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【アニメ映画】『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』:物語の《深み》はあっても《厚み》はなく。

※ネタバレなし。
※画像は予告映像のキャプチャです。

2019年4月20日鑑賞

劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 

【評価:3.5/5.0】

 
【一言】

アニメーションに、最上級の拍手を!
風景と空気も、動作も演奏も、所作全てが丁寧で美しい!

部内の人間関係を描き出す物語も秀逸!
ただ、「1年」という時間を100分で描くのは無理があり、(悪い意味で)劇場総集編のようだった。

 
【Twitter140文字感想】

 

 


 

 

【目次】

 

 

ストーリー&メモを表示

 

STORY&STAFF

 

昨年度の全日本吹奏楽コンクールに出場を果たした北宇治高校吹奏楽部。

2年生の黄前久美子は3年生の加部友恵と、
4月から新しく入った1年生の指導にあたることになる。
全国大会出場校ともあって、多くの1年生が入部するなか、
低音パートへやって来たのは4名。

サンライズフェスティバル、オーディション、そしてコンクール。
「全国大会金賞」を目標に掲げる吹奏楽部だけど、問題が次々と勃発して……!?
北宇治高校吹奏楽部、波乱の日々がスタート!
映画公式サイト

予告動画

 

監督: 石原立也
原作:武田綾乃
脚本: 花田十輝
制作:京都アニメーション
音楽: 松田彬人
キャスト:黒沢ともよ, 朝井彩加 and more.
上映時間:100分
日本公開:2019年4月19日
配給:松竹
公式サイト

 

 

 


 

 

 

映画の感想

 

感想外観

 

 待ちに待った『響け!』の劇場版!
 やっぱり、素晴らしい作品だし、映画館で観るに相応しい素晴らしい作品でした!

 しかし、物語の《深み》はあっても《厚み》はなく、非常に残念でした。
 やっぱりTRUEの主題歌は最高!

「Blast!」MV Short Ver.

 まず、「劇場版」という点が一長一短でした。

 良い点としては、これまでTVシリーズで描いてきた1年間と、『リズと青い鳥』で描かれた2人の物語が、今回の「第2楽章」で重なっていた点です。
 入学・練習・演奏・卒業と春夏秋冬巡る季節と学年が重なり、映像で映し出された以上の深い部分まで頭の中で読めるよう。

 しかし、「新しい1年間」を描く第2楽章の物語において、たった100分という劇場版の時間はあまりにも短すぎでした。なんだか、TV総集編の前劇場版2作のように思えてしまいました。早送りで見ているような感じがして、勿体無いと感じました。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 演奏のシーンは圧巻ですね。
 楽器の輝きと、北宇治吹部の煌めきがステージ上で一緒になり、音楽が奏でられるその様子は「素晴らしい」という一言に凝縮されます。演奏後、拍手をしそうになりました!

 しかし、音楽の面ではまったく感動出来ずに残念。
 「三日月の舞い」は“あの演奏”に至るまでの練習と部員の感情全てが描かれたからこそ、演奏の先に《感動》があったけど、“総集編”たる本作では省略された部分もたくさんあろうて、《感動》は生まれませんでした。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 やはり、アニメーションの美しさは絶品!
 ピストンを押す指、振り向き乱れる髪、表情の精細な変化……と「心情」をそのまま描き出すような丁寧で美麗な所作のアニメーションに感嘆しました。

 また、そんな素晴らしいキャラクターの背景を飾る風景と、それによる絶妙な空気感が本当にひしと伝わってくるようで「見事」としか言いようがありません!

 そんな映像が描き出すキャラクターと物語。
 部活の練習、お互いの人間関係、将来への不安、友達への気持ち……等の「本音」を含む“面倒くさい”人間関係や感情心理を鮮やかに、面倒くさく描写する物語が相変わらず素晴らしいです!

