2017年10月23日
怖い絵展
@上野の森美術館
【 一言 】
絵画作品はほんの一瞬を描いた静止画。
でも、絵の背景に潜む歴史や社会情勢,モチーフとなった神話や伝説,聖書などを知る事で、“絵”は“物語”となる。
知識は力なり。
絵を深く,大きくし、感情を、“怖さ”を与える。
広い知識が必要な故に、楽しめた美術展。
【 目次 】
【 概要 】
ドイツ文学者・中野京子氏が2007年に上梓した『怖い絵』は、「恐怖」をキーワードに西洋美術史に登場する様々な名画の場面を読み解き、隠されたストーリーを魅力的に伝える本としてベストセラーとなり多方面で大きな反響を呼びました。
同書の第一巻が発行されてから10周年を記念して開催する本展は、シリーズで取り上げた作品を筆頭に「恐怖」を主題とする傑作を選び出しテーマごとに展示します。
視覚的に直接「怖さ」が伝わるものから、歴史的背景やシチュエーションを知ることによってはじめて「怖さ」を感じるものまで、普段私たちが美術に求める「美」にも匹敵する「恐怖」の魅力を余すことなく紹介する、今までにない展覧会です。
(上野の森美術館HPより引用)
「怖い絵展」紹介動画
中野京子氏インタビュー動画
「紙兎ロペ」とのコラボ動画
【 感想 】
全体感想
『怖い絵』ということで、中野京子さんの同名書籍が本展の原作(?)です。私はその本は読んでいませんが、タイトルに惹かれ今回の作品展を観てきました。
「怖さ」 をどう定義し、どう感じるかは人それぞれだと思いますが、私は少なくとも「怖い」とは感じませんでした。
本展のテーマというか、主題部分がそのような設定になっていたのだと思います。
その闇を知ったとき、名画は違う顔を見せる。
私が感じた本展のテーマは、上の一言感想でも書きましたが、「絵画の背景を知って作品の物語」ということだと思いました。
その過程で、作品に込められた、隠された「怖さ」を展示しようとしたのだと思います。
死や戦争,飢餓,貧困など作品の描かれた時代背景、神話や聖書にまつわる物語などを知らないと分かりません。
でも、知っていたら本当に作品が面白いと感じます。1つの作品が重く、大きく感じました。知っているからこそ楽しめました。
美術展の全体的な構成,作品説明も上に書いた事情からか、作品の背景や基となった物語の解説&説明に撤している印象です。
事実を説明して、そこから何を感じるかは観客に委ねていた印象です。
だから、私は「怖さ」よりはむしろ「楽しかった」を覚えました。私自身それなりに知識があると自負しているので、解説プレートに書かれたこと以上の知識で絵を観られたと思います。
レディ・ジェーン・グレイの処刑
79:『どうして』
:レディ・ジェーン・グレイの処刑
:The Execution of Lady Jane Grey
:ポール・ドラローシュ / Paul Delaroche
※作品情報の記載方法については後ほど。
本展の目玉展示作品なので、本ブログでは章を1つ立てて感想を書きます。目玉作品なので展示解説も多かったといのも理由の一つです。
作品で描かれたのは英国王ヘンリー8世の娘として王位についたジェーン・グレイの処刑場面。16歳で即位した彼女はたった9日で処刑されたので「9日間の女王」と呼ばれているそう。
この絵では室内での処刑場面となっていますが、実際には城塞や牢獄として有名なロンドン塔の広場で処刑されたそうです。(下の航空写真内の左側にある2ヶ所の芝生の小さいほう)
ちなみに、処刑を実行させたのは「血染めの女王《ブラッディ・メアリー》」の名で有名なメアリー1世です。
本作を一目見て、まず目に入るのは純白の衣装に見を包んだジェーン・グレイその人。
画面全体が薄暗い中、たった一人白を纏った彼女。まるでスポットライトが当たっているように目立ち、浮かび上がって見えました。
そして、白い布で顔を隠されているのが妖艶さを醸し出しているように思います。
表情がわからないから、処刑に対して恐怖を抱いているのか、毅然とした凛々しさを保っているのか、涙を浮かべているのか分からないです。鑑賞者の想像がそこを補うしかないのです。
最後に、私の隣で絵を見ていた幼稚園〜小学生低学年くらいの女の子の言葉が胸に響いたので載せます。
「ママ、この女の人の顔、絶対に綺麗だよね」
【 各作品詳細感想 】
印象に残った作品をピックアップして感想を書きます。
展示目録番号順に書いていきます。
今回は全部で39作品の紹介&感想を書きます。
※数字は展示目録(作品リスト)の番号です。
※各作品の『〜』は作品題名ではなく、展示につけられていた副題(?)です。
作品リスト(PDFファイル)
※この作品リストは兵庫県立美術館で開催された際のものなので、上野の森美術館のものとは若干違う部分がある可能性があります。
[ 作品表記例 ]
00:『〜』
:作品名(展示目録から)
:作品英名(展示目録から)
