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【映画】『ブラックパンサー』───アメコミ初の黒人ヒーローは、社会的問題の寓話を語る

舞台のアフリカ感を随所に散りばめたヒーロー映画! 本作はその他アメコミ映画の様にバトルシーンがド派手な訳じゃないけれど、そこまでの物語を力入れて描いている印象。 ただ、「描ききれなかった」もしくは「不十分で浅い」という印象を受けました。 本作は悪役を褒めたい!
※ネタバレなし。
※画像は予告映像のキャプチャです。

2018年3月1日鑑賞

ブラックパンサー
(原題:Black Panther)

 

 

【評価:3.1/5.0】

 


【一言】

舞台のアフリカ感を随所に散りばめたヒーロー映画!

本作はその他アメコミ映画の様にバトルシーンがド派手な訳じゃないけれど、そこまでの物語を力入れて描いている印象。

ただ、「描ききれなかった」もしくは「不十分で浅い」という印象を受けました。

本作は悪役を褒めたい!

 

 

ストーリー

アフリカの奥地に隠されたワカンダ王国は、希少金属ヴィブラニウムを基に発展した超文明国家だった。

『シビル・ウォー/キャプテンアメリカ』で国王が亡きものとなった事で、若き王子ティ・チャラは王位を継承した。

ワカンダの国王の裏の顔は、黒豹の姿を身にまとい国の秘密を守る戦士「ブラックパンサー」であった。


予告動画

 

 


 

 

目次&メモを表示

 

【目次】

 

 


 

 

作品データメモ

監督:ライアン・クーグラー
製作:マーベル・スタジオ
原作:スタン・リー
キャスト:チャドウィック・ボーズマン,マイケル.B.ジョーダン and more.
上映時間:134分
日本公開:2018年3月1日
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ
公式サイト

 

 

 


 

 

 

ポスターギャラリー

 

 

 

 


 

 

 

感想

感想外観

 

 映画として面白かったけど、それ以上の“なにか”があるかと言ったら………無いです。アメコミ映画で、アベンジャーズに繋がるから観たけれど、そうじゃなかったら観ないかな………と。

 まずはアメコミ映画として。
 これまでのアメコミ作品に比べると、特にバトルシーンがスケールダウンしているのが顕著だと思います。
 それが面白さダウンに繋がっている訳ではないですが、少し残念ではあります。

 物語としては、どこか煮えきらない印象を受けました。従来のヒーロー達のように色々と悩む部分はあります。
 正義の間で揺れたり、力の使い方、救うべきか否か、誰を助けるか………など。
 でも、それが一国の国王と言う事で、大き過ぎたというか、詰め込み過ぎたというか。

 それでも作品そのものは良いと思います。
 黒人初のアメコミヒーローであるブラックパンサーは『ワンダー・ウーマン』と同じようにジェンダーや差別といった社会問題へのメッセージになるでしょう。

 また、今回の悪役が最高! 彼が「悪役」へと墜ちた理由がとても重要で大切です。個人的には、「悪役」とすら呼びたくないですが。

 本作、背後にはアフリカにおける部族間闘争、黒人の差別と抑圧、伝統と革新の対立などが織り込まれていると思います。

 それ自体は良いのですが、アメコミ映画で描く事で軽くなってしまったというか、曖昧で微妙なものに感じてしまったというかで残念でした。

 「超先進国がアフリカに隠されている」という無理があるような設定を上手く世界観に溶け込ませる技はさすがだと思います。

 また、アフリカが舞台ということで、音楽や装飾、衣装や模様など細かな部分をアフリカ仕様(?)にしていた部分は好印象です。

 キャストに関しては、やっぱりマーティン・フリーマンが好きですねぇ〜。捜査官役がピッタリです。
 また、『ホビットの冒険』でフリーマンと共演し、数々の映画に出演しているアンディ・サーキスも良かったです!!

 

 

 

 

 

アメコミ映画としては残念

 

 アメコミ映画として本作を評価するなら、個人的には「残念な作品」というものになってしまいます。
 私がアメコミ映画に対して抱いているイメージや好きな部分が大きく削がれていたからです。

 まず、何をおいても重要なのが「バトルシーン」です。超人的な能力や、夢のようなガジェットを利用しての大規模なバトルはやはり大きな魅力です。
 
 しかし、本作ではそれがかなり減っていました。もちろん、主人公が武闘派スーツ男であったり、アフリカが舞台なのは理由かもしれませんが、残念です。

 それから、「ワクワクするような展開&活劇」というのも少なかったです。
 次々襲う敵や、無敵と思われる強敵との戦いのようなハラハラ・ドキドキさせる部分が少ないなぁ〜と思いました。
 これもまた、物語的には仕方ないと思うんですけどね……。

