※ネタバレなし。
※画像は予告映像のキャプチャです。
2017年12月21日鑑賞
KUBO/クボ 二本の弦の秘密
(原題:Kubo and the Two Strings)
【評価:4.7/5.0】
【一言】
諸行無常・諸法無我・親孝行・先祖崇拝など日本の根底に漂う思想観が込められた、小さな世界の大きな冒険は、昔話や御伽話のよう。
和紙のような質感や浮世絵の雰囲気、四季折々の色鮮やかな映像がとても美しい。
魅力的な登場人物と、紙を活かした演出が素晴らしい!
【目次】
ストーリー
クボは幼い頃に、彼の祖父である《月の帝》によって左目を奪われたしまった。
そして成長し、少年になった彼に再び祖父《月の帝》と邪悪な叔母が襲いかかる。
クボは魔法の三味線を手に、サル、クワガタ武士、折り紙の侍とともに「伝説の武具」を見つけ出し、《月の帝》を倒す旅に出る。
予告動画
作品データメモ
監督:トラヴィス・ナイト
制作:ライカ
主題歌:Regina Spektor「While My Guitar Gently Weeps」
キャスト:シャリーズ・セロン and more.
上映時間:102分
日本公開:2017年11月18日
配給:ギャガ
公式サイト
主題歌Official Video
感想
感想外観
良い噂、高い評価をあちこちで聴いていて、ようやく観にいくことができました。
素晴らしい部分が山盛りで、どこから書けばいいか迷いますが、順番に書いていきます。
まず、「物語」が素晴らしかったです。
小さな世界観でまとめられた、大きな冒険の物語は、日本の昔話のようで、もしくは子供の頃に読み聞かされた物語のよう。
諸行無常や親孝行など、日本の生活や文化の根底に根付く仏教観や思想が込められていて、「雰囲気」が素晴らしかったです。
観ていると胸踊るワクワク感の詰まった旅だし、息を呑むようなバトルがあったり、家族の優しさに心温まったり、展開に驚いたりと、「物語」の面白さ全てが詰まっていました。
そして映像がとても美しかったです。
ストップモーション作品であるという事を忘れるほどに美しく、また滑らかに動いていて、むしろ微妙な不自然感が愛おしいくらい。
また、舞台である日本の風景は和紙で作られたように柔らかい質感で、四季折々の美しい風景が描かれており、綺麗でした。
「折り紙」を1つのテーマに据えており、紙である利点を存分に活かした演出が随所にみられて楽しかったです!
あとは、キャラクターの魅力が最高でした!
勇敢な主人公クボ、優しい母親、面白いクワガタ侍、小さく可愛いハンゾウ!
キャラの言動が笑えるほど面白いのですが、これは外国映画に特有の雰囲気を持ったジョークのように感じ、上手に合わせたなぁ〜と。
“昔話”のような物語
映画が「物語」として生きていました。
なかなか言葉では表現しずらいのですが、洋画のようにストーリーを楽しむのではなく、読書や昔話のように物語を楽しむ作品でした。
(“ストーリー”と“物語”のニュアンスが……)
複雑なSFでも、華麗なアクションでもなくて、「かぐや姫」や「桃太郎」のように昔話の王道を組み合わせて最高の物語を紡ぎ合わせたような印象を受けました。
主人公の戦いの結末を気にして、ある時には旅路の行方を心配し、 時には主人公の語りに耳を傾ける。
そんなゆっくりと昔話を聴くような、そんな温かさや楽しさがありました。
物語も色々と大切な事が詰められていました。
・愉快な仲間と共に鮮やかな旅をする。
・道を塞ぐ強大な敵に、果敢に立ち向かう。
・時には一緒に楽しい時間を過ごして。
・家族の優しさに触れたり。
・「死」の悲しさを知って。
・語り継ぐ事の大切さを分かる。
主人公が旅をする中で感じたり、考えたりと成長する全てが、観賞者である私達にも伝わってくる良さを感じました。
そして、それらの変化や冒険はとても「小さな世界」で繰り広げられます。でも、それはとても「大きな物語」になっています。