:作者名 / 英名(展示目録から)
:感想───────
※連作などは作者名を省略する場合あり。
第1章 神話と聖書
01:『放浪の果てに』
:オイディプスの死
:The Death of Oedipus
:ヘンリー・フューズリ / Henry Fuseli
:オイディプスはギリシア神話の登場人物で、有名なスフィンクスのなぞなぞを解いた人物です。彼は実父を殺し、実母と交わってしまいます。その罪の代償として彼は目をえぐられ、追放されてしまいます。
絵を間近で観ると、目が潰れて白くなっているのがわかります。この絵の場面ではなく、彼の行った行為の方が怖いですよね………。
04:『決して振り向くな』
:オルフェウスとエウリュディケ
:Orpheus Losing Eurydice
:ピエール・クラーク(父) / Pierre Lacour Père
:死んでしまい、冥界へと下った妻エウリュディケを連れ戻すため、夫オルフェウスは冥府へと訪れます。そして「地上に出るまで決して妻の方を振り向かない」事を条件に冥王ハデスから妻を取り戻しますが………彼は振り返ってしまいます。
日本に伝わる伊邪那岐と伊邪那美の黄泉伝説に似ていますよね。世界各地に似た話が伝承されています。 足元に描かれたのは番犬ケルベロス。冥王ハデスの顔が凄い!
06:『さあ、お飲みなさい』
:オデュッセウスに杯を差し出すキルケー
:Circe Offering the Cup to Ulysses
:ジョン・ウィリアムウォーターハウス / John William Waterhouse
:1人孤島に住む魔女キルケーは、訪れた男に食事を提供し、杯を飲むようにと差し出します。しかし、これを飲んだ者はたちまち姿が豚になってしまいます。オデュッセウスは薬のおかけで豚にならずにすみました。
キルケーめっちゃ綺麗でエロくないですか(笑) この絵画はどこかミュシャの絵調に似ている気もしました。豚の臭いを消す為に香を炊く(画面右下)のがリアルです。
07:『死を招く歌声』
:オデュッセウスとセイレーン
:Ulysses and the Sirens
:ハーバート・ジェイムズ・ドレイパー / Herbert James Draper
:セイレーンは人魚や鳥人の姿で描かれる怪物で、美しく魅惑的な歌声で海へと漕ぎ出した船乗り達を餌食にしてしまいます。
オデュッセウスの部下は魔女キルケー(上の作品)の助言により、耳に蝋を詰めることで歌声を聴こえなくしますが、オデュッセウス本人は「どうしても歌声を聴きたい」とマストに身体を縛り付けてまで望みます。
セイレーンの変化が美しいです。下半身は魚から人へ、腰の藻は衣へ。肌を透す衣が綺麗でエロいです……。
10:『元祖、大岡裁き』
:ソロモンの判決
:The Judgement of Salmon
:ジャン・ラウー / Jean Raoux
:日本で有名な「大岡裁き」は聖書に登場するソロモン王の審判を基にしています。1人の子供の親権を争う母親を名乗る女性2人に対して、ソロモン王は「子供を2つに切り割って両者に与えよ」という残酷な判決を下します。しかしこれは王の計画。2人の女性のうち1人は喜び、1人は悲しみました。
そう、子供の身を案じて悲しんだ方が本当の母親なのです。
絵を見て思ったのは、私が抱いていたソロモン王のイメージよりもだいぶ若いなぁ〜ということです。
11:『言うことをきかねば死刑』
:スザンヌと長老たち
:Susanna and the Elders
:フランソワ・グザヴィエ・ファーブル / François-Xavier Fabre
:若い女性スザンヌに対して暴力を加えようとしている2人の長老。古代版のセクハラ&パワハラを描いた場面です。
スザンヌの肌の質感が本当に美しい!そして天に助けを乞うような表情がリアルです。 作品の下部には青,白,赤のトリコロールカラーが描かれています。
12:『終末のラッパが響くとき』
:黙示録の四騎士
:The Four Horsemen of the Apocalypse
:ジョージ・フレデリック・ワッツ / George Frederic Watts
:黙示録に登場する四人の騎士を描いた連作です(本展では以下の2作のみ展示)。白、赤、黒、青白い色の馬に乗った騎士らはそれぞれ征服、戦争、飢饉、死を表します。
12-1:黒い馬の騎士
:The Rider on the Black Horse
:騎士が手にしている天秤は平等の象徴などではなく、飢饉の時にさらに食事制限を課す象徴だそう。
12-2:青白い馬の騎士
:The Rider on the Pale Horse
:こちらは死を象徴する騎士。手に大鎌を持っているのが分かります。まさに死神のような。痩せこけた犬や女性が何というか……..死を表していますね……。
第2章 悪魔、地獄、怪物
14:『眠りとエロス』
