※ネタバレなし。
※画像は予告映像のキャプチャです。
2018年2月26日鑑賞
さよならの朝に約束の花をかざろう
MAQUIA: When the Promised Flower Blooms
【評価:3.9/5.0】
【一言】
愛に溢れた、「さよなら」を織る物語。
零れる想い、すれ違う気持ち、交わした約束、伝えたい言葉、言えない真実。涙と覚悟。劇を織り成す「要素と台詞」の小さな1つにまで“哀しみ”と“愛おしさ”がこもってる。
一方で、内容が詰まりすぎたり、ファンタジーの必要性などには疑問が残る。
【Twitter140文字感想】
誰も愛してはならない長命の民の少女が、“さよなら”を織り、“別れ”に出会う一代記。
「一人の人間」として感情を丁寧に描き、“想い”を込めた言葉と台詞で編まれる物語は、過ぎる時間と人生を紡ぎ出す。
透くほど澄んだ容姿と、濃く重い内容が対照的。 pic.twitter.com/a9j3N28qea
— ArA-1 (@1_ARA_1) 2018年2月27日
感想
感想外観
今回は、アニメ映画という事で観に行きましたが、『あの花』と『ここさけ』の原作・脚本を手掛けた方が「どうしても作りたかった作品」と聞いて、期待していました。
全体的な印象としては、『感動』したものの、感極まっての感動というよりは、可哀想で・哀しくて感動したという感じです。
テーマは「家族の愛」、そして「別れ」、「流れる時間と人生」でしょうか。そして、登場人物たちの心の想いが込められた言葉・台詞の数々がとても悲しくて、愛がこもっていて印象的でした。
登場する主人公は「普通ではない少女」だけれど、彼女が抱く生きた感情と気持ち、そして心からの言葉、止まった時間の中で進む姿勢、涙、覚悟。
そういった生々しく流れ出す心の動き(?)のようなものが一人の人間として描かれていたので、「彼女の物語」として観入ったし、感動しました。
世界観はファンタジーで壮大で曖昧だけど、主人公たちを語る物語は小さく、とても等身大だったと思います。
長い時間の一部を切り取ったように、広い世界の中でとても小さな人たちの「生きる姿」を描いているようで、身近(?)に現実的(?)に感じました。
ファンタジーという設定と世界観は残念でした。
『あの花』や『ここさけ』は現実に近い世界の中で主人公たちの成長や青春が描かれるから、観てて主人公らに感情移入したり、想像を広げて観ることができます。
けど、今作は現実離れしてて、「おとぎ話」のような空想に近いような、これまでの作品から遠い所に行ってしまったようで残念でした。どちらかというと『凪のあすから』に似た感じです。
あと、ファンタジーだから名前や設定が難しくて覚えにくく、内容に集中出来ませんでした!
キャラや設定はとても綺麗だったと思います。
主人公を初めとするイオルフの民は透き通るような美しさだし、彼ら彼女らの仕事や運命も淡く切なく綺麗です。
内容については、個人的には微妙でした。
まず、主人公が幼すぎると思います。可愛さを求めるアニメなら良いけれど、今作は違うはず。
それから、詰め込み過ぎです。何人もの物語を絡ませるように進めるのではなく、焦点を絞ってゆっくり描いてほしかったです。
「感動」の違い
最初にも書きましたが、今回の映画は期待していました。アニメ映画だからというのもそうですが、それ以上に監督と脚本に期待していました。
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』
『心が叫びたがってるんだ。』
『花咲くいろは』や『凪のあすから』
を手掛けた脚本家の岡田磨里さんが今回監督となったからです。特に『ここさけ』は私が映画館でめちゃくちゃ感動した作品だったので(もちろん他も好き!)、尚更期待していました。
『心が叫びたがってるんだ。』
結果としては、感動したけれども、微妙だった部分も数多くありました。細かい部分は追々で書いていきます。
これまでの2作『あの花』と『ここさけ』は感極まって涙が溢れてくるような感動だったのに対して、本作は違いました。
本作は、主人公の言動や運命が可哀想で、哀しくて感動したという感覚が強いです。
多分、観る人によって感じる事が大きく変わる作品だと思います。特に、子供を育てた親御さんならそうなのかもしれません。
“想い”と言の葉
色々な気持ち・想い・感情が詰まってる、籠もってる、満ちている作品でした。
