※ネタバレなし。
※画像は予告映像のキャプチャです。
2017年10月13日
猿の惑星:聖戦記
(原題:War for the Planet of the Apes)
【評価:3.0/5.0】
【一言】
これまでの“人間社会への皮肉”が薄まった一方で、“心情”という部分へスポットライトが当たった。
SFの名作『猿の惑星』に繋がる前日譚3部作が完結し、英雄シーザーの物語も幕を閉じる。
今作は娯楽映画という印象だが、とても強く面白かった。
【目次】
ストーリー
人類が開発した薬により知恵を付けたエイプ(類人猿)は、森へ逃げ込みコミュニティを形成した。
一方の人間は、猿インフルと呼ばれる病気の影響で人類の大半が死亡した。
エイプは知性と指導力を有するシーザーを頭として力をつけていった。そんな中、人間を憎悪するコバの行動により人類とエイプは全面戦争へと突入した。
森に隠れて戦争を戦うエイプの首領シーザーを狩るため、“大佐”の率いる特殊部隊がエイプの隠れ家を襲撃する────。
予告動画
前2作のあらすじ(英語版)
作品データメモ
【作品メモ】
監督:マット・リーヴス
キャスト:アンディ・サーキス,ウディ・ハレルソン and more.
上映時間:140分
日本公開:2017年10月13日
配給:20世紀フォックス
公式サイト
感想
感想外観
これまでの「社会への批判・皮肉」という主題から、「エイプ(類人猿)の心情描写」を主題とする物語へ変わっていました。
その点について、個人的には肯定的な感想です。
前作でコバが引き起こした人間と猿の全面戦争。聖戦と銘打った割には、そこまで戦闘が描かれなかった印象なので残念でした。
もちろん、描かれましたけどね。
娯楽映画へと変わってしまった残念感もありました。
新3部作の前2作は社会への皮肉、批判などのメッセージを込めた作品で、難しく重たい主題が隠れてるようで良かったですが、 一方で、今作はどちらかというと「観客を楽しませる」という部分が主となり、『猿の惑星』だからこその主題性が薄れているように感じました。
ポスターに映っている少女、彼女の演技がとても良かったです!
それから、エイプは相変わらずリアルですが、表情が豊かになったように感じました。
1968年の第一作目『猿の惑星』の前を描いた前日譚シリーズの完結作という事で、繋がる部分、意識した部分が少なからずあり、嬉しかったです。
心情・心理面
今作はエイプの心理描写,心情描写が描かれていました。
新3部作の1作目『創世記』では人間のエゴを、2作目『新世紀』では猿により人間の醜さを描いていたと個人的に考えています。
そして、今回の3作目『聖戦記』ではエイプの心情心理を通して人間を映していたのかなぁ〜と。
前作『新世紀』でもコバの「人間への深い憎悪」という強い心情が描かれていましたが、今作はその部分を踏み台にして、昇華させた内容に感じました。
人間の中でも最も強い感情を、エイプが感じる事で映し出し、描き出していたのだと思いました。
裏切りなどもその中の1つかもしれませんね。
人間vs猿
堂々と声高く「聖戦」と銘打たれた今作ですが、期待していた戦闘・戦争描写は少なかったです。
武器を用いて個々で強い人間と、仲間で繋がることで強いエイプの全面戦争が観られると思っていただけに、残念でした。
ただ、原題の『War for the Planet of the Apes』の「War」は武力による戦いを示しているんじゃなくて、未来の生存権を巡る人間とエイプの意識的な戦争を示していたのかなぁ〜と。
ようするに、まさに『聖戦』ですよ。
(ネタバレですが……)映画の作中でとある人物が言っていた台詞です。
「まさに聖戦だ。この一瞬で人類の未来が決まる」と言うような趣旨の発言をしていました。未来を決めるWarだったんです。
※絶対に台詞が違う気がします(笑)
娯楽映画への堕落
娯楽映画に堕落する事だけは絶対にやめて欲しかったんですがねぇ〜。
『猿の惑星』って、人間をエイプに例える事で社会へとの批判とか、皮肉とかってメッセージを描き出す点が素晴らしいと思っています。
「猿」に例える事で、観客は第三者の目線から人間がいかに醜い生き物なのかを感じ、考えられると思っています。
しかし、今作はその部分が薄かった気がしました。もちろん、描かれていましたし、心理描写の部分に繋がるのでしょうが、どうも微妙でした。
どこか「観客を楽しませる」という思惑が感じ取れてしまって、とても興ざめというか、残念だったというか。
演技と表情
登場する少女の演技がとても良かったです!
観てない方は、そもそもどんなキャラなのか気になりますよね(笑)
演技としては、特に「目」が凄かったです。目が自分の気持ちを伝えるツールとして働いているようで、とても上手かったです。
あとは、可愛いですね(笑)
一方で、エイプ。
猿はモーションキャプチャーという猿の動きを人間が演じる事でリアルな動作にしているというのは有名な制作話です。
そして、今回は表情がとても綺麗だったと感じました。前2作以上に顔をアップして映す場面も多い印象でした。
作品の内容が心情心理描写に力を入れているからなんですかね?
