2018年1月13日
ルドルフ2世の驚異の世界展
@Bunkamura ザ・ミュージアム
【 一言 】
手中に収めた領土からあらゆる物品を集めたルドルフ2世。
芸術、科学、宇宙観、占星術、錬金術、動植物、知識、絵画、工芸品……権力の誇示以上に、純粋な興味と好奇心からの蒐集というのが好印象。
様々な美術品が無秩序に集められ、豪華な宝箱を開けたよう!
【 目次 】
美術展概要
プラハに宮廷を構え、神聖ローマ帝国皇帝として君臨したハプスブルク家のルドルフ2世は、稀代の収集家として、また芸術の庇護者として知られています。
彼の宮廷には世界各地から優れた人物たちが集結し、芸術作品、あるいは科学機器などのあらゆる優れた創作物、更には新たに発見された珍奇な自然物などが集められ、膨大なコレクションが形成され、当時のヨーロッパの芸術文化の一大拠点ともなりました。
本展ではルドルフ2世が愛好した芸術家たちの作品を中心に、占星術や錬金術にも強い関心を示した皇帝の、時に魔術的な魅力に満ちた芸術と科学の世界をご紹介します。
(公式サイト より・一部改変)
紹介スポット映像
全体的な感想
世界をその手に収め、「太陽の沈まない王国」とまで呼ばれたハプスブルク家。その広大な領土各地から集められた収集品の数々。
皇帝が権力・財力・人脈を通して蒐集した自然物・人工物・科学物を展示した「驚異の部屋」。
(アメリカ自然史博物館所蔵『Cabinet of Curiosities』 / この作品は本美術展に出品されていませんが、「驚異の部屋」を描いた最も代表的で有名な作品です。)
ありとあらゆるジャンルの芸術品が、無秩序に、しかし規則持っているかのように並べられ、そのどれもが高いクオリティを誇るコレクションを観た時は、「宝箱を開けたよう」でした!
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ただ権力を誇示する為だけに集められた物ではなく、むしろ純粋な興味と好奇心からなる蒐集活動だから、品々のどれもが面白いです!
また、ジャンルがバラバラだから本美術展では、章を変え、展示品を変えて見る毎にまったく違う作品が現れるから、楽しかったです! 宗教とか、流派とか作者に縛られない展示だから、飽きないですね!
皇帝が愛した作品や画家達という事もあるのか、その作品はどれも綺麗です。細部まで描きこまれた絵画や、遊び心が溢れる絵画、繊細な工芸品や写実的な動植物画、
加えて、錬金術や占星術&天文学といった現代では半ばオカルト的な扱いを受けている分野の展示もあり、非常に興味深かったです。
あとはやはり、皇帝という絶大な権力と財力に驚きましたし、「驚異の部屋」というコレクションルームの凄さも想像以上でした。 世界を治めたいという野望の片鱗が見えているのかなぁ〜なんて思ったりしました。
美術展各章感想
※作品名や作者名の表記は作品リストによります。また、各感想に付いている番号 は作品リストと対応しています。
※スマホなどで見ている方は、端末を横向きにすると、掲載している作品が大きく見ることが出来ると思います。
プロローグ │ ルドルフ2世とプラハ
神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ2世は、1583年に首都をウィーンからプラハに移し、独自の芸術文化をその宮廷に花開かせた。
特に美術の大家の作品の入手に努め、彼らを宮廷に呼び寄せ自然物も広範囲に収集、自身の嗜好の強い最高水準の芸術作品と珍奇な品々で構成された壮大なコレクションをプラハに築き上げた。
(公式サイトより・一部改変)
展示場内の様子(プロローグ & 第1章)
01 作品名: 皇帝ルドルフ2世 作品英題: Emperor Rudolf Ⅱ 作者(英名): ルーカス・ファン・ファンケルボルフ(Lucas van Valckenborch)
この肖像画はルドルフ2世が30歳頃のもので、傍らに置いてある帽子は彼が生涯愛したものだそう。言われてみれば、帽子被った肖像画も目にするかもです。
鎧の模様が細かくて綺麗! あと、白いタイツとか首周りのビラビラとかがハプスブルク家っぽくて良いです(当時の正装なんでしょうけど)
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03 作品名: ルドルフ2世の胸像 作品英題: Bustof Rudolf Ⅱ 作者(英名): アドリアン・ド・フリース(Adriaen de Vries)
突き出た顎はハプスブルクの家系の特徴です。ハプスブルク家の象徴であるライアンが刻まれていたり、金羊毛騎士団の首飾りをつけていたりとモチーフが盛りだくさんです。