 “理想”に流されない、“面倒臭さ”をしっかり残しているから、凄いと思います。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 

 

 

 

「省略」の背景にある「頑張り」

  

 劇場版の本作『誓いのフィナーレ』。
 人間関係や心情を描く物語は相変わらず凄くて「深み」はあるのですが、省略が多い分、「厚み」に乏しいと感じました

 その物語を厚さを埋められるのは、やっぱり、彼女達が重ねてきた頑張りの過去だと心の底から思います。
 これは一重に『響け!』というシリーズが、これまでに『TVシリーズ』と『リズと青い鳥』という作品群で、何人もの部員を登場させ、彼女/彼らの外側も内側も濃く深く描いていたからに他ならないと思います。

10分でわかる 『響け!ユーフォニアム』

 確かに、本作は「省略」が多いです。
 あとで書きますが、TVシリーズ等と比べると圧倒的に物語が薄いと感じました。しかし、その薄さを補填するように作用していたのは、このシリーズが積み重ねてきた「物語」があってこそだと思います。

 本作で描かれるのは、基本的には重要イベント(楽器選びやサンフェスetc.)を軸にした1年新入部員と久美子たちのやり取り等であり、練習シーンの多くは省略されています。

 しかし、省略されたその「時間」の裏に、血の滲むような練習や、泣きたくなるほどの葛藤があるであろう事を私達は知っています。だって、黄前久美子を主人公にしたTVシリーズでその頑張る姿を見てきたから。『リズと~』でみぞれの悩む背中を見ていたから。

 「彼女たちは頑張っている」ということは描かれなくても分かるし、むしろその頑張りの結果として出力され、描き出された映像を大いに評価したいです!

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 

 

 

 

めぐる季節と重なる季節

 

 黄前久美子が入部し、月日が流れ、あすか先輩らは卒業。進級した久美子らが迎える「二度目の春」と「新しい部員」
 高校という舞台で、繰り返し巡る季節が重なり、過去の物語も、本作の物語も、双方をより深くしていたと感じました。

 これこそ、高校の部活動のあるべき、そして描かれるべき姿だと思います。

 高校の部活動。
 毎年、3年生は卒業し、在学生は進級し、新1年生が入部してくる。去っていった先輩の伝統を引き継ぎ、後輩を指導し、そして毎年恒例となっている練習や大会を行う。

 なんら特別なイベントのない、普段通りの1年。これが普通だと思います。 
 黄前久美子を主役にし、北宇治高校の吹奏楽部を舞台にしたこの作品で、そのサイクルと普通に描いていた点がなぜか非常に感動しました。

 キーワードは「繋がる」と「成長」ですかね。

 去年は静香先輩が立っていた場所に優子先輩が立っている。引退した先輩に思いを馳せる。春の楽器選び、初夏のサンフェスと夏の合宿。そして秋の大会。
 一度観た景色が想起され、世代交代はされつつも、滝先生と先輩で創り上げた“伝統”がしっかりと受け継がれ繋がっている。その様子が、まさに「普通の部活」のようでとても良かったです。

 そして、2年生は3年に、1年生は2年生に進級。久美子らの成長はすぐく分かるし、その成長の背景にある物語はすべて描き切られているという点がまた素晴らしいです!

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 

 

 

 

100分で描く”早送り青春”

 

 結論から言って、100分で描くのは無理です。
 そのくらい『響け!』の作品の根底に流れるキャラクター達の言動や感情は大切だし、それがたかが練習であっても省略したら「厚み」が薄れてしまいます。

 今回は、悪い意味で「劇場総集編」を観ているようでした。

 『響け!』の劇場総集編は2作公開されています。
 第1シリーズ『北宇治高校吹奏楽部へようこそ』と、第2シリーズ『届けたいメロディ』の2作は私ももちろん劇場で観ましたが、過去最高というレベルで見事にまとまった総集編となっていて、素晴らしいと絶賛したし、感動で泣きました。

 あの素晴らしさってどこにあったのか考えると、やっぱりTVシリーズに起因すると思うんです。30分という時間をかけて毎回描いてきた物語が根底にあるから、総集編とした時もその場面が浮かんできて感動できるんだと思います。
 また、長い物語の焦点を絞った総集編になっていたという点も秀逸だったと思います。

『~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~』予告

 そして本作。
 本作を観て感じたのはまさに「総集編を観ているよう」ということでした。重要なイベントしかピックアップされず、楽しい高校生活は大胆に省略され、《青春のダイジェスト版》を観ているとしか思えませんでした。

 もちろん原作未読なので分かりませんが、巻数等から察するに原作に忠実にアニメ化しているのだと思います。また花田十輝さんの脚本は完璧だし、物語の展開も内容も非の打ち所がないほど完璧に完成されています。

 しかし、TVシリーズでの細かな青春物語描写や、たった2人だけにスポットライトを当てた『リズ~』が頭の中で残響している中、本作の「総集編的青春」はとっても薄く映ってしまって残念でした。

 人間関係や人間の感情は、少しずつ積み重ねて、一緒の時間を過ごして初めて形成されるから、ちょっとした日常や高校生活の描写も大切だと思います。

 

 

 

 

圧倒的な演奏シーンなのに……

 

 『響け!』の魅力の1つは演奏シーンです。
 照明を浴びて輝く金管楽器の光と、希望に煌めく北宇治高校吹奏楽部のメンバーの輝きが一緒に合わさり奏でられる最高の音楽は、本当に素晴らしいです!