 まぁ、そんな感じでアメコミ映画、さらにはマーベル映画としては個人的にガッカリです。
 多分、『アベンジャーズ3』に繋がらなければ観るのを躊躇ったかも……。

 

 

 

 

 

煮え切らない物語

 

 他のアメコミ作品や、その他映画と比べてみても、「何を描きたいのか」がとても曖昧なだった気がします。

 曖昧というのは、「悩みや選択」といった他のヒーローも苦悩する内容は本作にも込められています。
 しかし、それの解決が曖昧というか、その悩み自体がボヤッとしたものであるというか……。

 一国の国王という異色の立場上、色々な問題我一気に降り掛かってくるのは当たり前ですし、それら全てを描かなくてはならないでしょう。
 でも、それらが多すぎて、またスケールが大きくてその結末がイマイチ腑に落ちない形で終幕してしまった気がするんですよ。

 「アイアンマン」のように己の行為を振り返ったり、「スパイダーマン」のように力の使い方を悩んだり、「キャプテン・アメリカ」のように自分の無力さを憂いたり。

 ヒーロー映画って、1つ中心になる『苦悩』があって、それは過去や現在に結びつていて、最後に何かしらの決断や決着を着けるのが王道だし、完璧だと思います。
 でも、本作は色々と詰め込み過ぎたと思います。

 

 

 

 

社会問題の寓話

 

 現実の世界に存在するいくつかの問題へのメッセージや指摘を含んだ物語としては、本作は良いと思います。

 まず、主人公「ブラックパンサー」がアメコミ初の黒人ヒーローという点から。
 これは2017年の『ワンダー・ウーマン』と似ていますよね。これまで主役に取り上げられなかった存在が主役として描かれること。

 それは強いメッセージになるし、応援にもなると思います。
 (ただ、映画では既にニック・フューリーが黒人として出演しているので、インパクトは薄いかなぁ〜と。)

 それから、下の項でも触れますが、アフリカにおける部族対立や資源争奪闘争、発展途上の問題や、国際社会からどのように見られているかなど様々な問題を取り上げています。

 これは以前に別の記事で読んだものですが、『ブラックパンサー』という作品にはアフリカを舞台にするに当たって、大きな意味が込められているそう。

 それは、「強者に見捨てられ、歴史から切り離されたようなアフリカだが、そのアフリカにこそ素晴らしい文化が眠っている」というもの。

 映画を観てて、それを実感したし、特に主人公の台詞にそれが込められていると感じました。

 あと、今回は悪役が良いです。彼が悪役へと墜ちた理由が、これまた大きな意味を持っています。
 「今作で一番誰を褒めたい(?)か?」と聞かれれば、私は悪役の彼を選びます!

 

 

 

 

 

問題を描くのに

 

 上で述べたように、ネタバレを含むので述べられなかった部分も含めて、本作には色々な社会的問題へのメッセージが込められています。

 しかし、観ていてそれを描くことに違和感を感じたのが、本作でした。
 何というか、ヒーロー映画の設定の中にそれらの問題を混ぜ込むと、「軽く感じてしまう」のです。

 現実ではもっと重たいし、重要で緊急な問題を、アメコミ映画の物語に織り込むというのに少なからず抵抗を感じました。

 もちろん、その他のアメコミ作品でも何らかの問題をメッセージとする為に含んでいる訳ですが、本作はまた別というか……。

 軽々しく感じてしまうのは、私自身が抱いている偏ったイメージからなのか、ただの偏見なのか………。

 

 

 

 

 

舞台を映画に活かし切る

 

 本作の舞台はアフリカと言う事で、その「アフリカらしさ」をたくさん劇中に散りばめていて好きです!

 まずは当たり前ですが衣装。
 アフリカの人々や舞台を描くのですから当然ですが、これまでアメコミ映画は最新テクノロジーで造ったアーマーか、スーツ姿が多かったので、本作では印象的でした。

 それから装飾。
 普通の家の壁や絨毯の模様は当然として、凄かったのは液晶モニターやバトルシップといった最新技術からの産物にもしっかりとその模様や雰囲気が刻み込まれていたことです。
 想像以上に親和性が良くて、結構私好みの感じでした。

 あとは音楽でしょうね!
 最近の映画はアメコミ云々を問わずに劇中音楽に力を入れてる印象ですが、それは今作でも健在です。

 太鼓の音色や独特なリズム、掛け声やコーラス(?)のような部分など「The アフリカ(個人的なイメージ)」という雰囲気が出てて良かったです!
Ludwig Göransson「Wakanda」

 その他にも、物語の重要な部分でかアフリカ部族の伝統を模したようなシーンを挿入したりと、しっかりと世界観を構築していました。

 

 

 

 

 

キャスト&設定GOOD!