この像の裏には皇帝を表すワシがトルコ軍を表す蛇を押し潰している姿が刻まれています。
05 作品名: 皇帝フェルディナント1世 作品英題: Emperor Feldinand Ⅰ 作者(英名): ドミニクス・クストス(Dominicus Custos)
05~15までハプスブルク家の家系紹介とそれに合わせて何人もの肖像画が飾ってありました。この肖像画はフェルディナント1世です。
彼のモットーである「キリストの導きのもとに」が書いてあります。ちなみに、フェルディナント2世のモットーは「力は運命に打ち勝つ」だそう。
17 作品名: プラハの眺望 、『世界の都市地図帳』より 作品英題: The View of Prague from Civitates orbis terrarum 作者(英名): アナンベルクのミヒャエル・ペテルレ(Michael Peterle of Annaberg)
ルドルフ2世が都を置いたプラハの町を俯瞰した版画です。奥にプラハ城が見え、手前の橋はカレル橋だそう。
20 作品名: 泰西王侯騎馬図(複製) 作品英題: The Western Kings on Horseback screen (Replica) 作者(英名): 作者不詳(Anonymous)
左からローマ皇帝、トルコ皇帝、モスクワ大公、タタール・カーンと王たちが描かれたなかなか豪華な絵です。そして、1番左の人物はルドルフ2世が有力と言われています。
確かに下顎が出ているから、少なくともハプスブルク系ですよね。
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第1章 │ 拡大される世界
15世紀半ばに大航海時代が幕をあけて以降、ヨーロッパでは領土の拡大のみならず、未知の世界探検が行われ、新たな動植物や鉱物などが発見されていく。
プラハでルドルフ2世の宮廷文化が花開いた16世紀末から17世紀始めは、望遠鏡による天体観測が始まり、ガリレオ・ガリレイ(1564〜1642年)が地動説を唱えるなど、人々の宇宙への眼差しも飛躍的に広がった時代だった。
本展では天体観測機器のほか、天文学や錬金術に関する貴重な資料を紹介する。
(公式サイトより・一部改変)
展示場内の様子(プロローグ & 第1章)
21 作品名: バベルの塔 作品英題: The Tower of Babel 作者(英名): 作者不詳 (Anonymous)
聖書に載る伝説である「バベルの塔」はルドルフ2世のお気に入りのテーマだったらしいです。 有名なブリューゲルの絵は緻密さと現実感があるのに対して、この絵は壮大で神話的だし、「神のいる天を目指そう」とする人間の傲慢さと、神の怒りが上手く描かれているように感じました。
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23 作品名: アレクサンドロス大王との戦いの後、逃げるペルシア王ダレイオスのいる風景 作品英題: Landscape with King Darius of Persia Fleeing after a Battle with Alexander the Great 作者(英名): ヒリス・ファン・ファンケルボルフ(Gillis van Valckenborch)
「イッソスの戦い」を描いた絵画ということです。個人的に、“敗北感”がとても伝わって来るような気がして好きです……………ただ、ダレイオスがどこに居るのか分からないです(悩)
24 作品名: タペストリー「アレクサンドロス大王に恩寵を感謝する女性たち」 作品英題: Tapestry”Women thanking to Alexander the Great for his grace” 作者(英名): ヤーコプ・ド・カルヌ(Jacob de Carnes)
タペストリーということですが、これが布だなんて信じられないくらいに細かいし、柄も綺麗です。で、アレクサンドロス大王ですが、彼の靴面白いです(笑)
26 作品名: 村の略奪 作品英題: Plundering of a Village 作者(英名): ルーラント・サーフェリー(Roelandt Savery)
この絵を観て最初に思ったのは「『混乱』という言葉が似合うなぁ~」ということでした。雪が静かな背景を醸し出す一方で、人々の姿からは喧騒が聞こえてきそうです。
中央では女性たちが手を合わせて懇願していたり、左側では捕虜となった男性が連れてかれたりと、情け容赦ない略奪の風景が描かれていました。
