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芸術「YouFab2019」:ヒト/モノ/システムの関係を互いにみるテック芸術賞

こんにちは!
お元気ですか?

 9月9日に使用しているスマホPixel3のOSをAndroid 11にアップデートしました! Google大好き人間なので、毎年OS更新を楽しみにしています。今回も便利機能がたくさんで素晴らしいです!!!

 さて、記事は2月28日に観に行った「YouFab 2019」の受賞作品展の簡単な感想です。今回はそんなに長くならないですかね。

高嶺格《NIMBY (Not In My Back Yard)》@YouFab2019
作品のチェックをされているスタッフさん。

2020年2月28日訪問

YouFab Global Creative Awards 2019

展覧会と記事の概要
一言コメント
  • テクノロジー×モノづくりの芸術賞「YouFab」
  • 「共生」が主題の2019年は、ヒト・モノ・システムの関係を考える作品が多くて、とても考えさせられる展覧会でした!

展覧会のあらまし

YouFab2019

「デジタルとフィジカルを横断し、結合する創造性 = Fab (ファブ)」。 YouFabは、ものづくり(Fab)の先にある新たな問いを持ったクリエイションを評価し、贈賞するアワードです。
YouFab2019

「YouFab Global Creative Awards」は、[…]「Fab(ファブ)」の文脈に根ざしながらジャンルにとらわれず、クリエイターと社会の出会いを育くむグローバルアワードです。
第8回目を迎える本年は「Conviviality(コンヴィヴィアリティ)」をテーマに掲げ、過去最多の世界43カ国 258作品の応募となりました。応募作品は、[…] カテゴリーもジャンルも超え、新たなFabの解釈を提示するラインアップとなりました。それは時に「サイエンス」であり、時に「アート」であり、時に「デザイン」で、時にその混合種です。集まる作品群は、既存のカテゴリーや分類の境界線を越え、大胆にして自由なものばかりです。時代のさまざまな文脈がぶつかり、共に刺激を与え合いながら進化発展していくその今を、そして未来を。ユニークな作品群を通じて目撃してください。
YouFab Global Creative Awards 実行委員会

YouFab2019 Judgment table in Tokyo, Japan

会場:渋谷キューズ
会期:2020年2月28日~3月8日
料金:無料
公式HP:こちら

展覧会の感想

 モノづくりのグローバル・アワード「YouFab」の2019受賞作品展です! これは毎年、テクノロジー・アートの祭典「Media Ambition Tokyo」の一環として展示されています。

 今年は、MAT2020と同じ会場内に展示されていたので、イマイチMATとYouFabの境界が分からなかったのですが、コンセプトが違うので別記事にしました。

 MAT2020の感想は以下記事です!

芸術「Media Ambition Tokyo 2020」:テクノロジーで未来を考えるアートの祭典
テクノロジーアートの祭典《MAT》。落合陽一やWoWなど。AI監視から逃れる”現代版透明マント”、アイヌ文化をデジタル技…



 最初の部分で引用紹介したYouFab2019のテーマはよく分からないので、好きな言葉をお借りしながら紹介しなおします。

常識に挑む。常識に抗する。常識をHackする。
そんなスピリットに溢れた挑戦に、YouFabは強く期待します。
YouFab2019


 それから、概要の説明。コロナ前の時期に開催されたアワードでありながら、むしろ2020年コロナ禍現在に読んだほうが実感が湧くというのが凄い面白いと思います! ちょっと長いですが、読めば面白いかと!

世間を騒がせている事件や騒動を見ていると、古い時代のシステムがいよいよ限界を迎えているのだなという思いを新たにする。[…] 小手先のアップデートではもはや対応できないような困難が次から次へと表出しては、システム全体の限界がさらに明らかになっていく。
[…] アプリを新調すれば済むと思っていたところ、OSそのものをアップデートしないとダメだ、ということが明らかになってしまう、という感じだろうか。OSのアップデートは自分のパソコンですらめんどくさいものだ。それが会社や業界や産業の、ひいては社会全体に関わるOSともなれば、簡単にアップデートできると思うほうがおかしい。当然、さまざまな軋轢が噴出することにはなる。
[…] わたしたちは当面しばらくの間、というか、いつ終わるとも知れないアップデート期間を、とても不安定な状況のなかで過ごさざるを得ないことになる。[…] ひとつひとつの不満や矛盾が、軋轢や対立となって社会をどんどん分断していくことになる。そして、そんななかで、わたしたちは、自分がよりよく生きていくために必要な手立てや手助けを見失っていくことにもなる。
[…] これだけ世の中が騒々しくもなってくれば、テクノロジーの進展が、いったい誰のための進展なのかということについて、開発者やクリエイターが、今一度真剣に考えるのは責務だろう。
若林恵/YouFab2019