:夢魔
:The Nightmare
:ヘンリー・フューズリ / Henry Fuseli
:眠っている間は意識がないから、「何が起きているのか分からない」という不安を絵にした作品。女性の腹の上にいるのは夢の中でレイプをする怪物インクブス。馬は情欲の象徴です。
この絵は上部にぽっかりとあいた暗黒の部分が何とも怖いです………。
19:『美女たちの包囲網』
:聖アントニウスの誘惑
:The Temptation of Saint Anthony
:アンリ・ファンタン・ラトゥール / Henri Fantin-Latour
:この「聖アントニウスの誘惑」というテーマは今年何度も見てきました。ボス派の画家が描いてきたからです。
でも、今作は大きく違い、とにかく美しいです。ぼやけるような色遣いが素敵です!
※ボス派の奇妙な「聖アントニウスの誘惑」はこちらの記事に掲載しています。
21:『混沌たる宴』
:ふしだらな酔っぱらいの乱痴気騒ぎに割り込む破壊の天使と悪魔
:The Destroying Angel and Daemons of Evil Interrupting the Orgies of the Vicious and Intemperate
:ウィリアム・エッティ / William Etty
:悪魔が酔った騒ぎに混ざって破壊するのは理解できますけど、天使まで参加するとは……異端だったということなんですかね? 喧騒が聞こえてきそうな騒ぎと……そして筋肉美!!
(こういう長いタイトルは感想ブログ書く者にとっては嫌だなぁ….見た目が悪くなっちゃいます)
27:『愛しい男の首』
:オーブリー・ビアズリーによる『サロメ』の為の挿絵(ポートフォリオ)
:Aubrey Beardsley’s Illustrations to Salome (portfolio)
:オーブリー・ビアズリー / Aubrey Beardsley
27-1:踊り手の褒美
:The Dancer’s Reward
:洗礼者ヨハネの首を持ち上げ、キスをしようとする踊り子サロメ。戯曲のためにビアズリーが下記おろした挿絵です。彼曰く「ぼくの目的はただ一つだ。グロテスクであること。」だそう。
確かにその滴り落ちる血とかグロくて、ある意味一番怖い作品かもです……。
28:『いただきます』
:彼女
:She
:ギュスターヴ=アドルフ・モッサ / Gustav-Adolf Mossa
:頭上にある文字は「これが私の命令だ。私の意識は理性にとって替わる」とあります。
奇麗な髪、髑髏の飾り、カラスの羽、銃や剣の首飾り……………そして白い身体についた真っ赤な手形がGOOD!! (猫がいい仕事をしています 笑)
第3章 異界と幻視
29:『実は笑い話』
:老人と死
:The Old Man and Death
:ジョセフ・ライト / Joseph Wright
:以下、解説文より。
重い柴を背負い、長い道のりを歩き続けて疲労困憊した老人が、こんな辛い人生ならもう終わりにしたいらあの世へ連れていってもらおうと、死神に呼びかけた。すると本当に現れたではないか。「何か用か」ときく死神に、老人は答えて曰く「この重い荷物を運んでほしくて」と。
34-b:『肉と骨〈エロスとタナトス〉』
:マドンナ
:Madonna
:エドヴァルド・ムンク / Edvard Munch
:女性の身体のカーブがセクシーでそそられます。絵の周囲に描かれているのは永劫回帰する胎児と精子だそうです。
40:『想像の彼方に』
:エドガー・ポーに
:To Edger Poe
:オディロン・ルドン / Odilon Redon
:小説家エドガー・アラン・ポーの作品にインスピレーションを受けて制作された連作。
40-1:(1)眼は奇妙な奇妙な気球のように無限に向かう
:(1)The Eye, Like a Strange Balloon, Mounts toward Infantry
:ポーの作品に『軽気球虚報』というのがあります。ただ内容は気球開発&大西洋横断という日誌形式のもので、奇怪さはないんですが。
40-2:(3)仮面は弔いの鐘を鳴らす
:(3)A Mask Rings the Death Knell
:死を象徴する仮面はポー作品に登場するモチーフの1つです。『赤死病の仮面』の作品がぱっと思い浮かびました。ただ、この絵からは怖さがイマイチ伝わらないというか、どこか陽気さを感じる仮面です(笑)
45:『小さい人、みぃつけた。』
:そして妖精たちは服を持って逃げた
:And the fairies ran away with their cloths
:チャールズ・シムズ / Charles Sims
:19世紀から20世紀にかけて工業化の進んだ英国では見えない存在への興味関心が高まったそう。そして妖精などの絵が多く描かれたとか。この絵も、可愛い!!