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27 作品名: 峡谷の眺望 作品英題: Landscape with the View over a Fluvial Vally 作者(英名): マールテン・ファン・ファンケルボルフ(Marten van Valckenborch)
鉱山のある峡谷の風景です。この頃、鉱山を描いた絵が増えたらしいんですが、その原因の1つには当時の錬金術ブームがあったそうです。
29 作品名: ノイゲボイデ城近くの散歩道に立つ皇帝 作品英題: The Emperor on Promenade near Neugebaude Palace 作者(英名): ルーカス・ファン・ファンケルボルフ(Lucas van Valckenborch)
赤い衣装で金羊毛騎士団の首飾りを下げているのが皇帝で、周りににいるのは兄弟たちだそう。第一印象は「なんか可愛い(笑)」でした。皇帝たちの服装とか格好とかがどこか可愛らしげに感じました。
あとは、花を捧げようとするお爺さんの存在がすごく和みます。あ、奥に見えるのが題名のお城です。
30 作品名: 『天文学教科書』 作品英題: Emperor’s Astronomy 作者(英名): ペトルス・アピアヌス(Petrus Apianus)
30~40までは皇帝が関心を抱いていた天文学に関する作品や資料が展示してありました。
この教科書は円形の天球図がクルクル回せます。そのことで天動説を説明しているんだそうです。
32 作品名: デンマークの天文学者ティコ・ブラーエの肖像 作品英題: Portrait of Danish Astronomer Tycho Brahe 作者(英名): 作者不詳(Anonymous)
彼は決闘で鼻を削られてしまい、人工の鼻をつけているんだそう。言われてみると、この肖像画でもそのことが分かります。
左上の図柄は彼のモットーを表しているそうで、「風にも、渦巻く炎にも、波に対しても立ち向かう」というものです。
拡大画像(鼻の部分に線があります)
第2章 │ 収集される世界
プラハには、新たに発見された様々な物のみならず、新たに発明された科学機器、創造された芸術作品が収集される。動物、植物、鉱物などの珍奇な自然物も、皇帝の驚異のコレクションの一部を構成した。
(公式サイトより・一部改変)
展示場内の様子
43 作品名: 森の泉 作品英題: Forest Spring 作者(英名): ルーラント・サーフェリー(Roelandt Savery)
この絵、好きです! やっぱり荒廃した建物ってなんだかロマンを感じるし、少し「天空の城ラピュタ」を思い出したりしました。
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44 作品名: 大洪水の後 作品英題: After the Flood 作者(英名): ルーラント・サーフェリー(Roelandt Savery)
タイトルの「大洪水」はもちろん『ノアの方舟』での洪水です。それぞれの動物が雌雄ペアで描かれているのがなによりです。左から差し込む光が神々しい!!
45 作品名: 鳥のいる風景 作品英題: Landscape with Birds 作者(英名): ルーラント・サーフェリー(Roelandt Savery)
鳥類に絞られた沢山の動物たちが水辺で休んでいます。生息地とか現実ではありえない豪華な動物園です(笑) 『不思議の国のアリス』でお馴染みのドードーまで描かれています!
拡大画像
47 作品名: 動物に音楽を奏でるオルフェウス 作品英題: Orpheus Playing to the Animals 作者(英名): ルーラント・サーフェリー(Roelandt Savery)
オルフェウスは妻を失って悲しみに沈みながら琴を奏でます。動物たちは音色に引かれたのか、慰めようとしているのか……。ふっと宮沢賢治の『セロ弾きのゴーシュ』を思い浮かべました。
48 作品名: 2頭の馬と馬丁たち 作品英題: Two Horses and Grooms 作者(英名): ルーラント・サーフェリー(Roelandt Savery)
白馬の方、たてがみが長すぎですよ(笑) 2人の馬丁は長くポーズをとるのが嫌で、喋ってしまっているんだそう。両脇のオウムや馬&馬丁と左右対称でなんか落ち着きます。
49 作品名: 動物を魅了するオルフェウス 作品英題: Orpheus Charming the Animals 作者(英名): ヤーコプ・サーフェリー(Jacob Savery)
縦琴の名手であるオルフェウスは死んだ妻を取り戻そうと冥界に入りますが、「決して振り向くな」という約束を破ってしまいます。 まるで日本神話の伊邪那岐&伊邪那美や、ギリシア神話のオルフェウス&エウリュディケと似てますよね!
