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【映画】『ゲット・アウト』───“異様”を演じる俳優の怪演!!

※ネタバレなし。

※画像は予告映像のキャプチャです。

2017年11月21日

ゲット・アウト
(原題:Get Out)

 

 

 

【評価:3.4/5.0】

 


【一言】

表情と行動の演技が醸し出す“異様”。
そして、満面の笑みから溢れる“恐怖”。
所々で垣間見える“緊張”。

「消化不良」「不快」の狭間の絶妙な面白さ!


【目次】

 

 


 

 

ストーリー

 黒人写真家のクリスは、美しい白人女性のローズと恋人関係にあった。2人は両親への挨拶も兼ねて彼女の実家で週末を過ごすことにした。

 娘の恋人が黒人であるということに驚く様子も見せずに温かく迎えてくれたローズの家族だったが、そこで過ごすうちに次第に彼女の一家が“何かがおかしい”と思い始めるクリスだった。

予告動画

 

 


 

 

作品データメモ

監督:ジョーダン・ピール
制作:パーフェクト・ワールド・ピクチャーズ
キャスト:D.カルーヤ,A.ウィリアムズ and more.
上映時間:103分
日本公開:2017年10月27日
配給:東宝東和
公式サイト

 

 


 

 

感想

感想外観

 演出とか効果とか、映像映えとかカメラワークとかじゃなくて、なによりも「雰囲気」を大切にしていた作品。
 ただ観て「えっ……あぁ、ん?」と感じるのは“普通とは違う”という異常感。

 俳優さんの演技、特に表情の演技が素晴らしかったです。
 観客が感じるであろう「異様さ」のほとんどを醸し出しているのが表情だったと感じました。

 表情で描きたかったのは、やはり雰囲気だと思います。人間の感情が一番現れやすい顔の演技で、アノような表現をすると、「異様」を感じざるを得ません。

 表情に関連して、笑顔です。
 「笑顔の奥に隠れた〜」などと言いますが、まさにそれです。
 普通なのですが、“何かがおかしい”と感じずにはいられません。

 ホラー映画というか、スリラー映画というか、どちらでもないというか。
 全体としては普通の映画なのですが、所々で挿入されるシーン、時々現れる場面が緊張を誘い、怖さを感じさせます。

 これもまた、恐怖はあくまでも雰囲気づくりの構成要素でしかない印象。

 そして感じた消化不良感と不快感。でも、それは映画を拒絶するようなものではなくて、程よい余韻が残るような不快感でした。

 理解し難い伏線や、納得いかない説明、それらを含めて「あぁ、凄い映画だったな」と思えるような絶妙な、私好みのものでした。

 

 

 

 

映画に満ちる異様感

 キャッチコピーの「何かがおかしい」にもあるように、映画全体に異様感が溢れていました。汚い言葉を許されるなら、「胸糞悪くなる異様感」ですかね。

 「不思議」とか「奇妙」じゃなくて『異様』なんですよ。普通と違うことで覚える嫌悪感に似た異様さが映画を支配しています。

 そして、重要なのはその異様さが決して強くないこと。少しずつ、少しずつ積み重ねていくことで、段々と観客の心に溜まっていくような感覚でしょうか。

 「これは絶対に変…………だけど何が変なの?」と答えが分からないモヤモヤ感という気持ち悪さもありました。
 これもまた、異様さを演出するテクニックだったのかもしれません。

 

 

 

 

 

異様を演じる

 上で散々語った「異様」ですが、それを醸し出しているのはやはり、俳優さんたちの「演技」でした。

 その演技の大部分は表情に集約されていたと思います。行動や発言以上に、表情が印象的でした。

 なかなか上手く書けないし、書いたらネタバレにもなりそうなのですが、普通の生活を描いているのに、現れる表情が普通とは違うというか。
 どこか仮面を被っている印象を受けるというか、無機質な感情が現れるというか。

 「顔は心の窓」なんて言いますし、その顔が少しでもおかしいと、その人物・言動・果ては作品全体にどこ奇妙な感覚を覚えるのかもしれません。

 

 

 

 

