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【美術展】『カタストロフと美術のちから』感想:アートのポジティブなエネルギー。

2018年12月10日訪問

カタストロフと美術のちから
Catastrophe and the Power of Art

 
【一言】

大惨事と美術。
ネガティブな主題に対し、アートが持つポジティブな意思が印象的。

圧倒的な衝撃を鑑賞者にぶつけ、訴え、考えさせる作品。
世界の社会に溢れる”負”の要素を、アートの”正”のエネルギーが包み込む。

 
【Twitter140文字感想】

 

 

 

 

展覧会の概要

[前略]…世界各地で絶えず発生するカタストロフ(大惨事)。多くのアーティストがこのような悲劇的な災禍を主題に、惨事を世に知らしめ、後世に語り継ごうと作品を制作しています。…[中略]…そこにはまた、社会の矛盾や隠蔽された問題の可視化を意図するものや、個人的な喪失や悼みを表現するものもあります。

カタストロフは私たちを絶望に追い込みますが、そこから再起しようとする力は想像力を刺激し、創造の契機となることもまた、事実なのではないでしょうか。…[後略] [前略]…美術が社会を襲う大惨事や個人的な悲劇とどのように向き合い、私たちが再生を遂げるためにどのような役割を果たすことができるのか。本展は、負を正に転ずる力学としての「美術のちから」について注目し、その可能性を問いかけます。

森美術館

トレイラー

会場:森美術館
会期:2018.10.6(土)~ 2019.1.20(日)
料金:一般 1,800円
作品リスト:PDF
公式サイト:こちら

 

 

 

 

美術展の感想

 

 

 六本木は森美術館での『カタストロフと美術のちから展』に行きました!
 主題がネガティブそうなので嫌煙していましたが、実際に鑑賞すると作品に籠もるポジティブな力に圧倒されました。そういう部分も含めて、感想を書いていこうと思います!

 まずはその「ネガティブ」と「ポジティブ」
 悲惨で悲観的な状況の中、作品がとても前向きな点が印象的でした。

 展覧会の題名にもあるように、主題は世界中で発生する災害や暴力などの「カタストロフ」。それらを題材にしたアーティストの作品が展示されます。

 テーマが重いものなので、作品やそのコンセプトも(失礼な言い方ですが)陰気臭くて難しいものだと想像していました。

 しかし、実際に作品を鑑賞して、解説パネル等を読むと、その想像は180°転換しました!
 こういうテーマだからこそ、作品には「平和」や「友愛」、「協力」などの前向きなメッセージが込められており、それがダイレクトに伝わってきたので驚きました。「社会への警鐘」というより「作家の願い」に近いようなモノを感じました。

 「美術のちから」
 果たして、この“ちから”が何を表すのかを考えるのは、鑑賞者自身に任せられているのでしょう。

 私が感じたモノの1つには、「訴えるちから」がありました。
 新聞やニュースなどメディアで報道されるニュースは一度、濾過装置に通してあるように思います。見せたい情報、話題になる状況だけを伝えるように。体裁の良い事件の表面だけを伝えるようフィルター掛けるかのように。

 でも芸術はまったく違うのではないでしょうか。
 伝えたい現状やメッセージ、社会に訴えたい内容や、権力への批判などを、作品に込めることが出来るのですから。そして、作品を通して鑑賞者にそれを伝えることが出来ます。

 カンバスの表面、映像の画面、立体の造形などからにじみ出るエネルギー。それらは“真実”を作家が解釈し、それを直接作品に埋め込んでいるからこそ、圧倒的な衝撃を鑑賞者にぶつけるのではないでしょうか。

 作品を出展されている作家さん方、本当に豪華なアーティストさん方ですごいです! これだけでも、鑑賞する価値がありますよ!
 具体的な功績等は公式サイトにも紹介がありますが、「どこかで名前は聞いたことがある」という有名な作家さん方ばかりで本当に凄かったです!

 作品はどれも本当に素晴らしいです。
 作品を見て、「どのようなカタストロフを主題にしているのだろうか?」とか「作者の意図は?訴えは?」とかを考えながら鑑賞し、実際に解説等を読んで具体的なことを知り、また作品を観る。

 確実に、作品に対する見方や印象が変わりますし、主題となるカタストロフへの認識も大きく変わります。ここは、現代美術の面白いところです!

 今回展示されていた作品の中で、私が一番衝撃を感じたのは、ミリアム・カーン氏の「原子爆弾」という作品。原子爆弾を題材に水彩絵の具で描かれた作品です。

 解説パネルに以下のような一文が。

カーンは…[中略]…原子爆弾実験の様子を美しいと感じた自らの体験を加えています

 「原爆を美しい」と感じて良いし、言っても良い。
 この1点が本当に衝撃的でした。

 私は、原爆は美しいと思います。
 人を殺す道具って、得てしてどこか「美しさ」があるのかもしれません。
 しかし、不謹慎だとか非道徳的だとかそういう空気で溢れたテーマだし、ましてや「美しい」というなど論外だという考えが当たり前。そんな中、この作品を観て本当に衝撃的でした。

 描かれた様々なカタストロフ──戦争・紛争・貧困・飢餓・テロ・地震・抑圧・災害……etc.