54(「絵画術・素描術の光」シリーズより) 作品名: 3頭のラクダ 作品英題: Three Dromedaries 作者(英名): ルーラント・サーフェリー(Roelandt Savery)
絵画や宗教画として見るように筋肉隆々な動物ではなく、写実的でありながら強そうなのがとても好印象でした。
55(「絵画術・素描術の光」シリーズより) 作品名: 3頭のヤギ 作品英題: Three Goats 作者(英名): ルーラント・サーフェリー(Roelandt Savery)
上作品に同じ。
65 作品名: 花束 作品英題: Bunch of Flowers 作者(英名): ルーラント・サーフェリー(Roelandt Savery)
沢山の花が活けられた花瓶。16世紀当時は、花瓶の花を描くというのは斬新なことだったそうです。
新鮮な花というよりもドライフラワーを創造してしまうのはニスとか色落ちのせいなのでしょうか?
67 作品名: 人生の短さの寓意(花と昆虫のいる二連画) 作品英題: Allegory of Brevity of Life (Diptych with Flowers and Insects) 作者(英名): ヨーリス・フーフナーヘル(Joris Hoefnagel, Follower)
「寓意」らしく様々なモチーフが埋め込まれた作品です。頭蓋骨や蝋燭は命の短さを、天使は永遠の魂を、砂時計や薔薇は時間の経過を表します。
蝶とか芋虫とかがいて正直、綺麗というよりは不気味さを感じます。
69 作品名: 花瓶と果物、昆虫 作品英題: Still life with a vase of Flowers, Fruits and Insects 作者(英名): ヤーコブ・フーフナーヘル(Jacob Hoefnagel)
ギュッと自然を詰め込んだような絵でした。全体的に淡い色使いのなかで、リンゴやサクランボの赤色が印象的でした。そのサクランボの艶やかさが凄いです!!
第3章 │ 変容する世界
アルチンボルドにスプランガー、ファン・ラーフェステイン・・・。
マニエリスム(ルネサンス後期とバロック期のはざまに、優美さを求めて極端な強調や歪曲に走った美術の傾向)を愛好したルドルフ2世のもとに集った画家たちは、宗教,文字,哲学,占星術,魔術などを集積し、収集とされた事物を創作上で変容させ、時に妖艶な雰囲気すらたたえた優雅な芸術をプラハで生みだした。
(公式サイトより・一部改変)
展示場内の様子
71 作品名: ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像 作品英題: The Emperor Rudolf Ⅱ as Vertumnus 作者(英名): ジュゼッペ・アルチンボルド(Giuseppe Arcimboldo)
有名なアルチンボルドの寄せ絵です。 解説では、巡る季節、基本四元素、物転を司る神ウェルトゥムヌスとして皇帝を描くことで、森羅万象を統べる主として皇帝への賛辞を表しているとありました。
生々しいというか、今にも動き出しそうな生命力を感じる絵で、また「単なる植物の寄せ絵」ではなく、肖像画として完璧だと思いました。
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75a 作品名: 『ノアの方舟』 作品英題: Ark of Noah 作者(英名): アタナシウス・キルヒャー(Athanasius Kircher)
これはとても面白かったです! ノアの方舟の伝説はもちろん有名ですし、前の第2章でも描かれていました。他の絵は伝説の神話性や教訓を主に描いているのに対して、この絵は「全ての動物の雌雄を収める舟」という部分の構造に着目していて興味深いです。
ちゃんと動物は雌雄ペアで描かれているし、その他物資もちゃんと描かれていますね(笑)
76 作品名: 9月 作品英題: September 作者(英名): レアンドロ・ダ・ポンテ(Leandro da Ponte)
シリーズ「12ヶ月」の月暦画12枚の中の一枚です。絵の風景はワインを作っている場面で、空に輝いている天秤は黄道十二星座のシンボルで、9月23日~10月23日までです。
77 作品名: 大地と水の寓意 作品英題: Allegory of Earth and Water 作者(英名): ヤン・ブリューゲル(子)(Jan Brueghel the Younger)
穏やかで鮮やかで、好きな絵です。中央にいるのは農耕の神クレスです。 色々なフルーツや植物、動物が描かれていて、見ていて飽きないです! あ、サギの足下にある壺が面白すぎです(笑)
78 作品名: ヨーロッパの寓意 作品英題: Allegrory of Europe 作者(英名): ヤン・ファン・ケッセル(Jan van Kessel)
この絵、まさに「驚異の部屋」そのものですよね!!
