PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System
Case.1『罪と罰』
Case.2『First Guardian』
Case.3『恩讐の彼方に__』
【一言】
『PSYCHO-PASS』というコンテンツ。
劇場版三部作は、ディストピア作品に位置づけられるシリーズを総覧し、世界観を拡張し、社会問題を提起する素晴らしい傑作群に!
見事に描き出された物語の深部と、世界の細部、そして登場キャラクターの新しい顔がとても魅力的!
【Twitter140文字感想】
【サイコパス Sinners of the System】
心理状態を数値化し管理する社会。
舞台は100年後の現在・過去・未来。『PP』のミッシングリンクを補う。
PPSS3部作は、より深くより濃く登場人物と世界観の“拡張”する傑作群に!鋭い切れ味の物語は、“今”の社会問題を寓話的に風刺し、観客に問を提起する! pic.twitter.com/LcNmi7uIdD
— ArA-1 (@1_ARA_1) 2019年3月10日
Introduction&Stuff
人間の心理状態を数値化し管理する近未来。
犯罪に関する数値〈犯罪係数〉を測定する銃〈ドミネーター〉を持つ刑事たちは、犯罪を犯す前の〈潜在犯〉を追う。2012年にスタートしたオリジナルTVアニメーション作品『PSYCHO-PASS サイコパス』…[中略]…のシリーズと劇場版に参加したスタッフが再結集。塩谷直義が監督を務め、アニメーション制作はProduction I.Gが担当する。Case.1の脚本は、『PSYCHO-PASS サイコパス』ノベライズ「PSYCHO-PASS ASYLUM/GENESIS」を執筆した吉上亮が担当。Case.2とCase.3の脚本を、TVアニメ第一期、劇場版の脚本を手掛けた深見真が担うことになった。
映画公式サイト
予告動画
監督:塩谷直義
制作:production I.G
脚本:吉上亮/深見真
主題歌:凛として時雨/EGOIST
キャスト:花澤香菜, 関智一 and more.
日本公開:2019年1, 2, 3月
配給:東宝映像事業部
公式サイト
映画の感想と概観
2018年3月の「ノイタミナ発表会」で劇場版三部作の制作発表が行われた本作。2019年1月から1ヶ月毎に公開されました。
Next Project 告知映像
2月には主役である征陸智己さんの声を演じられた、有本欽隆さんの訃報が報じられたりする中、全3部の公開が終了。
また、TVシリーズ第3期の制作発表もありました!
シリーズ最新作、TVアニメ第三期『PSYCHO-PASS サイコパス 3』制作決定!!「新任監視官」慎導灼(しんどうあらた)/CV梶裕貴&炯(けい)・ミハイル・イグナトフ/CV中村悠一を描いたキャラクター原案・天野明先生描き下ろしビジュアルも公開! https://t.co/KyIq1ImKGf #pp_anime pic.twitter.com/XhpzxbGMNf
— PSYCHO-PASSサイコパス 公式 (@psychopass_tv) 2019年3月8日
『PSYCHO-PASS』作品を繋ぐ物語
『サイコパスSS』はシリーズ作品を繋ぐ物語として素晴らしかったです!
【現在】・【過去】・【未来】を舞台にした物語が描かれます。
なお、物語の主人公である常守朱を基準に、その時間軸を決めているという点は確実だと思います。
その鍵となるのは、「登場人物」と「世界観」です。
公式の紹介では以下のようにあります。
これまで語られていなかった『PSYCHO-PASS サイコパス』のミッシングリンクがついに紐解かれる。
まさにその通り。
『PSYCHO-PASS』という濃密な世界の中で、「ミッシングリンク=欠けた部分」を埋めながら、その舞台をより広げ、設定を深め、世界を拡張し、物語を濃くするように3作が見事に作用していました!
【現在】:「Case.1」
舞台は2117年、主人公は霜月美佳と宜野座伸元。
描かれる登場人物の新しい顔。
TVシリーズや劇場版では全て常守朱が主人公でしたが、本作では監視官たる霜月美佳の活躍が展開されます。《シビュラ》という存在を肯定し、《朱》という存在に対抗心を燃やす彼女の活躍劇は本当に格好いいです!
そして、拡張される世界観。
舞台が雪に閉ざされた青森で、メインの東京から離れます。さらに、「潜在犯厚生施設」の状況がより深く掘り下げられます。
【過去】:「Case.2」
舞台は2112年、主人公は須郷徹平と征陸智己。
登場人物について。
第2期『PP2』で登場し、公安一係に配属された須郷徹平。元軍人の彼が如何にして潜在犯になり、執行官となったのか、そのバックグラウンドが丁寧に描かれます。さらに、征陸のとっつぁんの刑事としての活躍が良かったです!