この感覚が、まさに《昔話》のようだと感じました。
「日本らしさ」の美しさ
物語の舞台であるのが日本ですが、随所に見られる「日本らしさ」が本当に素晴らしかったです。
まず目につくのは、舞台小物や衣装などの装飾品。
日本の着物や鎧、模様などちょっとした部分なのですが、それが合わさって「日本」を演出していました。
海外がイメージする「The JAPAN」の「ナンチャッテ日本」ように大雑把な映画とは違い、細かく緻密に作られていたと感じました。
また、人物の姿が浮世絵など日本の絵画や絵巻に描かれるような雰囲気を漂わせていて、良いなぁ〜と思いました。
そして大きいのが物語に込められた世界観と思想。
明確にそうとは言い切れないのですが、観ていて感じたのは日本に古くから存在する思想のようなものを感じました。
・全ての物は死に、壊れる諸行無常。
・全ての物は繋がっているという諸法無我。
・自身の両親を大切にする親孝行。
・亡き先祖と思い出を大切にする心。
・年長者の忠告を聞く。
こうやって、物語の底に埋め込まれた思想観が、見るものに「日本独特の雰囲気」を感じさせるのかなぁ〜と思いました。
素晴らしい映像
ストップモーションアニメである本作ですが、それを忘れるほどの滑らかで素晴らしい映像でした。
メイキング映像
「ストップモーションで作られた」という事前知識があったからその作品だと観ていて分かりますが、知らなければただのCGです。
髪の毛や唇の動き、紙を折って折り紙をする滑らかな動作、激しい動きから複雑なアクションまで本当に綺麗。
特にキャラクターの表情の変化が細かくて良かったです。
一体、どこまでが本物なのか分からなくなってしまいます。
だから、時々そのストップモーションらしい片鱗を見せるとき、逆に安心感を覚えるというか(笑)
改めてその技術の凄さと、労力の大きさに敬意を評したくなります。
こちらは、公式サイトに掲載されていた作品製作に関するデータです。
(上に登場する『骸骨』とは、下のことです)
美しい映像
映像、美しかったです。
具体的には「質感」と「色合い」です。
日本を舞台にした作品で、登場する背景や小物はもちろん日本なのですが、それ以上にその物の「質感」が良かったです。
和紙で折られた人形のような人物や折り紙たち。本物の金属であるかのような兜や刀。
そういった質感が作品の雰囲気を大きくしていたと思いました。
また「色合い」は単純に色の美しさです。
日本の四季折々の植物や自然の風景を彩る色や、着物やお祭りなど日本の伝統を示す色が随所にみられて美しかったです。
折り紙をテーマに
折り紙をテーマに、折り紙らしい演出がたくさん描かれていて楽しかったです!
ここは実際に観てもらったほうが楽しいので多くを書きはしませんが、少しだけ。
例えば、1枚の紙から小鳥が出来上がったり、それが崩れて別の生き物に変わったりと変化する点が面白かったです。
他にも、薄い紙らしさを存分に活かした演出で面白かったです!!
魅力的な登場人物
登場人物がとっても魅力的で皆んな大好きです!
まずは語り上手でかなりお気楽、でも勇敢で物分り良い少年のクボ。
彼は笑った笑顔や、語るときの真剣な表情などが印象的でした。
そして大好きなのはクワガタ侍。
頭のネジが少し緩いというか、とにかく面白いし可愛い! オヤジギャグのような笑わせてくれる発言とか、素の行動が面白くって最高です!
そうそう、小さな折り紙の侍、ハンゾウも大好きな一人です!
もう、なんと言っても可愛さが最高なんですよ。ペットというか、細かな動きが愛らしい!
キャラの言動に練り込まれたギャグは外国映画によくあるジョークの印象でした。
日本にあるオヤジギャグというよりも、陽気な海外ジョークという感じ。でもこれが上手い具合に組み合わさっていたと思います!