肖像画や昆虫の標本、甲冑に地球儀、石像などなどありとあらゆる物が蒐集されています。肖像画は実際のヨーロッパの王や貴族を模して描かれているそうです。
79 作品名: キリストの嘲弄 作品英題: The Mocking of Christ 作者(英名): ハンス・ホフマン(Hans Hoffmann)
こういう言い方はしたくないんですが……..「おい、隣のジジイの顔ww」
それはさておき、キリストはなんでそんなに悲しく弱々しい表情なんでしょう? 磔刑に向けてもっと強い表情でもいいと思うんですけどね……。
81 作品名: 神話画 作品英題: Mythological Painting 作者(英名): フランチェスコ・マッツォーラ(Francesco Mazzola)
この絵は「コピー」らしいです。当時はコピーといえども一流の画家が描いていたのでそれなりに価値があるそう。実際、この作品をググってみると、非常によく似た作品が沢山でてきます。 で、この絵は「子供の天使」ごとても良く描かれていると感じました。ふくふくな体型と血行が良くて温かそうな感じとか、背中から生えた翼の感じとかが結構好きです。
82 作品名: パリスの審判 作品英題: Judgement of Paris 作者(英名): ハンス・フォン・アーヘン(Hans von Aachen)
ギリシア神話で、最終的にトロイア戦争にまで繋がっていくパリスの話です。解説では、「右側にいる犬は(この絵を)観る者に出来事の不吉な行方を問いている」とありました。 個人的に、ちゃんとゴルゴンの盾があることが少し嬉しかったです。
拡大&明度編集
83 作品名: ルクレティアの自殺 作品英題: The Suicide of Lucretia 作者(英名): ハンス・フォン・アーヘン(Hans von Aachen)
貞操を奪われた彼女が耐えかねて自殺する場面です。 絶望と悲しみの浮かぶ目がとても印象的でした。自身に刺した短剣から滴る血の雫が怖さと痛さを物語っているようで辛かったです。
88 作品名: ルドルフ2世の治世の寓意 作品英題: Allegory of the Rudolf Ⅱ 作者(英名): ディルク・ド・クワード・ファン・ラーフェステイン(Dirk de Quade van Ravesteyn)
鎧を着た男性は軍神マルスとして理想化されたルドルフ2世で、皇帝を象徴するワシが咥えようとしているのは平和の象徴。また、ワシは鎖で「正義」と「学問」につながれています。
一見すればただの絵画ですが、ここに挙げた以上にも幾つものモチーフが描きこまれており、本当に面白いです!!
89 作品名: 羊飼いの礼拝 作品英題: Adoration of the Shepherds 作者(英名): ヨーゼフ・ハインツ(父)(Joseph Heintz the Elder)
この茶色い絵の中、聖母マリア様一人だけ鮮やかな衣を纏っていて目立ちます。そして、イエス様にはスポットライトを当てたような光が差していて、これまた目立ちます。 しっかりと目立たせるべきに焦点を当てていて印象的でした。
93 作品名: 東方三博士の礼拝 作品英題: Adration of the Magi 作者(英名): ハンス・フォン・アーヘン(Hans von Aachen)
この絵も幼子イエスを祝福する絵ですが、ここで面白かったのは、画面下の枠部分にいる骸骨や悪魔まで手を合わせて拝んでいるってことです(笑)
下部分ピックアップ
102 作品名: 『人像柱作品集』より第14葉 作品英題: Caryatidum (vulgus termas vocat) sive athlantidum multiformium, folio 14 作者(英名): ハンスよくあるんですが、・フレーデマン・ド・フリース(Hans Vredeman de Vries)
この絵、かなり好みです。普通の人像柱なら神殿とかでもよくありますが、この絵は不気味というか気持ち悪いです。ただ、こういう“変なの”が大好きなのが私なので(笑)
あと、『PSYCHO-PASS』というアニメに似たようなのが登場したので親近感がわきました。
104 作品名: 聖アントニウスの誘惑 作品英題: Temptation of St. Anthony 作者(英名): ペーテル・ステーフェンス2世(Peter Stevens Ⅱ)
ヒエロニムス・ボスやピーテル・ブリューゲルらが描いてきたモチーフと、そして奇想の世界と異形の生き物たち。
この絵も本当に大好きです! 怪物やお化けのオンパレード。不吉な感じが面白いし、可愛いです! 左側の金色の筋は何でしょう??
