして「匂い」に着目した長谷川愛は、化学物質を調合した「サメを誘惑する香水」の可能性をリサーチしている。ダイビングスーツに香水をつけて水中に潜ると、まずは香水内 から旨味成分となる「おいしい匂い」がサメを引き寄せ、近付いてきたらオスを性的に惹起する化学物質を香らせる。ヒト同士でも、異なるDNAをもつ相手の体臭に惹かれる習性があるといわれるが、私たちはすでに「匂い」 を翻訳してコミュニケーションしているのかもしれない。
トランスレーションズ展

 長谷川愛さんの作品。バイオアートで有名な方で、他で作品を見たこともあり、好きな作家さんです。「人間の女性がイルカを産む」という衝撃的な作品が代表作の一つで、いつか見たいと思っていました。そしたら、今回「ヒトとサメ」を扱った作品を見れて最高に嬉しかったです。
 とても細かく設定・設計された作品で、化学物質や生態の話などがきちんと説明されています。実際に香りを嗅ぐこともできて、人間側のものはとても良い匂いでした。
 机上の空論ではなく、とても説得力をもった作品や試作品である点が本当にすごいと思います。

展示会場

説明:トラNsれーショNs展 会場計画
作家:ノイズ

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三角形の柱がランダムに立てられた展覧会場。「翻訳」という多様なコミュニケーションが集まるこの森は、鑑賞者が歩くたびに姿を変えていく。 三角柱の各面には淡い色相環にそ ってそれぞれ色があてられ、自由に行ったり来たりしてみると、見る角度によって会場全体が異なるトーンに染まっていく。 動くことで空間とのあいだに能動的な対話が生まれ、文化や社会といった視点の違いによる変化を空間的に「翻訳」 した試み。
トランスレーションズ展

 とても良い会場でした。
 分類やテーマが設定されているものの、会場内を区切るのではなく、ゆる~く分けていてました。自由に見回ってもよいし、手にした地図と作品番号を頼りに順番を辿っても良いし。なんとな~く別々になっていて、隣の作品とかが目に入るから、次が気になっちゃったりもしましたけど(笑)


おわりに


 ということで、『トランスレーションズ展』の感想でした。

 まぁまぁ色々と書きましたが、とにかく面白いプロダクトとか刺激的なアイデアとかがたくさんあって楽しい展覧会でした! たぶん「こんなのがあるんだ!!」と知ったり思うだけでも、それはとても良い影響があると思います。新しい視点を得たり、気づかなかった課題を見出したり。

 あとは、友達と一緒にそれぞれ観つつ、時々喋って意見交換したのは、意味のあることだったなぁと。普段ひとりで観ることが多いので、テーマによってはこういうのも大切ですね。なんせ「他者とのコミュニケーション」が主題の展覧会ですもん(笑)




 それから、展示されていた『翻訳できない世界のことば』と『見えないスポーツ図鑑』は図書館の蔵書にあったので借りてみました。
 どちらも面白かったです! 『翻訳できない~』は展示を見ていてちょっと前に話題になっていたのを思い出しました。当時は本屋でパラッと読んだのかニュースで見たのかうろ覚えでしたけど。『スポーツ図鑑』の方は流し読みになってしまいましたが、課題に対して解決策を考えるところとかアナログなところとか、面白かったです。





 感想部分でも触れましたが、SFは良いですよ(笑)

 ケン・リュウの短編集『紙の動物』はSF色が薄く、むしろヒューマンドラマとかドキュメンタリー色が強いのでSFが苦手な人でも読みやすいです。あと、中国や日本を舞台にしたり「漢字」を題材にした作品が多いので親近感が湧くかもしれません。ぜひ!

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 ファーストコンタクト系のSF作品は本当に色々とありますからね。どれもとて面白いので、こちらも興味あればぜひ!

読んでくださり、
ありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!

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