そして、それらが「一人の人間」として等身大に描かれていて良かったです。アニメのキャラではなく、一人の人間として。
一人の少女と、彼女が育てる男の子を中心に巡る物語。ファンタジーの世界で彼女は“普通の人”ではないけれど、描かれた感情は普通の人のそれでした。
零れる想い、すれ違う気持ち、交わした約束、伝えたい言葉、言えない真実。
愛、怒り、喜び、悲しみ、嬉しさ、不安、哀しさ、楽しさ、幸せ、不幸。
彼女が抱く生きた感情と気持ち、そして心からの言葉、止まった時間の中で進む姿勢、涙、覚悟。
生きていく中で抱くような感情に映画は満ちていて、それらはギュッと詰め込まれていて。 感情面を大きくクローズアップしていたから、「生きている」って感じたし、「生きるのが大変」というのも伝わりました。
必死で頑張る姿、そしてだからこそ溢れる涙・気持ちをリアルに、しかし誇張して描いていたから、観ている私も主人公に呑まれるように観ていた(と思います)。
そして、そうした“想い”を伝える「言葉・台詞」がとても印象的でした。
心を相手に伝えるために形とするその言葉・台詞は、恥ずかしいくらい正直に、まっすぐに感情を、想いを込めてきます。
そんな大きな力を感じる言葉や台詞が劇中に散りばめられており、映画作品そのものを構成しているようでした。
広い世界の小さな姿
ファンタジーという広い世界の中で、とても小さく等身大に描かれていて印象的でした。
多分、主人公はあの世界では伝説級に貴重な存在です。でも、その「伝説」を全面に押し出して壮大な物語を紡ぐのではなく、彼女を一人の人間として扱っていたのが良かったです。
本当に広い世界。映画やゲームのようなファンタジーの世界で生きるの主人公を描くのに、物語の流れとしてではなく、生活の語るように細かく、小さく描いていて、“リアルさ”を感じました。
広い世界でちっぽけな存在。でも、そんな人でも物語を紡げるし、色々な事を感じるし、泣いたり笑ったり出来るって事を伝えているような気がしました。
ファンタジー設定は少々残念
本作を知ったときも、「ファンタジーかぁ……」と思っていましたが、やっぱりダメでした。 作品の内容と合っていないように感じたし、作品の情報量が一気に増えるから難しいです。
『あの花』や『ここさけ』は現代の日本が舞台。私達と同じ世界を舞台にしているから、作品の内容に共感できちし、想像を膨らませてより鮮やか濃く主人公たちの感情を感じられました。
しかし本作はファンタジー。現実世界と隔たりがあるから、なかなか「現実感」や「繋がり」を感じられなくて残念でした。
これまでの作品で自分の近くにいた気がする主人公や作品が、一気に遠い場所に行ってしまったようで悲しく感じました。
あと、ファンタジーだから難しい!!
カタカナで発音される名前や設定は覚えにくいし、世界観を詳細に語らないから上手く想像を広げられませんでした。
岡田麿里さんのファンタジーといえば、『凪のあすから』が第一に思い浮かびますが、やっぱり『凪あす』は”小さな世界”が舞台だから”現実感”に似た安心感を抱くのかもと感じました。
キャラと設定について
ファンタジーに関する非難は一旦忘れて、キャラと設定の話です。
まず、キャラは綺麗でした……。
見た目が純粋無垢な少女のようで、透き通るような真っ白の髪と服が美しく、澄んだ声が印象的です。
また、「布を織る」という仕事、主人公の民が抱える運命など切なく悲しい内容もまた、儚さと綺麗さをアップしているように思いました。
設定という点では、そのキャラの仕事や運命の部分が大きいですが、膨大なファンタジー世界を構築する細かな設定が、曖昧な内容を規定していくようでした。
内容について
内容はハッキリ言って私は苦手でした。
内容というより、物語ですね。もちろん感動する内容なのですが、それを俯瞰したときに「物語」としてゴチャゴチャしてるというか……。
でも、伝えたい・描きたいことが詰まっているというのも同時に感じました。
まず、詰め込みすぎと思いました!
主人公の少女と、彼女が育てる男の子に焦点を絞って、もっとゆっくり、細かく描けば、より現実に近いような生活の様子や時間の流れが描けたと思います。
でも、作品には何人もの登場人物と、彼ら彼女らの物語まで組み合わせられているから内容が多すぎて、移り変わりが激しく、集中出来ませんでした。
しかし、時間の流れを取り入れることで「移り変わる想い」を、何人ものキャラを描くことで「それぞれの人生」を書き出そうとしたのかもしれません。
また、主人公の設定についても文句を言いたい!