拡大&明度編集画像(変な生き物に注目! 笑)
105 作品名: 橋のあるチロルの山岳風景 作品英題: Tyrolean Mountain Landscape with Bridge 作者(英名): ルーラント・サーフェリー(Roelandt Savery)
いまにも壊れそうな危なっかしい橋を渡る2人。この絵を見た時に、絵本『三びきのやぎのがらがらどん』を思い出して少し懐かしくなりました!
107 作品名: 山岳風景 作品英題: Mountain Landscape 作者(英名): トビアス・フェルハーフト(Tobias Verhaecht)
ゴツゴツした岩山とは反対に、淡い遠景が綺麗です。また、その荒い岩山とは対象的に、サラサラと流れる小川の水がまた綺麗です。あと、小さく描かれた人の姿が岩山の大きさと風景の壮大さをより鮮やかに際立たせている印象を受けました。
エピローグ │ 驚異の部屋
ヨーロッパ各地で発達を遂げた数々の「驚異の部屋 = Cabinet of Curiosities」のなかでも、彼の驚異の部屋はもっとも豊かで有名なものの一つとなった。
驚異の部屋の流行は17世紀にも続くが、その後18世紀には少しずつ科学収集室に引き継がれていく。
絵画、工芸品、自然物──剥製・標本・鉱物、さらには幻獣の偽物まであらゆる物がゴチャゴチャであった皇帝の驚異の部屋。しかしそれは、広大な宇宙を隠喩しているのかもしれない。
(公式サイトより・一部改変)
展示場内の様子
112 作品名: 『偉大なるローマ皇帝のクンストカンマーで見ることができる物品の1607年の目録』 作品英題: Inventory of the Cabinet of Curiosities of Rudolf Ⅱ in Prague, 1607 作者(英名): ダニエル・フレシュル(Daniel Fröschl)
ルドルフ2世が収集した物品の完全な目録は残っていないけど、これは1607年にまとめられた収集品リストです。自然物・科学物・人工物に分類され、まるで百科事典のようだとか。
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116 作品名: 貝の杯 作品英題: Shell pokal 作者(英名): 作者不詳(Anonymous)
こうして自然の貝を見事に組み込んだ工芸品、細工が細かいし、「融合」という意味でも価値があったのかなぁ~と思いました。
117 作品名: 人魚の付いた貝の杯 作品英題: Shell pokal with mermaid 作者(英名): 作者不詳(Anonymous)
この作品、本当に良かったです! 貝を「尾」に見立てて見事に用いて美しい水性の幻獣、マーメイドを造り上げたんですから、本当に凄いですよ!!!
(※ 画像は実際に展示してあったものとは若干違います)
121 作品名: 脚付の深い貝殻状の皿、箱付 作品英題: Deep shell-shaped bowl on foot with case 作者(英名): オッタヴィオ・ミゼローニ(Ottavio Miseroni)
貝殻状の箱ももちろん綺麗ですが、それをしまうために作られた箱が凄いし、「よく削り出したなぁ~」と思いました。
126 作品名: 卓上時計 作品英題: Table clock 作者(英名): 作者不詳(Anonymous)
細工が本当に綺麗です。この時計は時間、分、太陽・月・星の位置、黄道と四学六分儀、天球儀が入っています。 多機能過ぎますよ(笑) 現代のスマホですか(笑)
128 作品名: パレード用盾 作品英題: Parade Shield 作者(英名): エリズース・リバールツ(Eliseus Libaerts)
盾の傑作といわれている作品です。模様は囚えられた捕虜や戦利品、女性の裸のメダルなどです。
まさに、実用品ではなくて完璧に芸術品ですよね。確かに凄かったですが、模様が遺跡のレリーフ画みたいで微妙でした(笑) もっと細かくて凝った装飾とかにすれば、さらに美しい作品になったと思うんですけどね。
129 作品名: 卓上天文時計 作品英題: Astronomical table clock 作者(英名): ペーテル・グルンデル(Peter Grundel)
この作品の他にも天球儀や望遠鏡などが何点か展示してありました。まるで「世界を測り、表すこと」に対して、「未知の世界を克服する」ということに対して当時から憧れと執念を持っていたんだと感じました。
