2018年12月8日訪問
ここから3―障害・年齢・共生を考える 5 日間
【一言】
「共生社会」への理解をより広く促す。
その主題は素晴らしいと思うが、場所や期間の設定はどうか?
そもそも、作品のコンセプト等を知らないと、鑑賞者は何も考えられないのでは?
【Twitter140文字感想】
【ここから3─障害・年齢・共生を考える5日間】
障害者週間に合わせ、文科省が主催。
アートで、年齢や障害を超越した共生社会への理解を促す。障害を持つ作家方の作品を展示するも、説明はほぼ皆無。
作家及び作品の情報を観客に開くだけで、作品の見方や認識が一気に変わるはず。 pic.twitter.com/AJk8sVCpWW
— ArA-1 (@1_ARA_1) 2018年12月8日
企画展の概要
「障害・年齢・共生を考える」をテーマとし、年齢については「エイジ/レス」をサブキーワードとしました。障害や年齢を超越して、ものをつくることについて考え、また同じ場に集って展示を見ることにより、アートを通じて共生社会を考える機会となるよう企画するものです。また、「障害者週間」と会期を重ねることで、共生社会への関心や理解がより深まることを期待しています。…[中略]…年齢や障害にかかわらず、様々な人々が気軽に楽しみ、そこから新たな意識につながることを願っています。
ここから3
会場:国立新美術館 1階展示室 1A
会期:2018年12月5, 6, 7, 8, 9日
主催:文化庁
公式サイト:こちら
全体感想
文化庁が主催し、国立新美術館で開催された「ここから3」展。この企画展をメインにいったのですが、非常に残念な内容でした。
後から文句言われるのも嫌なので、前提というか、最初に書いておきます。
まず、難点か非難を書くと思いますが障害者自身への非難ではないので。それから、私はあくまで「美術展」を念頭に行ったのであって、「社会福祉」とか「共生社会」みたいな崇高な理由がをメインに行ったわけではないので。
ということで、あくまでも私の意見ですので。
今回の展示、「共生への理解を促す」という大義は素晴らしいと思います!
しかし、詰めが甘いぞ文化庁! そもそも、「美術館でたった5日間で開催」という部分だけでも最悪。
まず、「美術館」で開催したなら、来場者の多くは美術等に関心がある人でしょう。そういう教養ある人は「共生社会」への理解も相当なものなのでは? 一般大衆への理解を高めたいならTVメディアを利用するとか、駅前で開催するとかの方が良いのでは?
そして「5日間」での開催。こんな短い期間を狙ってわざわざ足を運ぶのって、意識高い人や教養ある人なのでは? するとやはり、既に「共生社会」へり理解はあるのでは?
一番イヤだった点は、何も書かれていないということ。
今回展示されていた作品のメインは、障害者が制作した作品です。
しかし、その作品について「何も書かれていません」。
普通、作品のコンセプトとか作家自身の解説とかが脇に掲載してあるものなのではないでしょうか?
個人的にコンセプチュアルアートとか現代美術が好きで、そういう作品って必ず“コンセプト”があります。今回展示されていた作品も「現代美術」に分類されるでしょうから、そういう部分が欲しかったです。
かなり辛辣な言い方になりますが、ただの“お絵かき”ですよ。
結構ぐちゃぐちゃな絵が多かったり、意味不明な作品とかもあったりして、悪い言い方をすれば「子どもの落書き」のようなもの。
しかし、有名な芸術家のドローイングとかデッサンとかアイデアノートとかも似たような状況だったりしますよね。じゃあ、どうして評価されるのかと言えば、「コンセプト」や「役割&影響」がはっきりしているからですよ。
現代美術家の草間彌生さん。
水玉模様の「カボチャ」とかが有名です。正直、「水玉なら誰でも描けるんじゃね?」なんて思いますが、彼女が評価される理由の1つは「幼少期の強迫障害による幻覚が苦しかった」という部分が根底にあり、死に物狂いで創作活動を続けているから。(私の拙い理解ですが。)
ここでもやっぱり、「理由」や「背景」に当たる「コンセプト」が存在しています。
(写真は以前行った別の展覧会にて)
要するになにが言いたいかというと、「説明をよこせ」ということ。
ルネサンス期とか古代ギリシアみたいに系統立った西洋美術ではなく、個人的に表現される現代美術なんだから、最後にはちゃんと説明が必要です。
(ここまで書いてきて今更感がありますが、)多少はもちろん解説パネルありました。しかしそこの情報が十分かというと、(少なくとも私は)不十分だと感じました。
例えば、作家の情報。
「どういう創作活動をしてきたか」という情報はありました。しかし知りたいのは「どんな障害なのか」という情報。創作の背景にある障害とか本人の想いとかは絶対に必要な情報のように私は感じるのですが。
ただし、これには1点反論(?)が。
「障害ではなく、作品自身の価値を鑑賞してほしい」というような考えがあるのかもしれません。
これに関してはその通りもっともでしょう。要するに「作品の範囲」をどこまでと考えるという事なのかなぁと。私は背景等も含めて作品だと思うので、そうすると「障害」も作品を観る上では大事な要素になり得ると思います。ましてや、今回の企画展に関しては。
ただ、障害者の意見も書いておきます。
これは知人づてに聞いた、車椅子生活の障害者の言葉ですが───「車椅子が個性というなら、全員が足とか手を切り落とせばいい」と。障害を個性と前向きな言葉で片付けるなという意味合いなのでしょう。
会場には、鑑賞をサポートする「アート・コミュニケータ」の方が何人もいらっしゃいました。
話しを聞くと、「この作品は実は~」とか「この作家さんは、てんかんを患っている」とか色々と説明して下さいました。
そういうのだよ!