「幼すぎる!!」です。上手く言えば純粋無垢な少女、悪く言えばロリ少女。
可愛さやギャグなどを求める作品なら、いくら幼女を出そうがロリで釣ろうが構いませんよ(嬉しいですw)
けど、本作は違うじゃないですか。感動や感情を語る作品で、しかも成長と子育てを主軸にするような物語。
そんな中で幼い顔の主人公が色々とやる姿には違和感を抱かざるをえないし、上手く物語とマッチしないように感じました。
ここでも登場します、『凪のあすから』。
まぁ、岡田麿里さんがメイン脚本手掛けたし、制作会社同じP.A.WORKSだしといろいろな部分で比較してしまいます。それは内容が似ているから無意識的に感じちゃう部分かもしれません。
見た方なら分かると思うのですが、どちらの作品も「時間」が1つの大きなテーマになっているわけで、やっぱり連想してしまうのは当然かなぁとも。
まぁ、TVシリーズ26話と単作映画1本とを比べるのでは不平等にも思えますが、私は『凪のあすから』に方が好きかなぁと。
その他、演技&演出
まず演技についてですが、良かったです。
主人公に関しては、その澄んだ細い声が響くし、そこに込められた哀しみや怒り、寂しさのような感情の変化が絶妙でした。また、泣き叫ぶシーンとの変わり方も凄い!
また、男の子は成長していくのですが、その過程を全部一人で演じられているというのが凄い! 幼い頃のあやふやな喋り方、思春期の声、青年になったたくましい声などしっかりした変化が凄いです。
映像に関しては、一応触れるものの、特筆するほどの事は無かったです。
もちろん綺麗でしたが、最近はTVアニメのクオリティが高いから、比較すると大差ないというか。
それでも、雄大な自然や細かい街並みは手が込んでいるでしょうし、大スクリーンで映し出しても違和感ない密度の背景は、なかなか大変なのでは無いでしょうか?
音楽はあまり意識してませんでした。聴いていたけど、内容と台詞の方に集中してました。個人的な印象ですが、川井憲次さんの音楽・劇伴ってBGMに徹している気がします。目立たず、あくまでも物語を影で支える事に特化しているというか。
エンドクレジットでの主題歌がめちゃくちゃ綺麗でした! 本当に、透き通るガラスか宝石のよう!
以降、映画本編のネタバレあり
映画の感想
※ネタバレあり
ネタバレあり感想
ネタバレありの感想ということで、少し書きます。
まず、エンドクレジットで知った部分について。
『さよ朝』の原作が「Iorph」となっているのは、『あの花』と『ここさけ』の「超平和バスターズ」と同じように劇中の存在を使っていて嬉しくなりました(笑)
作品のなかで1番印象に残っているシーンは、エリアルが幼い時、マキアが「ママって呼んでみて」と言ったシーンです。愛情が大きく芽生えたというか、母親として認めて欲しいと思うマキアの心が現れたシーンだったと思います。
あと、農場で飼っていた犬が死んでしまったところも。自分は別れを多く経験するとマキアが悟った場面であり、そして「(母親だから)泣かない」という約束の基になったシーンでもあるからです。
作品の中で好きだと思ったのがレイリアです。
彼女は幸せな暮らしを一瞬で奪われただけでなく、拐われ、后にさせられて子供を産んだあと、我が子に会うことも出来ずに幽閉されてしまう。
自分の運命を受け入れて、半ばあきらめたように我が子を思いながら生きる姿には本当に悲しみを覚えたし、「子どもに会わせて」とイゾルに迫るシーンの迫力・演技が凄かったです。
序盤
布を織るシーンから映画はスタート。
「縦糸は流れ行く月日。横糸は人のなりわい」。
姿が大きく変化することのないままに、何百年もの時間を生きる伝説となった民、イオルフは「別れの一族」と呼ばれている。
彼らは人里離れた山奥で、ヒビオルという布を織って生活していた。
そして布を洗う3人の少女と少年。
高い崖から飛び降りたのは、男勝りのレイリア。彼女に好意を抱く少年がクリム。そして、主人公のマキア。
楽しい時間の終わり、レイリアとクリムは両親の元へ帰るが、マキアに親はいない。