 「古いOSのアップデート」とか「社会の分断」とか「誰がためのテクノロジーなのか」という問いは、むしろコロナ禍の今だからこそ一般的になっている気がします。
 そこから考えると、テクノロジーを開発したり研究したりしている人たちは社会の数歩先を歩いているというのが分かるし、もっとそれを吸収したいとも強く思います。

 先日、ある大学の科学系の研究をされている先生が仰っていたのを思い出しました。
 「私たち研究者は日常的にオンライン会議を使っていて、いつも『これが一般に定着するのは何年後だろう、そうやったら普及するだろう』と会話のネタにしていたら、こういう予期せぬコロナという形で広がるとは思ってもいなかった」と。
 社会システムのアップデートは、やっぱり何か大きな変革がないと起こらないんですかね。

YouFab2019



 さて作品の感想。
 「モノづくり」がメインテーマの賞ではありますが、2019年の受賞作品は「人や社会の関係を考える」ような作品が多かった気がします。

 もちろんテーマが「Conviviality(共生)」なので、当然、対象となる相手(モノ, ヒト, システム)との関係を探り考えるのが大切ですから、当たり前なのかもしれないですけど。

 テクノロジーアートも大好きですし、こうして人や社会との関係を直接持っていくようプロジェクトはとても面白くて好きなので、2019年版も大満足でした!



 全体の感想はこんなところです。

 会場が「MAT2020」と同じということもあり、深く書くことは少ないです。作品についての感想を以下に書くので、作品の面白さを感じて頂けたら幸いです!

展示作品の紹介と感想


 作品については、受賞順になっているはずです。
 なお、ここで紹介していない作品もあるので、ぜひ公式HPの受賞作品紹介を見て下さい! より詳しく解説や紹介があります!

YouFab Global Creative Awards 2019
デジタルとフィジカルを横断し、結合する創造性 = Fab (ファブ)」。 YouFabは、ものづくり(Fab)の先にある…
YouFab2019
展覧会の会場図

Penta KLabs
Collective Hysteria《Penta KLabs》@YouFab2019

作家:Collective Hysteria
作品名:Penta KLabs
YF2019:GRAND PRIZE

 ただ作品を作るだけでなく、その地域についてリサーチをし、住民を巻き込んで討論をしたり理解を深めたりするプロジェクト。

 対話の機会があるのはとても大切だと思います。とはいえ、こういうのに参加するのは一部の人だけなのかなーとも思うのですが、どうなのでしょう。
 これは、会期中に渋谷でも行なわれたそうです。また、会場には以下のようなクエスチョンが投げかけられていました。こうやって質問されると、現場に行けなくても街や地域のことについて多くの人が考えられるから良いと思います!

質問
1. 20年後の東京を想像してください。今ある場所で、どのような場所を守りたいですか?
2. 今のあなたの能力を持って、どんな方法でそれを実現できると思いますか?