 演奏が終わって一瞬の後、観客は拍手。映画を観ている私もその素晴らしい演奏に拍手をしたくなりました!

 やはり音とアニメーションが凄いです。
 数十人いる壇上の奏者全ての動作を描き、ピストンを押す指や息継ぎで揺れる頭まで丁寧に描写するその細かさと、計り知れない労力を割いたであろう仕事に感服の限りです。

 また、映画館のスピーカーから流れる音楽も、素人の私でも心揺さぶられるような素晴らしい音色が響いてきます。楽曲の主題を伝えるかのような「音の形」がとにかく豊かです!

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 しかし、本作では感動しませんでした。
 原因はやっぱり「省略」と、そして「楽曲」でしょう。

 TVシリーズと劇場総集編で演奏された「三日月の舞」は胸の奥深くからの感動が湧き上がってきたし、涙をこぼして演奏を聴いていました。
 その理由を考えると、「その演奏を作り上げた想い」を知っていたからということに尽きると思います。どれだけ頑張って練習したか、トランペット・ソロパートでどんなドラマがあったのか、その全てを知っています。
 だからこそ、北宇治吹部が完成させたその演奏に、涙を流すほど感動することが出来たのだと思います。

 しかし、本作ではそれが全く違ったのです。

 楽曲は『三日月の舞』ではありません。
 さらに、練習風景は大幅に省略されているし、そこに至るまでの部全体の流れもカットされ、物語の焦点は久美子から基本的には動きません。

 なんの思い入れもない観客にとっては、そこに感動の入り込む余地は微塵も無かったと思います。本作は「音楽で感動させる」作品ではなくて、「人間関係の描写」を見せるための作品だったのではないかと思いました。

 

 

 

 

臆すること無く人間関係を描く

 

 TVシリーズも『リズ~』も、そして本作も、登場人物の人間関係を描き出すという部分の丁寧さや、臆すること無く踏み込んだ心情が描き出されていて、本当に見事だと感じました。

 この点は、この作品の最も優れた部分だと思うし、これがあるからこそ、感動的な音楽も、美麗なアニメーションを生きてくるのだと思います。

 「面倒くさい」ことをそのまま描く。
 これが出来ているからこの作品は凄いのだと思います。

 部内の仕事と立場は大変で、他人からの評価は怖いし、将来の夢は分からず不安だし、恋愛の難しさに答えはないし、後輩との距離は悩ましいし、先輩への憧れは冷めないし。
 人間関係って本当に面倒くさい。

 その「面倒くさい」から逃げずに真正面から描いているからこそ、登場人物の感情は鮮やかに描き出されるし、決して“理想”によらない青春の姿が描き出されているのだと感じました。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 楽しいところだけ抜き取ったり、簡単な選択肢だけを追いかけたり、非現実的な成功だけを描いたり、そもそも何も描かなかったり……そういう事が一切ないこの作品。

 登場人物に喋らせ、誰もが隠したがる「本音」を解くように暴き、それを“解消”に導くまでを描くその部分が、なによりも評価されるべき物語の正体なのだと思います。
 進級した久美子たち、新しく入った低音パート一年生、3年生たちとの関係……表面だけじゃなく、むしろ胸の中を晒す勢いで臆すること無く描写される物語が本当に素晴らしかったです。

 

 

 

 

美麗なアニメーションは天下一

 

 「アニメーションが綺麗すぎる!」
 もう、これはいつも言っている。京アニの作品を観る度に書いていることですが、本当にそう思うから仕方ない!

 勿体無いくらいに丁寧だし、漂ってくる空気の“質”が圧倒的だし、息するのすら躊躇われるほどに美しいです!