孤独と寂しさを感じるマキアに、長老は大切な教えを口にする。
それは「村の外に出ても、愛してはダメ」ということ。
ある夜、青白く光り輝く花が咲き、大きな月の夜中へと飛んでいく。その美しい光景の中に映るのは、不穏の影。
イオルフ族の血を求めてやって来たのは、古の獣レナトに乗ったメザーテ軍の兵ら。彼らは村を焼き、民を殺して行った。
その蛮行の最中、レナトの1匹が暴れだし、マキアを連れて夜空高くへ飛び去ってしまう。
レナトは体から炎を吹いて死に、マキアは森へ落下。再び開けたマキアの目に映ったのは、真っ赤に染まる故郷の村の空。
絶望に駆られたマキアは崖から飛び降りて、自ら命を絶とうとする。
そんなマキアの耳に聞こえてきたのは、微かな赤ん坊の鳴き声。
着いたのは賊に襲われて全滅した商隊の荷馬車。中では息絶えた母親が最後まで守ろうとした、一人の小さな赤ん坊が泣き声をあげていた。
現れた旅商人バロウの忠告を無視して、マキアは赤ん坊を取り上げ、抱きしめる。
赤ん坊からは、お陽様の匂いがした。
そして、タイトルバック。
前半
赤ん坊にお乳を与えようとマキアが忍び込んだのは、ある農場のヤギ小屋。そこで出会った農場主で、女手一つで2人の息子を育てるミド、兄のラング、弟のデオルと一緒に生活をしていく事になる。
ラングに赤ん坊の名前を聞かれたマキアは、とっさに「エリアル」と名付ける。
ミドの紹介で仕事を見つけ、なんとか生活をしていくマキアとエリアル。
月日は流れ、エリアルは成長する。
立ち上がり、歩くようになり、言葉を話すように。
ふいにマキアは、エリアルに話しかける。「ママって呼んでみて」
応えるように「ママ」と呼ぶエリアルを見て、嬉しい感情がこみ上げて来るマキアだった。
幸せな日々は長く続かなかった。
ミドの農場で飼っていた老犬が息を引き取った。涙が込み上げてくる皆んなだったが、マキアはここでは悟る。
「長生きをする自分には、誰かとの別れが自分よりも先に来てしまう」と。
そして、突然の知らせが舞い込んで来る。
布屋に持ち込まれたヒビオルを読んだマキアは、レイリアが城へと連れ去られ、王子と結婚するという事を知る。
ミド達に別れを告げ、マキアはエリアルを連れて王都の城を目指す。途中、荷積みの船で出会ったのはクリムだった。
クリムは、生き残った数人のイオルフと共に結婚パレードを襲い、レイリアを奪還する計画を立てていた。
そして結婚パレード当日。
襲撃と撹乱に成功し、マキアはレイリアを連れ戻す事に成功した。
しかし、レイリアは一緒に行く事を拒む。彼女のお腹には、王子の子供が宿っているから。
計画は失敗し、クリムらはマキアを置いて去っていった。残されたマキアは生活をする為、仕事を探す。しかし見た目が幼い彼女を雇ってくれる所はなかなか見つからない。
夜、疲れて宿へと戻ったマキアは、待っていたエリアルが勝手に機織り機を使っているのを見て怒鳴ってしまう。
「どうして言うこと聞けないの?働かなくちゃ生きていけないんだよ?」
怒られたエリアルは雨降る外へと飛び出す。マキアは怒った自分に対して、母親の自覚がないと涙を流す。そしてエリアルを探しに外へ。
ずぶ濡れになったエリアルを見つけたマキアは、抱きしめる。そして一言 「このまま大きくならなければいい」
するとエリアルが応える。「大きくならないと母さんを守れない」
中盤
マキアの性質上、同じ場所に長居する事のできない2人は、町を転々としていく。そして、今は製鉄で栄える大きな町ドレイルにいた。
マキアは酒場の給仕として働き、成長したエリアルは製鉄工場で働くようになった。
そんな中、偶然町に番兵として派遣されたのは、ヘルム農場のラングだった。
彼はマキアに、ずっと抱いていた自身の気持ちを伝えるも、彼女は「エリアルの事しか考えられない」と答える。
一方、メザーテの城。
古の獣レナト、そして伝説の民イオルフの存在により周辺国への牽制を目論んでいたメザーテだったが、レイリアの産んだ子供はイオルフの特徴を持たない普通の人間だった。
出産後、レイリアは子供から引き離され、部屋に閉じ込められた日々を送り、ずっと我が子の事を考えて生きてきた。