世界観の拡張。
須郷が国防軍の軍人なため、鎖国状態の日本を取り巻く世界と軍事状況が如実に顕になります。『劇場版』で描かれたSEAUnより以前の姿がわかり、非常に良かったです。
【未来】:「Case.3」
舞台は2116年に発生したSEAUn事件の後、いつか。
主人公は狡噛慎也。
これまで語られることの無かった彼の「心境」と「価値観」が、狡噛自身の口から語らる言葉と通して描かれます。(知りたかったような、知りたくなかったような……)
世界観の拡張。
SEAUnと同じく今回の舞台も海外。南アジアのチベット=ヒマラヤ同盟王国が舞台で、日本とはまったく異なる対外情勢を窺うことができます!
これまでのシリーズでは日本の中での完結していた物語が、海外へと拡張されていき、さらに日本国内の状況も過去と現在を通して描かれます。
精巧に組み立てられた『PSYCHO-PASS』の世界だからこそ、こうして「繋が」り「拡張」されることにこそ意味があるのだと感じました!
三作を通じて描き出す2019年現代社会
『PSYCHO-PASS』作品が奥深く、そして面白い点は2012年の制作当時から現在までの日本社会、さらには世界情勢を如実に反映させた上で、風刺や批判を行っている点です。
「ディストピア」作品としての使命とも言うべきか、フィクションという世界の中で、ある種の思考実験のような展開がなされる部分が本当に素晴らしいと思います。
そして、それはもちろん『サイコパスSS』でも見事に描き出され、我々観客に問題提起をぶつけてきます。
以下、ネタバレは避けつつも、その内容の道程だけ書いていきます。
【Case.1】
物語の舞台は、青森の潜在犯厚生施設。
東日本大震災と福島第一原発事故という、日本を襲った未曾有の天災と人災を経てきた今だからこそ描ける問題提起が、寓話的に描かれます。
公安刑事らの「正義の追求」と、それに反するような「必要悪」の存在。そして、必要悪を「不都合な真実」として隠す社会。
登場人物たちの間でも見解が異なる意見を描くことで、賛成/反対という二項対立を物語内で創り上げ、最終的に観客へと問題提起をしてました。
【Case.2】
舞台となるのは、沖縄にある国防軍の基地。
映画公開が2019年2月16日で、同月末には名護市辺野古への基地移転に関する県民投票が行われるという状況でした。ある意味、とてもタイムリーすぎる話題で、連想しない方が無理です。
約100年後にも基地が残ってるばかりか、国防軍が創設されている。そんな状況は物語の世界の中だけであってほしいものです。
【Case.3】
描かれるのは、南アジアの山岳地帯。
チベット=ヒマラヤ同盟王国という架空の国家が舞台ですが、この地域は歴史的に様々な問題が噴出している地域です。
少し考えただけでも、少数民族や武装ゲリラによる武力衝突、「黄金の三角地帯」とも呼ばれる麻薬の一大産地、そして抜け出せない貧困問題、さらには中国政府に代表される民族弾圧……etc. と問題は様々に挙げられます。
以上で挙げたのはあくまで「現在の問題」ですが、『Case.3』では「平和の形」としてもちろんしっかりと描かれます。
「社会を思考する」
この題材で描き、問題提起するような内容として、本当に素晴らしい完成度を誇る物語でした。脚本を手掛けられた吉上亮さんと深見真さんはとにかく凄いです!
シビュラシステムに関わる物語
『PSYCHO-PASS サイコパス』。
人間の心理状態が数値化された近未来を舞台にした本作で、厚生省が運用し、人々を監視し管理する「シビュラシステム」。
”全能者”の権現たるシビュラシステムに対し、シリーズの物語を通して描かれるのは、その「正義の在り処」と「欠陥」でした。
「PSYCHO‐PASS サイコパス」第2弾PV
今回制作された劇場版三作も、短い物語ながら、このシビュラシステムに関わる内容を見事に描き入れていました!