 今回の作品では圧倒的に「9.11の米同時多発テロ」と「3.11 の東日本大震災」を題材にしたものが多かった印象です。もちろん出展依頼する作家によっても変わるのでしょうが、世界中の人々にとってこの事件は非常に大きなショックを与えたのだと、改めて思い知りました。

 そして、それらの主題から制作された作品に込められた作家の意図も様々。
 広く世間へ訴えかけるものから、個人的な想いで記録された写真、問題提起、構造批判、社会への警鐘、被害への追悼、政府への非難……etc.と色々。
 同じ主題でも、これだけ視点が変わり、作家のメッセージも異なり、鑑賞者が感じるモノも当然違ってくるわけです。だから、芸術って面白いですね!

 美術館に携わる方から聞いた話ですが、今、日本の美術館はどこも「災害」をテーマにした展覧会をやりたかったそう。しかし、世間の批判等がありなかなか開催できなかったそう。

あえて「カタストロフ(大惨事)」をテーマに取り上げ、さまざまな問題が山積する今日の国際社会において、美術が果たす役割についてあらためて問い直します。
森美術館

 そんな中で森美術館が開催したわけです。その方曰く、「森美術館で久々の大ヒット」だそうです。

 感想はこんなところでしょうか。
 以降、展示されていた作品の紹介です。

 

 

 

 

展示の紹介

 

 『カタストロフと美術のちから』展の内容、そして展示作品の紹介です。
 本当は、全部の作品を紹介したいし、掲載したいし、個人的にも残しておきたいのですが…..さすがに難しいので、取捨選択をせざるを得ないのが残念です。

作品リスト:PDF

 

SⅠ. 美術は惨事をどのように描くのか─記録、再現、想像

本展前半では、地震、津波などの天災から、事故や戦争といった人災、個人的な悲劇までを表現した作品を幅広く 紹介しながら、美術が惨事をどのように描いてきたのかを考察します。
…[中略]…2001年のアメリカ同時多発テロ事件、2011年の東日本大震災、1995年の阪神・淡路大震災という大惨事を記録した作品が続きます。大惨事や悲劇に直面したり、見聞きしたりした時、アーティストは本能的にその惨状を描き、写真や映像に収め、記録を試みます。惨事を他者と共有し未来に語り継ごうとするそれらの作品は、報道写真や映像と異なり、極私的な視点で制作されるものです。また、私たちは日々、自分のコントロールを超えて突然降りかかる災難を経験しています。アーティストは時にユーモアを交え、時に物語のように、個人的災難を表現します。…[中略]…
アーティストは独自の想像力により作品を制作し、また、鑑賞者の想像力を刺激するなど、美術と想像力には深い関係があります。…[後略]

 

作家:トーマス・ヒルシュホーン (Thomas Hirschhorn)
作品:崩落
英題:Collapse
制作年:2018
材料:ミクスト・メディア・スカルプチャー

[前略]…破壊をテーマにした本展のための新作です。瓦礫を注視すると、ダンボールなどの素材で作られていることがわかります。それにより、リアリティといった言葉では捉えることのできない作品の抽象性が浮かび上がります。また、作品における破壊が戦争によるものか、自然災害によるものかは明示されず、特定の時間や場所から解放されることで、瓦礫を普遍的なものとして捉えることができます。…[後略]

 展覧会場の入り口を通り、まず目に入ってくるのがこの作品です。
 「崩壊」した建物を模した、天井までの高さのある立体作品。

 インスタレーションとして完璧だと思います。本展の名前から内容はおおよそ予想していたものの、この作品を最初に見せつけられて空気感が変わるというか。「こういう内容なんだな」とインパクトが凄かったです。

 様々な引用が掲げられていました。

すべての創造は、破壊から始まる パブロ・ピカソ

人間だけが破壊や消滅を簡単に引き起こすことも、防ぐこともできる エリ・ヴィーゼル

 惨状を目の当たりにして、破壊された建物を前に、「こういうものを観ていく」と気が引き締まる思いでした。

 

 

 

作家:クリストフ・ドレーガー (Christoph Draeger)
作品:2001年9月11日のテロリスト攻撃の後、ワールド・トレード・センターから煙が出る
英題:Smoke pours from the World Trade Center complex following a terrorist attack. New York, September 11, 2001
制作年:2018
材料:ウルトラバイオレット・プリント、ジグゾーパズル(5000 ピース)

作品:2001年9月12日、ニューヨーク、ワールド・フィナンシャル・プラザの日の出
英題:Sunrise at the World Financial Plaza. New York, September 12, 2001
制作年:2018
材料:ウルトラバイオレット・プリント、ジグゾーパズル(5000 ピース)

本作は報道写真を大型のジグソーパズルにプリントする「世界で最も美しい惨事」シリーズの新作で、2001年のアメリカ同時多発テロにより崩壊したニューヨークのワールド・トレード・センターが主題です。…[中略]…5,000 ものパズルのピースが、崩落したビルの瓦礫と重なり合うかのようです。私たちは多くの場合、出来事を恣意的に写す報道写真を媒介に世界中の様々な惨事を知るのであり、ドレーガーの作品は、意識的であれ無意識的であれ、私たちの感情や知識がメディアのイメージによって形作られているということを思い起こさせます。

 これは解説パネルの文言がピッタリだと思いますが、「パズルのピースが、崩壊したビルの瓦礫と重なり合うかのよう」とか、「私たちの感情や知識はメディアのイメージによって形作られている」とか。