以降、映画本編のネタバレあり
ネタバレあり感想
序盤
月が出ているけれども大荒れの海。
舟に乗った一人の女性が波にもまれ、手に持った三味線の弦を弾くと、目前に迫った大波が消えた!
「この映画はモーションキャプチャー」と知っていたから、この波とか水しぶきがCGか手作りか分からない………。
女性が背負っていた包みの中には小さな赤ん坊が。
彼は祖父に“あるもの”を奪われた。
前半
ご飯を炊いてお母さんの世話をするクボ。
心を無くしてただの人形のようになっている母親にご飯を与え、外に連れ出す。
小さな子供が大変だなぁ〜と思います。
クボは町へ降りていく。
茣蓙を敷いて物乞いをするお婆さんと話し、彼は中心で風呂敷を広げると、三味線を高らかにならして「瞬きをするなら今だ!」と声を張り上げる!
三味線の音に合わせて折り紙が侍──ハンゾウの姿になり、次々と襲ってくる魔物を倒す!
見る者を引き込む素晴らしい語り劇。映画としてではなく、実際に見てみたい!!
家に帰ったクボ。
母親の心がもとに戻っており、日没と同時に呪いが解けるのかと思ったけど、どうやらそうでもないらしい。
夕食を食べながら、クボは母親から御伽話を聞いたり、父親の事を聞いたり。
3つの約束、
「日没後に外に出ない」
「サルおじさんを持ち歩く」
「父上の着物を身に着ける」
日は移り、町ではお祭りが催される。
太鼓の音や賑やかな踊りの中、クボは灯籠が死者を繋げると聞く。
日本の秋祭りとかですかね。豊作を祝いつつ、亡きご先祖様とお喋りをするって。
クボはいつものように折り紙で灯籠を造り、父上に話しかけるけど返事はない。
苛立って灯籠を投げ捨てたその時、日没がおとずれる。それと同時に、川に浮かべられた灯籠の灯りが一斉に消えて。
闇と一緒に現れたのは、クボの悪い叔母たち。
ずっと探していたというクボの右目を奪おうと攻撃をして、煙の妖術で町を破壊。
間一髪のところで助けに現れたのはクボの母親。最後の力を振り絞り、叔母と戦いながら「父上の着物」を使ってクボを逃がす!
中盤
目が覚めたクボがいたのは雪降る最果ての地。
目の前にいた喋るサルに導かれるままに助けられ、鯨の体内に隠れる。
色々な質問はあるけれど、サルの正体は……。
「見覚えない?」と言われて最初に思い浮かんだのが、町の物乞いお婆さんだった(笑)
なんと、サルはクボが持っていた御守の「サルおじさん」!
悪い叔母と月の帝から身を守る為に、3つの武具を探す旅へ。
そんな時、夢を見ながら折ったのは小さな侍、ハンゾウ。旅の行き先を指し示す!
……………なんて愛らしいキャラなの!可愛すぎるよ!
まずは雪が降り積もる広い雪原での旅。
所々に朽ちた大仏のような像が見られるのが雰囲気ありますよね〜。
で、堅苦しいサルになかなか馴染めないクボは折り紙で遊び、またイタズラを。小鳥を折って追いかけたり、蚊で刺したり。
遊んでいると、クボは何者かによって、大仏像の内部に連れ去られてしまう!
急いでサルが追いかけ、犯人の正体はクワガタの姿をした武士。しかも、クボの一族の家紋の下に使えていた武士だった!!
ハンゾウを主君と慕いながら、弓の腕を見せつけ、旅の仲間入り。
まず最初に発見したのは「折れずの刀」。
洞窟の中にある刀を手に取ると………大きなドクロの化物《ガシャドクロ》が!
頭に刺さった本物の刀を取るために、3人は必死に戦う。
この戦いのシーンが凄いし、さらにクワガタ侍のジョークが面白すぎる(笑)彼、最高!