その情報をこっちは知りたかったんだよ! しっかりと文字にして展示の隣に掲示しておいてくださればいいのに…..。
作家自身のHPとかを参照すればもちろん詳しい情報が掲載されていますが、そうじゃないですよ。会場で作品と情報が一緒にならないと意味ないと思います。
良かった点も書いておきますね。
まぁ、この企画展に限った話しではないですが、知らなかった作家さんや組織を知ることができるというのは良いですね。
今回で言えば、作家さんや作家を支援する団体、ギャラリーの存在、様々なメディアでの展開と表現、新しい技術など。こういう点は実際に触れないと分からないことですから。
たくさん書きましたが、基本的にはすべて私の個人的な感想なので。
あと、ここに書いた内容は、ちゃんと会場で手渡されたアンケートに記入して提出しました。
企画展内容の紹介
展示の紹介ということですが……障害者による作品が展示してあるメインの第1部は写真撮影禁止でした。何人かの作家さんを取り上げますが、掲載作品は必ずしも展示作品と一致しません。
あと、作家紹介などは作家自身のHPの等からです。
1 ここからはじめる ~生きる・つくる・アートの原点に触れる~
障害のある人の創作活動には、表現すること、さらには生きることの原点に触れるような作品が見受けられます。生きることとつく ることが等しいような作品は、見る人の心に直接届きます。さまざまな作品との出会いから一歩が始まるはずです。
ここから3
作家:横溝さやか
競馬・牧場・世界名作劇場をこよなく愛するイラストレーター。主なモチーフは人、動物、風景、世界の国々、オリジナルキャラクターなどなど。オリジナル紙芝居「ピ・ヨンジュとオレ三世シリーズ」や世界の国をテーマにした「世界旅行シリーズ」子どもや家族の日常をテーマにした「キッズ&ファミリーシリーズ」など数多くのシリーズを制作中。紙芝居などで様々なシーンを描いてきた経験から「○○が○○しているところ」と言ったシチュエーションを描くことが大得意。
studioCOOCA
【出品作家パート1】横溝さやかさん。オレ三世やピ・ヨンジュ(写真)などオリジナルなキャラクターが世界の街を舞台に活躍。街は華やかな色彩にあふれ、人間や動物たちなど誰もが楽しげに、活き活きとしています。文部科学省より障害者の生涯教育推進のためのスペシャルサポート大使に任命。ei pic.twitter.com/CeghUgVP49
— ここから展 (@kokokara_bunka) 2018年11月16日
作家:大庭航介
大庭さんは市内山下在住。15歳の時にてんかんと診断され、転倒防止のために車いすを勧められていたが、気乗りしなかったという。改造バイクや車が好きだったことから、施設スタッフの助言で乗りたくなる車いすをデザインすることを始めた。
タウンニュース
ついに登場!