 粗い粒子の写真が、パズルのピースにさらに分割され、人物や煙や瓦礫がボヤケたように映っていて。パズルってピース1つだと何も見えないけど、完成して初めて全体像を見られるツール。 もしくは、「崩壊したものを再生する」なんて意味合いもあるのかと深く考えてみたり。

 まさか、「ピース」と「平和」を掛けてはいないだろうと、飛躍して考えてしてしまったり。

 

 

 

作家:ヴォルフガング・シュテーレ (Wolfgang Staehle)
作品:無題(09-11-2001)
英題:Untitled (09-11-2001)
制作年:2001
材料:デジタル写真、カスタムメイド・ソフトウェア

この映像は2001年9月11日のニューヨーク、マンハッタンの様子を映し出しています。インターネット・アートのパイオニアとして知られるシュテーレは同年9月6日にニュー ヨークの画廊で個展を開催、…[中略]…ライブ中継しました。
…[中略]…偶然にもカメラは9月11日のアメリカ同時多発テロの決定的瞬間を捉え、ワールド・トレード・センターの惨状が録画されました。この事件は作品の性質を根底から変えてしまい、 元々の《タイトルニューヨークの人々へ》は《無題》へと変更されています。

 全てが“予定”されていたような作品で、驚いた──というか偶然が創り出した凄い作品だと感動しました。

 元々の映像タイトルは「ニューヨークの人々へ」。
 そのビデオが9.11の同時多発テロを偶然にも撮影し、「無題」へ変えられたタイトル。

 なかなか言葉にできないのですが、動画が事件を撮影したことで、作品としての内容や性質を覆すような経緯で生まれた本作。記憶に深く残りました。

 

 

 

作家:ジリアン・ウェアリング (Gillian Wearing)
作品:絶望的
英題:I’M DESPERATE

作品:今、落ち込んでいます
英題:I AM DEPRESSED AT THE MOMENT

作品:自分の人生つかみきれない!
英題:MY GRIP ON LIFE IS RATHER LOOSE!

シリーズ:「誰かがあなたに言わせたがっていることじゃなくて、あなたが彼らに言わせてみたいことのサイン」シリーズより
制作年:1992-1993
材料:デジタルプリント

本作はウェアリングがロンドンの街中で声をかけた人々のポートレート作品で、被写体となる人物に今考えていることを紙に書いてもらい、それを掲げて撮影したものです。その内容の背景に何があるのか明示されていないため、かえって鑑賞者の想像力を刺激します。誰しも個人的な痛みを抱えた経験があり、それはこの世の終わりのようにも思えるものです。…[後略]

 正直、これらの作品が「カタストロフ」とどう関係するのか、私には理解出来ませんでした。しかし、作品としてのコンセプトはとても好きだし、作品の見た目もとても気に入りました!

 単純明快なところがいいですよね!
 街行く人々に、今の気持ちをそのまま書いてもらう。「今、何を考えているのだろう?」となかなか掴めない人の心が少し垣間見えるようで、個人的に好きな作品になりました。

 中でも、若い女性が掲げた「My grip on life is rather loose!(自分の人生つかみきれない!)」というカードが気に入りました。格好良い女性の姿からは想像もできない内容だし、なによりも文面がいいですよね!
 共感できるような節がある部分も、お気に入りの理由かもしれません。

 

 

 

作家:ミリアム・カーン (Miriam Cahn)
作品:原子爆弾 (04.02.1988)
英題:Atombomben / atom bombs (04.02.1988)
制作年:1988
材料:水彩、紙(2 点組)

鮮やかな色彩の水彩画は、シリーズ名の通り原子爆弾実験の様子を描いたもので、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故の2年後に制作されました。…[中略]…第二次世界大戦中にナチスへ対抗する唯一の手段として開発された原子爆弾は、恐ろしい結果を生みましたが、カーンはその二面性に原子爆弾実験の様子を美しいと感じた自らの経験を加えています。…[後略]

 ミリアム・カーンについては、上の感想部分でも触れましたので、ここでは同じ内容を繰り返すことになりますが、「認識が180°変えられた」という意味で、本当に衝撃的な作品でした。

カーンは…[中略]…原子爆弾実験の様子を美しいと感じた自らの体験を加えています

 「原爆を美しい」と言っても良い。
 不謹慎とか非道徳的だとか、特に日本は広島と長崎における被爆国だし、第五福竜丸のような事件があるなかで、なかなか意思として表現するのは難しかったように思います。その流れは世界において共通のものになっていると思います。

 しかし、この作品を見て「表現しても良い」ということを知り、本当に衝撃的だったし、どこか背中を押されたような気がしました。

 

 

 

作家:武田慎平 (Takeda Shimpei)
作品:痕 #1 華厳の滝
英題:Trace #1, Kegon Falls

作品:痕 #7 二本松城
英題:Trace #7, Nihonmatsu Castle

シリーズ:「痕」シリーズより
制作年:2012
材料:ゼラチン・シルバー・プリント

これらの作品は、福島第一原子力発電所事故による放射能汚染を可視化する写真シリーズ「痕」の一部です。…[中略]…出来上がったプリントは一見すると、夜空の星を写した白黒写真のようにも見えますが、白く美しく光る無数の点は、放射性物質という不可視の粒子がフィルムに焼き付けた「痕跡」です。土の採取地の多くは、城跡や旧軍事施設、寺院など、直接的・間接的に人の死と関連する場所でもあり、原発事故がもたらした死と、静かに、そして不気味に共鳴するかのようです。