47:『血塗られた歴史』
:クリオと子供たち
:Clio and the Children
:チャールズ・シムズ / Charles Sims
:座るクリオが子どもたちに読み聞かせているのは、これまでの歴史が描かれた巻物。そして、その巻物は文字通り、血に染められています…………
↓ 拡大 ↓
血の手形がわかると思います。
第4章 現実
48:『転落の大都会』
:娼婦一代記
:A Harlot’s Progress
:ウィリアム・ホガース / William Hogarth
:都会に仕事を探しに来た女性モルが娼婦となり、最後には性感染症で死ぬまでを描いた6枚の連作。
48-1:ロンドンに到着したモル
:Moll Hackabout arrives in London at the Bell Inn, Cheapside
:題名の通り、希望を胸にしてロンドンの地を踏んだモルの姿。背景にあるのは売春宿で、女性はモルを騙して娼婦に引き入れようとしています。
48-2:裕福なユダヤ人の妾となったモル
:Moll is now a kept woman, the mistress of a wealthy merchant
:高級娼婦としての地位を手に入れたモル。テーブルをひっくり返して背後にいる若い愛人を逃がそうとしているらしいです。裕福なユダヤ人ということで、黒人の養子(?)とサルのペットがいます!
48-3:逮捕の朝
:Moll has gone from kept woman to common prostitute
:逮捕されるモル。逮捕の理由を忘れたのですが、原題の「kept woman」が娼婦か妾の訳でしょうから、裕福なユダヤ人の愛人だと発覚して逮捕されたとか何ですかね? それにしても、服のツヤツヤ感が見事です。シルクですかね?
48-4:感化院にて
:Moll beats hemp in Bridwell Prison
:逮捕され、木槌で麻を打つ強制労働につくモル。感化院は更生を測る施設とはいえ、かなり厳しそうな労働です……。
48-5:臨終を迎える
:Moll dying of syphilis
:売春業の結果、モルは梅毒にかかってしまいます。
48-6:モルの葬式
:Moll’s wake
:ついに亡くなったモル。誰も悲しまない中、一人中央で棺に入るもるのを哀愁満ちた顔で眺めるのは、モルの幽霊かも………。
49:『ジン生、色々』
:ビール街とジン横丁
:Beer Street and Gin Lane
:ウィリアム・ホガース / William Hogarh
:ビールと安酒ジンに溺れる2つの町の様子。
49-1:ビール街
:Beer Street
:ビールを飲んで浮かれて騒ぎ、人生を謳歌している楽しげな作品。彼らは収入の高い職人たちだそう。
49-2:ジン横丁
:Gin Lane
:『ビール街』から一変して、こちらは貧困と絶望に満ちた暗い雰囲気の作品。階段に座る酔った母親の腕から転落する赤子、首を吊る人、狂気に顔を歪める人、喧嘩に暴動………
53:『悲しき屋根裏』
:不幸な家族(自殺)
:An Unfortunate Familyw [Suicide]
:ニコラ=フランソワ=オクターヴ・タサエール / Nicolas-François-Octave Tassaert
:一酸化炭素による自殺、心中。壁にかけてあるキリスト像画が作品のテーマに「罪」を加えているように感じました。キリスト教では自殺は禁じられていますからね。
そして、これを描いた画家も同じ方法で自殺をしました。
56:『画家の告白』
:切り裂きジャックの寝室
:Jack the Ripper’s Bedroom
:ウォルター・リチャード・シッカート / Walter Richard Sickert
:切り裂きジャックは19世紀のロンドンで発生した猟奇殺人事件の犯人の通称で、娼婦5人が犠牲になりながら、未だに犯人が特定されていない未解決事件。
本作の作者シッカートもDNA操作で有力な犯人候補に上がった人物。彼は切り裂きジャックに魅了され、何作もの作品を描いたといいます。もしかすると、本当に彼が犯人なのかも………。
61:『ただただ笑う』
:人生とはこうしたもの
:Such is Life
:ジョン・バイアム・リストン・ショー / Jhon Byam Liston Shaw
:描かれたのはバレリーナとキスをする男性、その後ろに佇む警官、そして笑うピエロ。何がどうなって人生なのか不明ですが、バカ笑いするピエロが最高!!(笑) ピエロの持つ看板には「SCANDAL」の文字が。
第5章 崇高の風景
62:『荒れる海ほど見つめたい』
:嵐の海
:Sea Storm
:クロード=ジョセフ・ヴェルネ / Claude-Joseph Vernet
:海難図。雷とスコールの力強さが本当に凄いです! 難破した船から逃れる船員が細かい! この荒れ狂う自然の感じが好きです!!