 先程もちょろっと触れましたが、演奏シーンのアニメーションはもはや神業ですよ。一体どれほどの労力とリソースを割いてあのシーンを作り上げたのか……。

 壇上にいる数十人の動きは、楽器を演奏する指先から、指揮者を見つめる瞳の奥まで滑らかに描かれているし、周囲のパートメンバーと一糸乱れぬ動きが描かれます。

 そして驚くのは、その全てを描きで描いているであろう点。
 最近のアニメでは、細かい部分や集団を描くときはCGを用いることが多い印象です。もちろんそれが悪いとは言いません。しかし、本作を観てしまえば、CGはチープに感じてしまうし、手描きの質感を超えることはないと思い知らされます。本当に、凄い!

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 そして、キャラクターの容姿と所作の丁寧さったら!
 振り向く動作の揺らぎとか、言葉では表せない心情を反映したような表情とか、髪の毛の細い線とか……。とにかく、細かい部分すべてが愛おしいほど丁寧に描か入れていて、まさに感動です。

 そして、登場人物の不安や安堵や緊張感まで全てを演出し醸すような「空気感」とも言うべき“質”と“重み”がとにかう凄まじかったです!

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 

 

 


 

 

 

以降、映画本編のネタバレあり

 

 

 


 

 

 

映画の感想
※ネタバレあり

 

新しい春夏秋冬と、新しい登場人物

 

 春から始まる物語。
 学校の階段で新入生を迎える吹奏楽部の演奏は全国クオリティになり、入部希望の新入生もたくさん。

 滝先生は今年も目標を「全国大会出場」にするか問い、優子先輩が「全国大会金賞」にあ書き換えて目標を決める。
 一年前と同じ光景が広がり、しかし確実に成長している北宇治のメンバーの顔を見るだけでとても嬉しかったです!

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 そして新入部員。
 本当に面倒くさいメンツが入って来ましたね(笑)

◆他人の評価を気にする久石奏
◆周囲とは距離をおくクールな鈴木美玲
◆明るく可愛く振る舞う鈴木さつき
◆名字で呼ばれるのを拒否する月永求

 アニメを見る限りでは、低音パートに個性的なキャラや問題児が集まるようにも思えますが、それはこの年も変わらなかったようですね(笑)

 さらに言えば、映画のエンドロール後でもまた「春」が。
 こうしてめぐる季節を描くのって本当に難しいし、この変化を受け入れるのもまた作者としてキャラの成長をそのまま観ているような部分があるのだろうと想像せずにはいられませんでした。

 

 

 

 

黄前久美子の”面倒くささ”

 

 やっぱり黄前久美子の「面倒くさい」と「ズルさ」。
 この2つは物語の根幹をなしているし、描き方が見事です。

 あの久美子の性格って、人間としても架空キャラとしても珍しいと思います。そして、それを本心でしているからこそ、より凄いのだとも思います。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 新1年の美玲とさつき、「どっちが好き?」と問われた久美子。
 彼女がどう答えるかって予想できたし、その予想通りに答えが放たれたのを聞いて、「あぁ、やっぱり彼女は久美子だ」と強く感じました。

 奏が「ズルい」と言ったけど、それが久美子の本心。
 自分の考えが自然と逃げ道を選ぶような、そういうところが本当に大好きです。

 一方で、その逃げ道を放棄するのが彼女。
 自身の逃げ道はあっても、口からでるのは本心の言葉で、相手の本音を吐き出させるような“反共感”とも受け取れるコミュニケーションが凄いなぁと。

 冷静に状況を分析し、一歩引いたところに立っていながらも、感情的に踏み込んでいく彼女のキャラクターは、他にはない強さの魅力を持っていると感じました。

 ズルくて面倒くさいからこそ、彼女を通して描かれる北宇治を俯瞰するような『響け!』は、人間関係が綺麗に浮かび上がるし、いつの間にか本音を打ち明けている、そんな物語になっているのだろうと改めて感じました。

 これも、新しい新入生との出会いとやり取りがあったからこそなのは間違いないです……きっと。

 

 

 

 

新入生は問題だらけ!?