 「可視化」と「意味付け」の重要性を思い知りました。
 作品の方法自体は私達が普段行うレントゲンと同じものだと思います(詳細は分からないので不確かですが)。しかし、方法が同じでもこの作品から受ける印象はレントゲンとは全く違います。

 作品には「福島原発事故の放射能汚染を可視化する」という明確なコンセプトがあります。そして、(企業経営で「見える化」とかが話題になったような)見て分かる形での表現。この「意味付け」と「可視化」というのが本当に大きいと思います。

 綺麗だけど、怖い。これは、知らないと感じられない恐怖だと思います。

 

 

 

作家:平川恒太 (Hirakawa Kota)
作品:ブラックカラータイマー
英題:Black color timer
制作年:2016-2017
材料
:アクリル、ガラスプライマー、油彩、電波時計

108個の電波時計に福島第一原子力発電所事故後に現地で従事した作業員の肖像が、黒い顔料で描かれています。…[]中略…作品タイトルは1960年代の人気テレビ番組「ウルトラシリーズ」でウルトラマンなどの主人公が活動できる時間制限を示すカラータイマーの引用。時計の秒針が108本同時に奏でる「カチッ、カチッ」という昔は、作業員の生の証である心音にも、また制限時間(=死)への秒読みのようにも聞こえます。

 どこまでも徹底的に皮肉というか、主張しているように感じる作品で、非常に印象的だったし、好きな作品です。

 まず、時計をカンバスにした点、そしてウルトラマンの活動時間制限を示す「カラータイマー」を題名に持ってきた点。放射線被曝の危険にさらされる作業員の“時間”をそのまま暗喩しているように感じられます。

 また、作業員の姿を思い浮かべると白い作業服に身を包んでいるイメージが強いです。しかしこの作品で描かれているのは、真っ黒な姿。見事に対比的です。
 「黒」に関して私が感じたもう1つ。「何か分からない」という恐怖かなぁと。よく「ブラックボックス」というような表現をするように、黒は不明を象徴するような色です。原発事故が話題になった当時、「放射能は見えないから怖い」という恐怖感が空気感染していましたが、そういうものもこの作品に含まれているのかなぁと。

 

 

 

作家:オリバー・ラリック (Oliver Laric)
作品:ヴァージョン(ミサイルのヴァリエーション)
英題:Versions (Missile Variations)
制作年:2010
材料
:エアブラシ・ペイント、アルミ複合板

軍事組織であるイラン革命防衛隊が2008年に発表した4発のロケット型ミサイル弾の発射写真が、実は合成写真であるということがすぐに発覚し、ミサイルが3発しか写っていないオリジナルの写真を発表し直した、という事件に想を得て制作された絵画作品です。…[中略]…ラリックも同様にミサイルが無数に写るものから全く存在しないものまで、コミカルな10の「ヴァリエーション」を作り、本作の主題としています。

 そもそも、このイランの合成写真のニュースを初めて知ったわけですが。この作品は非常にポップな主題だったのが印象的でした。

 あくまで私の偏見ですが、こういう作品って「ミサイルは自分に返ってくる」みたいなメッセージを込めることが多いいのかなぁと。
 しかし、本作は遊び心にも似た、イランのフェイクを手玉に取るように合成写真のシリーズを制作している訳で、単純に、面白いです。

 だって、大量のミサイルが飛び交っていたり、飛行の経路がくねくねと曲がっていたり。笑いを誘うような程度まで合成しちゃっていますもん(笑)

 

 

 

作家:シヴァ・アフマディ (Shiva Ahmadi)
作品:わな
英題:The Mesh
制作年:2016
材料:水彩、インク、紙

作品:
英題:The Wall

[前略]…要塞のように壁に囲まれた金の王座は権力と腐敗を象徴しています。暴力は血のようにも見える、濃く塗られた赤色の水彩絵の具によって表現されています。…[中略]…《壁》に描かれている強固な囲いの中では石油、核、情報ネットワークなどが保護され、その外部で戦争が起きていますが、これは、列強諸国の代理戦争が中東で起こる現実を風刺的に表現したものと解釈することもできるでしょう。

 風刺というか、非難が描かれているような作品だと感じました。
 そして、人間が作った権力と暴力の象徴たるモティーフは描きこまれているのに、その人間の存在が排されている(奴隷状態?)のが非常に印象的でした。

 解説にもあるように中東の状況を表しているというのはすぐに想像がつきます。
 壁に囲まれた王国の中央にある玉座や、石油プラントを思わせる建造物など、「資源」という紛争の火種が権力の傘の下に含まれているように見えます。それから、壁の中は豊かで、外は貧困という状態を表しているようにも。

 個人的に、動物を主人公にしている理由は分かりませんが、有名なSF映画『猿の惑星』を思い出しました。あの映画もまた、社会風刺にパンチが効いた作品ですからね!