63:『荒城の蜘蛛』
:ドルバダーン城
:Dolbadern Castle
:ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー / Joseph Mallord William Turner
:広く無毛な土地と、背後に見える城、そして画面手前の小さな人。一見なんの変哲もない風景画の様に見えますが、バックストーリーがあります。
これは国王である実兄を弟が城に幽閉し、玉座を奪うという話しが背景にあり、まさに幽閉される道程を歩む絵なのです。
64:『滅びゆく大神殿』
:ベルシャザールの饗宴
:Belshazzar’s Feast
:ジョン・マーティン / John Martin
:細かい装飾を施した神殿と並び立つ柱がとても綺麗です。天罰かのような雷から逃げ惑う人々の危機迫る感じが好きです。
65:『運命の日』
:ポンペイ最後の日
:The Last Days of Pompeii
:フレデリック・アンリ・ショパン / Frèdèric-Henri Schopin
:火山の噴火によって火と灰に埋れた都市ポンペイ。人々は聖書に登場する「悪徳の町ソドム」を重ね合わせます。
火山の熱く劇しそうな赤色が良いです。迫りくる災害から逃れようとする人々の焦燥感と、そんな中でも人を助けて使命を全うする兵士が素晴らしいです!
第6章 歴史
74:『最後の贈り物』
:クレオパトラの死
:The Death of Cleopatra
:ゲルマン・フォン・ボーン / Guermann von Bohn
:有名なクレオパトラの死亡状況(寝室で裸になり、毒蛇に噛ませて自殺)は作り話らしいです。 描かれたクレオパトラ、欧米人とは違う綺麗な髪が美しいです。壁やベッドに描かれたエジプト風模様は適当ですかね?
77:『任務完了』
:ボルジアの犠牲
:A Victim of the Borgia
:ジャン=ポール・ローランス / Jean-Paul Laurens
:描かれているのはボルジア家での暗殺。ボルジア家といえば絶大な権力と財力を手にした一族ですが、内部・外部を問わず権力闘争が激しかったのです。
79:『どうして。』
:レディ・ジェーン・グレイの処刑
:The Execution of Lady Jane Grey
:ポール・ドラローシュ / Paul Delaroche
:※省略
80:『忍び寄る革命の足音』
:チャールズ1世の幸福だった日々
:An Episode in the Happier Days of Charles Ⅰ
:フレデリック・グッドール / Frederick Goodall
:船の先端にいるのは、イメージ通りの髭をたくわえた英国王チャールズ1世です。明るい日差し溢れる華やかな場面ですが、この絵が示唆しているのら国王の将来。刻々と迫る革命に気が付かない国王を描いているのです。
81:『暗転』
:マリー・アントワネットの肖像
:Portrait of Marie-Antoinette
:作者不詳(フランス派) / Anonym : French school
:マリー・アントワネットって誰もが処刑される彼女の運命・歴史・事実を知っているから、一目見ただけで「怖い絵」と感じますよね。副題(?)の「暗転」は彼女の運命を表すのでしょうか。
このマリー・アントワネット、可愛い!!!!!!
【エンディング】
本展の基となる書籍を執筆した中野京子さんのコメントがありました。
近年の「美術は感覚で感じるように観ろ」という風潮に対して一石を投じたく、本を執筆したそう。
私もその風潮はおかしいと思います。知識は絵をより大きく、深くして、それは絵を味わう喜びや怖さなど感情を呼び起こすと思います。
知識のおかけで感情移入できたり、絵が動いているかのように感じたり。
絵画は静止画であって、歴史や物語を切り取っただけど、本来は動画なのです!!(ちょっと何言っているのかワカラナイ……….)