 

 新しく低音パートに入った新入生4人。
 なかなかのツワモノというか「面倒くさいキャラ」という雰囲気が最初から漂っていましたよね。

 それでも、彼女/彼らが抱えているものが解きほぐされていったとき、やっぱり「良いキャラクターだったなぁ」と思うから凄いです。

 特に久石奏。
 彼女も、中学時代に傷を追った1人でした。
 年功序列的な部活の中で、自分を殺してまで身を守ろうとする彼女の姿は、なんだか色々と重なる部分がありました。

 そんな彼女を救った……少なくとも手を差し伸べたのは黄前久美子。
 奏の努力を肯定し、北宇治の“強さ”を教え、本気でやることや頑張ることの(1つ)の意味をそっと教え、それを受け取ったのが本当に良かったです。

 雨の中、ずぶ濡れになりながら追いかけ、やっと口を開いた彼女が「本音」を語るシーンは印象的だったし、大会後のバスで「悔しい?」と問われた彼女が「悔しくて死にそう」と言った場面もまた強く印象に刻まれました。

 なんでも知っていて、でもかき回さずに遠巻きで眺め、主人公の久美子だけに絡むその姿を観て、『〈物語〉シリーズ』の「忍野扇」を思い出しました。あの飄々とした身のこなし方とか舞台上での立ち回りが、なんとなく似ていたんですよね。

 もうひとり、鈴木美玲。
 彼女には結構感情移入をしました。練習後にダラダラしたくないし、自分より能力の低い人が評価されるのも嫌。でも、皆とは仲良くしたくて、その方法が分からない。

 不器用というか、繊細すぎるというか。
 私自身がそういうところあるので、共感したし、彼女の気持ちは結構早くから気がついていたとも思います。

 彼女の悩みを「まずは玲ちゃんって呼んで貰えば?」という一言で解決する久美子はやっぱり凄い。サンフェスの時にあだ名で呼ばれる練習をしていたシーンは面白かったし、無事に皆の仲に戻れたときは本当に嬉しかったです!

 

 

 

 

黄前久美子と高坂麗奈

 

 やっぱり、この2人は次元が違います。
 溢れ出る美しいオーラというか、相手に触れ溶けそうな距離で接する様子が、絶妙なバランスを保っていて、とにかく美しいです。

 《百合》の定義が「ちょっと特別な女の子の関係」ならば、まさにこの2人は、言葉では表現できない繋がりと共感で結ばれた関係です。

 大吉山の頂上でのシーンは最高。
 再びこの場所で、夜の京都を見下ろしながら会話するこの美しいシーンを観られたことにただただ感謝です。この場所ではお互いの本音を言えるような、本当に特別な場所で場面だと思います。

 TV版では真っ白な麗奈の姿に叙述し難い美しさを覚えましたが、本作ではそれと対照的に黒い衣装を来ていて、その佇む雰囲気にドキリとしました。
 りんご飴を交換するあの官能的な美しさが凄いし、トランペット演奏前に口をゆすぐ描写がまた丁寧で本当に驚きました。

 この世のものとは思えない、官能的で詩的な美しさの漂う素晴らしいシーンだったと思います。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 この2人は、どこまでいっても主役だし、その補完的な関係は変わらないで欲しいし、なにものにも例えがたいその仲はいつまでも一緒でいて欲しいと切に願います。

TVアニメ『響け!ユーフォニアム』 第八回 予告

 

 

 

 

嬉しかったこと、悲しかったこと

 

 最も嬉しかったのは、「鎧塚みぞれと傘木希美」の関係です。
 『リズと青い鳥』で丁寧に深く描き出された2人の関係と、互いの成長が、本作ではそっと描かれていたと思います。それは、決して直接的ではないけれど、確実にしっかりと。

 一番印象的だったのは、ラストの演奏。
 みぞれのオーボエが高く響かせる音色は本当に綺麗だったし、希美のフルートとのセッショが描かれたときは、もう感無量。

 これが描かれたのは本当に嬉しかったです!

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 嬉しかった、もう1点。
 鈴木美玲がマーチングバンドに戻ってのサンフェス。行進しながら葉月やさつきとアイコンタクトをとり、微笑む彼女を観られて安心しました。

 悲しかったことは、やっぱり「省略」です。
 主人公ではなくでも、新しく入った一年生たちの頑張りは描いてほしかったし、それが少なかったから、ラストの演奏でも感動出来なかったと思うと悲しいです、

 この部分は「悲しかった」というの自体が間違いのような気もしますが、悔やみきれないというか、心残りとして胸に引っかかっているんですよ……。
 可能であれば、やっぱり12話構成のTVアニメとして見てみたいと思います。

 

 

 


 

 

 

 原作は『波乱の第2楽章』で、劇場版の副題は『誓いのフィナーレ』。
これで終わりなのか、まだまだ続くのか、一体どっちなのでしょう!?(もちろん続いてほしいに決まっている!)

 それから、来場者特典を頂きました!

 

 

 

 最後まで読んでくださり、
 本当にありがとうございました!!

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