 

 

 

作家:池田 学 (Ikeda Manabu)
作品:予兆
英題:Foretoken
制作年:2008
材料
:ペン、インク、紙

巨大な波がビルや船、自動車、木々など様々なものを飲み込むシーンが描かれています。 船が海岸に漂着する場面を思い浮かべて制作されましたが、これが何の「予兆」なのかは明示されていません。しかし、東日本大震災を知る者には東北地方を襲った津波をも想起させるといえるでしょう。また本作には、波をはじめ、鳥の群れや登山家、遊園地など、作家が繰り返し描いてきたモチーフも散りばめられています。

 池田学さんの作品は以前から知っていて、とても好きです。どのくらい好きかと言うと、画集を買おうか迷ったほど好きです(結局、買わなかった)。
 ただ、これまでは作品を「凄いイラスト」的な認識で見ており、様々な要素が詰め込まれた見応えある「絵」としての作品として楽しんでいました。

 今回、「カタストロフ」というテーマで改めて作品を見ると、やはりその見方や印象が大きく変わるものですね!
 この『予兆』という作品に限れば、大きな津波が沢山の建造物を飲み込み、瓦礫に変える姿が描かれています。多分、今までなら画面の細部に描き込まれた“要素”しか見なかったと思います。こうして、1つのテーマを頭に入れた上で、全体を俯瞰すると、見えてくるものも変わってきました。

 ただ、私は、池田さんの作品は、細かい部分を楽しむような鑑賞の仕方が好きです。
 その細かい部分には、決して「カタストロフ」に関係ある要素がある訳ではないですが、単純に面白いです。

 

 

 

作家:藤井 光 (Fujii Hikaru)
作品:第一の事実
英題:The Primary Fact
制作年:2018
材料
:ビデオインスタレーション

[前略]…ギリシャ、オナシス文化センターからの委託により制作されました。2016年にアテネ近郊で若い男性の白骨化した遺体80体が埋められた集団墓地が発見され、藤井は遺骨の調査に携わる考古学者、人類学者、歯科医などの専門家にインタビューを行い、本作を制作しました。…[中略]…本作では、膨大で綿密な研究により解明される客観的「事実」と それを拠りどころにしつつも解釈や物語性が入り込む余地のある歴史学的「真実」の差異がひとつの鍵となっています

 この作品はよく分からなかったというのが、正直な感想です。
 解説パネルを見ると「アテネ近郊のB.C.7世紀頃の集団墓地の調査」を追ったドキュメンタリーとされています。

 しかし、実際に上映されていた映像は全く別のもの(13分全部を鑑賞してないので、全体はわからないのが申し訳ないですが……)。確かに、動画の字幕はコンセプト通りの考古学的な内容なのですが、映像は現代の若者が銃で処刑されるシーンが映されています。
 この不一致の違和感というか……奇妙な感覚が深く残っています。

 

 

 

作家:モナ・ハトゥム (Mona Hatoum)
作品:ミスバー(ランプ)
英題:Misbah
制作年:2006-2007

材料
:真鍮製の提燈、金属製の鎖、電球、モーター

天井から吊るされたランタンが回転し、銃を持つ兵士と爆発を表す光のイメージもくるくると回っています。…[中略]…本作は遊び心に満ちていますが、死を想起させる兵士があてもなく回転する様子には、皮肉が感じられます。同時に、西洋におけるアラブ世界の典型像であるランタンを用いて、「中東=戦争」というステレオタイプがユーモラスに表現されているのです

 凄く単純明快で分かりやすい上に、綺麗なのが気持ちいいです。
 拍子抜けしそうになるほど、ここまでシンプルに描かれると、すんなり受け入れられて良かったです。

 (感想が雑で申し訳ないです。この作品と解説の文章が好きだったので、掲載したかったのです)

 

 

 

 

 

 

SⅡ. 破壊からの創造─美術のちから

大惨事や悲劇から私たちが立ち直れるとしたら、そのために美術はどのような 力があり、どのような役割を果たせる のでしょうか。本展後半は、破壊から創造を生みだし、負を正に転ずる「美術のちから」について考察します。
…[中略]…アーティストの豊かな想像力とユニークなアイデアによって制作された、社会問題の告発や体制批判によって、より良い社会を目指す作品は、私たちに理想の未来について考える想像力を与えます。美術は、医学と異なり大惨事に対しての即効薬にはなりませんが、社会に対する長期的な治療薬となりえるのではないでしょうか。
一方で、より直接的に問題解決を目指す美術のプロジェクトも行われています。何かを描いたり作ったりという美術本来の行為が持つ創造性や主体性を発揮させる力を使い、傷ついた心を癒そうとするものや、作品を販売することでチャリティとして経済的な貢献をするものなどを紹介します。
…[中略]…本展の最後は、破壊、喪失、死などからの再生・再構築を主題にした作品を紹介し、難民問題の早期解決を訴えるオノ・ヨーコによる鑑賞者参加型のインスタレーションで幕を閉じます。オノは私たちにひと時の間、理想の未来について考えることを促すのです。

 

作家:アイ・ウェイウェイ ( 艾未未 ) (Ai Weiwei)
作品:オデッセイ
英題:O
dyssey
制作年:2016/2018
材料
:デジタルプリント

難民問題を主題とした本作では、国境や民族、宗教による分断が深刻化する現代社会において、人々が戦争や貧困を逃れ、時には海を越えて移動する様子が、古代ギリシャの陶器を思わせるスタイルで描かれています。彼らを待ち受ける閉ざされた国境には「誰も違法ではない」、「安全な移動」、「国境を開けろ」という難民たちの訴えが掲げられています。作家は、我々が直面しているのは難民問題ではなく人間の問題だと言います。…[後略]