上で書いた内容と同じように、ここでもシビュラに纏わる”世界観”が大きく拡張されているように感じました。
物語の最も重要な部分なのでネタバレを避けるためにここでは詳しく書きません(本ブログの下で書きます)が、軽く触れておきます。
大きな部分としては、シビュラシステムの権能です。
これまでもTVシリーズや劇場版を通して様々な権限が描かれ、また禾生壌宗として現実世界に直接指揮を取っている様子も窺えました。
今回の三作では、「シビュラの権限はどこまで?」という範囲を今まで以上に細かく描いたり、拡張していました。
こうして客観的に観られると、やはり恐ろしいと感じてしまいますね。
劇場版3部作「サイコパスSS」
劇場版三部作として制作された「サイコパスSS」の各作品のまとめ感想です。「現在」・「過去」・「未来」という時間で描かれる3作についての感想です。
3つの物語の舞台は約100年後の日本とアジア――その現在、過去、未来に起きる事件が語られる。事件に立ち向かうのは、規定値を超えた〈犯罪係数〉を計測された〈執行官〉たちと〈シビュラシステム〉が適性を見出したエリート刑事〈監視官〉たち。犯罪を未然に防ぐために必要なものは、猟犬の本能か、狩人の知性か。事件は思わぬ事実を明らかにし、世界のあり方を映し出す。これまで語られていなかった『PSYCHO-PASS サイコパス』のミッシングリンクがついに紐解かれる。
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全3作共通の主題歌は中野雅之さんのTV版のRemix Ver.
オープニングは凛として時雨の「abnormalize 」です。
凛として時雨「abnormalize 」
【現在】Case.1「罪と罰」
2117年冬、公安局ビルに一台の暴走車両が突入する事件が発生。その運転手は青森にある潜在犯隔離施設〈サンクチュアリ〉の心理カウンセラーだった。監視官の霜月美佳は、執行官・宜野座伸元らとともに青森へ向かう。
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予告
社会を斬り、問題提起と糾弾をする物語!
『PSYCHO-PASS』という作品の本質であるでしょうが、本作でも抜群にキレキレの切れ味でした!
本作で描かれるテーマは《必要悪》の存在。
公安捜査官らの信条である「正義の追求」と、
“悪”を必要とする社会の不都合な真実。
特に本作は、【今の日本社会】を深く抉り取ります。
主人公、霜月監視官が超格好良い!
決め台詞最高だし、可愛さも垣間見える!
彼女が抱く正義の形がシンプルに描かれます。
すごく真っ直ぐな彼女だからこそ、その言動に対する共感とか応援の感情が湧き上がってきました。
TVアニメ版で描かれた“背景”と“立ち位置”を上手く物語に練り込んだ内容構成で感激!
一方で、宜野座執行官は相変わらずクールでイケメン!
TVアニメ版から何倍にもイケメンになった彼は、常に落ち着きクールでスマート。
でも、いざという時には誰よりも熱く男らしくなる「王道な刑事」のようで格好良い!
アクションも、誰より激しく!…痛々しく。
アクションは本当に凄かった!
洋画さながらの絶体絶命なスタントを幾重にも見せたり、観客が息飲むようなピンチを演出したり。泥臭い殴り合いもあったりと、見せ場盛り沢山!
そのアクションを描く映像は滑らかで丁寧で、迫力ある構図と痛みが伝わる音響、そして声の演技が本当に凄い!
その他、『PSYCHO-PASS』的要素は何もかも健在であり、レベルアップしています!
主人公ら登場人物が放つ「台詞」には並々ならぬパワーが籠もってるし、その格好良さはどんな名言にも負けない!
特徴的で印象的な「悪」たる敵キャラの存在も上手く練られているし、世界観設定には一部の隙もない!
エンディング:EGOIST「Fallen short ver.」
詳しい感想は以下から ↓
【過去】Case.2「First Guardian」
常守朱が公安局刑事課一係に配属される前の2112年夏、沖縄。
国防軍に所属する須郷徹平は、優秀なパイロットとして軍事作戦に参加。
三ヶ月後、無人の武装ドローンが東京・国防省を攻撃。
事件調査のため、国防軍基地を訪れた刑事課一係執行官・征陸智己は事件の真相に迫る。
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予告
主役である征陸智己さんの声を演じられた、有本欽隆さんが先日2月1日に亡くなられました。
心から、お悔やみ申し上げます。
とにかく、「とっつぁん」こと征陸執行官の正義と信念に裏打ちされた刑事魂が静かに熱くて格好良かったです!
自身の過去と現在にケジメを付けて、しっかり職務に向き合い、人生を掛けている姿が本当に渋くて強くて大好きです!