139~141 作品名: 四季のうち春/夏/秋 作品英題: The four seasons: Spring / Summer / Autumn 作者(英名): 作者不詳(Anonymous)
アルチンボルドの模倣であろうことは容易に想像できるのですが、雑というか、圧倒的にクオリティが低いです。組み合わせ方が物足りないというか、中身が 詰まっていない感じがするというか。
142 作品名: 《一角獣》『動物図譜』 作品英題: Unicorn from A Description of the Nature 作者(英名): ヤン・ヨンストン(Jan Jonston)
当時、北極に住むイッカクという動物の長い牙が、「ユニコーンの角」として取引されていました。解説にあった言葉がとても印象的でした。 「今よりもずっと世界に謎と不思議が溢れている時代」と。
特別展示 │ フィリップ・ハース
映画監督、現代美術家のフィリップ・ハース。
アルチンボルドの作品にインスパイアされファイバーグラスなどの素材で、野菜や果物、花などを本物そっくりに創作し、2次元の絵画作品を立体的に仕上げた4m~5mにも及ぶ巨大彫刻のアルチンボルドの《四季》シリーズは海外の美術館や植物園などで展示され大きな話題を集めています。
本展では、《四季》シリーズ模型4点(各高さ約1m)を特別に展示予定。どうぞお楽しみに!
(公式サイトより・一部改変)
特別展示1 作品名: 春(模型、アルチンボルドに基づく) 作品英題: Spring (Maquette) [after Arcimboldo] 作者(英名): フィリップ・ハース(Philip Haas)
「寄せ絵」で有名なアルチンボルドの連作『四季』を立体にした作品です。 確かにひと目見た瞬間は「おぉ、凄い!」と驚くし、感心します。遠目から見てもそのインパクトは凄いですからね。アイデアとしては面白いと思いました。 (感想は下に続く)
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特別展示1 作品名: 夏(模型、アルチンボルドに基づく) 作品英題: Summer (Maquette) [after Arcimboldo] 作者(英名): フィリップ・ハース(Philip Haas)
ただ、作品としては個人的には残念でした。 というのも、アルチンボルドの寄せ絵は確かに植物の集合絵であり、描かれた植物はその種類が特定できるほど精巧に描かれています。 (下に続く)
特別展示1 作品名: 秋(模型、アルチンボルドに基づく) 作品英題: Autumn (Maquette) [after Arcimboldo] 作者(英名): フィリップ・ハース(Philip Haas)
しかし、植物がリアルに描かれた彼の絵にもフィクションはあります。 それは、「縮尺」です。集められた植物の大きさ関係はバラバラで、肖像画を描くという目的に合わせて相対的に大きく描かれたり、実物より小さく描かれたりしるのです。 (下に続く)
特別展示1 作品名: 冬(模型、アルチンボルドに基づく) 作品英題: Winter (Maquette) [after Arcimboldo] 作者(英名): フィリップ・ハース(Philip Haas)
植物の縮尺関係が一定ではないから、平面では美しい絵画だと感じても、立体にしていしまうとその大きさの違いなどが際立って、違和感が生まれてしまうんです。
もちろん、綺麗で凄い作品ではありましたし、正面から見る機会なんて普通はありえないので、面白かったですよ。
特別展示1 作品名: コロッサス:巨像(模型) 作品英題: Colossus (Maquette) 作者(英名): フィリップ・ハース(Philip Haas)
だまし絵を立体化した訳ですが、これはハズレですね。 やっぱりり、平面の絵って、観るものの視点をしっかりと意識して操作されるように描かれているんでしょうから、それを立体にしたら台無しな気がします。
そして、毎回私は美術展に行ったお土産はポストカードと決めています。 今回買ったのは、皇帝ルドルフ2世の肖像画のカード。だって、この美術展の主人公ですからね!!
それからもう一つ、今回の美術展の作品リストが素晴らしかったです!! 縦長で持ちやすいし、各章がページをまたぐことなく、作品名などもスリムにまとめられていて、非常に良かったです!!
最後まで読んでくださり、 本当にありがとうございました!!