 天井にまで届く非常に大きな作品で、レリーフのように難民問題を訴える絵がつながっています。
 まず、絵の根底にある「ギリシア風」という部分から難民問題を描いていて凄いです。欧州の難民問題に関して、ギリシャは欧州の入り口として陸路で押し寄せる難民え溢れかえった国です。

 そして、描かれた絵の内容。
 ずっと同じものが続いているのではなく、物語絵巻のように横長に時間の流れをとるように問題が描かれています。

 軍関係の戦車やヘリコプターが軍事介入する様子。ボートに乗り欧州に押し寄せる難民、受け入れられず放置され、国境解放を求める難民。デモ隊や暴徒に対して催涙弾を投入する警察機構。監視カメラは英国の状況でしょうか。

 上手く創られた作品だと思うし、展示された作品の中でも好きな、お気に入りの作品の1つです。

 

 

 

作家:エヴァ&フランコ・マッテス (Eva and Franco Mattes)
作品:プラン C
英題:Plan C
制作年:2010
材料
:ビデオ(15分27秒)

本作は、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故によって無人の街となったウクライナのプリピャチを訪れて制作した作品です。事故の5日後に開園するはずだったプリピャチ遊園地で、作家たちは防護服に身を包み廃材を拾い集め、…[中略]…英国のマンチェスター…[中略]…でその廃材を用いて遊具のレプリカを制作し、公園に設置、市民に公開したのです。遊具を楽しむ人々の笑顔がプリピャチ遊園地で実現したはずの姿を思わせる一方で、その一部がチェルノブイリの廃材であるという事実は、原子力の安全や信頼といった問題をも思い起こさせます。

 チェルノブイリ原発事故により、開園されることのなかった遊園地の廃材を用いて、英国の公園で市民に開放するという作品。

 私が気に入ったのはこのコンセプトです。
 原子力や放射能の安全性を訴えるに当たり、ヨーロッパに大きな衝撃を与えたチェルノブイリ事故に冒されたものを素材に選ぶ。さらに安全性の象徴のような子供を連想する遊園地を題材にして。そして、安心しているであろう先進国の英国で公開する。
 とても挑戦的な作品だと思いました。

 動画のキャプチャ画像が公開されています:こちら

 

 

 

作家:Chim↑Pom
作品:REAL TIMES
制作年:2011
材料
:ハイビジョン・ビデオ・インスタレーション(11分11秒)

本作は2011年、福島第一原子力発電所事故から1か月後に原発付近の東京電力敷地内で撮影された映像作品です。防護服に身を包み、…[中略]…展望台に到着すると白旗に赤いスプレーで日の丸を描き、さらにそれを放射能マークへと変化させ、白煙を上げる原発を背景に、エベレスト登頂や月面着陸であるかのように旗を掲げる様子が映し出されています。Chim↑Pomは、帰還困難区域で、避難指示が解除されるまで見に行くことのできない展覧会「Don’t Follow the Wind」を自ら企画し、2015年に開催…[中略]…するなど、福島の問題に大きな関心を寄せて活動を行っています。

映像作品を実際にみていただければ分かると思いますが、とても過激なグループです。Wikipedia等を見れば、渋谷駅の岡本太郎作品への事件や、広島での事件等も載っています。

 この作品は、原発事故後の2011年に福島の東電敷地内で撮影され、「日の丸」を「放射能マーク」に変えます。この作品、実は以前にも観たことがあり、確か『世界報道写真展2018』だった気がします。
 主張が強いというか、明確な非難のメッセージを感じるというか、過激な部分が個人的に大好きな作家です。

 

 

 

作家:CATPC & レンゾ・マルテンス (CATPC in collaboration with Renzo Martens)
作品:私の祖父はどのように生き残ったか
英題:How My Grandfather Survived
制作年:2018
材料
:チョコレート

CATPCはコンゴ南部のブランテーション労働者が美術作品を制作するための組織で…[中略]…す。CATPCのメンバーがワークショップにより制作した彫刻は、…[中略]…3Dプリント技術を用いて型が作られ、同じ形のチョコレート製彫刻として世界各地で販売されます。その収益はCATPCの活動やブランテーション労働者の支援に使われるのです。チョコレートの材料であるカカオは植民地時代からベルギーがコンゴを搾取するシンボルとされますが、マルテンスはそれを用いてコンゴに経済的還元を試みるのです。

 この作品は、そもそも作者の存在を特筆すべきだと思いました。
 私も今回初めて知りましたが、CATPCという組織は2014年にコンゴで結成されたもので、プランテーション労働者が美術作品を制作するための組織です。

 そして、チョコレートで創られた作品。
 カカオとかコーヒーとか、「フェアトレード」という文句が常識化しているように、発展途上国における農産物の取引と貧困に関する問題は大きなものになっているのが現状だと思います。

 そのチョコレートで作品を創り問題提起を行うだけでなく、経済的還元までをも目標に入れているというのが凄いです。
 この作品、やっぱり暑いと溶けてしまうんですよね…?