 

 

 まずはキャストについて。
 単純に個人的に好きなだけですが、マーティン・フリーマンが良かったです。もう、本当にCIA捜査官という役にピッタリ!

 そして、もう一人取り上げるべきはアンディ・サーキスでしょう。
 『猿の惑星』や『SW/最後のジェダイ』、そして『ロード・オブ・ザ・リング』などでいつも観ているにも関わらず、モーションアクターという役割上、その姿はなかなか観たことない彼。

 演技も、雰囲気も完璧でした!やっぱり、モーションキャプチャーという自分自身の姿で演じる役じゃない作品が多いから、表現や演技の幅も広がるんですかね?

 設定については、「ワカンダという超先進国家がアフリカに存在する」という奇想天外なSF設定を見事に現代世界に溶け込ませた点が素晴らしいと思います。

 それには、私たち観客が本作までのアメコミ映画を観てきてて、宇宙人や神の存在が現実であるという設定を理解してきたからで、ここまでの『Marvel Cinematic Universe』の広がりと深さを感じさせられます。

 

 

 

 

 

ネタバレあり感想

 

続きを表示

 

 今作で一番褒めたいのは悪役であるキルモンガーです。位置づけとしては悪役ですけど、考え方や生い立ちは善人(?)のそれだと思います。

 貧困や抑圧を目にしてその現状を知った彼は、祖国の技術を使って人々を救おうとする。
 今回はその方法が力に任せた方針だったから「悪」となったけど、状況によってはヒーローですよ。

 あとは、王座を継ぐための「決闘の儀式」が個人的に良かったです。
 部族を統べる代表を選ぶ方法として、アフリカらしいというか、雰囲気たっぷりというか。
 4つの部族が集まって、伝統のしきたりを重んじた方法をとるのは、高度に発展したワカンダであっても同じなんだなぁ〜と関心(?)しました。

 あと、ラストの国連での発言。
 「危機に瀕したとき、賢者は橋を掛け、愚か者は壁を造る」
 あれを聞いて某国の大統領を思い出しました(笑) もちろん、比喩的な意味での「橋、壁」なのでしょうけどね。

 

 

 

 


 

 

 

以降、映画本編のネタバレあり

 

 

 

 


 

 

 

ネタバレあらすじ&感想

 

序盤

 

 映画は昔話のおとぎ話から幕開け。
 太古、ヴィブラニウムという硬い鉱物が宇宙から降ってきて、そこに住んでいた部族らは一人の王を中心とした共同体を作り、ヴィブラニウムを資源としてワカンダ王国を発展させた。
 4つの部族は結集し、猿神を崇めるジャバリ族だけは山へとこもる。

 舞台は1992年のカリフォルニアにある黒人アパートの一室へ。
 白人からの不当な扱いに我慢できなくなり、武器まで用意していた黒人男性2人の元へ女性2人がやってくる。

 そこへワカンダ国王が姿をしたを現し、ヴィブラニウムがユリシーズ・クロウにより盗まれた事、そしてそれを手引きした者がいると告げる。

 部屋にいたこく2人はワカンダ族で、片方は国王の弟であったが、その弟がクロウと手を結んだ犯人であった。

 そしてタイトルバック、MARVELのロゴが映し出される。

 

 

 

 

 

前半

 

 舞台は現代へ。
 女性たちの人身売買を目論むトラック隊列に、ヴィブラニウム製の飛行機に乗って空から襲撃を加えるのは若き王子ティ・チャラ。
 そして潜入中だったスパイ、ナキアを連れて国へと戻る。

 広大なアフリカの中で、山のホログラム(?)により隠されていたのは、光り輝く高層ビル群からなるワカンダ王国。
 ティ・チャラは亡き国王の代わりに王座に着くための儀式をすべく、祖国へと戻ってきた。

 一方、ロンドンの博物館。
 西アフリカ展示室に現れたのは、一人の黒人。彼はクロウと手を組み、展示してあったヴィブラニウム製の手斧を盗み出した。

 ワカンダ王国では、チャラが王位を継承すべく伝統の儀式が行われる。
 滝の中間で行われる儀式で、ブラックパンサーの能力を一度失った国王候補に誰でも挑む事ができる。

 どの部族も意義なくチャラを認める中、ジャバリ族が「挑戦」を申し出る。しかしジャバリ族の長であるエムバクを倒したチャラは、無事に王座に着く。

 そしてチャラはブラックパンサーの力を取り戻す儀式へと移る。
 神聖なハーブを飲んだ彼の精神、祖先たちがまつ世界へと赴く。そこで父と話し、決意を固めた彼は目を覚まし、力を取り戻した。

 ロンドンの博物館での盗難を知ったワカンダ王国の評議会は、以前にもヴィブラニウムを盗んだクロウを捕らえる決議をする。

 

 

 

 