前日譚シリーズ完結
1968年の第一作目『猿の惑星』。
衝撃的な世界観と、驚愕的なラストが本当に素晴らしい作品です。
そして、今作はその前日譚を描く新3部作の完結作。
1作目『創世記』で猿が知識を付けた理由が。
2作目『新世紀』では人間の敗退と猿の繁栄が。
そして3作目の『聖戦記』ではなぜ「Planet of the Apes」になったのかが描かれます。
具体的にはネタバレになってしまいますが、『猿の惑星』を観た方なら絶対にその関連性や繋がる部分が分かるはずです。
個人的には、ずっと気になっていた部分の謎が解けてスッキリしました!
以降、映画本編のネタバレあり
ネタバレあり感想
序盤
冒頭のあらすじ紹介。
これまでの長い物語を端的にまとめていて良かったです。なにより、『DOWN』,『RISE』,『WAR』という原題の単語が強調されていて感激!
シーザーらの基地を狙う特殊部隊。
「人類は絶滅危惧種」ってフレーズが皮肉ですよね(笑)
そして戦闘。
劇場に響くエイプの高い鳴き声が耳に残っています。
銃を持つ人間ですら、量と地形を武器に戦うかエイプに圧倒されるんですね………。
前半
戦闘が終わり、シーザーが登場。
歩く前方の道を開けたり、手を差し出したりと、カリスマ性のあるリーダーの風格です。
CMや予告編出来になっていた、人間側で戦うかエイプ達の理由はそういう事だったのですね。
コバ派の彼らが、シーザーの制裁を恐れていたと。
そして滝の裏の隠れ家へ。
父と子の感動の再会、そしてまさかの恋愛描写も!?
安全な土地を発見し、会議。
シーザーの「Apes together strong」って台詞と手話が格好良い!
就寝……………大佐自ら率いる特殊部隊が隠れ家を襲撃!
音を立てない特殊部隊 vs 静かに行動するエイプ。地の利はエイプにありますよねぇ〜。
ここで大佐が殺したシーザーの妻と息子が今作の大きな行動動機です。
とりあえず、エイプ達は安全な場所へ移動。移住。
でも……シーザーは一人復讐の旅へ。
中盤
シーザー一人で行かせるはずもなく。
オラウータンのモーリスや、ゴリラのルカ、ロケットが彼を追いかける。
そして山間の宿舎にて、幼い少女を発見。口が聞けない彼女を、モーリスが連れて行く。
大佐への復讐心を顕にするシーザー、本当にコバが乗り移ったみたいで怖かったです。
兵士たちの宿舎で、裏切ったウィンターを問い詰める。大佐の行方の兵隊の合流を知り、そして彼を殺してしまう。
「エイプは仲間を殺さない」って信条が崩れた……。
兵士を追って発見したのは射殺された死体。
口が聞けない兵士を大佐が処分したわけですか。恐ろしいですね……。
鉄塔に登って偵察中、馬が盗まれた!
雪山での馬チェイス!
追いかけた先の山小屋、とても綺麗でした。『アナと雪の女王』のお城みたい!
現れた謎のエイプ。
バット・エイプ君は動物園にいたそう。
ここで彼が少女に差し出したのが「NOVA」と書かれたプレート。
ノヴァって初期1作目『猿の惑星』で登場した名前ですよ!
朝。
満開に咲き誇る花の下で、ゴリラが少女にそっと花を折って渡してやるシーンが綺麗……。
でも、その直後に死んでしまう彼が悲しすぎる……。
後半
大佐の強制収容所。
猿が縛り付けられている磔刑杭は初期1作目『猿の惑星』で登場したものの原型ですかね!?
それにしても、食料&飲水なしでエイプ達を働かせるとは………鬼ですよ大佐は、
痩せ細ったオラウータンが可哀想でした……。
捕まったシーザー。
彼が労働作業場で「やめろ!」と叫び、他のエイプ達が声を上げる。本当に人望と信頼の厚いリーダーなんですね。
大佐とシーザーの会話。
人間が喋れなくなった理由が明かされました! 長い年月の末に言葉を失ったのかと思ったら、ウイルスによる作用だったんですね。
にしても、大佐ってかなり合理的で、感情で動かない強い人間。食料を配布した場面などはちょっと好感度上がりました(笑)
地下で脱出路を見つけたモーリスとバット・エイプ、ロケット。
そんな中、少女が施設の中へ……。シーザーに「喉が乾いたの?」と水を差し出す優しさに感動していたら、他のエイプ達が食料を渡してくれた………優しすぎ!
そして脱獄作戦を決行。
この辺は、普通のアクション映画みたいです(笑)
まずは歩数を数え、地下でトンネルを掘ります。
少女が「私はエイプ?」って聞いた問に、モーリスが「You are Nova.」って答える場面がとても好きでした!!
そして脱獄。
まずは泥を投げて兵士を誘い出し、鍵を奪取。
子供をハラハラな作戦で逃し、大人も続々と脱出。
大成功!
終盤
シーザーは大佐との決着を付けに。
だが、大佐自身が喋れなくなってしまっていた………。彼を殺すか、手を出さないか葛藤するシーザーの表情がとても重々しかったです。
そして北の兵隊たちの襲撃。
逃げようとするシーザーは、弓の名手によって危険な状況に!!
ここで描かれた、心揺れるドンキーの描写が素晴らしかったです。本当に、いい場面!
そして、大きな雪崩が全てを飲み込んで終わり。
エイプ達は移動し、安息の地を見つけました。
そして…………シーザーは息を引き取ります。
最後まで読んでくださり、
本当にありがとうございました!!