 

 

 

プロジェクト:HYOGO AID ’95 by ART

 阪神淡路大震災の後、復興義援金を集めるためのプロジェクトがこの「HYOGO AID」です。現代美術家。写真家23人が提供した絵画やプリントを基にポスターを制作、その売上を義援金にしたそう。

 名だたる有名な作家さんが並んでいて、本当に凄かったです。
 残念ながら写真撮影はできなかったので、作品リストを参照してください!

作品リスト:PDF

 

 

 

作家:高橋雅子(ARTS for HOPE) (Takahashi Masako (ARTS for HOPE))
作品:アートで何ができるかではなく、アートで何をするかである
英題:It’s Not What You CAN Do with Art But What You DO with Art
制作年:2018
材料
:ミクスト・メディア・インスタレーション

2011年3月の東日本大震災発生から、わずか9日後に発足した緊急支援チームARTS for HOPEは、同年4月下旬には避難所でのワークショップを開始しました。東北の他、2016年に大地震が発生した熊本でも仮設住宅、保育園、幼稚園、小学校などで活動を行っています。2018年9月現在、ワークショップ参加者数は4万人にのぼり、1300人の国内外のボランティアスタッフがこれまで活動に参加してきました。本展ではその活動の一部をご紹介します。…[後略]

まさに「アートのちから」が具現化されたような作品だと感じました。
 天井まで届くパネルを何面も使って展示されている作品には、作家の力強い言葉が。この言葉たちがとてもキャッチーで好きです!

アートに何ができるか?
ではなく
アートで何をするか!
である。

つくることは 一歩踏み出すこと
つくることは 心の色絵をぬり変えること
つくることは 生きること
つくることは 明日を変えること

 作品は複数あり、『Happy Doll Project』では手作りと思われる人形に添えられた「願い」の1つ1つがとても小さな幸せで、読んでいて泣きそうになりました。また、『Art Renovation Project』では子ども達を始め、参加者の楽しそうな笑顔が本当に印象的でした!

 

 

 

作家:ムハマッド・ウチュプ・ユスフ (Muhammad ‘Ucup’ Yusuf)
作品:不屈
英題:Tak Kunjung Padam (Unflagging)
制作年:2009
材料
:木版、布

2006年にインドネシアの天然ガスの採掘現場から高温の汚泥と有毒ガスが噴出し始め、2017年までに6万人を超える人々が自宅から避難したとされる災害を題材としています。災害の原因は諸説ありますが、当時の政権と利害関係のある私企業の無責任な採掘によるものとの説があり、本作には両者に対して抗議する住民の姿が描かれています。…[中略]…作品中央の男女の間から顔を覗かせる赤ん坊は再生と世代交代を表し、頭から生えた枝、そして泥の中から力強く伸びる拳は、異議を申し立て、権利を主張する人々の不屈の精神を象徴しています。

 大変な状況に陥るインドネシアを描きながら、題名は『不屈』、そして描かれた人々もまた拳を振り上げ不屈を叫んでいるようです。

 絵の雰囲気からもそうですが、どこか物語チックに見える描き方と感じました。中世ヨーロッパの書籍とかにありそうなタッチだなと。多分、「木版画」だからなのでしょうけど、このタッチが個人的に気に入りました。

 描かれた内容は、権力と暴力で民を虐げ、私腹を肥やすような支配者と、利益最優先で開発を進める企業を糾弾し、非難するようなもの。そしれ、その「悪」に何度も立ち上がり、立ち向かう民衆の姿。
 メッセージ性が非常に強いし、分かりやすいし、何よりも住民の力強さが印象的な作品でした。

 

 

 

作家:ヒワ・K (Hiwa K)
作品:
英題:The Bell
制作年:2015
材料
:ブロンズに鋳造された武器の廃材、木、2 チャンネル・ハイビジョン・ビデオ、カラー、サウンド

イラクで戦争に使用された武器の残骸などを集めて溶かし、それを材料にイタリアで鐘を作るプロジェクトです。戦争が起こると、資源不足から教会などの鐘も材料にして武器が生産されますが、《鐘》ではその流れを逆転させています。イラクでヒワ・Kを案内するナジャドという男性は、精製した金属を販売することで財を成しています。一方、イタリアの鐘工房の職人の友人は、先祖が戦時中に大砲の製造に関わっていたと言い、武器、鐘、金属をめぐる物語の円環構造が浮かび上がります。…[後略]

 こういう作品、大好きです!
 イラク戦争で使用された武器を溶かし、鐘を鋳造。

 反兵器という訴えと同時に、武器の鋳造と鉄の販売という真逆の関係も表していて。
 多分、この鐘を観ただけでは何も分からない──文様から中東の雰囲気は伝わりますが、それ以外は何も分からないと思います。でも、こうしてコンセプトを提示されると、「鐘」の放つメッセージが大きく変わります。

 似たようなモニュメントは、NYの国連本部にある各国の寄贈作品が思い浮かびます。材料が果たして武器類かどうかは分かりませんが、反戦や平和を希求したものですよね。

 

 

 

作家:田中功起 (Tanaka Koki)
作品:一時的なスタディ:活動 #8 ツヴェンテンドルフの歌を書き直す
英題:Provisional Studies: Action #8 Rewriting a Song for Zwentendorf
制作年:2017
材料
:ハイビジョン・ビデオ、カラー、サウンド

オーストリアで1970年代に起こった反原発運動で歌われたプロテストソング「原子力発電」を基に、多世代の男女10人が現代の反原発ソングを作る様子を映像に記録しています。

 世代や性別を超えた10人が、反原発ソングを作成するようす。
 段々と歌が完成していくわけですが、その過程でアイデアを出し合ったり、原発や安全などに関わる知識を挙げていったり、言葉遣いや歌詞の言い回しを考えてみたり。

 同じ目標に向かって、考えを共有しながら、協力してソングを作っていく様子は、非常に分かりやすいドキュメンタリーのようでした。
 様々な意見が出る中、原発問題に縛られない、世界に存在する幅広い諸問題が議題に挙がり、歌詞に加えられ、平和や安全を願うようにも受け取れる楽曲が完成したときは嬉しかったです!