もう一人の主役、須郷徹平。
正直、TVシリーズでは必然的に、物語の展開的な流れに乗るように公安刑事課一係に配属されてて、でも存在感はある凄いキャラという認識でした。
今回、須郷さんのバックグラウンドが具体的に語られるため、彼のキャラクターにグッと深みが増しました!
これまで積み上げられてきた『PSYCHO-PASS』の作品世界観を存分に活用した作品に仕上がっていました!
従来通り、現代日本及び世界を非難し風刺するような設定や台詞が何度も登場し、作品の“強さ”を改めて実感しました。まさにタイムリーな話題!! そして、物語それ自体も、時代設定が舞台がTVアニメ1期を跨ぐという事で、ファンに嬉しい内容でした!
軍隊の描写が本当に凄かった!
遠隔操作ドローンでの戦闘や、隊員同士の交信、さらには任務外での過ごし方などがリアル。 まるで、軍隊系の洋画を観ているよう!
何だか、『劇場版 PSYCHO-PASS』みたい。
それもそのはず、脚本家が本作SSも劇場版も共に「深見真」さんだからでしょう。
今回も、アクションは圧倒的!
軍パートでは、爆撃や銃撃戦などの派手な戦争行為が爆音と共に描写され、近未来兵器と旧型銃器との戦闘が激しくて凄い!
「刑事」としてのアクションも!
“猟犬”たる執行官による追跡劇やファイトシーンは確固たる意志が揺らいでて格好良い!
エンディング:EGOIST「All Alone With You 」
詳しい感想は以下から ↓
【未来】Case.3「恩讐の彼方に__」
2116年に起きた東南アジア連合・SEAUnでの事件後、狡噛慎也は放浪の旅を続けていた。
南アジアの小国で、テンジンと名乗るひとりの少女がいた。
かたき討ちのために戦い方を学びたいと狡噛に懇願するテンジン。
出口のない世界の縁辺で、復讐を望む少女と復讐を終えた男が見届ける、この世界の様相とは…。
映画公式サイト
予告
前2作は60分だった上映時間がCase.3は68分に!
そして、期待を遥かに上回る素晴らしい物語に仕上がっており、これまでの『サイコパス』未視聴者でも没入出来る物語であり、素晴らしい傑作でした!
まず何よりも最初に目を奪われたのは、「美しさ」でした。
シビュラが管理運営する日本の灰色で無機質な世界ではなく、アジア山岳地帯を舞台にした本作では、自然やタルチョの美しさ、そしてそこで生きる人間たちの姿もまた、とても美しく感じました。
「狡噛慎也」という人間そのものを描き出す物語でした。
TVシリーズで復讐を果たし、劇場版でも主役であり続けた彼が、彼自身の口で「復讐」や「殺人」、「過去」や「社会」に対する価値観と考えを語る物語。
その部分が描かれたのが嬉しかった半面、いち視聴者としては”踏み込んでほしくない領域”だったとも感じました。
社会を貫く『PSYCHO-PASS』の物語。
アジアの奥地、「チベット=ヒマラヤ同盟王国」が舞台の『Case.3』でもその点は変わりません。
本作が問いかけるのは、「平和の形」。
「日本以外は紛争地帯」という過酷な世界観の中で展開される物語が問いかける「平和の形」は、その”真実”を考える切っ掛けになるのではないでしょうか。
新しい登場人物、テンジン。
他のアニメの日本人ヒロインに負けないほど魅力的な彼女が本当に可愛かったです!
そんな彼女もまた、過酷な世界を生きる一人の人間であって、物語を回す登場人物の一人。真っ直ぐな彼女の瞳が見つめる先に何が見えるのか───彼女が大好きになりました!
エンディング:EGOIST「名前のない怪物 」
詳しい感想は以下から ↓
以降、作品本編のネタバレあり
※目次<(▼クッリックで移動)/p>
社会風刺の内容と衝撃
詳しいネタバレ感想は各作品の記事で書いたので、ここでは上で触れた「社会風刺」の部分について、少し書いておきます。
私が『PSYCHO-PASS』というコンテンツが好きな理由でもあり、作品が素晴らしい理由でもあると思うので!