 

中盤

 

 技術担当の妹シュリから新しいブラックパンサーのスーツとなる首飾りを受け取ったチャラは、クロウが取引をする韓国へと飛ぶ。

 韓国、釜山にある裏カジノに到着したチャラ、ナキア、親衛隊長オコエの3人。そこでチャラが出会ったのは、ソコヴイアの事件で知り行ったCIA捜査官のエヴァレット・ロスであり、米国もクロウとヴィブラニウムを追っていると知る。

 ゲスト出演のスタン・リー、そしてクロウが現れたが、チャラらの存在がバレ、銃撃戦に。
本編映像

 そしてクロウはすぐさまカジノを脱すると、車で釜山の町中を走り回る。
 追うチャラらだったが、クロウの腕に仕込まれたキャノン銃によって追跡は困難を極める。
 最終的に、ブラッパンサーとなったチャラにより、クロウの身柄は確保される。
本編映像

 CIAの隠れ家でクロウへの尋問をするが、ロス捜査官にワカンダ王国の秘密を疑われる事に。
 その直後、クロウの手下が隠れ家を襲撃し、クロウを奪還される。そしてロス捜査官は爆風からナキアをかばったことで脊椎に大きな傷を負ってしまった。
 ロス捜査官を助けるため、彼をワカンダ王国へと運ぶ。

 助かったクロウは飛行機で逃げようとするが、そこで手を組んでいたはずの黒人に殺される。
 彼はエリック・キルモンガーといい、その正体はワカンダ人だった。彼はクロウの死体を手土産とし、ワカンダ王国への入国に成功する。

 一方、チャラは韓国のCIA隠れ家を襲撃した犯人の一人が首から下げていた、指輪が気になっていた。それは彼自身ももつ、父親から貰った指輪。
 側近であるズリに問い詰めると、彼は全てを話した。1992年のカリフォルニアで、チャラの父親が弟を殺した事実を。

 

 

 

 

 

 

後半

 

 ワカンダ王国に入国したキルモンガーは自身の素性を評議会に暴露し、正当なる王位継承の権利があると宣言すると、チャラに決闘を挑む。

 滝で闘うチャラとキルモンガー。
 最終的にキルモンガーが優勢となり、彼はズリを殺害。そしてチャラの身を谷底へと放り投げ、王位を継いだのだった。

 チャラの母親やナキアらは身を守るために国から逃げる。その途中、ナキアはキルモンガーが焼却処分するよう命じた神聖なハーブを1つ持ち去る。

 王位に着いたキルモンガーは、軍と政治を掌握し、ワカンダ王国が自国の秘密を守る為に、世界の貧困や抑圧を無視したと非難し、ヴィブラニウム製の武器を抑圧された人々に届けると命令を下した。

 一方、国から逃れたナキアらは、山に住むジャバリ族を訪ねた。ワカンダ王国を救うには彼らの力を頼るしかないと考えたから。
 そこで族長エムバクにより見せられのは、雪に包まれて横たわるチャラの姿だった。
 漁師により助けられるも、昏睡状態の彼に持ち出した最後のハーブを与える。

 ハーブにより息を吹き替えしたチャラは、キルモンガーから王座を取り返し、ワカンダ王国を救うために国へと戻る。
 キルモンガーについたウカビ率いるボーダー族を筆頭とする勢力と、オコエ率いる親衛隊を筆頭とするチャラ派の間で激しい戦いが繰り広げられる。

 その頃、ヴィブラニウム製の武器を世界中にばら撒こうとしている輸送機を止まるため、空軍でのパイロット経験があるロス捜査官が、遠隔操作によって輸送機の撃墜を試みる。

 入り乱れる戦いの中、ヴィブラニウム鉱山へと落下したチャラとキルモンガーは、そこで一騎討ちを繰り広げる。
 勝負は、チャラの勝利で終わった。

 

 

 

 

 

終盤

 

 無事にワカンダ王国を救ったチャラは、カリフォルニアへと向かった。
 訪ねたのは、父親が叔父を殺したアパート。その場所に彼は、ワカンダ王国初めての貧困支援センターを設立する事にしたのだ。

 バスケットボールコートで遊ぶ子供から「おじさん、誰なの?」と聞かれるチャラ。

 そしてエンドクレジットへ。

 国連の演説台に立つチャラ。
 彼はワカンダ王国の王位を継いだ事を報告するとともに、世界にあふれる現状に警鐘を鳴らし、そして技術と資金の支援を表明する。
 「危機に瀕した時、賢者は橋を掛け、愚か者は壁を造る」

 スタッククレジット。

 最後、映し出されたのは一人の白人。
 そう、ウィンター・ソルジャーことバッキー・バーンズだった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 最後まで読んでくださり、
 本当にありがとうございました!!

 


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