複数のステークホルダーを繋ぐ公開イベント。[…] アーティストとクリエイターが、作品を作る、という行為に止まるのではなく、地域の問題への取り組み、多くのステークホルダーを招待し、話し会う「場」を開始する、という重要な機能を果たします。
YouFab2019

The Common Thread
Amir Zobel and Itay Blumenthal《The Common Thread》@YouFab2019

作家:Amir Zobel and Itay Blumenthal
作品名:The Common Thread
YF2019:FIRST PRIZE

 作品紹介を読んでも、ちょっと何を言っているか分からない……。
 作品は、エルサレム東部の労働者の自宅から職場までの距離を測り、それと同じ長さの一本の糸で彼らの肖像画を描くというものだそうです。

 作品自体の作り方が分かった時の納得感がとても面白かったのと、「自分に関係あるもので肖像を描く」というのが良いと思いました。一方で仕事との関係を考えることにもなりますし。

ハイエンド画像処理アルゴリズムに基づき、ハッキングされたCNCフライス盤によって実行される高解像度の物理的画像制作メソッドを開発しました。我々はこの方法を用いて社会的かつ人間的側面を持ったプロジェクトを作り、恵まれない労働者と彼らの「職場」の間にポエティックな関係性を再構築ました。
参照

Jungle of Nusa
Suzy Salaiman《Jungle of Nusa》@YouFab2019

作家:Suzy Salaiman
作品名:Jungle of Nusa
YF2019:GENERAL PRIZE

 パイプ型の作品を通じて会話したり、声や音を聞いたりする、使い方のない参加型の作品。

 「アナログな方法でお互いに”会話”する方法や行為を再発見する」というのは良いですね。携帯電話と違って、パイプでも糸電話でも、もちろん対面の会話でも、相手が近くにいるからコミュニケーションの内容も変わりますよね。
 まぁ、私はひとりで観に行ったので、眺めて、一言二言寂しく喋って終わりましたけど(笑)

オーディエンスに積極的な参加を促すインタラクティブなサウンドインスタレーション。取扱説明書はなく、自己発見を創発します。他者とのコミュニケーションにおいて携帯電話のようなツールで「会話」をするのではなく、アナログ的な方法でお互いに「会話」する方法や行為を再発見する場を作り、インスタレーションに向かって話すことで、体験者は自分の声がアートワークの一部になることを自己発見します。
YouFab2019

NIMBY (Not In My Back Yard)
高嶺格《NIMBY (Not In My Back Yard)》@YouFab2019

作家:高嶺格
作品名:NIMBY (Not In My Back Yard)
YF2019:FINALIST

 望遠鏡を覗いて上下左右に動かすと、沖縄の辺野古新基地建設に反対するデモも様子が映し出される、という作品です。

 作品の題名「NIMBY」について大学で勉強したこともあり、また2019年に話題になった「あいちトリエンナーレ」出品作品ということもあり、また興味ある基地問題を扱った作品でもあり、観たかったので良かったです!
 「NIMBY」は「Not In My Back Yard」の略です。直訳すると「私の裏庭はダメ!!」。原発や基地、ゴミ処理場、刑務所などの迷惑施設について、その必要性は認めるけど私の近所に建設するのは勘弁!!という意識を表した言葉です。

 やはり望遠鏡ですね。遠くの事象に焦点を合わせられる利点はあるけど、逆に視界が狭くなってしまいます。なので、問題に関心を向けるキッカケに良いのかもしれません。

望遠鏡の形をした映像鑑賞デバイス。[…] しかしそこに映るのは眼前の景色ではなく、リアルタイムの景色でもない。作者の経験した風景、沖縄の辺野古ゲート前で土砂の搬入を阻止するデモの風景である。全方位カメラで撮影された映像は、「望遠鏡を覗く」行為により、ヴァーチャルでありながらもリアルな身体的感覚を引き起こす。[…] 遠くのものを近くにあるように見ることのできる望遠鏡の特性を応用し、物理的距離を「心理的距離」に置き換えるために制作された映像デバイスである。
YouFab2019


 そんなこんなで、YouFab2019年の感想でした!

 前回のMAT2020の感想と合わせて、毎年楽しみにしているテクノロジー・アートの展覧会なので、ようやく感想を書くことができて良かったです!!

 本編でも少し触れましたが、コロナ禍前の展覧会にも関わらず、今の状況で見て読んでも遜色ないどころか、むしろより強烈になっているのが本当に面白いです。
 こういうところが、アートの面白いところだし、テクノロジーの楽しいところ何だぁなと改めて思います。特にMATとYouFabは《未来》を覗ける作品が多いので尚更です。

 コロナ禍を経た来年、どうなっているのか楽しみです!

読んでくださり、
ありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!

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