【Case.1 】
東日本大震災と福島原発事故を受けた日本だからこそ、衝撃的な内容でした。正直なはなし、「ここまであからさまに描くものなのか…..」と驚嘆しました。
潜在犯厚生施設《サンクチュアリ》で高濃度の放射性物質を処理するために駆り出された潜在犯。しかし彼らにその危険性が伝えられることはなく、管理者が放つのは「使えなくなっても、代わりはいくらでもいる」という一言。
まさに、福島第一原発事故の惨状。
原発の作業員らが、その危険性を説明されずに契約していたり、被爆してても隠蔽されたというような話は当時ニュースで大きく報道されました。
そして黒幕として登場する、エネルギー分野の族議員。
現実世界でも、エネルギー分野の族議員や官僚らが原発推進を進め、基準値や規制に関して電力会社と合弁したという事実は有名です。彼らにとっては自身の地位と利益を守るための方法でしかなかったわけです。
【Case.2】
やはり、時期的な部分がより印象を強めました。
県民投票が行われるまさに直前に公開された本作の中で描かれる日本では、堂々と日本政府が「キャンプ・シュワブ」を国防軍基地にして、対外戦争最前線基地になっているわけです。
もう一点、軍事ドローン問題がありました。
劇中で須郷が投下した救援物資が実際は化学兵器だったという衝撃的な事実が明かされます。「自分が何をしているのか分からない」という遠隔操作ならではの怖さが描かれていました。
【Case.3】
南アジアを地域に関する諸問題は上述した通り。
やはり本作でも武装勢力による武力衝突がメインで描かれていました。生活や命が脅かされる状況において、テンジンの「偽物の平和でも争うより価値がある」という台詞が印象的でした。
それから、傭兵について。
「戦争の民営化」が大きな問題と糾弾される現代に反し、崩壊した国連の代わりに傭兵が平和を作ろうとするのは、なんとも皮肉な話だと思います。
その他、「マッチポンプ式」とされる自作自演が本作でも描かれますが、歴史的な例として多い浮かぶのは、ベトナム戦争の引き金となったトンキン湾事件が米国の自演だったという例でしょうか。
フレデリカさんが外務省の仕事とした「日本棄民」の「棄民」とは、端的に言えば「祖国に切り捨てられた国民」という内容ですね。
シビュラシステムを解く物語
「解く」とか項立てしましたが、正確に言えば「こんなこともやっていた」という、やはり「拡張」に近い内容だったでしょうか。
【Case.1 】
主人公が霜月美佳。
正体を知った上で、「シビュラシステムを愛している」という戦慄の台詞が鮮明に脳裏に焼き付いている彼女だったからこそ、この物語は描けたといえますね。
《サンクチュアリ》で潜在犯を放射性廃棄物の処理に働かせていたエネルギー分野の族議員「烏間明」。彼もまたシビュラシステムの傀儡、ただの容器に他ならなかったという真実が最後に明かされます。
途中で霜月監視官は気づいていたようですが、やはり「審判を下すのは全てシビュラシステム」という確信めいた発言とかが大きな意味を持ちますよね。
「シビュラシステムはここまでしている」
これまでは公安局長だけかと思っていた”シビュラの傀儡”が、日本社会のあらゆる場所に伸びていると実感した物語でした。
【Case.2】
ここでのシビュラシステムは、「戦争を指揮する」存在として描かれます。
日本政府の全権を握っているとさえ思えるシビュラは戦争の仕方すら決定し、犯罪を裁くはずの存在っであるシビュラが、戦争を左右するわけです。
須郷の親友が放った「シビュラが認めた人殺し」という言葉が頭から離れません。
それから、青柳監視官と征陸執行官ら公安による強制捜査。
軍事基地の電源を一時的にダウンさせてまで犯人を暴くという姿勢は、「徹底的に不要な存在を排する」というシビュラの理念そのもの。
軍高官にドミネーターを向けるシーンなどはまさに象徴的でした!
【Case.3】
物語の中心部分には日本やシビュラシステムの存在は登場しないものの、外務省の花城フレデリカさんを通して語られましたね。
アジア各地に派遣された日本人技術支援者。
しかし、日本で鎖国体制が完成すると、彼らの帰国は許可されなかった。
彼らを送り込んだのが試験運転中のシビュラシステムであり、支援の名目で行われていたのは不適合者を処分するという、事実上の国外追放。
『PSYCHO-PASS』シリーズで描かれる日本社会の完成の背景に、こういう展開が存在しするという設定は、本当に細かいです。世界観の構築に当たっての考察がとにかく凄い!
劇場版三部作のまとめ感想は以上です!
詳しい感想は、ぜひ個々の記事を読んでいただけると嬉しいです!
そして、『PSYCHO-PASS』のTVシリーズ第3期が今から待ちきれません!
第3期と劇場版の感想です!
最後まで読んでくださり、
本当にありがとうございました!!