え・が・お

 いや〜いい笑顔でしたよ、お世辞抜きで(笑)
 大して書く事はないのに、上の表情とは分けて章立てしたのは、それだけ印象的だったし、書くべきだと思ったからです。

 まぁ、書いたら書いたでネタバレになるので、ほんの少しだけ。

 笑顔、怖かったです。
 「笑顔の奥に隠された素顔」とかって言いますけど、今作はそれすら超越するようなイメージですかね。

 観たら分かりますが、本当に凄いです。

 

 

 

 

 

怖い映画

 えぇ、YESかNOで聞かれたら、怖い映画だったと答えるでしょう。でも、その怖さは描写的・心理的な怖さではなく、精神的な怖さですね。

 じわじわと積まれる怖さというか、ガツンと大きな衝撃を与える怖さではなくて、ちょこちょこ描かれる怖さが観客の中に溜まっていく感じですかね。

 さらに言ってしまうと、「怖さ」よりも「緊張感」の方が大きかったような気がします。
 ハラハラさせるような?ドキドキさせるような?そんな恐怖とも緊張とも言えるような部分が多かったです。

 これらの恐怖・緊張感も、たくさん書いてきた「異様」を描き出してる要因だったのかもしれません。

 

 

 

 

 

消化不良と不快感

 それなりに伏線がある映画でした。伏線というか、最終的に「あ〜そうだったのね」と納得できるようなものではあります。

 ただ、全部に納得できたわけではなく、またラストもそれなりで、若干消化不良感は否めなかったです。

 不快感という点では、どちらかというと終盤の展開に関してですかね。
 まぁこれに関しては内容云々ではないわけですが。

 とまぁ、不快や消化不良を感じたわけですが、決して映画が駄目だったわてではないです。

 むしろ、(私好みの)丁度いい余韻が残る、絶妙な量だったと思います。本編が終わって、エンドロールで色々と思い出しながら考えられる程度の、良い具合の消化不良でした。

 

 

 


 

 

 

以降、映画本編のネタバレあり

 

 

 

 


 

 

 

ネタバレあり感想

 

前半

映画冒頭部分の映像(公式)

 冒頭。
 夜道を歩く黒人。
 彼の後ろをついて来るのは白い車。そして、陽気なBGMとは反対に、誘拐が行われようとして。

 写真家のクリスと、その彼女ローズ。
 差別を感じない、お互いに深い好意を抱き合うとても羨ましいラブラブのカップル。

 2人は婚約しており、ローズの両親への挨拶を兼ねて、週末を実家で過ごすことに。
 車で移動中、突然何かが飛び出して、轢いてしまう。
 急な登場で怖かったです。

 飛び出したのは鹿。
 警察にきちんと連絡し、その事故を収めてから実家へ向かう。

 実家は皆んな白人だったが、クリスを差別する事なく暖かく迎えてくれる。
 そして、丁寧に家の中を巡るツアーをしてくれたローズ父さん。

 しかし、働いている家政婦と庭師の2人は黒人で、しかも何かただならぬ雰囲気を醸し出している。
 一言でいって、どこか怖い。

 ローズ家に来た夜、眠れないクリスは外へ出て煙草を吸おうとする。
 そこで見たのは、猛ダッシュしてくる庭師黒人や、ガラスに向かってポーズを決める家政婦黒人の姿。
 はっきり言って、怖い。

 家の中に戻ろうとしたとき、ローズ母親に見つかってしまう。
 そのまま心理療法の話術に掛り、彼が子供のときに母親を交通事故で亡くした日を思い出す。自然と涙が溢れる彼。

 部屋に響くのは紅茶をスプーンでかき回す音。
 そして、クリスは催眠術にかかってしまう。まずは身体が硬直して動けなくなり、次に床に沈んでいく感覚を覚える。

 朝、昨晩の出来事を忘れる事にして、カメラを携えた彼は敷地を巡る。
 そこで庭師黒人と会和をするが、庭師の口から出てきたのは、ローズへの愛情とも受け取れる言葉。

 

 

 

 

中盤

 時は過ぎ、懇談会。
 何組もの白人夫妻が集まるなか、クリスは黒人一人と場違い感を感じながらも、家族の一員として出席する。
 そこでかわされる会話は、決して黒人差別的な内容ではないものの、どこか不快なもの。