 

 

 

作家:宮島達男 (Miyajima Tatsuo)
作品:時の海 – 東北(2018 東京)
英題:Sea of Time – TOHOKU (2018 Tokyo)
制作年:2018
材料
:LED、電線、集積回路、写真

[前略]…東日本大震災被災者への鎮魂を祈り、未曾有の大災害の記憶を後世に残すための10年がかりのプロジェクトです。本展ではその一部を展示していますが、制作資金はクラウドファンディングを通じて集められ、最終的には東北地方に3000個のデジタルカウンターを設置することを目指しています。宮島の作品は鑑賞するだけでなく、作品の持つ生と死というコンセプトを、鑑賞者の一人ひとりがどのように捉え、行動するかということについて、他者と共有しながら考えることのできる、開かれたプラットフォームとして機能しているのです。

 正直、作品のコンセプトはなかなか理解できなかったのです。
 LEDのデジタルカウンターを東北に設置することで、一体なにを表現しているのでしょう? 単純に私の理解力不足ですが、解説パネルにも方法の説明に重きを置いていたようで、その目的(?)がよくわからず。

 資金はクラウドファンディングで集めた、というか現在でも集めているようです。
 鑑賞者を作品の制作に取り込むことで、「東北へ目を向けてもらいたい」という点は共感しました。形として残る参加は、記憶より薄れないし、つながりがより強固になるのではないでしょうか。

 

 

 

作家:池田 学 (Ikeda Manabu)
作品:誕生
英題:Rebirth
制作年:2013-2016
材料
:ペン、アクリルインク、透明水彩、紙、板にマウント

この幅4メートルの大作絵画は、制作に3年3か月が費やされました。海外滞在のため東日本大震災を経験しなかった池田ですが、震災後、美術で何ができるのか?と自問しながら、…[中略]…本作を制作しました。…[中略]…左下の隅の瓦礫のイメージから描きはじめ、最後に生と死のサイクルを象徴する花々を上部に描き、完成させました。様々な自然災害を乗り越えた文明の再生が主題で、人間の無力さを感じつつも希望を失わずに生きてゆく、という作家の思いも込められています。

 池田さんの作品は2作目。
 東日本大震災を実際に日本で経験していたわけではなくとも、遠くアメリカで3年以上の歳月を費やして制作した本作。

 まさに、日本を象徴するような大きな桜の木を思わせる大木を中心に、地震や津波による破壊と、そこから立ち直ろうとする人々の希望が形になったような「芽吹き」がとても印象的でした。

 デジタルで公開されていて、細かい部分などが解説付きで観られます。
 個人的には、こうした配慮が嬉しかったりします!(こちら

 

 

 

作家:オノ・ヨーコ (Yoko Ono)
作品:色を加えるペインティング(難民船)
英題:Add Colour Painting (Refugee Boat)
制作年:1960/2016-2018
材料
:参加型インスタレーション

1961年に初めて発表された「色を加えるペインティング」シリーズは、ギャラリーに展示された白地のキャンバスや地球儀などに観客が色や言葉を書き加えていく作品です。常に移り変わる人生の、すべての瞬間が美しいものであることのメタファーでもあります。…[中略]…観客はクレヨンを使って展示室の壁や床、そして難民船を思わせる船のどこにでも、平和への願いを書くことができます。オノは活動初期から一貫してアートと日常生活の境界を崩すことを試み、前衛的かつストレートに愛と平和を訴え続けているのです。

 展覧会の一番最後に展示されていた、参加型のインスタレーション。
 参加者は、クレヨンを手に作品の中に足を入れ、好きなところにメッセージを書くことができます。

 ここまで「カタストロフ」と「美術のちから」を観てきた鑑賞者自身が、最後に自分の気持ちや願いや意見を表現できるような作品。多分、というか確実にアートの持つ力とか、メッセージ性とかに対する気持ちは変わったと思います。
 そんな中で、自分自身で表現するというのは、大きな意義のあることなのかなと感じました。

 この作品は、「色を加えるペインティング」のシリーズで、世界各地で展示され、様々な人のメッセージが重なっています。
 そういうのを、1つ1つ眺めるのも、面白かったです。

 

 

 

 


 

 展示内容の紹介は以上です!

 美術展に行ったら毎回購入するポストカード。
 今回は良いデザインや作品のカードが無くて購入を悩みましたが結局購入(笑)

 行った12月、ちょうど六本木エリアでクリスマスのイルミネーションが開催されている時期でした! 六本木は、ちょうど東京タワーが見えるから、良いですよね!

 

 


 

 

 

 最後まで読んでくださり、
 本当にありがとうございました!!

 


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