大きな湖の前でサルとクワガタが大人の会話。
その間にクボは三味線を弾き、落ち葉と枝で立派な舟を造り上げる。
舟の上で弓矢を練習したり、獲った魚を囲んで皆んなでご飯を食べたり。
そんな中、湖のそこに武具の一つ「鎧」があると分かり、クワガタが飛び込む! しかし気をつけろ、湖には人を惑わす《目玉の化物》が住んでるぞ!
戻りが遅いクワガタを追ってクボも飛び込む。そして見事に鎧を見つけるけど、目玉の餌食になり、湖底に引きずり込まれそうに。
一方、湖上では追ってきた叔母の一人とサルが激闘を繰り広げる。この素早い動きとカメラワーク、凄いな!
なんとか叔母を倒し、クワガタがクボも救って一段落。
後半
隠れ家として洞窟に隠れた彼ら。そしてサルが重たい口を開く。
それはサルがクボの母親であるということ。そして自身が月の帝の一族であったことや、クボの父親との出逢いを。 この話に驚いたけど、クワガタ侍の一言に心を打たれました。
「物語は語られ、物語は行き続ける」
そしてクボは夢の中で白髪の老人に出会い、最後の武具の在り処を知る。
父上の砦までの道のり、色々な風景が綺麗で、クボたちの会話をまた楽しくて。
いざ着いてみると、そこはボロボロに崩れたお城だった。でもクワガタの紋章や武具の隠し場所を描いた襖などがいい装飾だと思いました!
しかしコレは罠。
現れたのはもう一人の悪い叔母。そして彼女が衝撃の事実を告げる………そう、クワガタ侍がクボの父親であるハンゾウだった!!
この「全てが繋がっている」感じがとってもいい!!
必死に戦って叔母を倒すけど、サルの母親、クワガタの父親、折り紙のハンゾウは皆んな死んでしまう。
クボが目にしたのは、最後の武具「兜」の在り処を示した巻物……………それはあの最初の町の鐘だった!
終盤
最初の町に戻ったクボは最後の武具「兜」を手に入れるが、そこに現れたのは彼の祖父である、月の帝。
クボの右目を奪い、クボを月の一族に加えることで「永遠」を与えようとするが……。
そしてクボと帝は戦う。
本当の正体を現した帝。彼はまるで龍のような化物だった……!
(もう少し良い姿が良かったなぁ〜)
苦戦するクボだが、最後に三味線で戦う。
母親の髪、父親の弓の弦、クボ自身の髪を三味線に取り付け、思いっきり弦を弾く!
思い出は消えず、そして何よりも強い力。
川に流れていた灯籠から現れたのは人々のご先祖様たち。
彼らの力添えもあり、無事に帝を倒す。
そして残ったのは、自身の記憶をすっかり無くした白髪の老人。町の人々は、彼の思い出を語る。
このシーン、とっても好き!
そしてクボは亡き母と父に折り紙の灯籠を捧げ、思い出を語る。
そう、気がついて無かったけど、3人でご飯を食べたし、笑いあったんだよなぁ〜〜。
「The END」
最後、エンドロールのアニメーションもとっても綺麗!
日本風の雰囲気を残しつつ、アメリカアニメらしい絵で、アニメ版も見てみたいかも。
さらに、ガシャドクロの制作過程まで見せてくれて、本当にストップモーションなんだと実感。
エンディングまで芸術。
エンドロール映像
最後まで読んでくださり、
本当にありがとうございました!!
俺もクボを見てものすごいおもしろいと思いました。前半は、爆笑してばかりいて、お腹が痛くなりました。一番おもしろかったところは、なんといっても骸骨のところですね。偽物の剣の中に、折れたら、また、新しい刃が出てくるところで、「折れずの剣ってこういうこと!?」と思わず叫んでしまいました。後半は、友達と見たのですが、最後の、音楽のところで、「あ!これ、最初の砂浜のところであった!」など、関係性があってとてもおもしろかったです。