「子供に会いたい。」「マキアを連れてきて。」「ひとりは嫌だ」
彼女の気持ちが溢れ出す。
マキアはまた引っ越しをしなくてはならなくなった。その事をエリアルに伝える。
酒に酔ったエリアルは、ヒビオルを踏みつけ、そして彼女に向かって言ってしまう。
「俺は貴方の事を母と思ってないから」
翌日、ラングに殴られるエリアル。そして彼は本当の気持ちをそっと口にする。
「守りたかった」と。
2人は町を去る。
エリアルは兵士になって家から出て、マキアから離れていく。
笑顔で送り出すマキアは、しかし彼の姿が見えなくなると悲しみを堪えきれない。
後半
時間は流れ去る。
大人になったエリアルはメザーテに尽くす兵士として成長し、そして幼き頃に遊んだディタと結婚して子供を授かっていた。
一方、マキアはクリムによって囚えられていた。共生し、イオルフ族全員で1枚のヒビオルを織り上げるという伝統を頑なに望むクリムにとって、「自分の時間」を歩んでいくマキアやレイリアが重ねてきた過去を認める事が出来なかったのだ。
そしてある日、メザーテは隣諸国からの攻撃を受け、戦争に突入した。理由は「古の存在」を軽んじたとされたから。
エリアルは兵士として戦いへ向かう。それを引き留めようとするディタのお腹では陣痛が始まろうとしていた。
戦火から逃げるマキア。彼女は城にいるレイリアの元を目指す途中で一人の兵士とすれ違う。
一瞬。見つめ合った2人はすぐにお互いに気がつく。マキアとエリアルの2人。
しかしすぐに別々の方向へと走り去っていく。
走る途中、マキアはどこからか響く苦痛の声を聞く。声のする方へ向かうと、そこには陣痛に倒れる女性の姿が。
マキアに気がついたディタは、お腹の子供がエリアルの子であると告げ、そして出産をする。
産まれた小さな子を見て、マキアはエリアルと出会った日のことを思い出し、彼が産まれた瞬間に想いを馳せるのだった。
その頃、戦の混乱に乗じて城に忍び込んだのはクリムは、レイリアの元を訪れていた。 そして、過去を消そうと迫るクリムを拒否したレイリアに対して、心中を強いようとする。
城に火を放ったクリムを殺したのは、将軍イゾルであった。
エリアルはメザーテに尽くす兵士として戦う。
初めは国に忠誠なんて誓ってなかった。でも、結婚して、家族が出来て、子供が産まれる今、メザーテは「自分の居場所」であり、その場所を守る為に戦う。
しかし、敵の兵から一撃を喰らってしまう。
戦争は佳境を超え、メザーテは敗北の色を顕にした。
傷ついた兵らが集まるなか、エリアルは目を覚ます。灰が雪のように舞う中、目の前にはマキアの姿があった。
謝るマキアに対して、彼は言う。
「優しさを、強さを、必死さを、誰かを愛する事を教えてもらった」と。
終盤
国王と王子は逃げ、敗北したメザーテの城に残ったのは幼き姫メドメルだった。城の屋上に立つメドメルは、自らの運命を悟る。
不意に背後の扉が開き、現れたのは真っ白な髪と服に身を包んだ美しい女性、レイリアの姿が。
レイリアは自分の子供をようやく目にする事ができた。そして彼女は高い城の上から海に向かって大きく飛ぶ。
「私なら飛べる」と。
城から飛び降りたレイリアを受け取ったのは、最後に1匹残ったレナトに乗ったマキアだった。
伝説の存在である彼女らは、空の彼方へと消えていく。
それから数十年後。
ヘルム農場の近くには、相変わらず見た目の変わらないマキアの姿があった。彼女は、エリアルに会いに来た。祖父となり、もう短い命となった彼に。
少しの時間、床で横になるエリアルの傍らに座り、そして眠るように死んだ彼に、マキアは声を掛ける。
「いってらっしゃい。」
農場からの帰り道。
ずっと昔にエリアルと交わした「泣かない」という約束を破って涙を流すマキア。
しかし、彼女の口から溢れた一言は悲しいものではなかった。
「愛してよかった」と。
今回、来場者特典として頂いたのは、マキアが描かれた美しいポストカードでした!
そして、パンフレットも購入!
最後まで読んでくださり、
本当にありがとうございました!!