#ここから3 #国立新美術館 pic.twitter.com/V6wkkSsvji— studioCOOCA (@studiocooca) 2018年12月5日
作家:藤岡祐機
紙にハサミを入れると、繊維状になった切り込みは糸のようなうねりを生む。楽器を弾くかのようにハサミを操る彼は、リズムを刻みながら紙と向き合う。
日本財団
【出品作家パート1】藤岡祐機さん。熊本市現代美術館に出品したのは9歳の時。初めはチラシなどの紙から形を切り出し、その後ハサミ一本で驚くべき櫛のような作品を作り出すようになります。極細のらせん状になった紙は、ときに紙の表裏の色の違いで複雑な模様になります。ei #ここから #国立新美術館 pic.twitter.com/UEzWxHrWh7
— ここから展 (@kokokara_bunka) 2018年11月16日
作家:熊田史康
幼少の頃より「水」に対してのこだわりが強く、外出時には必ず最初にその場所のトイレを確認し、水洗を流すことが習慣化となっていた。それがいつしか、目的が水のこだわりから「トイレ」への執着へと変化していく。小学校へ入るとはじめはトイレの平面図から描くようになり、10歳を過ぎた頃には段ボールを使いトイレの立体模型を制作する現在のスタイルが確立される。壁の色、便器の配置、鏡やパイプの素材、窓のセロハン紙等、彼はイメージを常に持ち、すべてにおいて妥協はしない。作り上げる過程においては、緊張と興奮の連続で何度も声を荒げ、時にはうまくいかず自分を傷つけることもあるが、完成時の達成感に満ちた表情になる。
やまなみ工房
【出品作家パート1】熊田史康さん。幼少の頃から水へのこだわりが強く、外出時にはまずトイレを確認し、水洗を流していました。いつしか水からトイレへの執着に変化し、平面図を描くようになります。10歳を過ぎた頃には段ボールでトイレの立体模型を制作するスタイルが確立しました。#ここから pic.twitter.com/NRKxXGGC4R
— ここから展 (@kokokara_bunka) 2018年11月15日
作家:石栗仁之
出品作家の紹介をしていきます!パート1の出品作家の石栗仁之さんは、一見すると線で描いた細密な絵画にみえますが、隅にはスタートとゴールの文字があり、全体が巨大な迷路になっています。子どもの頃から迷路に熱中していたというです。#ここから #国立新美術館 pic.twitter.com/5vYSVAJsbd
— ここから展 (@kokokara_bunka) 2018年11月14日
作家:中崎強
【出品作家パート1】中崎強さん。桜の景色や星が瞬く夜景など、色彩の豊かさが印象深い作品。この情感あふれる風景画は、動かしやすい左足を使って、父親と見に行った思い出の場所を描いてます。2001年には二科展に入選しました。(写真)#ここから #国立新美術館 pic.twitter.com/xOBSdnbduC
— ここから展 (@kokokara_bunka) 2018年11月15日
作家:大路裕也
音楽が流れるとリズムに合わせエアギターをかき鳴らし熱唱、車両が後退する際はオーバーアクションで誘導、休憩時には煙草を吸う仕草を真似て一服と、常に周囲を意識し自分自身を演出している彼の自己アピールの一つに作品制作がある。モチーフは人物や動物等、様々で雑誌や画集を見てそれを模写する。腕を組み、角度を変え構図を考える様も、一つ一つ丁寧に色を塗り重ねる筆使いもすべては彼の演出、彼の美学なのである。その美学から生まれる作品たちは、彼も予想がつかない全く別の色や形へと変化していく。
やまなみ工房
【出品作家パート1】大路裕也さん。人物や動物をはじめ、多彩なモチーフは雑誌や画集を見て模写しています。腕を組み、角度を変え構図を考える様も、丁寧に色を塗り重ねる筆使いも彼独自の美学です。その美学から生まれる作品は予想もつかない形や色へと変化していきます。#ここから #国立新美術館 pic.twitter.com/WxC3bQgt1d
— ここから展 (@kokokara_bunka) 2018年11月15日
2 ここからおもう ~多様な「エイジ/レス」を描くメディア芸術~
マンガやアニメーション、ゲームやメディアアートなどのメディア芸術作品から、本展のテーマである「年齢」や「生きること」と結びつくようなマンガやアニメーション作品を展示します。これらは、年を重ねることや、現実と向き合うことについて考えさせるだけでなく、多様な表現のあり方に気付かせてくれます。
ここから3
説明通り、漫画とかアニメがメインのパートです。
この会場は写真撮影がOKでした! 何点か作品が展示されていましたが、選んで紹介します。
作家:いがらしみきお