 自分の部屋に戻ったクリスはスマホの充電コードが抜けている事に気が付き、使用人を疑う。
 同僚に電話をかけて状況を伝え終わったあと、振り向くとそこに立っていたのは家政婦黒人。満面の笑みを浮かべて弁解する姿が怖すぎる………。

 そんな中、クリスは白人たちの中に一人の黒人を見つけ、仲間だと思い声をかけるが様子がおかしい。
 見覚えある顔なので確かめようとスマホで写真を撮影すると…………フラッシュが光った途端にその黒人は「Get out! Get out!!」と叫び狂ってしまった。

 すっかり気分を害した彼は、ローズとともに散歩へ。集まった参加者はビンゴゲームを!
 しかし、実際に行われたのは…………オークション。もしかして、人身売買???
 懇談会での会話は、ここでの品定めだったのですね。

 散歩から帰宅後、同僚から懇談会にいた黒人が知り合いだと伝えられ、すぐにこの家から出ることを決めたクリスとローズは出発の準備をしている。

 そんな時、ふと目に入ったのは部屋にある小さな扉。開けてみると、そこに入っていたのは…………ローズとともに映った何人もの黒人たち。

 とにかく家を脱出しようと玄関まで降りるも、ローズが持つ車の鍵が見つからない。
 家族が玄関に集まってきて、無言の圧力で家に留めようとする。そして判明したのは、この家全員がグルで悪者だったということだった。

 クリスは催眠術で、倒れ、地下へ運び込まれる。

 

 

 

 

 

 

後半

 椅子に拘束された状態で目を覚ましたクリス。
 すると、目の前のテレビの電源が入り、映像が流れ出す。

 語り始めたジジイの話によると、この一族は「結社」の一員で、人体を入れ替えることで命を繋ぐ実験をしているようだった。

 一方の同僚。
 ただならぬ状況と見抜いた彼は警察に駆け込むも、信じてもらえず。

 地下のクリス。
 自分が盲目の画廊オーナーに購入されたと知り、若干の神経系を残して脳を入れ替えるという恐るべき計画を知らせる。
 神経系が残っているから、見えるし、聞こえる。

 そして、催眠術で「沈んだ地」へと潜った彼の脳に、画廊オーナーの脳を移植する手術が始まろうとしていた。
 まず、画廊オーナーの頭を切開。痛々しい描写な上に、方法が雑じゃないですか(笑)

 そしてクリスがローズの暴力兄の手で拘束室から連れ出されようとするが…………クリスはビリヤード玉で殴った!!
 なんと、彼は催眠術を聞かないように、椅子の綿を耳に詰めたのだ!!(手が縛られてるのに、どうやって耳に入れたんだよ!!)

 ローズ兄を倒し、ローズ父を倒して地下から脱出! 1回にいたローズ母の催眠術道具であるティーカップを割り、彼女も殺す。
 いざ玄関から逃げ出そうとする所で、復活した兄と戦闘に。無事に殺して、家の外へ。

 車に乗り逃亡しようとするところで、轢いてしまったのは家政婦黒人。
 身体を乗っ取られているだけだと知ったので、車に乗せて一緒に逃げるはずだった。

 目を覚ました家政婦黒人は家を破壊された恨みから運転中のクリスに飛びかかる。運転を誤った車は木に激突。生き延びたと思ったら、今度はローズが。

 銃を持ったローズ。
 クリスに向かって発砲するも、逃げる為なかなか当たらない。そこで、脚力に自身がある庭師黒人が追いかけてきた! トレーニングの成果だ!?

 クリスを捉えた庭師黒人だったが、機転を利かせたクリスはスマホのフラッシュを当てる。
 すると、正気を取り戻した庭師黒人はローズから受け取った銃でローズを殺し、自身も自殺。

 パトカーの光が見え、クリスは殺人という罪の前に絶望を感じるが、乗っていたのは同僚だった!
 一緒にパトカーに乗り帰宅。
 「だから行くなっていっただろ」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 最後まで読んでくださり、
 本当にありがとうございました!!

 

 


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