漫画:ぼのぼの
【出品作家パート2】#いがらしみきお『ぼのぼの』
主人公であるラッコの「ぼのぼの」や様々な森の動物たちが登場し、「ちょっとヘンな」日常が繰り広げられる4コママンガ作品です。今回は、本作を凹凸が浮き出る特殊なインクを用いて印刷し、触って鑑賞することのできる「触図」にします。#ここから— ここから展 (@kokokara_bunka) 2018年11月19日
ぼのぼの【ぼのちゃん】PV
加えて、凹凸が浮き出る特殊なインクを用いてマンガを印刷し、直接触れることで作品理解に役立てることができる「触図(しょくず)」の展示も行います。
ここから3
#いがらしみきお 《ぼのぼの》のキャラクター #ぼのぼの と #シマリスくん
です。会場に展示しますよ!触り心地が良いですよ!#ここから pic.twitter.com/VDZJ03d5mW— ここから展 (@kokokara_bunka) 2018年11月30日
作家:湯浅政明
アニメ:夢見る機械
【出品作家パート2】#湯浅政明『夢みるキカイ』
赤ん坊の子守をしてくれていた空間が、突然電源が切れたように動かなくなってしまいます。赤ん坊は好奇心から外の世界へと飛び出し、様々な未知の体験をしていきます。 pic.twitter.com/RI5lDcgES9— ここから展 (@kokokara_bunka) 2018年11月23日
この作品で描かれている世界は現実にはないファンタジーであり、奇妙な生き物の動きが魅力的です。それと同時に、この世界での出来事からは、私たちにとって生きることとは何かを深く考えさせられます。ei #ここから #国立新美術館 #湯浅政明
— ここから展 (@kokokara_bunka) 2018年11月23日
夢みるキカイ / Happy machine trailer
湯浅監督は個人的に大好きなアニメーション監督でなので、展示してあり嬉しかったです! というか、場面カットやコンセプトボードとかを見ただけで分かる、特徴的なこの感じ!
作家:デバンンジャン・ナンディ
アニメ:Chhaya
老いた男と亡くなった妻の物語が、CGアニメーションと精巧なミニチュアセット、ガラス絵によって描かれる短編作品。インド西ベンガル地方の老人センターで暮らす主人公Prakash(プレカーシュ)は、彼自身の影となった最愛の妻Chhaya(チャーヤ)とともに暮らしている。しかし彼の過去が現在を脅かしはじめ、Prakashは魅惑的で非現実の過去と現実の生活との選択を迫られることになる。
文化庁メディア芸術祭
‘Chhaya’ trailer
マンガ
説明の通りです。
「文化庁メディア芸術祭」ってなかなかすごいもので、本当に色々なメディアを扱ってて、私が好きな「アニメ」と「現代美術」もあって好きなんです!(芸術関係者のなかだと批判的な見方もあるそうですが)
そして、「聲の形」。
この作品はアニメーション映画として公開されて大きな話題になりました。本当に素晴らしい作品でした!
映画『聲の形』予告映像
3 ここからひろがる ~「いまのわたし」が感じる世界~
私たちは、生活のなかで常に何かに触れ、その感触から様々な情報を得ています。ここでは、「触れて感じ取る力」を使って空間を知覚するプロジェクトを紹介します。それぞれ違った年齢や身体的な特徴を持つ私たち自身は、世界をどのように感じ取ることができるでしょうか。
ここから3
展示:echo project
最新の技術や素材を使い、「見ること」以外の方法で、どうやって空間をとらえることができるかを研究している。本作は距離を振動として伝えるセンサーを使い、自分の体をとりまく空間の情報を振動を通じてとらえなおす。
【出品作家パート3】#echoproject
最新の技術や素材を使い、「見ること」以外の方法で、どうやって空間をとらえることができるかを研究しています。本作は距離を振動として伝えるセンサーを使い、自分の体をとりまく空間の情報を振動を通じてとらえなおしています。ei #ここから #国立新美術館 pic.twitter.com/pUCORITMPa— ここから展 (@kokokara_bunka) 2018年11月25日
こういうの!
こういう作品というか、デバイスは大好きです! 未来を感じさせるような端末は本当に面白いです! 『Media Ambition Tokyo』というメディアアートの大きな展覧会で似たような体験をした思い出が蘇ってきました!
展示内容の紹介は以上です!
まぁ正直、六本木ヒルズの『カタストロフと美術のちから』展のついでではあったものの、結構楽しみにしていただけに残念でした。
最後まで読んでくださり、
本当にありがとうございました!!